120話……救出
全ての準備が終わり出発、コンディションは万全だ。
「クリード、調子は?」
「お陰様で万全だよ」
リンは強い目で俺を見ている。俺も力強く頷いて返す。
「じゃあ行こうか」
『かしこまりました』
ここから魔王城まではおよそ50キロ、この程度の距離はウルトならあっという間だ。
今回は正面突破、小細工無しに突っ込んで勇者たちちの首を取る。
卑怯だの不意打ちだの言われるのも腹が立つからな……
魔王城の正面にたどり着く。城の前には野良の魔物が居るくらいで警備らしい警備は行われていない。
「勇者たちはどの辺に居るんだ?」
『中枢ですね。魔族の反応も多数あるので居住区かと』
居住区か……
「魔王城全体で魔族や魔物はどれくらい居る?」
『それなりの数ですね。障害にはなり得ません』
ウルト基準だろうからアレだけど、障害にならないと言うならならないのだろう。
「よし、なら派手に行こうか」
「突っ込むの?」
「もちろん」
扉から何からぶっ壊して行けばそのうち勇者たちも出てくるだろう。
ウルトに命じて正面の城門を破壊、中庭へと突っ込んだ。
ワラワラと魔物や魔族が集まってくる。声は聞こえないがおそらく怒号が飛び交っているだろうと予想できる。
「よし、片っ端からふみ潰せ」
『オーケーマイマスター』
こちらに武器を向ける魔族、威嚇してくる魔物を片っ端から撥ね飛ばして先へ進む。
壁や扉も気にせず破壊の限りを尽くしていく。
『マスター、あそこの部屋から地下に降りられます。先にサーシャ様たちの救出を行うべきかと』
勇者たちにはまだ動きは無い、おそらく出撃準備中なのだろう。
「よし、助けに行こう」
ウルトが居なければ守れるかどうかの判断も必要になってくるがウルトに乗っていれば安全なのだ。躊躇する理由は無い。
扉をぶち破り階段を下る。
そこを守る兵も居たが全てを撥ね飛ばして進む。
階段を下り終えるとそこは地下牢のようになっており格子が並んでいる。
『奥から2つ目にサーシャ様が囚われております。その両隣りにも他国の聖女様かと』
言ってたな。
「3人とも救出する。でもまずはサーシャからだ」
正直サーシャ以外はどうでもいいからな。
守衛らしき魔族を撥ね飛ばして奥へ、サーシャの囚われた牢の前でウルトから降りる。
「サーシャ!」
鉄格子の隙間から中を覗くとベッドに横たわっているサーシャの姿、中に他の人影は無い。
強欲の剣を取り出して上段に構える。
息を吐いて【魔力撃(極)】を発動、鉄格子を両断して中に飛び込む。
拘束している鎖を同じ手順で破壊して抱き上げる。
呼吸、脈拍は安定。しかし呼びかけても反応は無い。
魔法なのか薬なのか、なにかしらの手段で眠らされているのだろう。
サーシャを横抱きにしてウルトの車内に戻ると既に寝かせるための寝台が用意されていたのでそこに下ろす。
「治療しておくわ!」
「頼む、俺は他の聖女も助けてくるよ」
ウルトが道を塞いでいるため増援を警戒する必要も無く残り2人の聖女も同じ手順で救出、ウルトの中で寝かせておく。
「リン、サーシャは?」
「おそらく闇の魔法ね、光魔法で相殺しているからもうすぐ目覚めると思うわ」
「分かった。引き続き頼む」
聖女の治療をリンに任せて無理やり方向転換。その時にも城の一部を破壊したがどうでもいい話だ。
なんなら城ごと潰してもいいくらいなのだから。
階段を下りてくる魔族や魔物を吹き飛ばしながら進み元の部屋へ、勇者たちを目指して突き進む。
『マスター、勇者たちに動きがありました、こちらに向かってきています』
「やっとか……」
『この先に広間があります。そこで待ち構えましょう』
ウルトの感知によると大体体育館くらいの広さの部屋があるらしい。
勇者たちの進んでくる方向からそこで待っていれば向こうからやって来るだろうとの事だ。
部屋の扉を破壊して中に入ると数人の魔族とそれなりの数の魔物が待ち構えていたが吹き飛ばして終了、ここで決着を付けるために一時停車する。
「リンは治療を頼む。ウルト、後ろの扉は魔法で塞いでおくから勇者たちが来る方の扉から増援が来たら対応よろしく」
『かしこまりました。お任せ下さい』
「あたしも了解よ。クリード、無茶はしないでね……危ないと思ったらすぐにあたしとウルトも加勢するからね!」
リンの言葉に首肯で返してもう一度サーシャの顔を除き込む。
顔色は悪くない、もう間もなく目覚めそうだ。
出来れば……終わるまでは起きて欲しくないな……
ウルトから下りて扉に近付き土の魔力を練り上げて魔法を発動。大きな岩を生み出して扉を塞ぐ。
『マスター、間もなく勇者たちが来ます。数体の魔族を連れているようです』
「そうか……魔族の相手は任せても?」
『もちろんです。お任せ下さい』
軽く打ち合わせて奥の扉に向き直る。
【無限積載】を発動して強欲の剣を取り出して腰に差しておく。
ガチャリ……と扉が開き見覚えのある顔が4つ、それとダークエルフのような魔族が数人部屋に入ってきた。
「久里井戸さん……」
勇者が俺の顔を見て名前を呟く。
やめろ、その汚い口で俺の名前を呼ぶな。
「よぉ勇者サマ……あの時のお礼をさせてもらいに来たぜ」
数歩前に出ると勇者たちは各々武器に手を添えて警戒態勢をとる。
動くなよ……お前らが呼吸しているだけで腹が立つんだ。
「貴方が久里井戸さんですか、どうですか? 貴方も我らの――」
「黙れ」
勇者たちと一緒に来たダークエルフ風の魔族が口を開くが全力全開の殺気をぶち当てて黙らせる。
お前はお呼びじゃないんだよ。
「ぐっ……わ、私は四天将の一角、【精霊王】エルドラウト! 四天将を2人も倒した貴方なら四天将の地位も――」
「黙れと……言っただろ?」
【魔力撃(極)】を発動、同時に転移魔法を使用して魔族の背後に瞬間移動する。
「――思いのまま……」
背後から心臓を貫いて話の途中だが物理的に黙らせる。
警告はしたぞ?
剣に込めた魔力を起動、炎と風の魔力を流し込み魔族の体を爆散させた。
《【精霊召喚】を獲得》
「なっ……!?」
勇者たちは呆然とこちらを見ているが……隙だらけなんだけど?
このまま斬り捨てたい気持ちになるがなんとか堪えて元の位置に転移、改めて勇者たちと向き直る。
「さて……邪魔しそうな奴は静かになった事だし……殺ろうか」
殺意をこれでもかと込めた視線で睨みつけるとビクッと肩を震わせる勇者たち。
ダメだな、これだけの動作でも腹立たしい。
「お……俺たちは……」
「黙れ」
魔族にしたのと同じように殺気を飛ばすと顔を青ざめさせてまるで産まれたての子鹿の如く足をプルプルさせ始めた。
さて……楽に死ねると思うなよ?




