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第29話:メルボルン開拓戦02

「……ちょっと伏せようか、ルーミル」

「わかりました。何か見つけたのですね?」


 私はうつ伏せになり、草むらの中に隠れながら数メートルと蛇行しながらバックし、『相手』が私たちの居場所を見失うように振り払う。


「……あの、私には先程の一体以外はいないようにも感じましたが」

「私にはもう一体見えた。木の中」

「木? それなら数本と少ないので、私も一通り確認しましたが……」

「木の上じゃなくて下。悪魔が身なりでカモフラージュしているのか知らないけど、木の幹と同じような材質の布を被って私たちを探している」


 ルーミルが私の指差す十五メートルほど先の木の根本に注目し、じーっと注目して私のいうターゲットを探す。

 一瞬何もいないとしか感じない雰囲気だが、強く風が吹いた際に、一瞬木の布がはだけそうになり、ステルスがバレそうで動揺した悪魔の姿があった。

 隠れ方は非常に高度で、さすが人並みの知恵を持った生物であるということを改めて感心する。


「……少し膨らんだ幹。あれでしょうか?」

「そう。まだ私たちを見失っているようだから、遠距離から急襲できればイチコロ」

「でも、リヌリラは遠距離攻撃のエイムがダメダメですよね。また先程のように強烈麻痺ダケで爆弾を作りますか?」

「う~……ん、せっかくだし、もう少し違う素材を使ってみたいかな。監視役が弱いってなら、少しばかり遊んでも支障は無いでしょ」


 私は地面にうつ伏せになりながら、ゆっくりと後方へと移動して何か良い素材がないか探してみる。

 木の幹に生えた渦巻状のキノコ、切れ味の良さそうなカマキリの刃、トゲ状で覆われている痛そうなどんぐり。


 どれもなんとなく性能がわかりそうでありつつも、微妙なところで性能が把握できないでいる。

 渦巻状のキノコは、恐らく空気弾を放てるものだろうか。

 ちょっとしたショックに使えそうだが、殺傷能力は厳しそう。


 死んだカマキリの刃は、親指のフィンガーブレードで使えば強い斬撃攻撃になるだろう。

 ただ、それをするには近距離戦をしないといけないので、遠すぎる敵には適していなさそう。


 トゲ上で覆われているどんぐりは、どう見ても弾丸で使える散弾だろうな。

 近接で使うには適していなそうだし、エイム力を問われてしまうのはゴメンだ。


「どうしようかな……」


 種類があるとなかなか迷う。

 テストで使うと言いつつも、失敗は避けてという前提でいきたい。


「……例えば、渦巻状のキノコとトゲ状のどんぐりを擦り潰して混ぜる。その混ぜたものを一つの素材とし、循環ポケットに入れればどうなるのかな?」

「試したことがないのでなんとも。私はエイム力で困ったことがありませんので」


 これが優秀であるがゆえの純粋無垢なリアクションか。

 私も流石にちょっとイラッときたぞ。


「……へぇ、混ぜた素材もちゃんと受け付けてくれる。黄緑色のようなオーラが出てきた」

「普通、素材と素材を混ぜ合わせたところで反応はしないのが基本ですが、ものによってはうまくいくものもあるのですね」

「物は試し、ダメならそれで。ひとまずあいつに弾丸で一発お見舞いしようか」


 素材回収のために更に距離をとって、現在敵と私との距離感は十八メートルほど。

 五メートルでも命中率が六割の私にとっては、敵に当てていくのは至難の業だが、今混ぜて生成した素材の力が私の思惑通りなら、多分。


 ヒュン……


「ああ、撃つ角度がズレてしまっています。リヌリラ、流石にエイムがダメすぎでは……?」


 人差し指での弾丸発射の際に、想定より反動が強くて思わず大きく発射位置をずらしてしまった。

 一応は命中するようにと努力しながら狙いを定めていたが、多分、一メートル近くズレた状態で敵の位置に到達しそう。

 しかし、私の妄想どおりなら……


 パァァァァン…………!!!


「……うがぁぁぁ………!!!!!!」

「よし、妄想したとおりの結果……!」


 飛んでいった弾丸は、敵から大きくハズレていた。

 エイムがダメな私ではこの程度だろう。

 しかし、それを想定して第二波の攻撃を仕込んだ。

 トゲトゲどんぐりだ。


 飛んでいった弾丸は、渦巻き型のキノコの力で風圧が発生し、そして混ぜ込んだトゲトゲが炸裂する形で幹に隠れていた悪魔に命中した。

 弾丸が苦手な私でも、ある程度まで弾丸を飛ばすことが出来れば、攻撃が当てられるという採算だ。

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