クラブサンドの誘惑 ~個数が合わない!?いつもの事だ!~
仲間たちが動き出します。
PVが700超えました。読みに来て下さって有り難う御座います。
キャロラインが腰に片手、もう片方の手を口元に当て高笑いをするほど喜んでおります。(判りづらい)
その日の昼食は、予め用意されていたクラブサンドだった。
具は大人組には香辛料を効かせたぶ厚めのハム、子供組には卵焼き。それと輪切りのトマッホと葉物野菜にチーズベースのソースがかかっていた。それがよく食べる2人を考慮して多めに作られていたのだ。
子供用も大人が食べる事も考慮して。
まだ引っ越しの片付けが終わっていないので、各自時間を気にせず食べられるように、というチヤの気遣いだったが、今回はそれが裏目に出てしまった。
屋敷で一番に気が付いたのは、やはりチヤだった。
自分の子供たちの姿をかなりの時間見ていない事に気が付いたのだ。
確かに朝、ガライから「ラジーはルミと遊んでいる。レイニオにはちょっと調べ物してもらっている」とは聞いたが、余りにも気配がなさすぎる。
気配の察知なんて出来はしないが、子供の声が、足音が全く聞こえないのはおかしな事だ。
ラジーのおでかけカバンが無くなっているのを確認し、首を傾げながら優男でも捕まえて尋ねるか、と自室を出たところで屋敷の入り口から声がした。
出て行ってみると、老年の男が焦りを顕に立っている。
そして、彼女の姿を見つけると、勢い込んで口を開いた。
「ルミ、ルミを知らんか!?」
もうそろそろ日が落ち始める時間。
ルミの祖父であるステンが、彼女を探してやって来たのだ。
それにしては様子がおかしい。
「朝、ここに来て、うちのラジーといるはずなんだけど」
チヤは嫌な予感がした。
「全然姿を見ていないんだ」
「どうかしましたか?」
そこにキャロラインを筆頭に幼馴染み3人組が歩み寄ってくる。先程の声が聞こえたようだ。
「あんたたち、ラジーとルミを見かけなかったかい!?」
チヤが声をかけると、3人は顔を見合わせ「やっぱりこうなった」と表情を苦いものに変える。
ガライの勘は昼前に合流した時にすでに伝えてあったので、何か起こるかも、とは思っていたのだ。
「オレたちが見たのは、嬢ちゃんがラジーを誘いに来た時だけだ」
ジャガルドが眉間に皺を寄せながら答える。
それ以降はキャロラインについて荷物の移動をしていたのだから、当然姿は見ていない。
「何か不安そうにしていたぞ。何かあったのか?」
ガライがステンに尋ねると、彼は少し俯き言葉を紡ぐ。
「実は昨日の夜から娘のセラの調子が良くなくてベッドから出られんのだ。
薬となる薬草もこのところ少なくなって来て手に入れにくくなっている。葉霧の森ならばあるかもしれんが、魔物が出る。
子供だけで行くなと言ってあるのだが、今朝、ルミが「私が取りに行ってお母さんを助ける!」と言い出して、思わず怒鳴ってしまったのだ」
「怒ったのは不味かったかもねぇ。子供はムキになりやすい」
チヤが顎に手をやり唸る。ガライから詳しく話を聞いていなかったが、非常によろしくない展開ではないか。
「恐らく、そんな後にラジーの魔法を見たのでしょう。そして、これならば魔物が出ても大丈夫だと葉霧の森へ入ったのかもしれません」
キャロラインは、とどめというべき可能性の高そうな推測を告げた。
「何て事だ。夜の森は大人でも危ないというのに……!」
ステンは天を仰ぐ。
「エメラブリの葉などより命の方が大切なんだぞっ!!」
「は?」
悲壮感漂うステンの言葉に、その場にいた全員が気の抜けた声を出し、一斉に玄関ホールに入ってきた自称執事を見た。
「な、何なんですか!?」
注目には慣れているが、流石にその視線には狼狽えるビフレット。
「とりあえず、レイニオに連絡だ。キャロ」
