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天才×転生 〜コミュ力皆無の不老不死は普通を目指す〜  作者: 浪崎ユウ
第二章 リツィル、第二の天才

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17話 最適解という選択

お久しぶりです。※残酷な描写有り


「大賢者如きがいつまで耐えられるか、試してみるか?」


 ザァーヴはそう言って笑い、大鎌を再び振り下ろす。不規則に湾曲するその軌道に、リツィルも慣れてきたのか、最小限の動きで攻撃を回避し、受けた傷が少しずつ治ってきていた。

 小さな体躯の割に意外にも俊敏な律に感心したようで、ザァーヴの目が更に細まる。


「なるほど、貴様が“律“か。先程の臆病な少年とはまるで別人だ……興味深い」




***




(交代人格の彼には伝言を残したはずなのに、またボクに変わったのか……長年「僕」の精神に閉じ込められていたから、それはそれで好都合だな)


「きゅうう!!!!」


「ぉおっと、危ない。感謝するよ、アッシー」


 傷だらけのアッシーに声を掛けられ、思考を戻すリツィル。

 彼は今、スキルが使えない。先程細切れにされた時に外れたと思ったのだが、どうやら魔法封じの鎖は自立型だったらしく、片方の足に巻きついてきていた。

 が、ギフトは生きている。【不老不死】と【全能の天稟】だ。


 その為ザァーヴとやらを倒す方法は既に数通り浮かんでいたが、それをするのは、疑問を解決してからだ、と彼は考えていた。



「ねえ、ザァーヴ」



 大振りなザァーヴの大鎌を既に潰れた右手で払い流して、彼は余裕のある口調で声をかける。



「この状況から察するに、君は有能な魔術師を攫って、魔導具や魔法の研究をしていたのだろう? なのにご自慢の魔法を使いやしない」


「……ほう? 気が付くとは。やはり目が良いようだ。 だが、暗神様も、貴様の家族も例外ではない。我らが魔王様に破壊される運命だ」



 余裕あるリツィルの態度に、ザァーヴはほんの少し怯みながらも彼を煽る言葉を叫ぶ。

 それは煽りとしては効果を持ったが、ザァーヴにとって、深い後悔をもたらす事となる。


 その瞬間、轟音と共に歪んだ気配がリツィルから漏出した。




「…………家族?」




 軽い笑みを浮かべ続けていたリツィルの眉がピクリ、と上がると。


 ザァーヴの背筋に冷たいものが伝い、脳内に警報音を鳴らした。そして、その感覚に彼の闘争心が蘇る。今のようにただ魔王様の戦力としてではなく、自身のために研究を続けていた、そんな日々を。


 たかが少年、大賢者に植え付けられた恐怖と危機感に、ザァーヴは愉悦する。だが。





「ボクを見誤ったな、死神」




 

 リツィルはそう呟き、即座にザァーヴの大鎌の柄と刃の間にピンポイントで突きを入れ、砕き割る。


 ザァーヴは特に動揺する事なく、弾け飛んだ刃の湾曲した部分を片手で掴んで再度リツィルに仕掛ける。これこそが、血沸き肉躍る戦闘………そう感じた矢先だった。彼が頭上に浮かべたソレに、目を釘付けにされる。



