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2. ここは〇〇屋か?!!

本日快晴。

春麗らかな気持ちのいい陽気と、やわらかなそよ風。

王都のメインストリートから学園まで、道に沿って植えられた『ソワフルール』の木々から紅から薄桃色、白と色取り取り花が咲き誇り、そよ風に乗せて花弁が舞い散る。


『ソワフルール』は『アルヴェール王国』で人気の花であり、節目のこの時期に一斉に咲くことから城や教会、学園など様々なところへ植えられている。


(日本の桜…とはまた違うけど。意味合い的には似ているのかもしれない。)


円を描いたようなやわらかく丸みを帯びた枝振りに、花桃のような小ぶりの花々が芽生えいている。

私の住んでいた下町にはソワフルールは生えていなかったので、一面に咲くソワフルールに少し感動を覚える。


「…凄く可愛い花だな。」


思わず近くの枝花に手を添えて、顔を寄せる。

すると、枝先のまだつぼみだった花が綻ばせる。

この『ソワフルール』は不思議な生態があり、人によく見られる場所では花が長く咲き続ける。

その事から人好きの花として知られており、これを転じて門などの人が通る場所に植えられるのは、歓迎の意を示している。


それを示すように、私の周りにもひらひらと花びらが降り--


「-いや、降らせ過ぎだから。そろそろ私花びら身にまとってるの? ってくらい引っ付いてるから。」


申し訳ないが、このままでは悪目立ちしそうなのでぱっぱっと頭や制服についた花びらを落とす。

そろそろこんな所で止まってないで、足を進めなければ。入学式典に遅れてしまうかもしれない。


(…でも、分かっているけど、足が重くて進まないんだよなぁ。)


そもそもこの王立学園は、王族・貴族が通う関係でセキュリティが高く、第一門と第二門がある。

馬車の乗付ができる第一正門と、その先の第二正門が設置されており、2箇所それぞれで入門検査を受けて初めて、門の結界を通ることが許され、学園へ入ることができる。

私が今いるのは第一正門の検査を終えて、門をくぐってすぐのソワフルールの木の近く。

ソワフルールを見るフリをして、現実逃避しているだけだ。


いい加減、ここに立っているのも不審なので、現実を見なければいけないのだが-…


眼前には-晴れ渡った空に、学園の白き巨門と、ソワフルールの花弁が映えて、とても美しい光景が広がっている。

この様な良き日に入学式をおこなえるなんて、とても心躍る(テンション爆上る)---よね、普通は。

キラキラした瞳で門をくぐる同年代の若者達が眩しいです…。


すれ違う生徒達は皆キラキラ、キラキラして…-一言でいうと、ド派手なんデス。


カラフルな髪は別にいい(私だって人のこと言えない青々とした髪色だ)。

だけど、髪型!


(---ここは○○屋か?!名○○なのか?!!)


声を大にして言いたい。

およそ勉学に向いているとは思えない、アクセサリーをジャラリと髪に飾りながら。

巻きッ巻きの、盛りッ盛り!!

美しい巻き髪のオンパレード、いや、ドリルパレードだ。


生前とある地方で、巻き髪が流行っていると聞いたことがあった。

ネットで検索したソレは、セットに何時間かかるんだろうと考えてしまうような、ド派手な“魅せる”ヘアースタイルだった。

目の前を行き交う彼女たちは、それに似通った髪型をしている。

一方の私はといえば、完全にストレートではないもののパーマもかかっていない為、毛先だけふんわりしている髪型だ。

変なくせ毛もない為気に入っていたが、彼女たちに囲まれては地味という一点に尽きるだろう。


(…派手で一生縁がないと思っていたのに、まさか生まれ変わってから巻髪に囲まれる羽目になるなんて…)


普段過剰に着飾っている人々だ。学園だろうとおんもに出るとなれば、そりゃ、そうなるか。

…でもそうすると普通は、制服と頭が不一致過ぎて、浮いてくるだろう?

学園の制服は、勉学に向いているデザインは可愛いがシンプルなものだ。

舞踏会さながらの髪型とマッチする筈がない。


(・・・制服もバッチリ改造しているヨー☆ 泣)


襟元やスカート丈くらいなら可愛いもの。もう原型留めてないくらい魔改造された制服?は、基調の白ではなく、ド派手ピンクだったり個人個人色様々だ。


私?私はもちろん、スタンダードな制服だよ。

飾り気も何もない…いや、あんなフリッフリのフリルをビラアァー!とさせたのはゴメンだけどさ。

こんな状況だと知っていれば、お母さんに頼んで袖口やスカートの裾とかにちょびっとくらいレース入れて貰ったのになぁって…。


-正直舐めてたわ。

貴族のルールで仲良くもないのに目下の者から目上の者に話しかけちゃいかん!ってのがあるらしい。

貴族の世界も広し。全員が全員お知り合いな訳じゃないし、皆同じ制服なら小奇麗にしていれば一見平民だって分かんないんじゃね?って。仲良くなっちゃえばこっちのもんだわーって、思ってたんだけど…。


(そっこー平民だってバレるわ。)


髪型を、いつものシンプルなポニーテールから下ろして、少しすくった髪をアクセサリーで横に束ねるなんて、ちょっと女子っぽい髪型して来たのに…。

これ、逆に恥ずかしいヤツだ。

あの平民、何頑張ってきちゃってんのwww( *´艸`)´艸`)プークスクス ってなるわ。

4年間ボッチ確定だわ…。オワタ…。


さっきから横をすれ違った人が凄く見てくる。足取りをゆるめてガン見してくるヤツも。過ぎてから、チラチラとこちらを振り返る者さえいる。


(・・・―そんなに物珍しいかね。平民が。)


じろじろ見られて、自棄(やけ)になりそうだ。


(駄目だ、駄目だ…ここには貴族しかいないんだ。分かり易く絡まれた訳でもないのに、睨んだりしちゃ駄目だ…。)


とりあえず、さっきから横でじろじろ見てきた男性に、意趣返しとばかりににっこり微笑んでみた。

相手が固まったのをみて、そそくさと歩みを進める。



道の端っこをわざわざ歩いているのは私だけ。

なので、気のせいでも何でもなく、皆私を見ているのだ。

こちらに視線を送りながら、ひそひそと遠くで内緒話するのはめてくれ…!!精神的に色々抉られて、心が折れそうになる。


-私、アメリア=ブルーメイア。16歳。

『アルヴェール王国』の平民に生まれ、育ちも下町。

ついでにいうと、前世も日本人の平凡な生まれで、根っからの庶民ダヨ☆

どうやら学園生活が始まる前からボッチが確定してしまいそうです!


…せめてイビられる事の無いよう、祈っててください…。はぁ……il||li orz il||li

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