追う者、追われる者
2460年
誰もが固唾をのんで続報を待っていた。
ハテノ島アカドマリ港に一隻の船がたどり着いた。そこから数人が埠頭に足を踏み入れ、歩きだしてきた。誰もが、血の気の引いた青銅のような顔色。
「向こうはどうなった?」
群衆の中から一人の男が周囲を押しのけて抜け出た。
「もうだめだ。アキタ市街地はすでに奴らの支配下に置かれた」
「他の奴らは?」
相手は、黙っていた。
「あれは……あれは……」 しばらくしてから、彼は何かを話し出そうとした。だが結局その後が続かない。
急に避難民の一人が嘔吐を始めた。
誰もが顔を見合わせ、一体どんな凄惨な状況が向こうで展開されているかを想像し、ひたすら悪寒を覚えた。
彼の顔を知っている人間が進み出て、尋ねた。
「おい、大丈夫かカイソク?」
しばらく間を置いて、避難民の顔がだんだん緊張で固まって行った。
気を取り直したというよりは、目の前の群衆に対して、恐怖の感情を残したままにしてはおけないという羞恥から、そんな顔になったらしかった。
「……大丈夫だ。俺は、もう正気に戻ってる」
テラモト・カイソクは、先ほどに比べるとなお幾分かショックの跡を残しているが、もう少し理性を取り戻した表情になっている。
それは実際に、彼が勇気を出したからではなかった。今、彼は目の前の人間から真実を話すように求められているのだ。
そして、そのことを今すぐにも国王陛下の耳に入れなければならない。カイソクは、重い気分ながらも、ようやく話を始めた。
「炎だ。炎が見えた。それから、血だ」
その言葉で、一同の表情が蒼白になった。この言葉が意味するものは、明白だった。
「もう我々は、あの場所に二度と戻ることはない。奴らは、俺たちから完全にあの土地を奪ったんだ」
カイソクは、まだ彼らがひらめかせた豺狼の瞳を視界に焼き付けていた。
それはまだ、一日も経っていない頃の話だ。
敵は多くの土地を奪い、すでに大都市にまで迫っていた。彼らに付き従う者は多く、その誰もが敵意に燃えていた。
城内には防衛隊と住民が立てこもり、侵略者からの圧力を凌ぐために肩を寄せ合いながら、何とか一日でも持ちこたえようと生活を切り詰めながら城壁の向こうに目を光らせていた。
一体なぜ、このような状況になってしまったのだろうか。かつて我々は、敵よりはるかに優れていたはずだというのに。
事実その通りだった。一時フクイ人の居住地はホカイドにすら広がっていたのだ。フクイ人は北へ北へと勢力を伸ばし、あらゆる所に自分たちの都市を築いた。
それが、ホカイド人に反乱を起こされ、アオモリ人にも集落を焼き討ちされ、もはやアキタ市とその周辺を支配するに過ぎなくなり、そのアキタ市さえ手放すに至った。
敵が強くなり過ぎたからか。それとも、我々が開拓にかける情熱を捨てたからか。
それを考える暇もなかった。もう、城壁の内部からも、入植者に対して敵意を燃やす原住民は少なくなかったからである。そして彼らを押さえつける力さえ、失いつつあった。
北から、反乱者は攻め寄せて来た。
敵は十年ほど前にアオモリ地方を制圧して、そこからフクイ人を追い出した。そして数年前に、敵はさらに南下を始めた。
ずっとフクイ人は雪山の向こうから来るあの敵を、ひたすら未開で野蛮な連中だとばかり思っていた。彼らが束になってかかってこようと、文明的な民族である我々を打ち破れるはずがないと疑わなかった。事実、百年以上そうだったからだ。
フクイ人は何世代もの間この地域を開拓し、豊かにしてきたのだ。崩壊した橋を再建し、古代末期の廃ビルを解体して建築資材として再活用することで都市を建設した。
それを彼らは奪おうとしている。カイソクたちにとって、生活をおびやかす原住民たちは野蛮の手先であった。
