誰かの為に
俺は、校庭で受けた傷を軽減させるべく、保健室に立ち入り、包帯を巻いていた…。
(さぁ、行くか…)
だが、相手は武器を持っている…。正面から飛び込むのは自殺行為だろう…。
(それに、攻撃を受けたところが痛み出してくる…。これが、あいつの異能の力か…。だとすると、俺の異能はどんな力が…?)
俺は、わずかに光っている自分の手を見た…。
どのくらい、眠っていたのだろう。自分の手に着けている腕時計を見ようとしたが…、手を縛られていた-。むしろ、体ごと縛られていた…。
(ここは、何処?)
目に見えているのは、机、椅子、黒板、屋上の柵、そして、貯水タンク…その景色が窓越しに見えていた…。
(………!)
宙に吊されていたのだ。人間誰しも、学校の屋上から吊されたら恐怖を感じるものである…。
(こんな事をあのこ一人でできるわけがない…。絶対に、手伝った人物がいるはずだ…。)
だが、何故にわたしはここにいるんだろう…。誘拐ならこんな所に、吊したりはしないはずだ…。
校庭の方を見た…。誰もいない…が、校庭の地面が不自然な跡がある…。
(いやな予感がする…)
その時、携帯がポケットから落ちていった…。
(あ…!)
携帯は玄関の屋根に落ちていき…嫌な音を立てて壊れた…。
とりあえず、各教室を回ってみるしか方法は今はない…。
教室を回っていくうちに3のCの教室であるものに気付いた…。
(ココロの携帯!?)
俺は、携帯を拾いに窓から玄関の屋根にでた…。そして、上を見ると暗くてよくわからないが人影が見える…。
(…!ココロか!!)
俺は、急いで屋上に駆け上った…。
その途中、ある違和感を感じた…。
(おかしい…、相手は遠距離武器を持っている…。なぜ、威嚇だけでもしないんだ?)
疑問を抱きながら、階段を上っていった…。
屋上に着くまで、妨害らしきものはなかった。
(まぁ、いい…。とっとと、ココロを助ける!)
音を立てながら屋上のドアを開けると、ココロと目があった…。
「啓一君!?」
「ココロ!捜したぞ、お前…。今、引き上げてやるからな…。」
そう言って、ロープを引き上げ始めたが…
「危ない!後ろ!」
その声に反応し、横に飛んだが…、間違いだった…。例の奴が撃った異能がロープを結んでいるところに当たったのだ…。
すぐさま、ロープを掴んだ…。(これを離せば、ココロが死ぬ!死んでも離すか!!)
「おい、さっさと殺せ…」
その時、聞いたことのない男の声が聞こえた…。
それを合図に、俺にどんどん撃ってくる…
(やっぱ、いてぇな…)
「啓一君!」
その時、ココロが叫んだ…
「もう、いいよ!手を離してよ!啓一君が死んじゃうよ!!」
「ふん、誰が離すか…バーカ」
だが、さすがにキツい…。
「よし、最後に特大のやつをくれてやれ…」
命令している奴を見て、撃とうとしている女の子を見る…彼女は、
泣いていた…
「啓一君!どうして、離してくれないの…」
突然、ココロがそう聞いてきた…。
「ココロが死んだら、悲しむ親とかがいるだろ!!死んで悲しまない奴がいるかよ!!」
「わたしだって、啓一君が死んだら悲しいよ!…ゴメンね…私のせいで…」
「ちげぇよ、悪いのは俺だ…」その時、
「撃てぇ!」
特大の異能が放たれた…。
(やべぇ、死んだな…)
せめて、ココロを引き上げとかねぇと…
特大の異能が啓一君に放たれた…。次の瞬間、わたしは空を飛んだ…。
また、わたしのせいで人が死ぬ-
後は、運にかけるしかない…
そう、思ったとき…
ココロに異変が生じた…
(まさか、異能!?)
ココロが足をあげ、カカトから落とした…
(カカト落とし!?)
そして、カカト落としの振動で俺が立っていた足場は崩れた-
その時に、女の子が撃った異能に触れた-
そして、最後に-
「わぁお!剛の異能か!!」
男がそう叫ぶのが聞こえた…
わたしは、何がなんだか分からなかった…
ただ、夢中で道場で習ったカカト落としをやったら、屋上はヒビが割れた…。
だが、啓一君は落ちていった…。
わたしを助けに来たのに、わたしのせいで啓一君は死んだ…
「おい、俺らの仲間にならねぇか?」
男は突然、わたしにそう言った…