12話……ランク昇格と今後
ギルドに到着して暇そうにしている受付嬢の1人に声を掛ける。
まだ昼だしこの時間に戻る冒険者は少ないのかな。
「すみません。至急ギルドマスターにお取次ぎ願います。私はシルバーランク冒険者のリン、例の依頼の件と伝えていただければすぐにわかると思います」
「リン様ですね、かしこまりました。すぐにギルドマスターに確認して参りますので少々お待ち頂けますか?」
「えぇ、お願いします」
受付嬢は立ち上がり裏に向かっていった。
「さて……ここに居ても仕方ないしあっちの椅子で座って待ちましょうか」
「そうですね、なにか頼みますか?」
「うーん……そこまでかからないとは思うけど……飲み物くらいなら大丈夫かしらね?」
確かに少し喉が渇いたな。
アンナが代表して全員分の飲み物を注文しに行きすぐに戻ってきた。
それから10分ほどだろうか、他愛もない話をしながら過ごしているとさっきの受付嬢が戻ってきた。
「おまたせしました。こちらへお願いします」
まだ少しコップに残っていたので一気に飲み干して立ち上がり全員で受付嬢の案内に従って奥へと移動した。
昨日案内された応接室を通り過ぎ、受付嬢は別の部屋をノックする。
中からどうぞと声がかかり受付嬢が扉を開けて入室を促してくる。
リンを先頭に部屋に入ると、そこは執務室のような部屋でギルドマスターと数人の事務員が忙しなく働いていた。
「聖女様、このような場所で申し訳ありません」
「いえ、お仕事中に押しかけたのはこちらですので……それで報告させて頂いてよろしいでしょうか?」
ギルドマスターが書類にサインする手を止めてこちらに顔を向けたのでリンが話し始める。
「まずはゴブリンキングの捜索及び討伐は完了しました。クリード、首と剣を出してもらえるかしら?」
ここで?
ギルドマスターを見ると頷いたので来客用と思われるテーブルに首と剣をウルトに出してもらう。
そのまま出すのは憚られるが頷いたんだからあとの処理はそっちでしてね? 掃除とかさ。
てか剣出したらテーブル軋んだけど大丈夫だよね?
「ふむ、確かに確認しました。この剣はゴブリンキングが?」
「えぇ、ゴブリンキングが持っていました。魔剣のようで効果は【状態保存】、呪いの類はかかっていません」
「ほう、【状態保存】ですか、良い効果ですね」
嬉しそうに頷くギルドマスター、やっぱり状態保存っていい効果なんだね。
「うちで使えそうなクリードにも扱えませんでしたので、こちらも納品しようかと思うのですが」
「分かりました。その方向で進めます。査定を行いますので結果は明日でもよろしいですか?」
「大丈夫です」
リンは頷く。
それを見てギルドマスターは事務員へ指示を出してから話を続ける。
「ではまずお約束通りリン殿とクリード殿のゴールドランク、聖女様方3名のシルバーランク昇格の手続きをしますのでこちらは明日以降ギルド受付で冒険者証の交換をお願いします」
「分かりました」
明日からゴールドか……登録して今日でまだ3日目だぞ……
「続けて報酬ですが、今取りに行かせておりますので少々お待ち願います。キング以外のゴブリン、ホブゴブリンの討伐金については受付でお願いしてもよろしいでしょうか?」
「構いません。今日もかなりの数を討伐して来ましたのでここで数えるのは大変でしょうし」
「やはりかなりの数が残っていましたか……」
ガチャリと扉の開く音がした。
そちらを見ると小さなお盆に金貨を載せて持ってきた事務員が居た。
「お待たせしました。こちらが報酬の金貨4枚です」
「確かに。ありがとうございます」
リンがその金貨を受け取り書類にサインする。領収書みたいなものかな。
「では失礼しても?」
「えぇ、ありがとうございました。明日の朝には冒険者証と査定結果を用意しておきますので」
「わかりました、では失礼します」
軽くギルドマスターに会釈して部屋を出る。
そのまま受付に移動してゴブリン、ホブゴブリンの討伐証明部位を提出して討伐報酬を受け取ってギルドから出る。
「お腹空いたわね……何か食べに行きましょうか」
「私パスタが良いです!」
サーシャの提案でパスタを食べに行くことになった。
この世界パスタあるんだね。何があって何がないのかまだ分からないけどパスタは好きだからあってよかった。