そしてこのトーホクにおけるフクイ人の中心地であるアキタ市には二千人近いフクイ人が暮らしていた。そのほとんどが、父母や祖父母の世代にこの地に移り住み、故郷のようにこの地を愛していたのだ。
その中には、ずっとそれ以前から住むアキタ人も大勢いた。今までなら、フクイ人は彼らを導き、フクイ風の言語と生活習俗を身につけさせるだけで事足りた。
だが、もはや戦時である。
街ではアキタ人を抑圧するのに必死だった。彼らの中の誰がフクイ人に反抗するか分からないからだ。少しでも怪しい動きを見せた者は処罰された。
奴らの一人でも、外にいる敵軍に内通したらとんでもないことになる。
そして、その予感は的中した。
カイソクにとって、それはあまりに突然のことだった。彼は慌ただしい中にも仕事を終えて帰路につこうとした時、轟音が路地の向こうから響き渡るのを聞いた。
もう日が暮れようとしているのに、これほど騒々しい音が響くことに激しい動揺を覚えた。
だがそれが破局の瞬間だったのだ。
城門が破壊され、敵兵がなだれ込んだ時、城内のアキタ人は豹変した。
「フクイ人を殺せ!」「130年の恨みを晴らせ!!」
三日三晩狂乱が街を巻き込んだ。城内のアキタ人はもはやフクイ人に仕える必要がなくなり、それまで一級市民として暮らしてきたフクイ人に牙をむいた。敵軍と協力して、カイソクたちを襲い始めた。
フクイ人が住んでいた家には火がつけられ、フクイ王国の繁栄のためにささげられた石碑や神殿は荒らされた。
広場の中心にそびえ立つ、フクイ王の立像さえ引き倒された。『彼ら』がそこにいたという記憶を、この地から全て抹消するために。
街が火に包まれるのを振り向きざまに目にしながら、カイソクはひたすら逃げ続けた。敵と内通者が、この都市の所有者を一人として生かすつもりがないことをその目で目撃したからだ。
カイソクは決死の覚悟で年を離れ、海辺にたどりつくと、ちょうど居合わせた数十人と共に船に乗り込んだ。そして、ハテノ島を目指して進み続けた。
カイソクはただただ、見た限りのことを群衆に話した。
「住民は……どうなった」
「死んだよ」
カイソクはその光景を当然明白に語る気にはなれなかった。
「アオモリ人の主導の元に、俺たちは残忍な欲望の餌食になった。奴らは鎌や鋤を片手にフクイ人を撲殺したんだ。子供ですら容赦されなかったよ。俺の友人も犠牲になった。まだ彼らの悲鳴が耳元にこびりついたままだ」
アキタ人の蛮行に、彼らはただただ恐怖と憎悪を募らせるばかりだった。
アキタ人にとっては、むしろその仕打ちは正当なものだ。
当然ながら、この地に不当に侵入し、圧政を敷いてきた者たちに対する容赦などあるはずがなかった。彼らこそ、アキタに最も存在してはいけないからだ。
彼らは土地をあまりに長い間不法に占領し続けた。フクイ人が優れていることを証明するためにどれだけの犠牲者が出たか分からなかった。
だがもはや彼らがこれ以上苦しむ必要もない。
血と煙の臭いがうずまく空の元を、ハルノ・サイオシはさまよった。
入植者を載せた船が出港してしまったため、彼女は原住民からひたすら逃げることしかできなかった。
すでに何人のフクイ人が殺されたか分からない。
仲間ともはぐれてしまった。ただ、この街が陥落する少し前から聞こえて来た会話で、何が起きているのかはおぼろげに分かる。
どうやら虐殺を指導しているのはアオモリ人の部族長であるようだ。
アキタ人はもう長い間この地に住み、定着したフクイ人を追い出すためにその男を招き寄せたらしい。もう何回も、離反したアキタ人が彼のことを『解放者』と呼び、称える声を城壁の向こうから聞いたのだ。アオモリ人は統制のとれた軍隊を率いて、邪魔なフクイ軍を駆逐した後、アキタ市を包囲した。
それから、駐屯兵は何か月も彼らと対峙した。
だが、次第に敵の数は増え、この都市を包囲する敵陣の層は次第に厚くなっていった。
住民を守る兵士さえ、その職務を放棄して逃げ出したのだ。
