1話 神様特製島ライフの始まり
異世界の創造神ジェネス様によって生まれ変わった私金山エリもといミノリ・カナエ。
只今無事異世界に転生しました。
目覚めたら、だだっ広い原っぱで寝っ転がっていた。
起き上がって、その辺にあった水たまりを見ると前の姿と変わっていた。
日本人特有の黒髪黒瞳から髪はオレンジブラウンに、瞳はミントグリーンに色が変化している。
顔立ちは前世とは変わっていない。背丈は少し縮んでいるせいかスーツがダボダボだ。
髪に前の世界で小さい頃からお気に入りの木の葉型のヘアアクセが着いてあった。
良かった…これずっと大切にしてた物だから神様、そのままにしてくれたんだ。
ただ…髪と瞳が変わっただけ。
あとなんだか若返っているような…。
たぶん高校生ぐらい?
「…てっきり赤ん坊から人生始まるもんかと思った」
とりあえず私は辺りを見渡すと原っぱの後ろには森、目の前には白い砂浜と青い海が広がっている。
「おぉー海だー!」
思わず私は海の方へ走って行った。
海なんて中々見ないからな。
内陸県出身だし社会人となると仕事以外外出する暇、余裕なんて全くない。
休日?何それ?大人は働く歯車なんだよ。
そんなの当たり前なんだよ。
でも、そんな事は忘れてしまうほど私としては珍しく海を見て大興奮した。
ストッキングを脱ぎ捨て浅い海で足だけ入ってバシャバシャ遊んだり、砂浜で大きな砂の山を作った。
「砂でお城作るの難しいかもなー」
私は砂でドイツにあるおとぎ話のモデルとなったお城を思い浮かべた。
すると砂が勝手に形成し始めて、しばらくすると本物そっくりなジオラマのように小さく細かく再現されたあのお城ができた。
私は驚きのあまりに言葉を失い、ただ呆然とした。
「………っは!どうなってるの……これは!?」
私が困惑していると空から一枚の紙が目の前に落ちてきた。
私はそれを拾い紙に書かれてある内容を読んだ。
日本語とは違う文字で書かれているがちゃんと読める。これはありがたい。
「えー何々……」
『この島は神様特製のミノリだけの島!
この島にいる限りミノリが望む物を頭に思い浮かべたら何でも出てきたり作れるようになるから、君が望むのんびりとした生活ができるから楽しんでね!
追伸
命ある生物は心に思ってても出来ないから
by 創造神ジェネス』
「なるほど…」
つまりあれやこれや欲しい物を頭に思っていたら生物以外何でも出てきたり作れるのか。
とりあえず…これから住む家が必要だな!
場所は…森の中がいいな。
海の近くだと危ないし。海からに 上がって、森の中を少し探索していたら、広い場所を見つけられた。
これなら創造しやすいだろう。
その辺に落ちてあった木の棒で家の外見・各部屋の広さ・家具の置場所といった部屋の構図を地面に書いて…よし、準備万端!
あとは創造するだけだ!
頭に想像を浮かべたら森に生えている木々がどんどん抜かれ、積み重ねっていき、勝手に家が建てられていく。
しばらくすると幼い頃少し夢に見てた二階つきの普通の大きさ、そこそこ広い部屋がある絵本に出てくるような可愛らしいログハウスができた!
木が抜かれたおかげか、海までの道が完成された。
これなら心置きなく海へ遊びに行ける!
「おぉー本当にできたー!
中はどうなっているんだろう?」
中に入るとちゃんと構図通りの部屋になっていた。
でも一人暮らしにするにはかなり広すぎたかな?
まぁ、いいか!
