第七話 正解はあるのか
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右手でおっさんの顔面を殴った。
おっさんが倒れる。
俺はおっさんの顔面をさらに殴る。
止まらない。
殴る。
殴る。
殴る。
1分たったか。
3分たったか。
知らん。
殴る。
殴る。
殴る。
殴りつかれた。
やっちまった。
血まみれのおっさん。
俺は、とりあえずポテチを探す。
見つけた。
袋を開ける。
ポテチの匂いがする。
これ夢じゃない。
ばりっ。
無意識にポテチを食べる。
うまい。
人を殺した。
ばりっ。
ポテチがうまい。
人を殺した。
ばりっ。
ポテチがうまい。
死んだよな。
ポテチを口の中に詰め込む。
バリバリ口の中でポテチが砕ける。
もう一袋食べる。
もう一袋食べる。
ポテチ終わった。
ポテチは全て口の中。
人生終わった。
口の中はポテチでいっぱいだ。
「俺はドグラマグラ太郎だ」
目の前にはポテチの空き袋。
右側から声がする。
怖くてふりむけない。
「お前は誰だ」
右側からまた声がする。
そんなこと言われても。
口の中はポテチでいっぱいだ。
どうしよう。
とりあえず口をもごもごさせる。
何か答えるか。
殴るか。
逃げるか。
ポテチはまだ口の中。
殴られるか。
殺されるか。
どう答える。
情報戦。
そうだ情報戦。
本名は無い。
本名はあぶない。
俺は。
どう答える。
正解はあるのか。
ポテチを飲み込んでしまった。
もういっぱい殴ってしまった。
右を見る。
両方の鼻の穴から血を出したおっさんが立っていた。
「俺は」
俺の口が動いた。
おっさんと目が合った。
頭が真っ白になった。
「俺はポテチだ」