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やさぐれ聖女の覇王学  作者: Ztarou
第一章 私が覇道を歩み始めるまで
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A-01 完璧で究極のセカイ

「あー、死ぬ前に酒池肉林したかったなぁ……」


 私は最期の瞬間の最後の力を振り絞ってそんな妄言を吐いた。私の首を絞めて殺したあいつもビビってたよなぁ。あれ、私誰に首絞められたんだっけ。


 むむ、思い出せん。


 でも確かに私は誰かに首を絞められて死んだ。それだけは確かだ。そして、性欲盛んな思春期真っ盛り、処女のまま死んだ私が最後の私が遺した願いはそれだった。


『え、お願いマジでそれでいいの……?』


 目の前に立ってる半裸の青年がそう言った。うわ腹筋が板チョコみたいに割れててすけべだな……。さぞや素敵なポテロングも……。


『俺一応神様だから、考えてること筒抜けなんだけど。神様にセクハラしないでくれる……?』


 神様? なんだこいつは頭おかしいのか。あれ、てかそもそもここどこだ? 私死んだよな? 死んだら人ってどうなんの?


『ここは彼方と此方の狭間の領域だよ。君のことを担当するのが俺。で、一応前世では善行を積んでたみたいだから転生に際してある程度の便宜を図ってあげようってわけだ』


 うわ、魔法少女モノの便利なお助けキャラより喋るじゃん。優秀〜。むむ、しかしそんな異世界転生モノみたいなことほんとに在るのか? もう最近は婚約破棄とか悪役令嬢しか流行らないんじゃないのか……??


『……君が何言ってるかさっぱりわかんないんだけど、転生先に希望とかある?』

「あの、それより私の善行ってなんなんですか? 私ただのすけべだし、そんな人助けとかもしてこなかったけど」

『ああ。えっと待ってて確認する。んーと、クラスメイトがいじめられているのを助けた──って結構いい事してるじゃん』


 やべぇ、記憶にねぇ。そんな事したっけ……。そこら辺の人、略してそこんちゅとは関わらないようにしてた私が人助け? クラスでは存在を感知されないために息を殺してたし、霊圧も消してた。てか学校終わったらすぐ帰ってたし、休み時間とかスマホで薄い本読んでたから……やばいマジで記憶ない。


『とはいえ閻魔(えんま)帳に正式に記載があるから、事実だと言わざるをえないんだ。さて、君は何を望む? 元の世界でもいいし、スライムに転生して無双したり、最近ではアイドルの子どもに転生したいってリクエストも多いね』

「……モン」

『ん?』

「……ロモン」

『ごめんなんて?』

「フェロモンがムンムンの超絶美少女に転生させてくれ!!!!!!」

『ああ……結構スタンダードなお願いだったな。場所はどうする?』

「どこでもいい!!!! フェロモンムンムン美少女なら! いい!」

『なんて欲望に忠実な……。まあいいか』


 若干呆れた様子で、半裸の雄神様は静かな顔つきになった。


『次に目が覚めると君はそこに居る。過去の世界のことは段々忘れていく。次の人生では、早死にしないよう祈っているよ。はい、さん、にー、いち──』


         ***


 我は巨大な乳を吸っていた。


 もう一度言おう。我は、巨大な乳を吸っていた。


 でかすぎて他が見えない。なんだここは天国か。


「あこららっあたらのこ」


 あれ、巨大なおっぱいがなんか言ってる。違う、そのおっぱいの所有者が何か言ってる。絶妙に日本語みたいな発音なのに、全く意味が伝わってこない。なんだこれ。まるでアナグラムの文を聞いてるみたい。


「なやまいらうし。おれてこよれのぶんのもおしいくて」


 おっぱいホルダー、恐らくマイマザー。そのマザーの近くには多分ファーザーがいる。ファーザーがなんか言ったけど、その口調から、俺の分も残しとけ的なこと言ってる気がする。玉千切るぞコラ。これはわしのもんじゃ。