玄関と廊下、リビングにキッチン、洗面所にトイレとお風呂にダイニング、数ヶ所に空き部屋、しかもちゃんとベランダまである。
家具もキチンとあるが、電化製品はなんだか地球の物とは少し違う気がする…。
するとベランダの窓から紙が入ってきた。また私の目の前に落ちた。
私はそれを拾い紙が書かれてある内容を詠む。
『転生する前に言ってたけど、この世界は魔法に満ちた世界。
地球みたいな科学文化ではないんだ。
だから地球の電化製品みたいな物はこの世界ではそれらは電気ではなく魔法石の力によって作動できるようになっているんだよ。
操作方法は地球の物とはそう変わりないから安心して使っても大丈夫!』
「へぇー魔法石ねー」
私は冷蔵庫を開け、中をよく見ると奥に冷気を放つ透明な石があった。
なんか不思議な感じする…これが魔法石なのか。
この石のおかげで動いているなんて…かなり便利だし、もしかしたらエコなのかもしれないな。
テレビはさすがにないみたいだ。まぁ別にいいか。
あって困る物ではないし、この世界のニュースとか興味とかないな。
コンロにトイレ、洗濯機、水道、各部屋の電気などキチンとしてるし、最低限の家具もバッチリあるな。
私は二階に上り、部屋に入る。
部屋の中にはちゃんとベッド一式にクローゼット、姿見全身鏡とカーテンといった物がちゃんとあった。
ふわふわの布団に私は思わずベッドに飛び込んだ。
「おぉー久々のベッドだー!
お日さまのような温もりと香りにふわふわな感じ…いい寝心地そうだな」
私は思わずベッドの上で子供みたいにはしゃいだ。
そしてはしゃぎ終えるとふと前の世界を思い出した。
母が知らない若い男性と一緒に私と父を置いて出ていった。
それから父は荒れた。
毎日酒三昧で機嫌を損ねるとすぐ物に八つ当たりしたり、私をよく怒鳴ったし、殴られたり蹴られたな。
近所から変な噂を立てられ、何故か私は変わり者だと思われていたのか、気味悪がっていたのか、誰にも近づかず、小学校から高校までずっと一人だったな。
高校卒業して大学に行くお金がなかったため、電車一本で行けるそこそこの中小企業に就職した。
これで生活が安定するかと思ったが、現実は厳しかった。
多すぎる仕事の量、時間外の仕事、少ない給料、同期・先輩からの仕事の頼みと冷たい目線と厳しい小言。
上司からの記憶にない仕事による説教とボディタッチ……説教は別に父の説教に慣れてるからいいけど、ボディタッチの方は気持ち悪かったな。
一人暮らしする余裕なんてないし、何より父を一人にしたら大変だろうしから家で家事や父の世話をして、その後に仕事との繰り返しだったなぁ。
まぁ、私が悪いんだよな。
可愛げない子供だったから母は家を出ていってしまったし、友達なんてできなかったし、父から散々怒られる始末。要領悪かったから上司や周りの仕事仲間から無能と言われ続けていた。
……何でだろう、何故か目から涙が出てきた。
何で泣いているんだろう?
何もかも私が悪かったのにどうして涙流すんだろ?
いつの間にか私はふわふわの布団の上で眠ってしまった………涙を流しながら。
「スゥー…スゥー………んっ…ふあぁ~。
なんか久々にゆっくり寝たような…」
するとお腹からぐぅ~っと鳴った。
窓の外を見ると空が薄いオレンジ色となっている。
「あ……なんかお腹すいてきたな……キッチンで夕飯でも作るか」
ベッドから降り、一階のキッチンに行き、料理の仕度に取りかかる。
本当は料理を頭に思い浮かべたらすぐに出てくるかもしれないし、楽なのはわかってる。
けど、私は料理するのは嫌いじゃない、むしろ好きだから一から料理する事にした。
とりあえず試しに料理の材料を頭に思い浮かべた。
玉葱、人参、じゃが芋、鳥もも肉。そして某有名メーカーの高級シチューの素とだしの素、塩コショウ、コンソメの素に牛乳、サラダ油まで出てきた。
「これは便利だな力だなー」
異世界でも材料を頭に思い浮かべた物…前の世界の材料が出てくるなんて、これは全世界の主婦が喜ぶな!
興奮するのはこれくらいにして、早速異世界でシチュー作りに取りかかるか!