5人で近くのパスタを食べられる店に入り昼食を済ませて宿に戻る。
「じゃあ今日はもうゆっくりしましょう。明日は冒険者証受け取って森の中にでも入ってみる?」
「そうですね。ゴブリンキング戦では何もしていないので少し戦いたいです」
こういう話をしている時は基本的に警備に集中して話に入らないソフィアが珍しく話に入ってきた。
珍しいもなにも出会ったばかりなんだけどね。
「あらソフィアが自分の意見を言うなんて珍しいわね」
珍しいと思ったのは間違いじゃなかったみたいだな。
「それよりもクリードさんゴブリンキング戦でレベルアップしてないんスか?」
「ん? そういえば確認してなかったな……ステータスオープン」
◇◆
名前……レオ・クリイド レベル26
職業……トラック運転手
年齢……21
生命力……B 魔力……C 筋力………C 素早さ……C
耐久力……A 魔攻……D 魔防……C
スキル
【トラック召喚】【トラック完全支配】【魔法適性(雷、氷、水、風、光、音)】【瞬間加速】【瞬間停止】【自己再生】【魔力吸収】【気配察知】【剣術】【直感強化】【知覚強化】【剛腕】
◇◆
「おぉ、5つもレベル上がってる……ステータスも伸びてるし【剛腕】ってスキルも覚えてるな」
「5つもあがってたんですか? さすがクリード様ですね!」
「剛腕ですか……確か発動すると筋力がアップするスキルですね。アタッカーには相性がいいです」
ソフィアは少し羨ましそうに【剛腕】について教えてくれた。
筋力アップか……いいスキルゲットできたな!
「リンは上がってないの? 結構な数1人で倒してたけど」
「あたしのレベルじゃゴブリンやホブゴブリンじゃ中々上がらないわよ。ステータスオープン」
◇◆
リン・ヒメカワ レベル29
職業……魔法使い
年齢……27
生命力……C 魔力……A 筋力……E 素早さ……D 耐久力……D 魔攻……A 魔防……B
スキル
【魔法適性(火、水、風、土、)】【魔力ブースト】【ツインマジック】【魔力吸収】【魔力感知】
◇◆
「あら、上がってるわね……あれくらいで上がるとは思わなかったけど、ゴブリンキングの経験値が予想より多かったのかもね」
「みんなも確認してみてくれない?」
俺がそう言うと、サーシャたちも各々ステータスを開いた。
◇◆
サーシャ・ライノス レベル17
職業……聖女
年齢……17
生命力……C 魔力……B 筋力……E 素早さ……D 耐久力……E 魔攻……C 魔防……C
スキル
【魔法適性(聖、光、空間)】【聖なる護り】【聖女の祈り】【魔法効果上昇】【浄化の光】
◇◆
「すごい! 私も3つレベル上がってます! ステータスは……素早さが上がってます!」
サーシャは嬉しいのか今にも踊り出しそうだ。
◇◆
ソフィア レベル21
職業……戦士(槍)
年齢……22
生命力……C 魔力……E 筋力……C 素早さ……C 耐久力……D 魔攻……E 魔防……E
スキル
【槍術】【身体強化】【気配察知】【騎士の矜恃】【剛腕】
◇◆
「私は2つ上がっていますね。何もしていないのに上がるなんて不思議な感覚です」
「まぁそれは仲間が倒したんだし気にしなくていいんじゃない? それにソフィアにも【剛腕】あるじゃん!」
筋力も上がっているし【剛腕】も習得したならソフィアの攻撃力はかなりアップしたんじゃなかろうか?
本人はなんとも言えない顔をしているが喜ばしいことだろう。
◇◆
アンナ レベル20
職業……戦士(剣、盾)
年齢……19
生命力……D 魔力……E 筋力……D 素早さ……D 耐久力……C 魔攻……E 魔防……D
スキル
【剣術】【盾術】【堅牢】【衝撃緩和】【不動】
◇◆
「自分も2つアップと【不動】を覚えたみたいッス! いいスキルが手に入ったッス!」
素早さもアップしてるな。
しかし【不動】、どんなスキルなんだろ?
「ねぇ、【不動】ってどんなスキルなの?」
「【不動】は発動したら数秒間だけ移動出来なくなるスキルッス! だから吹き飛ばし攻撃受けてもノックバックせず耐えられるッスよ」
なるほど、それはタンク職にとって最適なスキルだな。
「やっぱりみんなレベルアップしてるんだね」
「みたいです! これもクリード様のおかげです!」
「俺じゃなくてウルトだよ。俺は結局今日何もしてないし」
1匹も倒してないからな!