「はい、わたくしからレイニオへ『聞こえますか?』」
「え?どういう事?」
事情の判らないままのビフレットは置いておいて、各自動き出す。
「ラジーは賢い子さ。カバンが無くなっているって事はあえて付いていったんだろうね」
「むしろラジーといるから無事な確率が高いな」
「早く助けてあげなきゃな」
少し顔色が悪いチヤにうんうんと頷く筋肉2人。
ステンは突然の行動に付いていけない。
『オッケー、司令官。指示をどうぞ』
突然、ここにはいないはずのレイニオの声が届く。
『今の状況を』
その事に動揺する事無くキャロラインが聞く。
『現在地、葉霧の森。そこからは南西の方角約30分』
『女王と小さな騎士の様子は』
『敵複数。籠城の構え。危なくなったら手を出すよ』
『判りました。ではナビをお願いします』
そして自分の横の巨体を仰ぎ見る。
「聞こえましたね、ガライ」
「ああ。チヤはアレをセラの所へ。ビフレットはキャロのサポート。ルドはいつもの通り来てくれ。行ってくる!」
「レイニオに案内させます。気をつけて」
指示を出した後、ガライはひらりと扉から出ていく。
その背に声をかけたキャロラインは手を叩く。
「各自、行動を開始。ステンさんはチヤさんとご自宅へ戻って下さい。ちゃんとお嬢さんは送り届けますので」
時は戻って昼間。
ガライたちと別れたラジーは困惑していた。
己の手を引く少女に「アニキはとっても強いんだ」と伝えたかったが、何だか怒っているようで、声が掛けられない。
それにそっちは森の方だ。
森は魔素が集まり易く、魔物が生まれやすい。
この町に来るまでも大きなクマがいたから、森に入るのなら止めた方がいい、と大人たちに言われているし、自分でもそう思っている。
いくらか進んだ後、少女の腕を引くと彼女は意外とすんなり立ち止まった。
「何よ?」
「どこ行くの?」
昨日は屋敷の中を探検した。まだ見終わっていない所もある。遊ぶなら屋敷の中か周りじゃないのかとラジーは思っていた。
「今日は森に行きたいの」
ルミの言葉にウサミミを揺らして首を傾げる。
「おうち、まだぜんぶ、見ていない。から、森行かない」
森に行っちゃいけないんだよ、と遠回りに伝えてみたが、ルミには伝わらなかったらしい。
「屋敷は明日でも見られるけど、森は今日じゃなきゃダメだから」
何か覚悟したような顔で少女が言う。
「なんで?」
ダメって事はないだろう、とラジーは話を聞く。
このままでは何も持たずに森に入りそうな様子だったから。見たところ、ルミは森に入るための道具を持っていない。
「お母さんの具合が悪いの。薬草を探しに行きたいのよ」
それでも薬草を探したいという熱意は燃え盛っているようだ。
「おとなの人と、いっしょ」
流石に森に子供だけで入ってはいけないと聞いているだろうと、ラジーが言うと少女は苦手な食べ物を食べたかのように顔をしかめた。
「それはダメよ。絶対止められるもの。おじいちゃんも怒るしさ……!」
あ、これは言ってはいけない事を言ったな。とラジーは察した。そして諦めた。
これ以上突っ込むと、きっと1人で森に行ってしまう。
そうなる前にと、もう1度腕を引っ張る。
「じゅんび、いる。おべんとも、ひつよう」
そう伝えると、ハッと少女は自分より小さな子供を見た。
「そう、そうよね。大人の人でも何も持たずに行くのはジサツコウイだって言っていたわ!」
「うん。だから、へやにもどって、じゅんびする」
ラジーは王都に行くまでは森に住んでいた。だから、何となくだが持っていくものは知っている。
そうして、ルミの気が変わらない内に屋敷へと引き返したのだった。
ラジ-はいろいろ考えて、ルミに付いていくようです。
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