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8話 西南地区ギルド

短めです。



「ここが………ルンダ王国、西南区か」



 先が見えないほど高い壁で囲まれたその街は、西南区と呼ばれるらしい。

 王都から見た方角で決められているのは結構安直だとも思うけどさ。


 街に入るためには壁の一角にある門を通らなきゃいけない。そこで問題がある。


 僕は災害のような襲撃を受けた村から無断で旅を始めたわけなのだが、何の情報も持っていないので、既に容疑者として指名手配を受けている可能性もある。

 ステータス測定の時の情報が残っているとすれば、僕のことなど幾らでも調べようはある。


 考えすぎだったらいい。念のためだ。



《ギフト【不老不死】を使用し、肉体変化を行いますか?》



 ウィンドウが現れ、脳内でよくイメージをしながら、はい、に触れる。

 視点が高くなっていく。

 茶色の蓬髪に赤い瞳、約170センチの細身の男―――そう、僕は17歳の姿のリツィルに変身した。



「あ、ああーっ」



 声を出してみるとやはり低く、懐かしい感じがする。

 この前試したように、服は体に合わせたサイズになるご都合付きなので一安心。


 要するに変装して誤魔化そう、ってことです。

 雑で単純だがこのくらいしかできることがないからな。


 僕は意を決して門の前に立つ。

 しかしその門の前の人影に、手が震えた。



 いやまって、怖い。なんかいる。


 剣を腰に下げた門番が二人。僕の視線を鋭く射抜いてくる。


 他に人はいない。怪しまれているのか。

 いや僕の被害妄想だよきっと。そうに違いない。

 背中に冷たい汗がつぅっと伝いながらも、ゆっくりと歩き続ける。




 大丈夫。




 大丈夫。




 まだ大丈夫。





 だいじょうぶ…………





「貴様、止まれ!!」



「っひぇ……!?」



 声もない悲鳴をあげた僕はその場で硬直する。



「名前は?」



 なまえ? なまえ、名前───。

 突然、威圧的に声をかけられた僕は、歯がかみ合わずに焦点がぶれる。



「り、リツ、でしゅっ」



 嚙んだ嚙んだ嚙んだ嚙んだ嚙んだ嚙んだあああ!!


「リリツだな。姓はないのか」



 リツって言おうとしました。

 そう思いつつ、コク、と頭だけで頷いた。

 2人はちらちらと僕の体をみる。何かいけない事でもあるのか。



 そう考えていると更に不安になってくる。



「いやすまない、その、貴様の趣味なら特に止めないし、その………似合っているぞ」


「誰かに、その、強制されたのなら、俺たちが相談に乗るからな? なあ?」


「あ、ああ。寒く、ないのか?」



 気まずそうな彼らと同時に視線を落とす。

 ふわりと揺れた裾、胸元のリボン。




「ひぇっ」




 僕は白目をむいて卒倒した。





 女体化でドレス着てたの、忘れてた。





*****




「───は違うだろ、さすがに。自分の姿見た瞬間に気絶するようなやつだぞ?」


「たしかに、あの殿下もそこまで物好きじゃないな」



 二人組の笑い声。がやがやと喧騒も聞こえてくる。

 どうやら僕が気を失った後、門番の人たちがどこかへ運んでくれたみたいだ。



 静かに目を開くと、一人とばっちり目が合った。



「おっ、リリツ、起きたか?」



 よし。寝たふり決行。


「いやわかるぞ今のは」


 わかっちゃうかあ。そっかあ。無理しにそう。

 僕は仕方なく起き上がると、


「看病して頂いてありがとうございました。もう大丈夫です」


 と、近くにまとめてあった荷物から羊皮紙を取り出して書き込む。

 二人には普通に驚かれた。


「字が書けるのか………俺らは読めても書けないんだ。

随分育ちが良いみたいだが、野暮な詮索はしないつもりだ」



「俺はゴウダン。で、こっちのは双子のソイダン。

よろしくな」



 少し細身の方に紹介される。


 いや僕、もう大丈夫ですって言わなかったっけ。こんな怖い人達ともういたくな───、



「あとそのドレスじゃ動きにくいだろ。替えの服を用意しておいたからそれを着るといい」



 神ですか。実際、何も連絡を寄こさないアス様よりも優しい。怖い人と思ってすいません。



 僕は土下座の要領で深く頭を下げ、目に見えない速度で素早く着替えたのだった。




*****



 

「たしか、こっちって言ったかな」



 人通りの少ない道の角を曲がると、町の人々で賑わう大通りに到着する。


 冒険者ギルドの場所をゴウソイのコンビに教えてもらい、紹介状まで書いてもらった。

 僕は殆ど声を出していないというのによく信頼してくれている。


 親切すぎて、疑心暗鬼になりそうだけど。

 人の行き交うギルドの重そうな扉を、少し力を入れて開ける。



「あの、おおお、お、じゃ………ます」



 いうまでもなく、ギルドに入った僕の第一声である。

 思わず口ごもった声で呟き足を踏み入れてしまった。


 内装は酒場を改装したようで、所々古い箇所も見える。がやがやと騒がしい冒険者達が一斉に僕を振り向いた。


 自分の顔に、出来るだけ自然な笑みを貼り付けた。

 なぜか殺気じみた眼差しがいくつも飛んでくる中、受付嬢だけが僕を明るく向かい入れる。




「ようこそ! 冒険者ギルドへ!!」


 


続きは明後日までには、書きます…。

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