第3話 始まりはきっと春から
目覚めた時間は、06:50、桜が咲くか散るかして乱れているその季節、未露はこの年晴れて高校生になる。
(未露)「(憂鬱……、またあの頃の夢……、いつまですがってるんだろ……、天音ちゃんはもういないじゃん……)」
未露が小学生に上がる頃、天音は遠くへ引っ越して行った。それを境に、未露の味方はほとんどいなくなってしまった。
この日は入学当日、未露ら新しい制服に身を包み、髪の毛はいつも通りボサボサのまま、学校への道を歩く。散る桜をみて未露はそっとため息を溢した。
(未露)「(元気してるかな……、天音ちゃん……)」
綺麗に散る桜の花とは裏腹に醜く地に着いた足だという劣等感、それを抱えて歩く道のりはさすがに重い。未露の足は全然前に進まなかった。
(未露)「(魔女……か……、政府は……なんでこんなことしたんだろ……)」
足を引き摺る人と変わらないほどの速度を維持しながら学校に着いた未露は、息を隠すようにそっと自分の先に座る。この日は特別入学式でバタバタ動いていたが、それでも何もない時間、未露はずっと自分の席に座っていた。
下校時刻、未露がそそくさと帰ろうとすると一人の男子が話しかけてきた。
(男子)「おい、魔女」
(未露)「……っ!!」
未露の中学の同級生、恰幅の良い男子だったがとても仲が良いという感じではなく、未露の身体は声をかけられただけで強く硬直し、声も出ないほど身体の自由を奪った。
(男子)「この後付き合えよ」
(未露)「……」
未露は黙って頷いた。
………
未露が男子に連れて来られたのは校舎裏。誰一人も通る気配を感じられないほど、ひんやりしていて空気が重い。
(男子)「分かってんだろ、早くしろよカス」
(未露)「……っ!」
未露は諦めたようにブレザーのボタンを外して上着を地面に置いた。ブラウスのボタンに手をかけた途端、未露は鳩尾をいきなり男子に殴られた。
(未露)「オェェ……」
(男子)「何ちんたらしてんだよ魔女のくせに」
未露に迫り来る強烈な吐き気。男子の言葉など耳にも入らない。それでも吐かないように涙目になりながら必死に口を抑える。
(男子)「何してんだよ早くしろよ」
無情にも倒れる未露の髪の毛を掴み強制的に身体を起こす。
(未露)「や……いや……」
(男子)「あ?いや?どの口が言えたんだろうな魔女のくせによ」
(女子の声)「それはこっちセリフだよ。どの口がそんな偉そうなこと言ってるの?」
突如、後ろから女子の声が聞こえた。凛としての高い女子で背筋がピシッと伸びている。
(男子)「あ?誰だおまえ?」
(女子)「誰でもいいよ。なんでそんなことしてるの?犯罪でしょ?」
(未露)「(誰か来た……?なんだろ……、何か……)」
(男子)「あぁ、しらねぇのか。こいつは魔女なんだよ。魔女になら何してもい!!」
自慢げに未露の髪を引っ張り持ち上げたところ男子の顔に全力で蹴りを入れた凛とした女の子。男子が怯んだ隙に関節技を決めて動けなくさせようとする。その力は尋常では無くまるで骨を折るつもりかのような力の強さだった。
(女子)「私は魔女という言葉が大嫌いだ……、今回は見逃す。次はない、帰れ」
(男子)「分かった分かった!!離してくれ!!折れる!!!うぁああ!!!」
女子が追撃した後男子を離すと、男子は睨みながらその場を離れていった。
(女子)「全く……、カスばっかりか」
女子は手を払いながら吐き捨てるように悪口をこぼしてから、蹲っている未露に視線を合わせるために、未露の近くにしゃがみ込んだ。
(女子)「何してるの!!抵抗しなよ!!!」
女子は未露に肩を置いて声を張り上げた。
(未露)「(抵抗……?そんなの……、そんなの……!!)……っ!!!何も……知らないくせに……!!!それが出来たら苦労しないよ!!!好き勝手言わないで!!!!……、はぁっ!!ご、ごめんなさい……!!すみません!!すみません……!!」
ここ数年、未露は一度たりとも怒号をあげたことはない。怒号をあげることで受ける痛みが跳ね上がることを身に染みて分かっているからだ。しかしそれでもなぜか、未露は声を張り上げてしまった。だから、瞬間的に頭を下げて精一杯謝っている。
(女子)「……、ごめん。そうだよね、私は何も知らない……、だから私は君が知りたい。私はこの春からこっちに来ました、2年、【美内天音】です」
(未露)「天……音……ちゃん……?」
未露の正気のない目に光が少しずつ戻り始める。これは魔女と決めつけられたとある少女の恋の物語。
(天音)「……うん!久しぶり!!未露!!会いたかった!!」
お疲れ様です。洋梨です。
久々に追われてみようと思い、これだけは毎日投稿にしたかったのですが、難しいかもしれませんね。いやでも、やりたいな。