城門がついに破られた時、惨劇は始まった。
市街地にいたアキタ人たちは、外からやって来た人間たちと呼応してフクイ人に暴力を振るい始めた。
サイオシたちは、彼らがそのような蛮行を平気で行えるとは微塵も思わなかった。
彼女は医師なのだ。フクイ人であろうとアキタ人であろうと、彼女にとっては関係なかった。病気や怪我を抱えた人間を、必死に治療する日々を送っていた。この戦争の真っ只中であっても変わらずに。
同胞のフクイ人が、引きずり出されたのを怯えながらのぞき見ることしかできなかった。
サイオシは小屋に隠れていた。もう古びて、解体予定だったはずのうらぶれた小屋に。
外では、フクイ人を何としてでも消し去ろうとする暴徒の怒声が絶えない。
誰かが戸口に立っているのを見た時は、もう生きた心地がしなかった。殺されるかと思った。
「ハルノさんか?」 見知った声が聞こえてくる。
サイオシはもはやほとんど死を覚悟して、戸口の方にちらっと眼をやった。一人の、背の高い若者が柱に手をついて立っていた。
血のついた棍棒を持っている。
「俺はフクイ人を憎んでいるが……あんたが善人であることは知っている」
彼の手はわなわな震えていた。相反する二つの行動を取る可能性のせいで、彼の精神は今にどう弾けてしまうか分からなかった。
「お前まで巻き込みたくない。だから、逃げろ!」
男はそう言って出て行った。
しばらく彼女は呆然としていた。何もかもが現実味を失って見えた。
彼女は駆けた。訳も分からず駆け続けた。
背後から、アキタ人の冷たい、蔑む視線。だが、何もしてこない。ただ、『うせろ』と言われているような気がした。
(ああ、何だ、そういうことか)
サイオシは、悟った。そして、納得した。
(私たちはずっと知らずの来たんだ。奪われた憎しみを。支配され続けた屈辱を)
殺す者は、殺される。殺される者は、殺す。当然の理屈だ。自分たちが悪かった。
もうサイオシはアキタ人への戸惑いも恨みも捨てていた。
裏口から逃げ、闇夜にまぎれて消えていった。
カイソクの話が周囲の人間に広がった直後、ハテノ島全体が、アキタ人への憎悪に満ちていた。残忍な凶行に踏み切った奴らに対して何の報復もしないでいられようか。
じきに本土のフクイ人も彼らの所業を知ることになるだろう。だが、フクイには失われた領土を回復しようとする国力も意欲ももはやない。全ては、どうせ過去の苦い記憶になるだけ。
カイソクは、まだ数日前のことが重くのしかかったままだった。
もはや住み慣れた場所に戻る希望は捨てていた。それよりもむしろ、本土に行って生計を立てるすべを考えることで頭が一杯だった。幸いにも、ツルガに親戚がいる。西に広がっている諸都市との間で商売をしてそれなりに設けており、当分の間食うことには困らないはずだ。
カイソクたちは、避難民用に用意された宿舎の中にいた。この島の議事堂の隣にある建物だ。建設されてからもう長い間補修されておらず、お世辞にも居心地のいい場所とは言えない。
部屋も廊下もみな薄暗かった。
カイソクは一室に座りこみ、ひたすら眠気が来るのを待っていた。 隣にはシシマロという名前の知人がいた。彼もまた、かつて向こうの土地から追放された者だった。カイソクよりもっと北の、小さな集落から。
なぜ、追われねばならないのか。なぜ、恨まれねばならないのか。あれだけの苦労をして敵から土地を守り、フクイ人の主権を守るために命を捧げて来たというのに。
寝付けないままこの悩みを秘めて来た彼は、とうとうそれを口にせずにはいられなかった。
「国王陛下に直訴すべきではないか?」
カイソクは、さっさと眠りたい気分だったが、相手がそれを許さなかった。
「我々は、アキタ人のために道を開いてやったんだぞ! それなのにあの仕打ちだぞ! これが許していられるか!?」