「でも昨日は大量にゴブリンを倒していますし、その経験値も分配されたものと思われます。なので聖女様の言う通りクリード殿のおかげで間違いはありません」
「そうよ。それにウルトの力も元を辿ればクリードの力、少しは自信持ちなさい」
そっか……まぁそうなのかな?
完全にウルト頼りだけど一応俺がマスターなんだし、自信持ちすぎるのもダメだけど卑屈になるのもいけないね。
「分かったよ。卑屈になり過ぎないよう気をつける」
「卑屈だなんて……クリード様はもっと堂々としていいと思いますよ?」
勇者なんですから、とサーシャは続けるが追放されたから勇者ではないよ。
「それで……これからはどうするの? ランクとレベル上げるって話だったけどゴールドまで上がったし、レベルも十分だと思うけど」
あ、それ俺も気になる。
ランクとレベル上げるのが目標だったけど具体的には決まってなかったし。
「そうですね……正直どうしようかと。予定では勇者パーティの出立までにゴールド、可能ならプラチナランクまで上げてから勇者パーティと別ルートで魔王を目指そうかなと思っていました」
「このままプラチナ目指す?」
それなら一応サーシャの予定通りにはなるけど……
「それでもいいのですが、少しもったいないかな? と思いまして……まさかこの短期間でここまでレベルを上げられるとは思いもしませんでした」
「いつかは追い越されると思っていましたが2日は早すぎます」
「そうッスよ! 自分らの立場がないッス!」
ぞんざいな口調だが2人はそこまで気にしている感じではない。
「それより聖女様、時間に余裕があるということでよろしいですか?」
「え? えぇ、恐らく勇者パーティの旅立ちまであと数ヶ月はかかると思いますし、魔王側もまだあまり活発には動いていませんし……」
「ならば行きたい場所があるのですが……」
言い淀むソフィアって初めて見るかもしれない。
淡々とクールなイメージがあるからな。
「どこに行きたいのですか?」
「迷宮です。迷宮なら効率よくレベルアップか可能ですし、踏破階層によってはランクアップをすることもある聞いたことがあります」
「なるほど確かに……」
迷宮? ファンタジーの定番迷宮?
「なぁ、迷宮って?」
「クリードは知らなくても仕方ないわね。迷宮っていうのは魔界から瘴気が流れ込む場所と言われているわね。最奥には魔界からやってきた強力な魔物がいて瘴気を発していると言われているの。その魔物を倒して迷宮を解放すれば文句無しでオリハルコンランクね」
オリハルコンランクねぇ……
「それに迷宮では貴重な鉱石やマジックアイテムなんかを手に入れられることもあるのよ。だから迷宮には沢山冒険者が入って死んでいくのよね」
よくある設定そのままだけど、実際耳にすると恐ろしいな……
「それって危なくないの?」
「もちろん危険よ? でも浅い階層ならそこまで強い魔物も現れないし気にする程じゃないと思うわ。自分の力量さえ把握出来ていればれば大丈夫よ」
深く潜ればそれだけ強い魔物が現れるってことか。
「分かった、ちょっと興味あるから行ってみたいかな」
「そうですね……このメンバーならそこまで危険は無いでしょうし、クリード様とウルト様が居れば最深部まで行けちゃうかもしれませんね!」
最初難しい顔をしていたサーシャも段々乗り気になってきたのかテンションが上がってきた。
でもウルトはともかく俺はそこまで頼りにならないと思うぞ。
「ならどこの迷宮がいいかしらね? ここからそう離れてない場所と言えば……東のグリエルか北のリバークくらいかしら?」
「それならリバークの方がいいッス! グリエルの迷宮は昆虫系の魔物が多いって聞いたことあるんで出来れば行きたくないッス……」
昆虫系……俺も嫌だな……
「そうね、ならリバークにしましょうか。それでサーシャちゃんいつ出発する?」
「あまり時間を無駄にするのもアレですし、皆が良ければ明日冒険者証を貰ったら出発でどうですか?」
「私は構いません」
「自分も大丈夫ッス!」
「俺は……なんも無いな、大丈夫だよ」
買うものも無いし、そもそも知り合いも居ないんだから俺にやることなんてある訳がない。
「じゃあ明日ここの精算してギルドで冒険者証を受け取って出発ね。それと決めておかないといけないことがあるからその相談なんだけど」
「決めておかないといけないこと? なんですか?」
「報酬の分配よ」
「ん? 頭割りじゃダメなの?」
報酬の分配と聞いて一番に思いつくのは頭割り。
一番公平でいいと思うよ? 1人2割だね!
