第三十八話 涙
第六天空島に帰ってきた。今回も戦い抜いた。第一天空島の謎は残っているけどとりあえず燐くんに会いに行こう。家の医務室に向かう。医務室に入るとすぐに違和感に気づいた。
「燐くんが...いない...」
軍による指令で燐くんはここにいるのだからやはり第六天空島から去ってしまったのだろうか。けど燐くんは私やみんなを捨てるような人じゃない。一度やり遂げると決めたら必ずやり遂げる人だ。絶対に燐くんは第六天空島に帰ってくる。けど問題はどこに行ったのかだ。戦いに行った?いや、今はどこにも戦闘は発生していない。そして思い出した。第一天空島で聞いた話。「デヴォン」を倒し、そのまま第五天空島まで制圧した剣士。右腕が銀色に光っていたという。
「もしかしてあの剣士って...燐くんのこと?」
そうだとするとおかしい。燐くんはこの前の戦いで右腕を失っている。絶対に戦えないし、右腕があることが分かっているから燐くんではない。いや、違う。燐くんはおそらくどうにかして右腕を得たのだ。燐くんがもともといたチキュウという星ではそれなりに医学も進んでいたという。失った腕を戻す方法もあったのかもしれない。それを使って戦ったのだろうか。とりあえずずっと家にいた子たちは燐くんのことを見ていると思うので話を聞くことにした。
「ねえ、ハク。私がいない間、燐くんを見なかった?」
「うん。みたよ。にわでずっとけんふってた!」
「燐くんに何か変なところはあった?」
「うーん。そうだ!そういえばりんにいのみぎうでがぎんいろになってた!なにかへんだなーっておもったんだよね!」
「そうなんだ!ありがとう。ハク。」
「どういたしまして!」
やっぱりあったのか。右腕を治す方法が。そして第一天空島に行った。ということは今第一天空島でファラムたちと話しているのだろうか。それならばもうすぐ帰ってくるだろう。
「とりあえず、待ちますか!」
燐くんの帰りを待つ。結局しばらく飛行船は第六天空島に来なかった。けどもう夜になりかけていて空が暗くなってきたころ、一艘の飛行船が第六天空島に泊まった。そして中からは見覚えのある顔が出てきた。燐くんだ。やっぱりちゃんと帰ってきた。
「あれ。ヒカリ、ただいま...」
ヒカリの手が飛んできた。自分の頬に当たる。痛い。ヒカリが目に涙を浮かべている。
「燐くんのバカ!燐くんはこの前の戦いで右腕を失ったのにどうしてこんな無茶を...」
「右腕ならもうあるだろ?ほら。」
義手になった右腕を動かす。
「そういう話じゃないよ!バカ!無茶しないでよ!私だって燐くんには死んでほしくないんだから...心配したんだからぁ...」
ヒカリが泣き出す。
「ごめんな?心配かけて。けどこれからはまたずっとヒカリの横にいるからな。」
「本当に...心配したんだから!」
ヒカリが僕に抱きつく。ヒカリが僕の胸の中で泣く。それを見て僕もそっとヒカリを抱きしめる。
三十八話、読んでいただきありがとうございました!
これで第二部は終わりですとはなりません。この部のタイトルは「クラミア星を救いなさい。」ですからね。まだ続きます。これからは少し未来の話、燐たちが少しだけ(本当に少しだけ)大人に近づいた時に移ろうかなと思います。次話もお楽しみに!




