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第二話 連打
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おっさんは言った。
「俺はドグラマグラ太郎だ」
フルチンで言った。
「俺はドグラマグラ太郎だ」
もろだしで言った。
「俺はドグラマグラ太郎だ」
俺は、トイレの方を見た。
部屋をもう一度見た。
おっさんがいた。
俺は、とりあえずトイレに戻ってカギをしめた。
ズボンを脱いでもう一度座った。
これは夢か。
あいつは誰だ。
変質者か。
ぶわっと変な汗が出てきた。
こわい。
本能がガンガン、警報を鳴らす。
こんな機能、俺にもあったのか。
でも今そんなことを考えている場合じゃない。
心臓がバクバクしてる。
こわい。
すげーこわい。
冷静にならなきゃ。
素数。
素数って何だ。
素数ムリ。
息が荒くなる。
気が動転してる。
俺はとりあえずおしりシャワーのボタンを押した。
シャワーがウィーンて出てくる。
あいつに気づかれる。
どうする。
キャンセルか。
思考がまとまらない。
シャワーがおしりにあたる。
あったかい。
カッテヨカッタ。
ちがう。
そうじゃない。
そうじゃないのに俺はシャワーのボタンを連打していた。