第30話:メルボルン開拓戦03
「やりますねぇ……自然で作る散弾銃ですか。見事に弱点をカバーしましたね」
「へへ、さすが私」
「……しかし、あのどんぐり……イガドングリのトゲは、悪魔を倒すには今ひとつダメージ力が足りません。ひるませることには成功していますが、もう一つ何かが欲しいです」
「ぐ、ぐぐ……」
確かに、膝を付きながらも散弾に耐え、私たちの姿がどこにあるかを探し続けている。
人を見つけたら殺す。
その目的を果たす余力は残っているようで、確かにあれでは倒したとは言えない。
「だから、私はもう一発……渦巻状のキノコとカマキリの刃を混ぜ合わせて作った素材を循環して……こうっ!」
パシュッ……!
「…………!」
スパァァァァァァァァァン……!!!!
「……………………あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!」
弾丸として飛ばした力が、再び敵の付近へと到達したと同時に炸裂し、今度はカマキリの刃による斬撃が発生した。
どうやら、このカマキリの刃は相当頑丈なようで、悪魔に加え、付近の木や草をバラバラに切り刻んでしまうほどの強力な性能をしているようだ。
「渦巻状のキノコは『ストームマッシュ』、今のカマキリは『ハガネカマキリ』と言います。性能については概ね察しの通り、使って期待通りの性能が発動したというのでわかると思いますが……」
「なるほど。直感で選んでも、あながち見当ハズレということでもなさそうだね」
いずれも初めて聞く名称のものだったが、使い勝手は私の時代の素材と概ね似た性能だ。
想像力に関してでいうなら、この時代に来る前から、ある程度は鍛えていたからな。
「近くにいる悪魔は、ひとまず片付きましたかね。これで、イデンシの蛸壺を設置することが出来ます」
「うん、ここからがようやく本番だからね」
私たちはイデンシゲートの内側、セーフエリアの中から一方的に攻撃をしていたに過ぎない。
こちらが被害を受けることがないという点では、まだチュートリアルも始められたことにもなっていない。
「まあ、リヌリラは随分と自然の感が鋭いですので、私が心配するよりは良い結果を残してくれるでしょう。エイム以外は」
「はい、そこは期待しないでね。悪魔たち~お願いだから、来るなら間近に来てちょうだいね。そっちのほうが、むしろ勝つ」
弾丸で毒薬を塗られたものを見えない飛距離から打たれ続けたりなんてされたら、多分一切太刀打ちできない。
この広く見渡せる平原なら、そんな懸念は稀有ではあるが、後々どうにか出来る対策方法は考案しないといけなそうだ。
ひとまず立ち上がり、ルーミルに連れられイデンシゲートの外側へ移動する。
イデンシゲートなんて大層な表現をしてはいるが、薄っすらと壁になった霧を通り抜けるだけで終わるもので、内側と外側でなにか違いがあるかと聞かれても、無いと返答できるだろう。
「イデンシのタコ壺を見てください。ゲートの外に来た証拠です」
「……煙が大きく増幅している?」
先程まで小さく煙がもくもくと出ていた程度だったが、今見たら私の顔を覆うくらいに煙の大きさは増幅し、何かに反応したように、中身の成分を吐き出そうと必死な模様だ。
「タコ壺の中身が大きく吐き出された瞬間から、直径三十メートルのセーフエリア生成は始まります。もっとイデンシゲートから離れて、多くのセーフエリアを獲得できるようにしましょう」
「わ、分かった……」
確かに、出口の近くでタコ壺を置いても、一部が既存のセーフエリアと被ってしまうので、せっかく命がけでエリアを獲得しても百パーセントの旨味とはならないだろう。
全ての面積分を有効活用し、人が暮らせるエリアを増やす。
大事なことだから、覚えておこう。