「ああ。だが、奴らにはそれが理解できなかっただけのことさ」
フクイ人がどれだけ文明を教えようが、彼らがついに適応することはなかった。それがようやく万人に分かっただけのことだ。
だがシシマロは少しも納得する様子を見せず、急に部屋の外に出ようとした。
「おい、どうするつもりだ?」
あきれた顔でいらだつカイソクに、血走った目で気炎を吐く。
「決まってる。役人たちを説き伏せようと思う。今から不逞なアキタ人を膺懲してやるんだ!」
「それは、無益だな」 カイソクは虚ろな表情のまま。
「どうしてだ!」
「ホカイドを失ってサハリンやクリルとの交易が見込めない以上、もはや俺たちが北部の属州を支配する意味なんかどこにもない」
そうだ。全て終わったのだ。フクイ人による北方の支配は完全に終わりを告げた。
カイソクは、アキタ人に対してひたすら嫌悪感だけを募らせた。最初からこんなことはしなければよかった。彼らがそういう連中であることなど分かり切ったこと。
この悲劇が起きたのは先祖のせいだ。先祖が海の向こうへ渡らなければ子孫があんな目に会うこともなかったのだ。
かつて130年前、アキタに最初の入植者が降り立った時からこの宿命は決まっていた。
海の向こうの領土を維持することがそもそも無理な話だったのだ。そんなことも知らずに先祖は子孫に、隔絶した土地で過ごし続けるように強要した……。もはやこれはどころではない。歴史の流れなのだ。
それどころかフクイ政府はこのハテノ島を領有することも、その内あきらめるだろう。これは歴史の潮流だ。国家や政治にどうにかできることではない。
「移民局はどうせ俺たちの嘆きには耳も貸さずに今回の件を黙殺するだろうさ。あの機関はもう存在意義をなくしてしまった。本土の連中も、どうせ俺たちのことはさっさと忘れるさ」
すぐに法令が発布されるだろう。フクイはもはやトーホクを正式に領土から除外し、130年の歴史をなかったことにするだろう。ホカイドから追放された時、そうしたように。
そして追放された者たちには何の救いも与えない。
シシマロは、歯を食いしばり、もう少し抗弁したげな様子だったが、カイソクの泥のように濁った顔色を見ては、ほとんど何も言うことができなかった。
カイソクはすっかり暗闇に沈んだ海の向こうを眺めた。驚くほど静かで、何の揺らぎもなかった。
アキタ人の使者からフクイ人撤退の報告を受け、アオモリ軍の司令官イワイは入場した。
今回の作戦が成功したのはアキタ人ムラヤマ・ロクジの指導によるものだ。彼こそが、かつてフクイ人の侵略以前にこの地を支配したアキタ王の末裔であり、この国の支配者にふさわしい人物と万人の合意で認められていた。
イワイはホカイド製の剣や鎧を身に着けていた。武器や日用品を、フクイの企業や商人から購入していたら到底今回の独立は達成できなかったろう。フクイ人に勝利できたのは、もう随分前からフクイ資本に頼らない体制を整えていたからだ。今やトーホクの経済は、ホカイドの協力がなければ成り立たない状態にある。主人を変えたわけだ。
市街地の中心にある役所や工場は暴徒の手でほとんど破壊されていたが、それを見てむしろイワイは満足感を覚えるよりは少し残念がった。フクイ人の横暴には当然憎悪を覚えるが、彼らの進んだ技術や便利な設備を認めないわけにはいかなかったから。
彼はフクイ人が利用していた兵舎に向かう途中、現地住民から色々と説明を聞いていた。
途中で、今回の作戦に参加したアオモリ人の一人が、やつれ気味の女を連れて来た。女性は、口元はにこやかな様子だったが、目は笑っていなかった。
表情も、佇まいも、全てが作りものに見えた。
「誰だお前は?」
サイオシは自分がどう行動すべきかを知っていた。全てはこのアオモリ人が教えてくれた。
サイオシは低い声で答えた。
「まだ、奴らの生き残りが東の方にいるはずです。早急に駆除してください」
