【続】ヒロインなのに婚約破棄から、監禁されました ~魔王様の溺愛~
「ヒロインなのに婚約破棄されました」のその後。
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はい。アリアドネです。
魔王ルシフェル様に監禁? 軟禁? の末、溺愛されています。
なんだか、私の知っている、乙女ゲーの最終エンドは詳しく知りませんが、
痛い事とか、怖い事とか、エロい事とか、特に無理強いをされることもなく
ヤンデレキャラ魔王様エンドは、ちょっとほのぼのかも? と期待してしまいます。
現状を鑑みて。
ただ、しっかり、うっかり、かなり長い寿命を賜ってしまったらしく
これからの長い人生設計を、真面目に考えなければ、ならなそうです。
そもそも、引きこもりだったので、書籍や漫画、ゲームがあればいくらでも時間は潰せます。
魔王城に私の好む娯楽があれば、あるいはとっても譲歩できたかもしれません。
でも、何にもないんですよ。娯楽!
これは、忌々しき事態です。
「ルシフェル様!」
「愛しのアリアドネ。他人行儀な、様付けは止めてくれ」
本人の希望だし、面倒なので、敬称なしの、呼び捨てで、いかせていただきます。
「はい、ルシフェル」
それだけで、紅玉の瞳が甘い色を湛える。
それはさておき、仕切り直しです。
ですから
「なぜ。このお城には、図書室が無いのですか?」
「図書室?」
「ルシフェルは、永遠の命で居るのに、世の中の、歴史や記録、そして物語などのフィクションの書物の存在をご存じない?」
「書物なら、わが書斎にたくさんあるが、図書室? 図書室というのは、本を保管する場所の事か?」
「その通りです。何故、歴史ある、こんな豪華な、お城に図書室、もしくは書庫が無いのですか?」
「書庫はある。わが書斎に入りきらない書物を保管している」
「え? あるの? 書庫! 今日から書庫に入り浸ります」
と、テンション爆上がりだったのに……
まさかの!
読めない! この世界の文字、全く読めない。
スピーキング、ヒアリングは普通に、自動翻訳仕様なのか問題なかったのに。
文字! まさかの読めない(大事なことなので3回目)
はー、小学生レベルから、この世界の識字環境、勉強し直しか。
ちょっと娯楽に近づけたと思ったら、まさかの読めない。異国文字。
まあ、異世界なんだから、異国どころの話じゃないのは、ある意味当然なんだろうけど。
せめて、英語とか、文字位、見たことある言語だったらな。と思うの。
アラビア文字みたいな、もっと折れ線グラフ繋がったみたいな、のたくった文字で、まったく想定できない。
単語の切れ目とかもわからない。句読点もないから何処で一文が切れてるのかもわからない。
スピーキング、ヒアリング、みたいに、リーディングも自動翻訳される機能はないのかな?
気づいて思い返してみたら、婚約破棄された、卒業パーティーまで通っていた、貴族の子女が通う学校、文字の記載された教科書も先生の板書も、それを筆記するノートも無かった!
いやいや、今、気が付いたよ。
文字記録の文化レベルだけが低いってこと?
魔王城と学校のレベル差もあるのか?
その辺は、魔王様に聞くしか、回答にはたどり着けないのか。
書籍で、躓くこの環境、ゲームなんてデジタルなものは期待できないですよね。
はー、乙女ゲーの世界の癖に、ゲーム全否定か!
