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前王弟殿下のかれいなる隠遁生活(スローライフ)【本編完結】  作者: 羽生 しゅん
冒険者講習編:脳筋も一種の筋肉だろ?
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採取も基礎代謝を底上げする手段になりうる

採取の講習、実践編……なはずなのに、採取している描写が出てこない。何故だ。


ユニークが16000、PVが4600超えました。

有り難うございます!

レイニオがとっておきの昼寝場所を教えてくれそうです。



「次は実際に採取してみましょう」


そうローレンが宣言したため、彼らは学びの舞台を庭へと移した。


ここに来るまでに約半刻、みっちりと基礎知識を教わった。

採取の仕方から公然のルール、一般的な薬草とよく似た毒草の見分け方、キノコの扱い方まで。おまけにギルドに納品された品物が、どのように活用されているかもネタの1つとして話してくれた。


誰だ、夫婦喧嘩に毒草を持ち込もうとした第三者って。

しかもギルドが、その材料から毒の作成を予測して、似ていた惚れ薬の素材に変えて納品したって。

バレなかったのか?それよりも、ギルド公認で励んじゃったのか?


その話は、聞いていた一部の人間の心にダウンバーストを巻き起こしている。

現在進行形だし、誰も1人とは言っていない。顔には出さないが。


……ともかく、見やすい(文字は(いか)ついが)テキストと、流石ギルドの講師というべきか判りやすい解説に、勉強が苦手そうなルミでも楽しく基礎が入ったようだ。それを褒めると、ローレンはまた顔を赤くしていたが。






庭、というよりも森の入り口で彼は立ち止まった。


「良い森ですね」


いい、と言われても、基本的に『葉霧の森』は一般的に言えば、手の入っていない放置された森である。


魔物の出現率が高い事もさる事ながら、木材も自分たちで使用する分しか使わないし、管理の人手が足りないのだ。

お金にならない広域の森を魔物の警戒をしながら枝打ちなど、誰もやりたくないのだから。


ガライたちは枝どころか木自体を折ってしまっているが。自分たちで使うつもりなのでノーカウントである。


「そうですね。自然豊かで気候も温暖で……」

「魔物もいるけどな」


採取物目線の2人の言葉に、ガライが人間目線に戻させる。


「ローレンは採取メインって判っているけど、魔物相手に戦える?」


そして、見た目少年に確認する。


「ものによっては危険な場所に行ったりしているので大丈夫です、って言えたら良いんですけど」

ローレンは照れ臭そうに頭を掻く。

「逃げ足だけは自信があります……」


「見た目によらない瞬発力と持久力を持っているんだな!」


そんな彼に筋肉ムキムキは納得したように頷いた。


一応、腰にはショートソードが提げられているが討伐用というわけではなく、逃げる時間を作るためのもののようだ。そして、危険な生物に出会えば一目散に逃げるのだろう。


「自称執事もそれくらいの逃げ足があれば……」


付いてきていたレイニオがジト目で上司を見る。しかし普段運動しない者にそれを求められても困る、とばかりにその視線に苦笑を返す。


「ま、今日は魔物が出ても、俺たちが何とかするから」

「守るのは苦手なんだけどなぁ」


前王弟の護衛代理のはずが、その本人を守らずに他3名を守らないといけなくなりそうだ。

我らがアニキは、いつも素直に守らせてくれない。


「がんばれ、レイニオ」


ルミがいい笑顔で肩を叩く。


「アンタに言われたくないんだけど」


守られる側に言われても、と黒髪の少年は顔を背けた。


それを見ていた、もう1人の守られる側の美中年は、気にせずローレンに話かけた。


「薬草の採取の練習なら、あちらにリリ草が生えておりますよ」

「ふぁい!」


まだ美中年には緊張するのか、ギルド講師から奇声が出た。


「それから近くにペルメの木もありますから丁度いかと」


ビフレットは右手、湖と平行の方向を指す。


「よく調べているなー」


これにガライは感心の言葉をかけた。


「この間、若様たちが出掛けている時に調べたのですよ」

「それで魔物に気が付かなければ、世話ないけどね」


得意気な自称執事の様子に、その弟子が辛口コメントをする。


「でも、そのお陰で役に立ってるんだ。だから有り難う。レイニオも」


素直に礼をいうガライ。

それを「どういたしまして」と王子様スマイルで受け取る美中年と「当たり前の事しただけだから」と視線を逸らす黒髪の少年。


「あ、照れてる」とルミが言えば、レイニオが睨んでくるが、迫力がない。


「そういう事だから、そこに行ってみてもいいか?」


ガライが講師に伺いを立てる。それにブンブンと過剰な程頷いたので、先程、自称執事が示した方へ移動する。




 まだ森の浅いところなので、日の光が黒い土に点々と模様を描き、上を見ると名前の由来である霧のような葉。その隙間から、空が葉の色と溶け込みそうになりながらも、より濃い青を覗かせている。