 しかしなまじ過去の理解力がある分、今の状況は割と羞恥だな。いや、冷静に展開を分析して、今自分が異世界に転生してバブーちゃんになっていることは理解できるけど、それにしても赤ちゃんプレイか……。そういう薄い本を読んでこなかったわけではないが、デカすぎるんだよな。


「んなベなスケかいしなて顔かのここ」


 今パッパが私を見て若干不気味なものを見るような顔したけど……。心なしかスケベな顔してないかこの子って聞こえたけど、空耳アワードだろうか。


 まあいいや。


 さて、私は無事に転生できたみたいですね。股の感覚的にオスではない。恐らくヒト科哺乳類が頂点捕食者として君臨する世界。あとは時代感だな。令和の女子高生的にはいきなり中世ナーロッパに飛ばされるのは衛生的にというか生理的にキツイものがある。出来ればせめて明治大正辺りがいいんだけどな。そういう和装したいし……。


「るスたタ化なみ発畑モのい最いーし近でンが活て」


 今絶対モンスター的なこと言っただろ……。はい、もう異世界ですね。了解です頭を切り替えます。


 モンスターがいるなら、ある程度の魔法システムとかは構築されてるのだろうか。モンハンみたいな感じじゃないと良いな。それはそれでハンターさん達がエロいからいいか。良くないわ。酒池肉林出来ないじゃない。魔法の良い所は遠距離から、短い詠唱で一掃出来て、戦闘描写少なく、俺ツエーできる所なんだから! しまった、編集志望だったせいで余計なメタ視点だわ。


 でもそっちの方が楽なのよねー。私はフェロモンムンムンとだけお願いはしたけど、バトルチート系のお願いはいっこもしてないし……。


 一応VRものじゃないか確認するためにステータスオープンとかやっちゃう?


「うえーあうおーうん!」


 駄目だ歯がねぇ。


「喋今ったこ子なのよ!?」


 やばいパッパとマッマが驚きながら喜んでる。めちゃくちゃありきたりな展開を生んでしまった……癪だな……。


 しかしステータスとかはないと考えておいたほうがいいな。あんな都合がいいもの、ゲームの中にしかないやろと上級読者様からのつっこみも入るしな。かくいう私も「中世ヨーロッパにステータスとかあるンゴねぇw」とクソみたいな感想を送ったこともある。この罪は今世で悔い改めよう。アーメン。


 でもこれはいちオタク的な意見だけど魔法くらいはあって欲しいなぁ。フェロモンムンムンなんていうジョークが成り立つなら、何もない所から氷が生まれちゃうくらいのジョークあってしかるべしでしょ!


 と、私が悶々と考えながら乳を吸っていると、アウチみたいな声をあげてマッマが乳首をさすった。ごめん、吸い過ぎたね。私のことは吸引力の変わらないただひとりの娘ダイソンと呼んでくれ。


 マッマのチッチは赤くなっている。ごめん。と思っていると、チッチではなく乳でもなく父ことパッパが、乳首に触れて何かつぶやき始めた。何してんねん。


「霊すよ精を地大草赦の。約契お子神いとてのに、まそしお貸をえた力の」


 キタコレ魔法じゃん! 魔法じゃ~ん!!!!


「リネジェ」


 リジェネじゃねぇか。ヒール使えよ。なんで秒間回復でじわじわ治すんだよアホか。


 しかしマッマのチッチはたちまち緑のエフェクトに包まれてもとの色に戻ってゆく。いや、今のフリでマジで魔法があると思わないじゃん。


 ……私マジで異世界に生まれ直したんだな。


 魔法を見てそうしみじみと思った私は、けぷとげっぷをして、天を仰いだ。


 今世では酒池肉林目指そう。本気で生きてみよう。一歩一歩、ハーレムに向けて。歩いてゆこう。


 アルテ・クロノスタシス、生後一年未満。


 すけべに一生を捧げると誓った瞬間であった。

お読みいただきありがとうございます!!!


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