第十七話 この少女を救えましたか?
ヒカリが死んでから三日後、第六天空島そして天空諸島には平穏が訪れていた。これもヒカリが命を張って「祈りの第十七怪物」を殺してくれたおかげだろう。そして僕、燐は若干放心状態になっていた。ヒカリが死んで変わったことといえば、まず僕は中佐になった。どうやら第八天空島、そして第六天空島での戦いの成果が認められたらしい。一応、僕は彼女ら兵人種の管理者だから。そして僕は最近ずっと自室にこもっている。もしかしたら僕もヒカリも道を間違えたのかもしれない。ヒカリは僕のために死ぬことを選んだ。その結果、ヒカリの死は僕を苦しめていた。もしあの時僕が勝っていたとしても、彼女を幸せにすることができる前に死んでしまったかもしれない。そのほうが未練が残ってしまうかもしれない。そんな過去も仮定も全部意味がないというのに。僕たちはきっと選ぶ道を間違えてしまった。ただの推測だけで自分の行為を正当化して。本当にどうしようもないほど僕らはバカだ。どっちのやることも結局僕らを苦しめるだけだ。
「はぁー。」
ため息をつく。すると誰かが扉を開けて突撃してきた。
「うぉ!!おい!ハクとサイか!びっくりしたぁ...」
「りんにい、あそぼ!」
「はいはい、分かりました。それじゃあ庭で遊ぶか!」
「やったー!」
「いこいこ!」
ハクとサイが僕の手を引っ張っていく。ハクとサイは兵人街の家に住む五歳くらいの子だ。とにかくすごい元気。そして庭で全力で遊ぶ。たくさん忘れたいこともあるし。
「こら~!まて~!」
「あはは!待たないよ!」
てか早くない?この二人。僕結構全力で走ってるんだけど。本当に五歳児ですか?
「つっかまーえた!」
「うげ!」
地面に倒された。何?この子達。強すぎでしょ。
「やった~わたしたちのかち~!」
「負けた~」
「もういっかいやろ~」
そういえばファラムにこの前の戦いの資料作りを頼まれていた。ずっと放心状態だったからすっかり忘れていた。
「ちょっと待ってね。一回僕の部屋に用事があるから、そのあと遊ぼ!」
「うん!」
なんて聞き分けのある子たちなんだろう。偉い。偉すぎる。そして管理室に入る。今回の「祈りの第十七怪物」の襲撃の被害をまとめた資料を作らなければならない。一つずつ書き込む。第十三天空島、兵人街の一部、そして兵人種「ヒカリ」。天空諸島にとっても僕にとっても大切なものが失われた。ほかにも多くの命が失われた。自分のやりたいことを諦めていれば、早く決断していれば、その多くの命は救われたかもしれない。彼女が死ぬことは変わりないけれど。せめて生き延びた者として彼女の思いを継ぎ、天空諸島を守る。クラミアやサーシャ、ハク、サイ、他のみんなに生きてもらうために「祈りの第十七怪物」の本体を殺す。呪いを解く。それをヒカリへの恩返しにしたい。そのための計画もあの日からずっと考え続けてきた。「祈りの第十七怪物」のことも調べつくした。勝てるかもしれない。本当に小さな確率だけど。そう考えると勇気が出る。自信が出る。やる気が出る。何年かかるか分からないけどいつか恩返ししてからヒカリの下に向かいたい。
コンコン。
ドアがノックされた。
「どうぞ、入ってください。」
声をかけるとドアが開いた。
「え?」
そこにはここにはいないはずの少女が立っていた。僕がずっと好きだった人が。
「ただいま!」
気持ちが溢れ出しそうだった。けど我慢する。今かけるべき声をかける。色々話すのは後でだ。
「おかえり!ヒカリ!」
第一部完結!
「この銀河を救いなさい。」を読んでいただきありがとうございました!
第二部も書こうと思うのでこれからもよろしくお願いします!