「待て貴様…………暗神様の使いなのだろう? 他人を巻き込むなどあの方が、お許しになるはずがない」



 死神の暗い瞳に映るのは、それを赫く染めるほどの赤黒く輝き、それを視認するだけでも体が震えるほど悍ましく、死を香らせるエネルギーの球体。



「その力……他の奴らがどうなっても良いというのか」



 その問いに、先程まで鬼気迫る殺気を放っていたリツィルの表情が緩む。


 そして、優しく口の端を上げた。







「構わない」







 心から大切なものを想うような表情で、ガラス細工に触れるかのように丁寧な声色で、彼はその球体をその広間の天井全域に薄く広げていく。

 生き残っていた被害者や、誘拐犯は宙を見上げ、これから起こるだろう事に絶望した。






「菜那に危害が及ぶのならば…………。

 ボクはその可能性全てを排除しよう」






 ギフト【全能の天稟】を最大限まで発揮し、この一帯を埋める。

 ”不幸な律”は、彼女の安全を維持する、その為ならどんな犠牲も厭わない。

 ザァーヴはそんな限りない愛を目の当たりにし、呆れたように笑みを浮かべる。



「なるほど………そう壊れているか。まるで暗神様のような。あぁどうりで、目をお付けになるはずだ。


ならば、こちらも礼儀を尽くそう。……」



 途端。広間の奥や至る場所から多量の魔力が収集されザァーヴ大鎌に流れ込む。



「【魔力収縮】……【絶流断】!!」



「……それが、君の答えか」



 リツィルの視線が、広間の“人間たち”を一瞬だけなぞる。


 恐怖。


 絶望。


 助けを求める目。



(ボクには、関係ない)




「大人しく消えてくれ、死神。【不滅魂(アンツァニマ)】!!」




 【不滅魂(アンツァニマ)】。

 ギフト【不老不死】を、ギフト【全理の天稟】により効果範囲を制定し一定時間範囲内の人物に付与する、リツィルが即席で生成したギフトの掛け合わせ技だ。



 その為、魔法封じの鎖も効果を持たない。



 形状が変化し、リツィルの喉を“掻き切った“。

 攻撃を受けた喉から、首、肩、胸、腹、と斬撃が連鎖し、彼を傷つけ続ける。

 倒れ行く彼の体が、再生が間に合っていない事を物語っていた。

 スキルが封じられている為、その刻まれる感覚には相応の痛みが伴う。とても意識を保っていられるものでは無い。




「貴様の肉体が壊れきるまで、その激痛の連鎖は終わりはしない。……っ!? 貴様、なぜ、まだ動いて……」



 そう。それが、常人の精神であれば。

 最初に彼を殺した時、気がつくべきだったのだ。

 


 【不滅魂(アンツァニマ)】は天井から水平に落ちた巨大な膜は────、広間の全てを押し潰す。



 ザァーヴに、これを避けられる程の手は残っていなかった。




「……その精神力、見事!! やはり、貴様は我らと同類。何か、根本から凡人とは一線を期した考えを持っているのだろう……。



 しかし、それだけでは、魔王様には届かんぞ」




 ザァーヴの忠告するような声。対してリツィルは床に倒れ込み、潰れる自身の体も構わずに、優しく目を細めていた。





「ボクは、菜那を護るだけだから」





 一拍。

 外気が中に吹き付ける音が、静けさのなかに、やけに響く。



「……久々に楽しんだ礼だ」



 少しずつ空に消える顔が、僅かに歪む。




「貴様が否定しようが、変われやしない。

……我が欠片、刻んでやろう。せいぜい、抗ってみせろ。


──── 異世界の天才よ」




 その言葉を残した相手は、無残に潰れた死体の一つ。

 傍らで怯える青い毛玉がすすり泣く声。

 それはゆっくりと原型を取り戻し、血が滴り、服が生成され、青年の姿となった。



 



《魔力、105000から300000。HP、10000から30000に上昇。

【全理の天稟】、【不老不死】のミックス、【不滅魂(アンツァニマ)】を受理。


新スキル、【不滅魂(アンツァニマ)】を追加》




《……異物を確認………分析開始》




《分析不可。再分析、開始…………》




《分析完了。

…………死神ザァーヴからの譲渡により“権能(アルス)“を初獲得。


新しい権能(アルス)として、【終視演算】》




《……2柱の消滅を確認。称号〈死神殺し初段〉を獲得。


条件を達成した為、“レベル“機能を開放。

大賢者レベル、2、を制定》






 彼が、目を開ける。






「………なんだ、これ」







 そこに散らばるのは、揺るぎない証拠。

 死神は消滅し、視界の端に、崩れていく大鎌が見える。


 誰が何をしたのかは、一目瞭然だった。





「救う、はずだったのに」




 大理石に手をつくとべったりと気持ち悪く残る赤。

 嗚咽。


「…………あったはずなんだ……何かしら。見つけられたはずだ、僕の、この脳なら。みんなで生き残れる方法を探せたはずだ。実行できたはずだろ、”あいつ”なら!!! ……なんで、なんで、僕は生きてるんだ?」



