第45話:サンドボア狩猟戦01
「うわ、上半身だけ器用にくねらせながら悶えてる。どんだけ痛がってるの」
「サンドボアの寿命は六十年と言われています。サイズが大きいほど比例して年齢も高く、がさつに生きていた分のツケが多くのしかかっているのでしょうね」
世紀末の拷問をロックに喰らい続けながら、サンドボアは砂漠を揺らしていく。
弱点を大きく突いたとはいえ、この規模で暴れ回られてしまっては、さすがに討伐までは事を運ぶのは難しそうだ。
「さて、リヌリラ。あなたはここでどのような判断をしますか? 高速で思考し、高速で執行する。サンドボアが弱点を見せているのは今だけなのです」
ルーミルは日傘を差して、空をぷかぷかと遊泳しながら私に質問を投げかける。
絵本に出てくるお姫様みたいなことをしているなぁ……なんて感想は置いておいて。
「あの巨体に外傷を与える攻撃を繰り返したところで、いつかは消耗して倒れるんだろうけど、あまり効率の良い方法ではないのだろうなとは思ってる」
「私もそう思います。肉を斬る前に、まず分厚い皮が邪魔をしてしまいます。大量の素材や武器を使用してまで戦うのは、あまり賢い選択ではないかと」
「今みたいに、虫歯を刺激してやるような、内部的に強烈な刺激を与える要素があるならば、それを優先して仕掛けていける方が良い」
極端な話、脳みそか心臓に攻撃を与えられれば、いくら巨体だろうと動きは止まる。
しかし、生物の身体というのは、重要な器官を防衛できるような肉体構造をしており、今言う場所は骨や皮膚、筋肉などで損傷が伴わないよう守り尽くされている。
「ちなみに、ルーミルならサンドボアを何分で狩猟できるの?」
「う~ん、最後に狩ったのが三年前とかですから、その時よりは若干速くなったかもしれませんが……」
「うん」
「七分くらいですかね」
「まさかの悪魔以外での予測最長記録!」
悪魔はものの数秒だというのに、そこから大きく時間が延びて七分という大台に乗り出したルーミル選手。
なんというか、確かにサイズが大きくて手こずりそうな気もするけれど、人並みに知恵があって賢く戦う悪魔が数秒というのも、何か申し訳ない気持ちになってしまいそうだ。
「賢い生物の動きは、同じ知恵を持つものでしたら、ある程度予測できます。しかし、サンドボアのように野生の動物らしいワイルドな思考を持つ生物は、どうしても予想外の行動を起こしてくるものです」
「ああ、ルーミルは悪魔以外は不得意という感じかな?」
「まあ、お肉はマーケットで買いますし、野生生物って臭いから嫌いなんです」
気持ちは分からないでもない。
私も最初は鼻がもげる位に野生生物の臭いに悶絶したものだ。
長い狩猟生活を経たおかげで、無事に鼻がもげて臭いは気にならなくなったが。(イメージ)
「そんなことより、サンドボアが悶絶しながらも、私たちの方を睨み付けています。攻撃を仕掛けてきますよ」
「……えっ?」
「ぎぇああああああああああああああああああああああああああああ…………!!!
「……うわっ、デカ物のくせに、クッソ高いジャンプかましてきた!」
「いうてもイノシシですからね~。脚力には相当のパワーがあるのは確かです」
上空三十メートル付近までゆうに届いてくるサンドボアは、大きく口を上げながら、私たちを丸呑みにしようと襲いかかってくる。
うーむ。臭そうだし、出来れば胃の中は勘弁してほしい。
ひとまず滑空と旋回を繰り返しながらで、サンドボアの捕食から逃れていく。
上空をマウントしている分、余所からの見た目よりは避けるのは意外と簡単だ。




