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第53話:いぇぇぇぇぇぇいいい!!!

「それよりロボア、さっき倒したのでサンドボア何体目だ?」

「四体目。今回はちっこいのばかりやから、まあまあ順調といったところや」

「ということは、あと三体くらいは狩った方が良いかもしれねぇ。あいつらも肉食いてえ肉食いてえって、マヂギャーギャーうるさかったし」

「育ち盛りは、寝て起きて肉食いたいしか言わんからマヂうるせぇんだよな。ま、ワイらん時もそうやったから文句の一つも言えんけど」

「……あいつらって?」

「養護施設の子供たちです。様々な事情で親を亡くしていまして、レボアとロボアは、そこで職員として働いているんです」

「へぇ、怖っ面のくせに子供たちをねぇ……」


 いないいないばあで子供たちを瞬時に泣かせる無双ができそうな強面だというのに。

 それとも、その養護施設は特殊傭兵団でも育成する秘密機関だろうか。


 私のそんな妄言に「うるせぇ」と軽い流しを入れた上でレボアが。


「俺らも昔は施設で世話になった身でな。小せぇ頃はいろいろ良くしてもらったもんよ」

「施設で世話になったら、今度は自分らで世話する番。ワイらはそうやって生きていくことを昔から決めておったんや」


 おぉ……純粋に涙ぐましい話じゃないか。

 子供たちを拉致監禁した上での暴走族育成施設とは訳が違うね。


「そんなわけで、俺らはガキ共に食わせる肉を確保するために、サンドボア狩りがめっちゃ忙しかったりするんだわ。立ち話はまた今度ゆっくり楽しむって事にしてくれねえか?」

「あ、うん……ごめんね、邪魔しちゃって」

「いいや。メルボルンに住むってなら、また近いうちにいつでも会えんやろ」

「強い悪魔を狩るうちに、必ずどこかで戦いに出会う。あんたが強くなってきたとき、それは俺らとの接点を持つタイミングだ」


 レボアとロボアは確かに強い。

 私が今まで戦ってきたような悪魔とは違い、更にエグくて強いものを相手にしているのだろう。

 ルーミルを超える前に、まずはそこの二人も超えなくてはいけない。

 ステップを踏むフローを形成するには非常にわかりやすい目標の壁だが、地道に強くなっていかなくてはというのも長い長い道のり。


 また悪魔を狩って強くならなければ。

 私は一層決心することにした。


「ん、ほら。俺らもう行っちゃうからさ、最後にこれやって解散しようぜ」

「……ん? 何?」


 レボアは右手を高く上げている。

 ロボアも同じく右手を上げる。


「ハイタ~~~ッチ。テンションバリバリになるアルティメットなハローなんだぜ!!!!」

「マヂおすすめなんやで!!!!」


 二人はふんふんと意気込みながら、私にハイタッチを促してくる。

 その表情は先ほどの険しい状況から一転して、ニコニコとした爽やかな笑顔。

 これは……二人のノリに合わせざるを得ないだろうと判断した私は、流れに沿って右手を上げる。


 ルーミルはなぜか、私から少し離れてニコニコ笑顔で見守っている。

 役者的には不要だと自ら判断したのだろうか。

 そんな遠慮しなくてもいいのに。

 ……というか、いつの間に移動したんだ。


「姐さんの妹分に、メルボルンへの歓迎の意を込めて!」

「そして、いつかハナを倒す未来の英雄を目指して!」


 レボアとロボア、二人が同時に大きく息を吸って。


「「いぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいいいいいい!!!!!」」


 大地に、騒音が鳴り響く。

 地面を揺るがす、二人の共鳴した活気の声が。

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