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第82話:逃亡の終焉

 しん……

 森に静寂が訪れた。


 ハナによって、大地が大きく荒れ、凄まじい爪痕の数々が残りつつある惨状とも言える後継だが、しかし、その悪魔の現況は既にこの場から消え去っており、空気の振動が終演を迎えた。


「うぅ……あぁぁ、うぅ……」

「大丈夫ですか、リヌリラッ……!!!!」


 目が霞んで身体が痛い。

 まるで鉄球に潰されミンチにされたかの如く、不快極まりない痛覚を覚えている。


「…………」


 右手に至っては、痛覚すら感じない。

 痛みを通し超して神経がやられたのか、はたまた腕すら吹き飛んでしまったのか。


「…………」

「………………」


 あぁ、ルーミルが私に何かを問いかけている。

 だけど、わたしの鼓膜はとうに弾け飛んでいるのか、こもりぎりの音でしか聞こえない。


 この前のサントボア戦と変わらない。

 死闘の末に重症を負うのが通過儀礼になってしまっている。


 これは私が弱い証拠なのか。

 それとも、超循環士として戦うためには、このような怪我に耐えうる精神を持ち続けなくてはいけないのか。


「は……n……」


 痛みで声が上手に出ない。

 本来ならば、絶望するべき場所なのだろうが、私たちは超循環士。

 時間と素材があれば、例え腕が吹き飛ぼうと、元の姿まで治癒することが出来る。


 緊張感があるのかないのか。


 とはいえ、神経が破裂するなんて"痛み"を体験する機会なんて、二度と訪れないに越したことはない。


 ぐっ……


 ルーミルが私を抱えて走り出している。

 サンドボア戦の帰りとは違い、お姫様抱っこではなく、肩に抱えられている。

 激しく大地を駆け抜けながら、イデンシゲートの内側へと真っ直ぐに駆け抜けていき、ハナの脅威が届かぬようにと一心不乱に進み続けている。


「ハナは二キロ程度遠くへ飛んでいったでしょうが、戻ってくるのは三十秒と要らないでしょう」


 ルーミルはそう呟きながら、イデンシゲートの内側へ入っても、更に奥へ奥へと突き進む。

 ハナはイデンシゲートの内側にいる人間さえも、視界に入る者は強制的に引き寄せる力がある。


 ルーミルは、百メートル圏内なら人を引き寄せられると言った。

 だが流石に今回は危険すぎた。

 百メートルをゆうに走り抜けたというのに、まだルーミルは駆ける足を止めることなく、遠くへ、遠くへと逃げようとする。


「今日のハナはいつもより手強かったです。いつもの力を基準に考えてはいけません。安全に安全を持って脅威から避難せねば」


 その安全に安全をという距離は、二キロ、三キロという更なる距離を取っている。

 悪魔の姿どころか、気配すら一切感じないところまで来ている。


 どさっ……!


「うっ……!」

「はぁ……はぁ……はぁ……」


 森を抜け、メルボルン郊外にある牧場付近へとたどり着いたと同時に、ルーミルは転がるように倒れ込み、そして私もルーミルの手から手放されて、若草の生える大地へと転がされた。

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