「今回の殊勲者はクリードよ? 貴方はそれでいいの?」
違うよ。ウルトだよ。
「殊勲者が俺かどうかは議論の余地しかないけど、もしそうだとしても俺は頭割りでいいぞ?」
「そうなの? クリードがそれでいいなら提案があるのだけれど、いいかしら?」
どうぞ。
誰からも意見が出ないのを確認してからリンは続けた。
「総額の2割と端数をパーティ資金に、残り8割を6人で頭割り。これでどう?」
「え? 6人で?」
意味わかんないよ?
「私、サーシャちゃん、クリード、ソフィア、アンナ、それからウルトよ。ウルトは使えないだろうからウルトの分は実質クリードの取り分ね。どうかしら?」
ダメだと思いまーす! 不公平でーす!
「私はそれでいいと思います。ウルト様のことは頼りにさせてもらいますし」
「私も構いません。と言うより私とアンナの立場で頂いてもよろしいのかと……」
「自分は文句は無いッスけど……今回何もしてないのに分け前だけ貰うのは心苦しいッス……」
え? みんなそれでいいの?
「じゃあそれで決まりね。クリードもいい?」
「いや……不公平じゃない? 俺だけ貰いすぎというか……」
そりゃ少ないより多い方がいいよ? けど明らかにほかの人より多く貰うのは気が引けるというか……
「これからもクリードとウルトには頼らせてもらいたいし、パーティ資金を2割に抑えてるのも街から街に移動する時の馬車代を節約してウルトで移動したいからっていうのもあるの。だから節約できる分をそっちに回しただけ……納得出来ない?」
うーん……ウルトのおかげで経費削減できるからその分貰えってことか……
「みんな不満は無いの?」
「ありませんよ。このような言い方はあまりよくありませんがクリード様とウルト様にはそれだけの価値があります」
ほかのメンバーを見ても頷いている。
下手に反対しても長引くだけか……
「わかったよ、受け取る」
「それでいいのよ。じゃあ収支報告するわね」
リンが発表した収支報告は以下の通り。
ゴブリン総数327匹で大銀貨6枚と銀貨2枚と大銅貨1枚。
ホブゴブリン5体で大銀貨1枚。
ゴブリンキング1体で金貨4枚。
ウルフ10匹で銀貨2枚。
合計金貨4枚、大銀貨7枚、銀貨4枚、大銅貨1枚。
分けやすいよう銀貨換算239枚と大銅貨1枚。
ここから銀貨46枚、大銅貨1枚をパーティ共有資金へ。
残り銀貨193枚を6人で割って1人頭銀貨32枚と少し……
さんじゅうにまんえん!!
全員銀貨32枚受け取り端数はパーティ共有資金へ。
俺はウルトの分も受け取るので銀貨64枚。
たった3日で64万円稼いでしまった……
「これで終わりね。明日は8時に食堂集合ね、じゃあ解散!」
いや解散とか言われてもまだ2時とかだよ?
昼寝しかやることないしそれはもったいない。ならば……
「なぁリン、魔法教えて欲しいんだけど……」
「魔法? 今日見たでしょ、たくさん魔法使って私疲れてるのよね。だから私は今日はダラダラ過ごすの!」
リンはベッドに飛び込んでそのまま動かなくなってしまった。
これは今日教わるのは無理か……どうしよう?
「クリード様、私でよければ教えますよ? リンさんと比べてしまうとレベルは低いですが……」
「いいの? レベルなんて関係ないよ、是非頼むよ」
「はい! では……クリード様の部屋でやりましょうか」
サーシャは苦笑いを浮かべながらリンを見てそう言った。
確かにあそこまでダラケてる人の横でお勉強はやりづらいよね。
「ソフィアとアンナも寛いでいてください。リンさん、お昼寝するならせめて着替えてからしてくださいね?」
2人は頷きリンは片手を上げてヒラヒラさせている。返事だろう。
「それではクリード様」
「うん、よろしくね」
魔法……早く使えるようになりたいな。