今日は天気がよく南方の暖かな気候と相俟(あいま)って、本当に穏やかな空気が漂っていた。

魔物も、この間のペリュトンのせいなのか知らないが、姿を見る事はなく、目的地へと辿り着く。


「どうしたんだ、ガライ。こんな所に来るなんざ」


少し拓けたその場所は、何本かの木と青々と繁る草。そして、茶髪の筋肉ダルマとしゃがみこんでいるウサミミフード。


どうやらジャガルドがラジーのお供でここにいるらしい。


「ふえたー!」とばかりに、見た目少年が一歩下がる。

それに「大丈夫です。飛び掛かったりしないムキムキなので」と美中年が声をかけている。

ジャガルドに失礼ではないだろうか。


「前に言ってた冒険者ギルドの講師が来てさ、薬草採取について教えてもらってるんだ」


立ち上がるラジーを見ながら、ガライは幼馴染みの疑問に答える。「ああ、あの時のか」と納得している。

そして講師と思われる人物を見て「ん?」となって、足元のラジーを見て、また彼を見た。つまり2度見である。


「ローレンは10年程、ギルドで教鞭を取っているそうだぞ」


次に気付かれないようにレイニオと見比べ始めたジャガルドに、それを察したガライが然り気無く情報を伝える。

新たなゴリラの登場に衝撃を受けていたローレルには、幸い気付かれていないようだ。


「ガライが世話になる。オレはジャガルド、こっちはラジーだ」


気を取り直して、とりあえず見た目少年に挨拶するジャガルド。そんなジャガルドの横でウサミミがピョコっと上下する。


「こんにちは」


ちゃんと挨拶出来る子ラジー。

それを見て反射のようにローレンも頭を下げる。


「ロ、ロ、ローレンですぅ、本日はお日柄もよ」

「そっちは、おつかい?」


何か必要の無い事を続けそうだったので、ローレンのセリフをぶった切って、ガライが幼馴染みに聞く。


「チヤから頼まれてな。オレは付き添い」


思った通りの役割だった。

『森へ子供だけで入ってはいけない』という町の方針は変わっていないし、それは攻撃手段のあるラジーであっても適用される。

よって、本日は屋敷で筋トレをしていたジャガルドに、保護者という白羽の矢が立ったのだろう。


「オレたちは終わったから、そろそろ帰るわ」

「お母さんに、おみあげ」


先程、しゃがんでいたと思っていたら、ラジーは花を摘んでいたらしい。手には薄紅色の小さい花が握られていた。


それを見たローレンは目の色を変えた。


「リリ草の花!?」


さっきまで「お日柄も~」の後もずっとオロオロと挨拶を続けていた人の反応ではない。現にラジーがジャガルドの後ろに隠れた。


「よっぽど環境がよくないと咲かないのに!」


「そんなビックリしなくても、そこら辺に咲いているよ?」


ルミがビックリしたのにビックリしたように周りを指差す。


「この花、道端に咲いているよなぁ」

「可愛い花ですよね」


追い討ちのように大人2人も続く。何が凄いのかよく判っていない。


「花咲いていたら、スゴく苦くなるとか、効能()くなるとか?」

花に釘付けのローレンをムキムキが覗き込む。何故かヤンキー座りで。


「ひっ、い、いえ、花も風邪薬などに使われますが」


急に視界に入ったガライの顔に思わず悲鳴を上げたが、薬草の事だったので、ちゃんと質問に答えるギルド講師。




そして、こんなのは序の口に過ぎなかったのだ。


「あ、キング。どうした?」


顔面凶器の巨大ウサギの登場に、とうとう悲鳴を上げそうになって、ビフレットに口を押さえられた。


ローレンは思った。

プレートの町は噂通り『人外魔境』だと。




何か、移動だけで終わってしまった。

ラジーはチヤに木苺的なものを採ってきて、と頼まれていたようです。そしてジャガルドは酒のツマミと引き換えに護衛を引き受けたらしいです。


ローレン、ビビりすぎ!とか、人外魔境、プレートの町(笑)とか思った方は、ブックマークや評価、いいね!をポチッとお願いします。

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