第50話:サンドボア狩猟・終演
パラソルを構えたままゆっくりと地面に落下してきたルーミル。
私の黙祷が終了したと同時に、タイミング良く降りてきた。
「まさか、サンドボアに死をも受け入れさせるとは、さすが狩猟慣れしたリヌリラといったところでしょうか。想像もつかない決着の付け方ですね」
「私なりの流儀だけどね。野生の生物は、常に死を受け入れる勇気を持って生きているの。もちろん、私もね」
「そういうものなのですか……」
ルーミルは私の言葉に小さくうなずき関心を寄せる。
あまり狩猟をしないというのなら、やはり理念に対する意見を聞くこともないのだろう。
「ちなみに、私に武器を使わせて、どういう風にサンドボアを倒させる予定だったの?」
「普通に色んな素材を使ってもらい、ファイブレードで皮膚の薄い足を切り刻んだ上で、最後は内臓へと攻撃すれば良いのではと思っていました」
高速思考の要素はどこに行ったのだろうか。
それは筋肉もりもりのパワータイプのキャラクターが好む戦闘スタイルだ。
そりゃあ時間が七分と掛かってしまうのは当然といったら当然だ。
ルーミルは、とにかく攻撃を仕掛けることを主とする戦闘スタイルのようだ。
その行動判断力の高速思考は、どんな優秀な超循環士よりも圧倒的に得意なのだろう。
「とにかく、無事に倒すことが出来ましたので、このサンドボアは法的に私たちの食材となります。やりましたね」
「……倒せたのは良いものの、これを家まで運ぶのかぁ……面倒くさそう」
体長が十五メートル大なので、何トンあるんだろうかという質量。
超循環素材で何かしらの手法を用いて運んだとしても、それだけで日が暮れてしまいそうだ。
「倒したサンドボアは、マイケルマンさんが運んでくれるので大丈夫ですよ」
「……マイケルマンさん?」
先ほど狩猟祭の受付にいた筋肉ムキムキのおじいちゃんが、この巨大な生物を運ぶというのか。
……だがまぁ、このまま放置しても良いと言うなら私にとっては都合がいい。
只者ではなさそうな雰囲気が肉体的な意味でビンビンと伝わってくるので、多分色んな意味で強者と呼ばれる立場にあるのだろう。
今度、どんな人生を歩んできたのか、それとなく聞いてみようか。
「それよりあそこを見てください。別の超循環士たちがサンドボアを狩猟していますよ」
「……別の超循環士?」
そういえば、この狩猟祭は百名程度集まっていると聞いていた。
別の超循環士たちが、それぞれの場所で狩猟しているのは当然か。
むしろ、どうして今まで随所随所で出会うことがなかったのか、不思議に思ってしまうくらいだ。
「レボア! 右行ったぞ右!」
「分かっとる!! ちゃんと挟み撃ちするぞロボア!!」
二人の若い青年が、旅路花を使い空を滑空しながら、大地を駆けるサンドボアを囲うように移動する。
共に金髪ショートで鋭い目つき、叫ぶ肉声の高低差に若干の差があるくらいだろうか。
彼らは……
「彼らはレボアとロボア。双子の超循環士で、フィンガーブレードで戦うことに特化した二人です」
「へぇ、双子。どうりで動きの連携が随分と良いわけだ」
私とルーミルのときとは違い、随分と素早く空中を駆けて移動している。
時速は八十キロをゆうに超えているのではないだろうか。
互いにぶつかりあえば、骨が砕けて一瞬で命の危険にさらされてしまうというのに、二人は本当に僅差数十センチのところを器用に交差しながら互いの位置を調整し合い、サンドボアへとフィンガー攻撃を仕掛けていく。
「よっしゃあ……やつも弱ってきたし、そろそろ頃合いか!」
「ヤツに黙祷の準備を捧げてやらねえとな」
「位置はサンドボアの首筋の付近! いい感じのタイミングで首を折るぞ!」
「じゃあワイも都合のいいタイミングで首を討つ!! 双子なら多分タイミング合うやろ!!」
……随分とがさつな合図の疎通だ。
せめてGOとかカウントダウンとか入れるものだろうに。
「必殺……回転……!」
「逆回転……!!」
サンドボアに近づきながら、二人が体を捻って回転する。
そして――




