6話……今後の方針
ズンズン進んでいくリンさんに呆気に取られながらも大人しく着いて歩きいてギルドへ向かう。
到着してからもリンさんの独壇場で、俺たちは言われるがままに返事をしたり冒険者証を提出したりサインしたりするだけで無事パーティ登録は完了した。
リーダーとして登録したのはリンさん、どうもシルバーランクの冒険者でもあるらしく、俺たちの中で一番高ランクだったので俺としても特に文句はない。
パーティ登録を終えるとさっさと冒険者ギルドを出て宿に戻る。
この間会話らしい会話はほぼ無かった……
宿に戻るといい時間だったのでそのまま夕食をたべる。
よくある現代日本人にとってはひっどい食事ということは無く普通に食べられた。
少々薄味ではあったがそのくらいは許容範囲だ。
食事も終わり今日はこれで解散かな? と思っているとサーシャとリンさんに腕を掴まれて部屋に引っ張られてしまった。
やめて! 夜に異性を部屋に無理やり引きずり込むなんてイケナイと思います!
「さてクリード、色々聞かせてもらうわよ!」
「そうですよ! もっとお話聞かせてください!」
部屋に入った途端サーシャとリンさんがめちゃくちゃグイグイ来る。
「ちょっと落ち着いて? 話すのはいいんだけど、こっちも色々教えて欲しい」
通貨の価値とかも分からないからね?
「わかってるわよ。クリードは異世界人なんでしょ? この世界の常識とかルールとかそういうの聞きたいんでしょ?」
「うん、そうだよ。何も分からないのは不便過ぎて困るから」
「ある程度はあとで教えてあげる。細かいことは一緒に生活しながらね。だから今は色々聞かせて欲しいの!」
「あ……はい」
めっちゃ押して来るな……
まぁ後からでも教えてくれるって言うなら慌てたこともないか……
「わかったよ。リンさんは何が聞きたいの?」
「呼び捨てでいいわよ。もう仲間になったんだしね。そうね……まずは勇者召喚の結果を教えて!」
圧がすごい、少し落ち着いて欲しい。
さっきまでの覇気のない目が嘘のように目がイキイキしている。
やる気のない残念美人の印象だったけどこう……ギャップがヤバい。
「勇者召喚の結果? 確か……俺含めて男4人女2人の合わせて6人だったな……誰がどの職業かはわからないけど、勇者、賢者、剣聖、聖騎士、忍者だったと思う」
あとはトラック運転手の俺ね。
あ、隣に座ってた男が勇者だったかな?
「なるほど、それでクリードの職業がトラック運転手で聞いた事ないしステータスも高くないからって追い出されたのね?」
「いや言い方……間違ってはないんだけど……」
やっぱりリンって口悪いよね?
「それで追い出されて途方に暮れてる時に――」
「私が声をかけました!」
はーいと右手を上げながらサーシャが話に入ってきた。
他の2人は……と見てみると、ソフィアは部屋の入口の脇に、アンナは窓の脇に立っていた。
警備してるのかな。
「はいはい、それでサーシャちゃんたちと一緒に冒険者登録をして王都の外に出たんでしょ? その辺り詳しく教えて?」
「えーっと……」
思い出しながら外での出来事を話す。
時折サーシャとソフィアが補足を入れてくれたりしながら話し切ると、リンは顔を紅潮させ興味が抑えきれないような表情をしていた。
「見たい! とらっく見たい!」
「ちょっと落ち着けって……」
こんなにグイグイ来られると対応に困る。
女性慣れしていない訳でもないけど目をキラキラさせたきれいなお姉さんにここまで来られた経験は流石に無い。
俺はポケットからミニカーサイズのウルトを取り出しテーブルに置いた。
「はい、これがトラックだよ。名前はウルト」
「え? とんでもなく大きいって言ってなかったかしら?」
「リンさん、ウルト様は大きさと重さを自由に変えられるんですよ!」
聞いていた大きさと違いすぎて混乱するリンにサーシャが教えているがそれで伝わるのだろうか?
