第27話:リヌリラのナイフ
【Tips009】循環キットについて
循環キットとは、超循環士が使用する、素材から力を生成する機械のこと。
循環キットは非常に頑丈で、桁外れの攻撃をしたところで破壊することは出来ない。
これは過去の超循環士達が発明した代物で、悪魔でさえも破壊することは不可能。
仮に損傷が発生したとしても、超循環士本人から力を貰い、自動修復をしようとするので、実質永久に使うことが出来る特別な機器と言える。
リヌリラがハナに刺されたとき、循環キットも貫通したが、ものの数分で自動修復された。
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……
メルボルン郊外、イデンシゲート境目付近
「そういえば気になっていたのですが……」
「なに、ルーミル」
「さきほど新しく剣鉈を買いましたけど、今までルーミルが使っていたものは無いのですか? 肌身離さず使っているのでしょう?」
ルーミルがそういえば……と、気になったようで私に訊いてくる。
「肌身離さず持っていたよ。ハナに背中を刺されるまではね」
そう言って、カバンの中にしまっていた元々のナイフを取り出しルーミルに見せる。
「折れて……ますね。ポッキリと」
「胸元に置いて、すぐに抜けるようにしていたんだけど、背中から刺されたときに、一緒に貫通して砕かれたんだと思う」
ナイフは根元の方からポッキリ折れている。
荒く砕かれ強引な力で壊されたというのがよく分かる。
鋼鉄を更に強化して、象に踏まれても壊れない堅牢性があったのだが、ハナの力はそれ以上に強かったということになる。
「ハナは強引な腕力で何でもぶち壊そうとする性格です。一メートルの厚さを誇る鋼鉄の壁でさえも穴を開ける姿を見たことがあります」
「うわぁ、恐ろしい」
十年以上大切に使ってきたナイフだったが、こうも簡単に壊されてしまうと、様々な感情を感じる以前に清々しさを感じてしまう。
壊れたナイフを見つめ、ハナの強さを改めて痛感する。
むしろ、そんな強敵に壊されてしまうようなナイフを相棒にしていたかと思うと、自らの弱さに情けなさも感じてしまうくらいだ。
「命があっただけ良しとしましょう。今のリヌリラには、先程私が五ペンスで購入した剣鉈がありますから」
「その、五ペンスと言われると、なんだかしょぼい装備みたいな感じで言われている気がしてちょっと嫌だな」
イデンシゲートの境目に来る直前、地面や木を試しに切ってみる限り、性能の良さは確かに保証できる。
重いという欠点はありつつも、長時間使用しなければ、私には別段支障はなさそうだし。
あとは、購入した値段を忘れてしまえば、一本の素晴らしい私の相棒となるだろう。
「私が今晩飲む予定だったラム酒代をリヌリラの新しい武器に出来たのなら幸いです。五ペンスというのは、それくらい重要な……」
「あーはいはい。五ペンス大事、五ペンス大切、私、ルーミルのラム酒以上に価値を見出すから、せめて五ペンス呼びだけは乱発しないでおいて」
ルーミルにとっては、稼いでお酒、稼いでお酒、この世は酒と金で動いているというような極論が脳内に植え付けられているんだろうな。
人のものの考えには様々なパターンがあるが、ルーミルの場合は老けた大人のような嗜好を感じる。
せめて、購入した剣鉈は、長く使ってあげるのがせめてもの行動か。
「これがあれば、私の戦い方は大きくアドバンテージが付いてくる。狩人としての本能を呼び覚ます」
「私には、ただナイフを持っただけの人としか見えませんが……おまじないのようなものでしょうか」
「まあ、そんなとこ。悪魔を一匹殺せれば、もう一匹おまけで殺せるアドバンテージ」
「ふふふ……それは随分とお得なマーケットですね」
昨日ルーミルと戦ったときのような人との戦いの際にはナイフを使うものではないが、相手が悪魔だというのなら、この武器を解禁してもいいだろう。
それに、現状一文無しというところもあり、肉にありつくにも現状は現地調達が望まれるのだろう。
食糧を狩るという点でも、今後活躍を期待したいところだ。
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