第80話:逃亡戦線04
「大丈夫だ、どんなに俺に不利益が被ったとしても、絶対の絶対にぶっ殺すことだけは最優先するからな!」
羽を小さく縦に折りたたみ、急降下しながら一気に私たちへと滑空をしながら近づいてくるハナ。
「速いっ……地面を削りながらのくせに、なんて動きで攻めてくるの……」
「空を飛んでいるハナは従来よりもスピードが格段に上がります。地上で戦っているよりも、単純に性能が上がったという捉え方をした方が正しいかもしれません」
「そんなバランスの悪いチートみたいな性能ありっ!? 単純に私たちが不利になっているだけじゃん!」
ハナの滑空ツインスクラッチを滑空の実の吹き飛び移動で避けながら、ルーミルに対してリアクションをする。
「そうでもないです。ハナは空を飛ぶことをあまり好んでいませんからね」
「……羽があるのに、空を飛ぼうとしないの?」
「体つきが非常にたくましく、重量がある影響で、空を飛ぶ行為自体が、身体に大きな負担となってしまうようですね」
「なるほど、じゃあ滑空しながら戦うって言うのは、本当にクライマックスの時じゃないと使わないということだ」
「なぜだか、私と戦うときは、最初から羽を生やしているんですけどね」
……まあ、色んな意味で思い入れが深いだろうからね。
生半可な戦いじゃダメってことをハナも十分理解しているんだろう。
「羽を生やして空中からテメエらを監視しているっていうことに、テメエらはどんな危機感を覚えている?」
ハナが上空に飛び上がりながら、私たちに叫ぶように問いかける。
「私とルーミルがいちいち上を見上げなきゃいけなくなるから、首がめっちゃ痛くなる」
「汚い羽が落ちてくるから純粋に臭くて不快です」
ルーミルはハンカチでハナを塞いで臭いを毛嫌うパフォーマンスをわざとらしくする。
「それは最高の副産物だ。ついでに目一杯苦しんでおけ」
ハナは嫌みに眉をひそめることなく。
「お前が空圧の実でイデンシゲートの内側へと逃げようとした瞬間に、空中から追いかけてミンチにすることが出来る」
「大量に集めた空圧の実だよ。超循環の素材として一気に使えば、数十キロのスピードで飛んでいく。ハナに捕まえられるとでも?」
「自己新記録の中では、時速五百キロで動く生物を正確にぶっ殺したことはある。その前提で話すなら、テメエの速度なんて、歩いているフンコロガシを踏み潰すようなもんだ」
時速五百キロで動く生物を捕まえ……って、まずそんな速度で移動する生き物って何だろうというところから気になる。
あくびした瞬間に、口の中に入ってきたら、食べるどころか喉を貫通して穴が開きそうな気がするんだけど。
「私の身体能力見たでしょ? ハナの攻撃は本気を出せば、十分避けることが出来る」
「いいさ。お前は視界に何も入れることが出来ないままに、ミンチとなって崩れ落ちる。その浅はかな自惚れを反省することが出来ないままに、目の前が真っ暗になって絶命する」
「…………」
精一杯の強がりで、ハナの威嚇行為に対応をしているが、多分、向こうが本気を出せば、本当に私はぐちゃぐちゃになって地面に落下することになるだろう。
つまり、私自身がイデンシゲートへと逃げ込もうとする手段を完全に塞いできたことになるので、一言で言うなら詰みの状況と言えよう。
「ならいいよ。私だって、最後の意地を見せることだって出来る」
「お、やる気か? いいぞ。無謀なバカは大好きだ」
「……ルーミルだっているんだよ。ハナ、いつも苦戦しているんでしょう?」
「今日の俺は絶好調だ。そんなとき、こいつは俺に会おうとしない。」
そういえば、今日は悪魔が活性的な日だから、超循環士はイデンシゲートの外に出てはいけないと警告されていた。
戦闘能力が著しく高いルーミルであっても、例外なく警告には従っていたくらいだ。
「むしろ、こいつと今日戦えるって分かった瞬間、今日こそ殺せるんじゃないかとワクワクした。それが今日俺が本気を出す理由だ」
「……さぁて、私だって今日は絶好調ですよ。ご飯を三杯食べてきましたからね」
それは絶好調のベクトルとは違うと思う。
いや、本当に絶好調の合図の可能性も……
「…………」
……いや、あの顔は嘘だ。
普通にご飯三杯食べて、お腹いっぱいで苦しい顔だ。