まあ、お約束ですよね。中世っぽい時代設定の王子様がヒロインを見初めて、
という世界感な乙女ゲーにパソコンや家庭用ゲーム機、携帯ゲーム機、スマホは、似つかわしくない。
取り合えず
目標1
私の娯楽ゲット! 生きる糧のために(あ、ご飯はちゃんと美味しいの毎日いただいています)この世界の文字、文法を学ぶ。
次の
目標2
娯楽拡大のためにこの世界でできることを模索する。それには、魔王様にヒアリングが必要ですね。
「たのもー」
「今日は随分と積極的だな? アリアドネ」
はい、毎日の事なので、この蕩ける赤く甘い瞳には、慣れました。
ちょっとだけ、嘘です。
だってー、趣味に驀進生活だった、モテないアラサー引きニート(じゃないけど、ギリ在宅ワーカーだけど! )に、ヤンデレとは言え、このイケメンの怒涛の求愛は、ちょっと荷が重い。ので、ちょっと目を逸らしてしまう。
「ルシフェル。この世界の文字が、私には読めないの。聞いて、話す事はできるけれど。だから誰か、適任な先生を用意して欲しい」
「アリアドネに、教えを請われる存在が、俺にとって許せると思うか? 聞きたいこと、教わりたいことは、全て私が教えよう」
あー、そうくるか。まあヤンデレだったら、そうですね。知ってた。分かってた。背に腹は代えられない。
「では、ルシフェル、毎日、私に授業時間を取ってくださいますか?」
「アリアドネのためならば、当然だ! いや、毎日アリアドネと約束された時間を過ごす事ができるなんて。むしろご褒美だ」
魔王って、割と暇なの?
という訳で、一つ目の目標にむけて、勉強する環境はゲットした。ヤンデレ魔王様と過ごす時間が増えてしまった事には目を瞑ろう。
では二つ目は?
「ルシフェル、書籍以外に、この世界には娯楽といわれるものはないのですか?」
「娯楽?」
「はい。絵画や動く絵画や、作り話を人が演じて見せるものや、歌や踊りを魅せる興行や、カードやコマを使ったゲームやスポーツなど、他には、風光明媚な遠隔地に行って、その地に宿泊し形式や料理などの特色を楽しむ、とか、私の前世では、様々な素晴らしき娯楽があったのですが、こちらでは、どのくらい、そういったものがあるのか知りたく……」
出来るだけ、存在していなくても、どんなものか伝わるように、具体例を挙げてみた。
「美術品の絵画が見たいのか? 他には、演劇、オペラ、バレエ、スポーツは、人の世界には存在するが、アリアドネを排除した面々がこの世を去るまで、あちらに連れて行きたくないな……ボードゲームなら書斎に沢山あるぞ。それから、遠隔地は、良さそうな景勝地を幾つか探させておこう」
ふむふむ、やはり中世に近いのか。絵画、演劇、オペラ、バレエ鑑賞、スポーツ観戦ができると。でも、婚約破棄王子が生きてるうちは魔王の森からは出して貰えなそうと。リアル現実的に楽しめる、娯楽はボドゲか旅行位ってことかー。
即日、授業が始まった。
「この文字が、発音でいう『あ』」
「はい」
「私が伝えたい単語は『あい』こう書きます」
「……はい」
わー「愛」という文字を教えながら、
あごクイして、キスしようとしてくるの、やめてください。
ちょっとフリーズして、何もできなくなるからやめてくださいーーー!
はぁーはぁー……ゼイゼイ……
椅子をバタンと倒して、立ち上がり、広い部屋の壁際までちょっと走って、距離取ったつもりだったんですが……
魔王様は、さすが、チートですか? 瞬間移動できるんですね。そういえば、卒業パーティーから魔王城へ瞬間転送してましたね。
はい、一瞬で、目の前に立ちふさがり、むしろ走っている私、抱き留められました! 壁に激突せずに済んだとも言えますが、腑に落ちない。
イケメン免疫度低い私が、色気と愛の甘い色が駄々洩れのルシフェル相手に、毎日、文字と国語の勉強を、緊張せずに、頭に血が上らずに、どこまで出来るか次第! 私の今後の娯楽クオリティーオブライフを左右する。
「アリアドネ、毎日、宿題を出そう。その日覚えた文字を使って、俺に手紙を書く。という宿題だ」
それ、個人的に私からお手紙欲しいってことですよね? 魔王様、ピュアか!?
実益とご機嫌取りを兼ねて、ガンバリますよ!
照れてなんか! いないんだからね!
先生がイケメンで距離近いと勉強に集中できません……アリアドネの娯楽生活のため目標達成率は20%程度。