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超循環のリヌリラ〜現役PS4ゲーム開発プランナーがゲーム化する〜  作者: タチマチP
第2章-19世紀のメルボルン。時代は過去へ、戦争時代-
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第20話:私がこの時代でやるべき事

「ふぅ……満足した」

「お粗末さまでした。まさか、丸一日分の食糧をすべて食べつくされるとは予想外でしたが……」

「美味しかったからしょうがないね。さすがルーミル」

「も、もうお世辞は良いですから……食後のキャロットケーキ食べます?」

「糖分大好き! 絶対食べる!」

「ふふ、わかりました。じゃあ、ちょっと待っててくださいね」


 ルーミルは私の言葉で機嫌を良くしたのか、るんるんとしながら台所の方へと向かっていく。

 意外とゆすれば色んな食べ物が出てくる?

 良いことを知ってしまった限りだが、肉を食べすぎたせいで、これから来るであろうキャロットケーキを食べれば完全なる満腹になりそうなので、それは今度試してみることにする。


 ルーミルは紅茶とキャロットケーキをテーブルまで運んできて、私の前に置いてくれる。

 自分の分も用意した上で、ルーミルは私との会話を求めてきた。


「戦いに恐怖はありませんでしたか?」


 直感的な質問を投げてくる。

 まあ、先程の惨状を見てしまえば、優しいルーミルならどこかで気遣ってくれるのだろうなと思っていたけど。


「……まあ恐怖がないと言ったら嘘になるけど、戦うこと自体に躊躇は無いように感じた」

「超循環士の本能です。長い間、戦いばかりを繰り返してきた人間ですので、本質的に戦いを求める基質があるのは当たり前です」

「それは喜ばしいことなのかな?」

「現代なら是、リヌリラの時代なら非です。つまり、リヌリラは時代に応じて正しい行動を取っています」


 戦いを正しいと言われることには違和感はあるけど。

 まあそう言ってくれるのであれば、今は喜んでおこう。


「ところで、ルーミルと今日戦って戦争時代を生き抜くための術を教えてもらった上で、どうしても気になることがあるんだけど」

「はい、何でしょう?」

「私、そもそもハナに殺されたのを助けてもらうために、一時的にこっちに運んできてもらったんだよね」

「そうですね。肉体が目の前になければ蘇生は出来ませんから」

「うん、すごく助かった。助かったけど……」

「はい」

「私、もう元気になったし、この時代にいる必要ないんじゃないかな?」


 体については十分元気で、この時代に対して何かしら目的があるわけでもない。

 戦争時代で大変な毎日を送っているのは大体分かったが、それは私が受ける運命ではない。

 悪く思わないでほしいけど、私はすべてが終わった平和な世界に生まれし一市民で、この戦争に立ち向かうべき兵士ではない。


「ああ……そのことなのですが」


 ルーミルは少し歯切れの悪そうな表情をして。


「もしかして、元の時代に戻れなかったりとか? はは……良くある設定?」

「いえ、一応は元に戻すことは可能です。時間移動に一方通行という理屈は存在しません。ただ……」

「ただ……?」


 ルーミルはティーカップを置いて。


「リヌリラが元の時代に戻れば、悪魔として本性を表したハナがいる時代に戻ることになりますので、結果として危険が伴ってしまいます」

「あっ、ハナ……そうか、ハナは悪魔で、人の殺戮を求めているって……」


 私が手も足も出なかった相手。

 本性の力こそろくに見れなかったかもしれないが、人を数百人と殺すことが出来るというのは、十分力を証明している。


「もし戻るのであれば、ハナと対立をしなくてはいけなくなります。リヌリラは彼を止めるだけの力を持っているというのですか?」

「うっ……それは……」

「戸惑うまでもなく、まず不可能だと思います。近い未来、私がハナを倒せずに銅像化して彼を封印するレベルということですよ。手を抜いた私にても足も出なかったリヌリラが勝てる確率は皆無かと」

「えっ……今日のやつって、手を抜いてたの?」

「結構抜いていましたね。右足を骨折しつつ、早朝起きで低血圧、食事を取らぬままに起きて五分で戦場に放り出されたレベルの力と思っていただければ」


 なんか具体的なのかそうでないのかよくわからない表現だが、要はメチャメチャ手を抜いていましたってことか。

 本気で立ち向かっていたのに、一撃しか与えられなかった自分が情けない。


「じゃあ、私はこれからどうすればいいの? 元の時代にも帰れず、この時代で何かをするという目的もなく……ここで飼い殺しされるっていうこと……?」

「いいえ、あなたにはやっていただきたい……いえ、やるべきことがありますよ」

「やるべき……こと……? 戦争に行けと言うなら、絶対に嫌だよ」


 私は過去、つまりこの時代に起きた戦争については否定派でいる。

 生物と生物が争いを繰り返した結果、星が崩壊するという末路を辿ってしまっているのだから、その過ちにわざわざ私が参加するなんていうことは、倫理的には当てはまらない。


「リヌリラ、あなたにはハナを”殺す”という大事な使命があります」

「……ハナ?」

「ハナ・シューリットを殺す。それがあなたが元の時代に帰るまでの目標です」

「い、いや……だってさっき、私が元の時代に戻ったとしても、ハナには勝てないって……」

「ええ。確かに勝つことは出来ないでしょう。『あなたの時代の』ハナにはね」

「……どういうこと?」


 話がこんがらがってしまって、状況がうまく把握できないでいる。

 そんな私に対して、ルーミルは丁寧に解説を入れてくれる。

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