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プロローグ

 



 僕は天才だと思う。

 少なくとも、そう呼ばれる程度には。




 成績は常にトップ、運動も人並み以上で、私立育ちの17歳。

 両親はイギリスに渡航していて、中学生の妹と2人、気ままにアパート生活をしている──。






 ということで、今、下校中。


 終礼が終わり、いつものようにそそくさと教室を出ると、ざわめきが起こる。



「人と関わらないとか、クールだよねぇ」

「そんなところが魅力でもあるよね〜」



 後ろから足音が聞こえてくる。振り返れば今日も5人ぐらいの女子生徒がなぜか律儀に列になって歩いていた。



 まぁ簡単にいうとめっちゃモテてる。



 しかし、そんな僕にも欠点はある。


 絶望的なほどの()()()()()()()



 彼女たちには悪いけど、クールにしようとしてるわけじゃない。喋れないだけ。



 いやあんなに癒される妹がいる上で彼女なんて望まない。別にほしくないわけじゃない。付き纏われるのとか嫌いだし、やっぱ1人の時間はほしい。




 家に着くまでにはなんとか撒いて、僕の家に帰る。




「おかえりぃ、(りつ)お兄ちゃん!!」

「ただいまぁ、菜那(なな)




 僕の妹の名前は菜那。ソファに寝転んでテレビでアニメを見ているみたいだ。でも僕の食事はきちんと作ってくれてるし、充分満たされてる。



「あー!! ごめん、お兄ちゃん、頼まれてたアイス買ってないや! ついでに私のお菓子も買ってきといてくれない??」



 僕が一緒にアニメを見ていると突然思い出したように菜那が叫んだ。いつも家事とかを手伝ってもらってるし、買い物くらい僕がいかなきゃな。



「わかった〜」



 とりあえず返事をして、よいしょと立ち上がる。



「今度私もお菓子買ってあげるから〜!」


「はいはい」



 エアコンもろくに効かず、こんなに蒸し暑い部屋の中、長く待たせるわけにはいかないだろう。そう思い、走って玄関を出た。




 飛び出した先は、道路だった。




「お兄ちゃん!!! 車!!!」




 玄関まで出てきていた菜那の叫び声が聞こえると共に、爆音のクラクションが耳を裂く。






「あ」






 視界が暗転する。




「申し訳ありません、涼風律(すずかぜりつ)さん。

 あなたは手違いで、お亡くなりになりました」




 ──そんな声が聞こえた。





 僕は天才だ。たぶん、誰がどう見ても。


 でも、僕は、普通に生きたかった。




 ただ、それだけで良かったんだ。





 ***




「目が覚めましたか?」


「うわっ」



 突然の声に驚き、飛び上がる。


 辺りは白く、神秘的で美しい。

 まさに海外の宮殿のような場所。


 で、あってほしかったんだけど。現実はそうではないらしい。辺りは薄暗くて、なんか埃っぽい。蛍光灯の灯りが点滅している。というかこの感じは。



「尋問……?」



 刑事ドラマによく出てきそうな個室。


 壁はコンクリートようなもので出来ていて、少し高い場所に鉄格子がある。 僕が座っているのはパイプ椅子。 しかし、目の前に座っているのは、白い羽を生やした、いかにも神だった。



「すいません、ほんっと手違いで。えーと、涼風律さんはどんな感じの世界がご希望?」



 いかにも神、じゃない。美しい白い羽。

 だけど、想像してたのとは違う。



「あの、男……ですよね?」



 恐る恐る訊く。違ったらとんでもなく失礼なことを訊いていると自分でもわかってる。



「はい、女神じゃなくてすいませんね。こっちも人手不足なんで」


「えっ、こちらこそなんかすみません」



 やっぱ女神じゃないのか。そりゃそうだ。僕の目の前にいるのは、神秘的な要素があるっちゃあるといえる野暮ったいイケメンお兄さん。日本のどっかでニートしてても多分気づかない自信がある。