『はじめましてリン様。私は【2030年式ウルトラグレート冷凍車モデル】、個体識別名称ウルトです。マスターとお仲間の安全と快適を護ります』
ウルトがリンに自己紹介をすると、リンは驚きのあまり固まってしまい油の切れた機械のような動きでウルトの方に顔を向けた。
「え……? この子喋るの?」
『会話は可能です』
驚愕に目を見開くリン、この顔今日沢山見たよ。
ウルトの存在はやはり驚愕に値するものなのだと改めて実感した。
「えっと……ウルトだっけ? 私はリン、魔法使いよ、よろしく……ね?」
『はい。マスター共々よろしくお願い致します』
「それでウルトは何ができるの?」
『そうですね。いくつかのスキルを所持していますのでそれを使っての戦闘、サポートが可能です』
それからウルトは自身の持つスキルをリンに開示していく。
一緒に聞いていたがやはりウルトはぶっ飛んでいるような気がする。
明らかにサーシャたちよりスキルも多いしね。
「すごいわね……これって勇者より強いんじゃないの?」
『勇者の力はわかりませんが、マスターを護るためなら打ち勝って見せましょう』
いや勇者に打ち勝つって……そりゃトラック対人間ならトラックに分があるだろうけど。
「それと、ウルトがゴブリンを倒したらクリードのレベルが上がったんだって? その辺の話をしてもいいかしら?」
「あ、それ俺も気になる」
「私もです!」
リンが切り出したのはレベルアップの話。
俺が倒したわけでもないのにレベルが上がったことは気になっていた。
「パーティ組んでたら仲間が倒した魔物の経験値が分配されるとかあるの?」
大体のゲームではこの方式が多い。この世界もそうなのだろうか?
「基本はそうね。まぁギルドでパーティを組むというよりお互いが仲間と認めあっているかどうかが大切ね。後でやるけどステータスの相互閲覧を許可し合えば経験値は分配されるわ」
「なら俺とウルトがそういう関係ってことなの?」
仲間というより相棒ってイメージが強いけど。
ステータスは一方的に知られてるけどね。
「あくまで人間同士ならね。ウルトにはレベルって概念はあるの?」
『おそらくありませんね。私は自身のレベルアップではなくマスターが強くなれば私も強くなるという感じです』
俺が強くなったらウルトも強くなるってそれ追いつけないんじゃ……?
「なるほどね、やっぱりクリードとウルトの関係は召喚術士に似ているわね」
「召喚術士?」
割と定番な職業だけどこの世界では初耳だな。
「えぇ、まずは説明だけど、勇者召喚で喚ばれる勇者たちの職業はこの世界の戦闘職の上位なの。剣聖や聖騎士なら戦士、賢者や大魔道士なら魔法使いの上位って感じね」
それはなんとなくわかる。
「この世界の人間には基本的には就けない職業に就いてるのが勇者たちなのよ。もちろん基本的にであって絶対ではないわよ」
「もしかしてサーシャの聖女って……」
「いえ、聖女には特別な役割があるの……詳しくは説明出来ないけど、勇者召喚で聖女が喚ばれることは無いわ」
へぇ……ならサーシャにはサーシャの役割があるのか……
「上位の職業は就職の儀でごく稀に就けるけどその可能性は限りなく低いわね。一番最近就職の儀で上位職業に就いた人は確か40年前だったかしら?」
「確かそれくらいですね。その人は確か戦士系の上位職業【竜騎士】だったはずです。まだ現役の冒険者のハズですよ」
竜騎士か……竜に騎乗して戦うのかな? めちゃくちゃかっこいいな……
「話が逸れたけど、多分クリードの【トラック運転手】って【召喚術士】の上位だと思うのよね。実際トラックを召喚しているし召喚した存在が倒した魔物の経験値を得ていることから間違いないとは思うんだけど」
「そうなんだ。それで召喚術士ってなにを召喚できるんだ? 俺にも召喚できるのかな?」
召喚術士もかっこいいじゃん? 精霊召喚とかできたらテンション爆上がり間違い無しよ?
「召喚術士は元々数が少ないからあまり情報が無いのよね……あたしの知ってる限りだと魔獣を召喚使役して戦うのが一般的みたいね」
「ん? 召喚術士って珍らしいの?」
「えぇ、戦士や魔法使いはそれなりに生まれるけど召喚術士はかなり珍しいわね」
ほぉほぉ、レア職なのか……そして俺はそのレア職の上位職業の可能性がある、と。
「クリードは【召喚術】や【使役】や【支配】のスキルはあるかしら?」
「俺が持ってるのは【トラック完全支配】だね」
「なら魔獣召喚は今は使えないと思うわよ? それにウルトってどんな魔獣よりも強いと思うからわざわざ弱い魔獣を使役してもしょうがないんじゃない?」
言われてみればそうだな。
ウルトより弱い魔獣を使役するメリットって俺の自己満足以外ないもんな。
『マスターには私が居れば他の魔獣など不要です』
ウルトも心外みたいな感じで喋ってるしこれに関しては成り行き任せでいいかな。
召喚術は覚えられたら覚えるくらいでいいや。
「そうだね。頼りにしてるよ」
『お任せください』
これで職業については一段落かな?