「…………違う、だろ」



 鉄臭い湖と化したその床に触れ、強く自らの頭を打ち付ける。



「違う、違う違う違う違う違う!!!! 僕なら!!! よく考えれば救えたはずだ…………!!」



 違う……? いや、そうでもないか。他人など、どうだっていいんだ。可哀想だが、それだけだ。

 僕はまた…………制御できないあいつを使い、菜那の嫌う暴力で。





 一番簡単な解決方法を。暴力を、選んでしまった。





「ぁ…………」



 少し離れたところで、微かな声が聞こえる。はっとして振り向いた僕は、その少女を目視した。

 長いブロンドの髪で顔は隠れているが、どこか見覚えがあるような。


「…………ぁの! そ、の…………け、けが………」

「っひぃ!? っや、やだ!! こ、来ないで殺さないで!!!」


 気まずさに堪えられず僕が声をかけると、青ざめ怯えた表情で後退る彼女。


 そりゃ、そうか。

 だって僕はいま、この場にいる全員を“殺した“、殺人鬼として認識されていておかしくない。




 僕は彼女を死神から救ったんじゃない。

 彼女以外を────、消したんだ。




 いや、待て。なんで、あの子だけ生きてる?

 他の人間が死神まとめて一掃されるような何かをあいつが使ったはずだ。

 一体どんな方法で。



「あっ……」



 もう一度視線を戻すと彼女は、張り詰めていた糸が切れたみたいに、音もなく崩れ落ちていた。






***






 えーっと。どうして、こうなった?


 さすがに事件現場のような場所で寝泊まりするわけにはいかないので、拠点の奥の方へと足を進めていた。

 中には人ひとりおらず、もぬけの殻。やはりあの誘拐犯達はただ利用されていただけだったみたいだ。

 そうして、几帳面に整理された部屋へと移動。

 きっと殺した死神、ザァーヴが使っていた部屋なのだろう。


 ベッドには先程意識を失った少女を寝かせており、僕は部屋の隅でうずくまっていた。

 そして、1番驚いたのは。


「きゅぅぅうう!! りつぃるー、なにしてるのー? なんでずっと床をみつめてるの? なんでこんなうすぐらーいへやに篭っているのー?」


 ……アッシー様が、喋った。しかも何か、饒舌。








-----------17話情報開示-----------


世界名:〈テオフォレア〉




◯リツィル=シグラッテ


種族:大賢者〈レベル2〉 年齢:150

HP:30000

魔力:300000

知能:3000

体力:1300

適正魔法:火、闇

スキル:

【隠蔽】

【転生者】

【簡易浮遊】

【暗神の加護】

【超速学習】

【通訳】

【人間逸脱】

【腐縁】

【超反応】

【原悪】

【超演技】

【物理魔法干渉無効】

【空間探知】

【魂原干渉】

【身体強化・極】

【肉体変化】

【全理の嘲笑】

+【不滅魂(アンツァニマ)


権能(アルス)

+【終視演算】


ギフト:【不老不死】【全能の天稟】


称号:〈転生者〉〈頭脳明晰〉〈シスコン〉〈一匹狼〉〈神の使徒〉〈世界を渡る者〉〈二重人格〉〈死神殺し初段〉



◯ネア=ルンダ=レイノルズ

 王子。次期ルンダ王国の国王と呼ばれる。

 しかしその年齢は10歳にも満たない。


◯ロージュス

 死神の頂点である十三忌神(サーティーンリーパー)の一柱。

 暗神アストラルに直接創られた死神。


Xでの企画に参加して頂いた方々、ありがとうございました。少しずつ回っていきますので、長い目でお待ちください。


感想、評価ブクマ励みになります( *´﹀`* )

どうか末長くお楽しみください。

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