「というかそこまで頭回るんだ」


「え?」


「ほら、初めて死んだ人間って、もっと混乱するでしょ。俺が死んでるわけない!とか」


「あー。なんか、死んだなって思いましたね」



 そのまま感想を言う。死んだ時って実感湧かないと思っていたけど、実際死んでみると適応が早い。すんなり受け入れてしまってた。



「そなの。で本題だけど」


「あ、はい」



 たぶんこの人、同類だ。人と話すのにそこまで慣れてないというか、興味ないのだろう。



「いやー、ミスっちゃって。君、車道に飛び出すタイミング良すぎて。完璧すぎて? 神の手帳にも書かれてなくて」


「まじですか」



 神も手違いとかあるよな。人間に崇められてるだけで、神は神だろうし、別に全員が全知全能なわけじゃないはずだ。



「で、これ君は特例なんだけど、転生先の世界を選べるようにしたんですよね……いま空いてる部屋が、こんな感じ」



 ブィィイン、とウィンドウが宙に浮かぶ。



 初めて見た非現実的な現象で、かっこいい。だけど、言い方がホテルの空室みたいなのは少し気になった。うん、どれどれ。


 僕はじっくりと画面を眺めた。


 画面に映し出された世界は3つ。どれもなかなか個性のありそうな世界だ。



「左から順番に、遊牧と農業の世界。のんびり平和にスローライフしたい人向けね、コレ」



 待って待って。異世界ってそういうのじゃなくない?僕はとてつもなく疑問に思う。



「真ん中が、暗黒と闇の世界。これちょうど君ぐらいの年頃の日本人に人気ですよ」



 知らんがな。厨二病が多いのは認めるよ。



「右のが、魔法と剣の世界。ど定番ですね。

 全部名前の通りの世界だからちゃちゃっと決めてほしいんだけど、どれがいい?」


「魔法と剣の世界がいいです」



 やっぱり異世界といったら魔法。というか他の2つに比べて絶対にわかりやすくて暮らしやすい世界だと思う。僕は即答した。



「えそっち?? 厨二病じゃなくて??」



 驚いたように神様が言う。



「えぇ、と、はい」


「決まったら変えられないよ?左手に包帯巻いて封印とかしても白い目で見られるだけですよ?」


「まあ、大丈夫ですよ」



 どれだけ僕を厨二病にしたいんだろうか。僕は別にジャッジメント・なんとか・サンダー!とかやりたいわけじゃないから、なんの問題もない────


 はずだ。だよな?



「あそうなの。じゃあステータスの説明。ステータスの基本は、その人間自身の魂に潜在する能力によって大体決まる感じですね」


「魔法と剣の世界なら、基本的に、HPと魔力、知能、体力、適正魔法、あとスキル、ギフトが表示されるはずです。あ、ギフトはさすがに着いてからのお楽しみだから。それは、こっちで付けときます」



「ありがとう、ございます?」



「実際行ってみて、“ステータス”って言えばステータス見れるはずだからやってみて。あと言うことは……そうですね、ちょっと手、出して」



 言われた通り、手を前に出した。


 すると神様は僕の右の手の甲に人差し指を向ける。手の甲がじんわりと温かくなり、模様が浮かび上がって輝いた。しばらくするとその光は収束していき、何事も無かったように消え去る。



「今のは……?」


「聖なる紋、聖紋って言ってね。

加護みたいなものです。俺、君の担当になったから。困ったことあったらそれで俺と話せるってことね。

 いつでも呼んで」



 なんかこの人、意外と頼りになりそう!?

最初ニートっぽいとか思って申し訳ないな。



「あの、あなた様の名前は…………?」


「俺は男神アストラル。アスでいいですよ。

 じゃ早速だけど心の準備とか、よさそうです?」


「あ、大丈夫、です」



 体が明るい光に包まれ、軽くなる。だんだんと辺りが白く霞んでいく。少し怖いけど、僕の気持ちは昂っていた。



 そんな中で、アス様の気怠げな声。



「では、無事をお祈りしております。ご武運を?

 忘れちゃった。ま、いってらっしゃーい」





 僕は、齢17歳にして異世界転生を果たす。




ブクマ感想くださったら泣いて喜びます。


「最強少女の魔法奇譚」という連載もしているのでぜひ読んでみてください☆


並行連載で、これからどうぞよろしくお願いします。


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