なら戻って寝ていいかな、色々あって疲れたからもう眠い。
「んじゃそろそろ解散でいいかな?」
「最後に1つだけ。これからどう動くのかだけ決めておきたいんだけど」
リンが俺とサーシャに目配せをする。
これからの動きとか俺には見当もつかないからそっちで決めて欲しい。従うから。
「そうですね……まずはレベルと冒険者ランクを上げてから動きたいと思ってます。」
「それはもちろんね。クリードもだし、サーシャちゃんも強くなっておいた方がいいしね」
そういやみんなのレベルってどれくらいなんだろ?
「まずは全員シルバーランクになることね。レベルも20は欲しいわね」
「俺は3になったばかりだけど、みんなのレベルとかステータスってどれくらいなの?」
なんだか聞けそうな雰囲気だったので聞いてみる。
「そうね、経験値分配の件もあるし、全員のステータスは把握しておくべきね。お互いが承認すればステータスは見せあえるからやってみましょう」
「どうやるんだ?」
「ならあたしのステータスを見る許可あげるからクリードのも見せてちょうだい」
「許可ってどうやるの?」
「ステータスを開いてからこの人に見せてもいいって思いながら見せてくれれば見えるわよ。あたしがお手本見せるから」
リンは「ステータスオープン」と唱えてステータスを開いて俺を指さすような動きをした。
するとリンの前に浮かぶステータス画面が俺にも見えるようになった。
◇◆
リン・ヒメカワ レベル28
職業……魔法使い
年齢……27
生命力……C 魔力……A 筋力……E 素早さ……D 耐久力……D 魔攻……A 魔防……B
スキル
【魔法適性(火、水、風、土、)】【魔力ブースト】【ツインマジック】【魔力吸収】【魔力感知】
◇◆
「これがあたしのステータスよ」
開示されたリンのステータスは俺よりかなり高く、レベルも28と結構高い。
というかリンって27歳なんだ……ん? ヒメカワ? 姫川?
「じゃあクリードのも見せてもらえる?」
「え? あ、わかった。ステータスオープン」
ステータスを開いてリンやサーシャたちに見られてもいいよーと念じる。
さっきリンは指を指すような仕草をしていたことを思い出してそれも真似してみる。
◇◆
名前……レオ・クリイド レベル3
職業……トラック運転手
年齢……21
生命力……C 魔力……D 筋力………C 素早さ……D
耐久力……A 魔攻……D 魔防……D
スキル
【トラック召喚】【トラック完全支配】【魔法適性(雷、氷、水、風、光、音)】【瞬間加速】【瞬間停止】【自己再生】【魔力吸収】
◇◆
「これで見えるのかな?」
あら? 名前表記が変わってる? 何でだ?
「えぇ、大丈夫よ、なになに?」
リンとサーシャは顔を寄せ合い俺のステータスを見る。
さっき口頭で伝えたのと変わらないんだけど……
「改めて見るとめちゃくちゃね……魔法適性も多いしやっぱり異世界人ってすごいわね……」
「そうなの?」
基準が分からないからわかんないよね。
「そうね、わかりやすいところなら魔法適性なんて2つあれば優秀、3つあれば天才と言われるくらいなのよ」
アレ?リンは4つあるよな?
「あたしの4属性適性でも100年に1人の天才だって持て囃されるのよ? そのあたしより多い6属性適性、これをめちゃくちゃと言わずなんて言うの?」
「わかりやすい説明ありがとう。基準が曖昧だけど、リンもすごいってことだよね? それよりヒメカワが気になるんだけど」
「あぁ、あたしの家系は500年前に召喚された大魔道士の家系なのよ。だから家名はその名残り」
「へぇ……ってことは召喚された人って元の世界に帰れないの?」
話の流れで聞いたけどこれ大事。
「帰れるらしい……とは聞いたことあるけど詳しくはわからない。ただあたしのご先祖さまみたいに残った人もいるのは間違いないわね」
なら選べるのかな?
