1・サーカス
「行ってくる!ヨヒラをお願い!」
隣に住む3人姉妹の長女ミウラが玄関横の窓から、濃い赤髪を突っ込んで店の中に居る俺に声をかける。
赤髪が引っ込むと今度は少し薄い赤髪が窓からクビを出した。次女のタウラだ。
「ワカさん、ヨヒラお願いね!」っと大声で言うと先を行くミウラに並ぼうと走って行った。
「あぁ、わかったよ気をつけてな!」 2人の背に向かって返事を返すと2人は手をあげ答えた。
2人の後ろを追いかけて洋服を着た猫が2匹走って行った。
2人はこのスミス国のサーカスに参加して金を稼いでいる。
“サーカス”とは、あの曲芸をやるサーカスでは無く闘技場で行われる闘いの事だ。
昔、サーカスの興行1ヶ月前にテントを張った。
そして興行が始まるまでの間、腕っぷしに自信のある者達が集まり金を掛けバトルを始めたのが始まりだ。
これが非常に人気となり大金が動くようになった。
金を求めてプロモーター達はサーカスを辞め、金掛けバトルへシフトして行った。
そして本物のサーカスが完全に無くなり、こっちの興行がサーカスと呼ばれるようになったと言う訳だ。
国も国民の不満のガス抜きに丁度良かったので、この興行を推奨しこの世界8国全てに国営の闘技場が出来た。
興行は国家に登録し興行使用金を国に払ってプロモーターが行う。
その者の力量により興行の大小が生まれ、やがてS・A・B・C・Dと5段階のレベルに分かれて行った。
参加する者は“団員”と呼ばれていて、4年に一度8カ国の各クラスのNo.1団員が集まって、チャンピオンを決める“大サーカス”が開催される。
場所は8カ国のサーカス(国営闘技場)で持ち回りしている。
8カ国の領土の大きさはほぼ同じだ。
過去に人間の欲望が大きくなり愚かな大戦があり、怒った神が世界を9つの升目にしその資質が似ている者を集めて振り分けた。っと言い伝えがある。
中央は“深き森”と言われどこの国でも無い。
よく言えば自然は豊か。悪く言えば獣が多い弱肉強食のただのジャングルだ。
北“ソーサラ国”魔法の国で北の3賢人と呼ばれる者達がトップに立つ。
北西“ウィッチ国”魔法の国で西の3賢人と呼ばれる者達がトップに立つ。
西“セントローザ国”宗教国だ。教皇がトップ。
南西“サーブル国”剣と騎士の国。王が居るが貴族院と庶民院と教会院で国を動かしている。それぞれの利権が違うので結構モメている。
南“エペ国”剣と騎士の国。選挙で首相と各省のトップを決め、5年ごとに総選挙。
南東“トウ国”剣とサムライの国。この国は騎士では無くサムライと呼ぶ。5年に一度選挙で首相と各省のトップを決める。エペとほぼ同じ体制。
東“スミス国”医療系を得意とする技術者の国、ギルドが集まって動かしている。東のギルドも呼ばれる。
北東“クラフタ国”機械系を得意とする技術者の国、ギルドが集まって動かしている。北のギルドと呼ばれる。
このサーカスだが300年前に人類史上最大の発明により形が変わってきた。
スミス国のガーデン・フレーム博士が生体コンピュータを開発した。
生殖機能は無いが、運動能力は人の倍ほど高い。
動物型は犬と猫でやはり普通の犬猫の2倍ほどの身体能力を持つ。
あと、しばらくしてから分かった事なのだが、自ら主人を選び主人が死ぬまで仕える事が判明した。
そしてこの生体コンピュータは“クラウン”と呼ばれた。
クラウンを持つ者はサーカスで圧倒的に有利になり。団員はこぞってクラウンを求めた。
後、ガーデン・フレーム博士のクラウンの発明により、人体も古いパーツを取り替えられるようになり寿命が3倍伸びた。
あと、一部のある特殊な因子を持った者の身体能力が上がった。
この因子を持つ者は薄い・濃いはあるが、人口の0.02%程度で、クラウンが主人と認めるのはこの因子を持つ者である事もわかった。
これはクラウン開発に、その強靭な肉体の因子を持つ者を協力者に使った事が原因と言う事だ。
身体能力は因子の薄い者で0.5倍増しぐらいで、
濃い者に関しては未確認だが3倍とも言われている。
人型クラウンは喋る事が出来るが動物型の場合は、お互いの身体に魔石を使った魔道具を埋め込み意思疎通をしている。
クラウンを使ったサーカスで圧倒的強さを誇ったザジと言う剣士が居た。
彼はガーデン・フレーム博士の人類初開発した生体コンピューター2体の女型クラウン“アナベル” “デイジー”の主人になった。
1人の主人に1体なのでこれは彼の因子を使用した為の特別な事例と思われる。
なおアナベルとデイジーは“始まりの女神”と呼ばれる。
ザシは長い剣を使い“鷹の羽”と言う秘技を持って、サーカスで250年間無敗だったのだが、突然2人のクラウンと共に姿を消した。
それ以来誰も姿を見て見せていない。
その強さはサーカスの伝説となっている。




