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第52話:レボアトロボア

「彼女の名はリヌリラと言います。メルボルンから離れた場所に住んでいたのですが、偶然ハナに刺されていたところを私が見つけまして、救助したという経緯があります」

「……ハナ、だと?」


 ロボアの表情が、一気に険しくなっていく。

 レボアも表情を抑えつつも、ほんの少しだけ目つきがキリッと斜めに尖る。


「……お前、ハナに出遭ったのか?」

「ま、まあ……出遭ったというか、出会い頭に刺されただけというか……」


 未来から来て、今まで人間だと思っていたハナに、理由も分からず突然刺されましたという情報を、全ての伝えるのは控えた方が良いだろう。

 時代を超えてやってきたというのは、非常に非科学的な事実であり、不特定多数の人に情報を伝達したところで、余計な混乱を招いてしまいそうだからだ。

 突然の急襲で背中を刺されただけ、という方が、妙に情報を聞き込まれることもなく都合が良いだろう。


「よく生き残れたな……お前。本来ならハナの野郎、ヒトを見つけ次第、原型がなくなるまでグチャグチャに擦り潰してくる習性があるからな」

「ヤツにどんだけの同志たちがやられたことか……数えるのもマヂ億劫になるわ」


 イラついた様子でハナを強く憎んでいるレボアロボア兄弟。

 この時代でのハナの評価は、予想通りといってはなんだが、やはり人から憎まれ続ける存在で合っているようだ。

 客観的に見れば、猟奇的連続殺人犯。

 人の命が奪われる分だけ、その人に関わった人の分だけ恨みは増えるのは当然。


「彼は気まぐれですからね。普段は人間グチャグチャ討伐主義でも、途中で飽きて殺意に萎えが生まれたとでも言ってしまえば、十分に理屈としては成立してしまいます」

「……ヤツの動きは、マジで予測できねぇ。普通の悪魔と違って動きの法則性もないし、悪魔同士で協力し合う気配もない。孤独で気まま、それでもって人に対する殺意と力は異様なレベルときたもんだ」

「気配も無く彷徨って現れる。まるでヤツは幽霊みたいな存在や。何人かの死んだ仲間は、まだ死を把握していなくて、現世に魂だけ残っとるヤツもいるかもしれん。マジでヤツには殺意以外の感情しか湧かんわ」


 話に聞いてはいたものの、やはりハナはこの時代から例外的強さを誇っていたのは間違いない。

 私を刺したときのような、静かで素早いアサシンの如く完璧にこなす動き。

 果たして、私が今ハナに出会ったら、どうなってしまうのだろうか。


 …

 ……

 ………


 ……いや、考えるのはよそう。

 現状の私なら、何秒でミンチになるかという答えしか出すことは出来ない。

 残念ながら、そして悔しいながら。


「俺らも以前、ハナの野郎に戦いを挑んでいたんだが、どうにもヤツには歯が立たねえ」

「……えっ、二人で? 大丈夫なの、それ?」

「大丈夫……じゃねえっていうのが正しいな。二人がかりで最高のプレーをしたってのに、ものの数秒で一気に撃沈。ルーミルが助けに来てくれたときには、俺らの身体、もうミンチになっていたようだし」

「うぇ、えげつない」

「……まあ、超循環士は、それほどひどい目に遭ったとしても、蘇生できるってのが強みなんやけどな……だが、切り刻まれているときはやっぱり痛ぇ。さすがにワイらも銅像化を覚悟したで」


 先ほどのレボアロボア兄弟の動きは、確実に常人のレベルを超えた実力の持ち主であることが見て分かる。

 それがものの数秒、更に銅像化の懸念まで……

 ハナの力は、私の未来の時代よりは、まだ成熟していないとはいえ、現状でもやはり化け物は化け物ということなのか。


「ま、今度見つけたときには、俺らがゼッテーに勝つけどな」

「レボアとワイは、毎日強くなっている。やられた分は究極倍返しで始末を付けてやる」


 レボアロボア兄弟は、いぇ~いと二人で息の合ったハイタッチをする。

 全く、シリアスなのか陽気なのか状況が分からない人たちだ。

 私のシリアス思考をどうしてくれる、全部吹き飛んでいってしまったぞ。


「彼らは場をいつも明るくしてくれます。戦いというシリアスな状況の中で、パッと明るさを見せてくれる人たちというのは、とてもかけがえのない存在だと思いませんか?」


 ルーミルはニコニコとした様子で言う。

 ……まあ確かに、ラジオ代わりにはなるかもしれない。

 電波の受信が悪いときには活躍してくれそうだ。


 音量調節のつまみは完全にぶっ壊れているようなので、メーカーに修理を依頼したいところだが。

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