選べるなら……まだ決めなくていいか。
「そうそう、これでお互いステータスを見せあったでしょ? なら下の方にパーティ申請ってあるのわかるかしら?」
パーティ申請? あぁ、なんか新しい項目が増えてるね。
「そこを押して……私の名前が出たでしょ?」
「うん、出た」
「なら私の名前を押してみて」
言われた通りリンさんの名前を押してみると、【パーティ申請しますか? はい/いいえ】と表示された。
【はい】を選択すると【申請しました】に表示が変わった。
「申請来たわ。これを私が許可すると……」
俺のステータスに【承認されました】と表示が出た。
「これで一緒に魔物を倒すと経験値は分配されるわ。倒した人が5割、残り5割をメンバーで分配するの」
「2人なら半分ずつになるの?」
「いいえ、その場合なら倒した人が7割5分、もう1人が2割5分ね。」
えっと……まず倒した人が5割、それから残り5割を2人で分けるってことか。
「なるほど、理解したよ」
「ならサーシャちゃんたちともパーティ登録しましょうか」
「クリード様、よろしいですか?」
「うん、よろしく頼むよ」
ぶっちゃけ断る理由なんて無いしね。
「じゃあサーシャちゃんのステータスを見せてあげて?」
「はい!ステータスオープン!」
話は終わりとばかりに次はサーシャのステータスが表示された。
◇◆
サーシャ・ライノス レベル14
職業……聖女
年齢……17
生命力……D 魔力……B 筋力……E 素早さ……E 耐久力……E 魔攻……C 魔防……C
スキル
【魔法適性(聖、光、空間)】【聖なる護り】【聖女の祈り】【魔法効果上昇】【浄化の光】
◇◆
「へぇ、リンのステータスに似てるね……スキルは全然違うけど」
「同じ後衛職ですからね! リンさんと比べると低いから恥ずかしいですけど……」
レベル差もかなりあるしそれは仕方ないんじゃないのかな?
「ソフィアとアンナは前衛職ですからまた違いますよ!」
サーシャはソフィアとアンナを手招きして2人にも俺たちのステータスを見せると同時に2人のステータスも開かせた。
◇◆
ソフィア レベル19
職業……戦士(槍)
年齢……22
生命力……C 魔力……E 筋力……D 素早さ……C 耐久力……D 魔攻……E 魔防……E
スキル
【槍術】【身体強化】【気配察知】【騎士の矜恃】
◇◆
アンナ レベル18
職業……戦士(剣、盾)
年齢……19
生命力……D 魔力……E 筋力……D 素早さ……F 耐久力……C 魔攻……E 魔防……D
スキル
【剣術】【盾術】【堅牢】【衝撃緩和】
◇◆
なるほど、見た感じソフィアがアタッカー寄り、アンナはタンク寄りって感じかな?
それに唯一リンの魔力がAで他の人にはステータスにAは無いな。
レベル20前後でAが無いのか……なら俺の耐久力Aって飛び抜けてるのかな?
「クリードさんの耐久力見たら自分の存在意義見失いそうッス……」
「私も筋力で負けてますし……やはり私たちでは異世界の勇者には勝てないのですかね……」
ソフィアとアンナがどんよりしているが俺には声をかけることが出来ない。
「よし、各自全員のステータスは確認出来たかしら? まずはパーティ登録を忘れずにしてね」
全員が俺に申請を送ってきたので全員分許可を出す。
「出来たわね? ならとりあえずはクリードのレベルアップと全員のランクをシルバーにすることを目標にしましょうか」
「異議なーし!」
サーシャが賛成したことでソフィアとアンナも必然的に同意。
俺としてもレベルとランクアップは望むところなので何も問題ない。
「じゃあ明日からは常設依頼を確認しながら魔物討伐を進めましょうか。目標は数日中にカッパー、今月中にシルバーってことで」
「異議なーし!」
はーいと右手をピンと伸ばして返事をするサーシャ。
ステータスで17歳って確認してるけど仕草幼いな……
というか暦は同じですか?
「じゃあ解散、明日は8時に食堂集合ね」
時計もあるんスね?
「ねぇ、今って何時?」
「今ですか? そこに時計ありますよ? 今は8時37分ですね」
サーシャの指さしたのはベッドの上。
そちらに目をやると普通に見慣れたアナログ時計がかかっていた。
ポケットからスマホを取り出して時間を確認すると同じ時刻を示していたので時間のズレは無いようだ。
「ちなみに今日って何月何日?」
「今日は9月3日ですよ」
日付のズレも無し……なら分かりやすいな!
「クリード……それなに?」
「これ?スマホって言う俺の世界の道具だよ。今日はもう眠いから明日ね?」
「絶対! 絶対教えてよね!」
立ち上がろうとする俺の腕を掴みちょっと女性がしてはいけないような表情で迫るリンが怖い。
「わかったから……わかったから明日ね? 約束するから」
「言ったわね? 約束よ!」
「はいはい……じゃあおやすみ」
4人に挨拶して隣の部屋へ戻りアラームをセットしてベッドに入った。
そういえばウルト忘れてきたな、まぁ戻るのもアレだし明日でいいか……