ここで生きるためには、そうするしかない。もはや同胞に対して憐憫を覚えている場合ではないのだ。フクイ人の痕跡を少しも残してはならない以上は。
「私も奴らによって虐げられてきました。彼らは罪深い人間です。自分が侵略に加担したことを自覚せずに生きているのですから」
抑揚に乏しい声で彼女は語った。
「皆さんには彼らを虐げるに足る理由があります。今ここで慰み者にされても、私は抗議することができないでしょう」
サイオシはそう語ることに何の罪悪感も持たなかった。淡々と語り続ける異様な様子にイワイは言葉を失った。
アオモリ人はイワイに対して念を押すように、
「彼女は医者です。フクイの優れた医学を学んでいる方です。生きていれば私たちに貢献をしてくれるでしょう」
「ほう」 イワイはその方面に関してはさっぱりだったが、この女がどうやら一目置かれているらしいことだけは理解できた。
「後で色々と話を聞かせてもらおうか。俺の妾にしてやる」
そうだ、これで良いのだ。もうこれが終わったらアオモリかホカイドにでも行ってしまおう。これ以上この国にはいられないのだから。
サイオシは虚ろな目でイワイの瞳を眺めた。それから、相方のアキタ人に連れられ、群衆の中に消えていった。
あの様子からすると、あの女はきっとフクイ人なのだろう。自分が殺されるべき敵だと知られないように、必死に態度をとりつくったのかもしれない。
フクイ人のことだ、もう少し往生際の悪い反応をするかと思ったが、驚くほど淡泊で感情の起伏に乏しいその振舞にはさすがに面食らってしまった。
小声で仲間のモリイが耳打ちする。
「あの女、どうやら裏があるらしいな」
イワイはしかし、気づきを教えようとはしなかった。もしそれが知られれば、どうせあの女を殺そうとする者が現れるだろう。イワイは医術の心得がある彼女を自分の宝として独占したかったのだ。
「女だぞ。利用価値などいくらでもある」
モリイはさらに言った。
「あの女のことをおいても、他にもやることは色々あるぞ。ロクジ殿の即位式で護衛を務めねばならんからな」
そう、このままことが進めば、アオモリ人はアキタ人に臣従しなければならない所だ。
だが、そういうこと全てが、このアオモリ人にとってが気に入らなかった。
「即位式だと? とんでもない」
眉をひそめるイワイ。
「彼らにそのまま独立させてなるものか。そもそも謎の大爆発が起きる前まで、アキタ市は俺たちを支配していたんだろう。また奴らに支配されろってのか?」
モリイは少し聞き捨てならないという顔で尋ねた。
「まさか、反乱を起こすつもりか?」
これまでアオモリ人はアキタ人にもフクイ人にも見下される存在だった。
ただ今回、フクイ人という共通の敵の元にたまたま団結しただけだ。そして、敵がいなくなった今、再び味方でもなんでもなくなった。
「フクイがもはや敵ではなくなったはいえ、イワテやホカイドでも怪しい動きが出てきてるしな。我々の戦いはまだ始まったばかりなのだ」
イワイにとって、この戦争に参加したのは単なる打算に過ぎない。
アキタ人に盲従するつもりなどさらさらなかった。この混乱を利用して、もっと成り上がっていくのがイワイの魂胆だった。
「では……どうする?」
モリイの目に、困惑からだんだん乗り気な感情が見えてきた。これは終わりではない。新しい地獄の始まりに過ぎない。その地獄にこそ、あらゆる勢力の間で右往左往するしかなかったアオモリ人の生きる道があるのだ。
「王を騙し討ちにしてしまえ。この地に我々の国を築け。このアキタは我々の物だ」
参考資料
フクイ抄史
https://ncode.syosetu.com/n8629fy/
フクイのトーホク喪失
https://tarawi.seesaa.net/article/483676595.html




