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バイエルンの薔薇 オーストリア皇后Ⅱ

ミュンヘンを出てウイーンに到着したエリーザベトは度重なる祝典に動揺と疲れが目立ち始まる。

待ち受けるものは?



美しく、厳かで清純、透き通る様な白い肌は青白いと思った。


赤く塗られた唇を落すとおそらく紫色になっているだろうと思った。


青ざめていたろう私の両側にはママと義母が付き添っていたわ。


もう19時辺りは暗い。


王宮に隣接するアウグスティーナ教会はこじんまりしているが、両側に一万語千本の蝋燭の明かりは荘厳な雰囲気をかもしだしていたよう。


挿絵(By みてみん)


両側に聖職者50人、多くの招待客が臨席している。


私と皇帝陛下、義父大公、そして親族の皇族達が続く。


そして式が大司教により執り行われた。


長い説教。


結婚の誓い。


ようやく終わると鐘の音が響き渡った。


私はこの時の事はほとんど覚えていない。


ただただ緊張して怖くて恐れおののいていた。


新婦が教会に入場した瞬間、居並ぶ者たちの間に息を呑むような緊張が走った。

新婦は、長裾のドレス、そしてきらびやかな金銀で編まれギンバイカの装飾を施されたモアレ・アンティーク調のマントを身にまとっていた。

その頭上には、姑のゾフィー大公妃が自身の結婚式の日に被った王冠が光り輝いていた。

新婦の肩の上にはベールがなびき、胸は鮮やかなバラの花束で美しく飾られていた


礼砲と祝賀のどよめき全てが重く私に落ちてくる。


当時の新聞は結婚式の様子を伝えたわ。


震えながらフランツにつかまり、またも祝福を祝う初対面の貴人にフランツの紹介を受けながら挨拶をする。


今夜はそれだけではなかった。


馬車に乗り込んでウイーン中の市民に向けにパレードが行われるという。


20時ようやく王宮に戻れたけど、2人きりにはなれない。


ママが寝室に来て、寝間着に着替え二人で私をベットに横に寝かせて布団をかけた。


そして義母がフランツを呼びに行った。


義母はこう思ったそうよ。


「巣の中で怖がっている小鳥のようだった」と。


その通りだった。


あまりの緊張と疲れで夜の営みに臨むには疲れすぎていた。


そのまま眠りについてしまったわね。


フランツはまだ幼いと許してくれて、2日間は抱きしめて眠ったわ。


ようやく全ての儀式が終わったの。


いえこれから始まる。


想像した以上の形式ぶった宮廷生活が…。 



*******************************************



結婚式が、披露宴が終わり王宮で迎える初めての朝。


オーストリアの宮廷では朝食は必ず家族で揃うのが規則だという。


大公夫妻、夫、私、義弟達。


特に義母の刺すような視線は私を委縮させた。


席についてもその視線はやまない。


まだ幼いなんの知識も助言のない私にはよくわからない。


フランツは義母と私達の昨夜の話をしている。


でも夜の行ないの事を話しているのだとなんとなくわかる。


何だか会話に入っていけず、ただただ下を向いて食べ物を口に入れた。 



味はしない。


ただただここから逃げ出したかったわ。


食事を終えるとフランツはとても忙しくて私も初めての宮廷生活は不安で萎縮して呼吸すら辛かった。


もうママも兄弟姉妹もいない。 


そして夫婦の夜の務め。


それに貴方達の時代では情報が沢山あって基礎的な事はわかっても。


私達の頃は良家の子女の性教育はまったくといっていいほどなかった。


つまり「殿方ののぞみ通りに。殿方に従えばいいです。」しか言われなかった。


なので夫婦のちぎりは三日目の夜だった。


あまりに痛くて、でも針のような視線を義母や親戚にさらされて出来ないなんて駄目よね。


恥ずかしかった。


でも耐えたわ。 


フランツも額にキスして、本当の夫婦になれたと喜んでいる。 


私の傷みなんか大した事ないわと思った。 


でもその次の朝朝食会で皆といただくなんて恥ずかしくていやなの。


「朝食は自分の部屋でしたい…」


フランツは一瞬戸惑ったも表情をしたけど、額にキスして許可してくれた。


それは一瞬だった。


すぐに義母の宮廷に規則を持ってきて「食堂に来るように」フランツが言いに来たわ。


「我慢しておくれ。」


本当に恥ずかしい。


いやいやフランツを愛しているから!


いう通りにしただけ。


でも本当は嫌!



義母はこの時からこの嫁には帝国の重責は耐えられない。


だから教育しないとと確信したみたいだった。 


彼女はそうなるべきだという意思を決して曲げなかった。




それでも当初は王宮の生活まだリラックス出来ない訳でもなかったわね。


まだ兄弟姉妹が王宮にいてくれたから。


皆明るく私に冗談を言って勇気つけてくれた。


特にヘレーネとは英語で話していつも傍にいてくれる。


姉のお見合い相手と私が結婚するの。


少しも私を非難しないでそれどころかとても心配して優しくしてくれた。


愛すべき姉だった。



しばらくの間広大なオーストリア帝国領の各地方の、代表貴族達の祝辞を受けないといけない。


南部、上オーストリア・シュタイアー・ケルテン・ブコヴィナそして心の故郷ハンガリーの代表団もやってきた。


そしてハンガリー代表団との祝辞の場では初めてハンガリー伝統衣装を身に纏った。



「神の祝福がありますように。やがてハンガリーを、貴方方の王妃と共に訪れましょう。

どうか王妃を歓迎してください」


フランツは代表団に告げ、ハンガリー衣装を着た若々しい王妃に初めて出会った。



義母もあまりの美しさに、その日の日記に記述していたようだったわ。



そして熱気の宮廷舞踏会が、尚一層私を疲れさせて緊張あせる。


この時この結婚の祝賀にヨハン・シュトラウスが指揮をとり、初めて


「エリザベートワルツ」が披露されたわね。


私はゆっくり聞いている余裕はなかったけれど


後の「ミルテの花冠」と題されたワルツ曲として現在もオーストリアでは婚礼のテーマ曲として聞くことが出来るみたいね。


ダンスは私とケンブリッジ公爵(イギリス王室からの来賓)、皇帝とヘレーネ公妃、ゾフィーとパパが踊った。


この祝賀で唯一の楽しい行事はプラター公園での市民の為に祝典だった。


綺麗な電飾、垂れ幕にサーカス団の見世物は面白かった。



こうしてなんとか世紀の祝宴はようやく終わった。


今はもう思い出したくない思い出。


そして皆とお別れ。


寂しい。


悲しい。


辛い。


全ての私の輝かしい少女時代が終わった。


全て……。


 「彼女の容姿と体形の若々しい優美さは、未来の

 オーストリア皇妃をめぐりここ数カ月来リトグラ

 フやスケッチ、彫塑から得られていたイメージを

 はるかに超越するものであるという声を広く耳に

 する」


「感じのいい愛想のよさと愛らしい外見に表れる慈

 悲深い魅力がある」


ととても好印象で記事は書かれたいたよう。


これからのウイーンでの生活が始まる。

ウイーンに入ったエリーザベトを待ち受けていたものそれはオーストリア宮廷という巨大な権威そのものだった。



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