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超循環のリヌリラ〜現役PS4ゲーム開発プランナーがゲーム化する〜  作者: タチマチP
第2章-19世紀のメルボルン。時代は過去へ、戦争時代-
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第13話:チュートリアル戦闘(前半)

 メルボルン郊外の荒野


 都市から三十分ほど歩いた。

 進みゆく中で少しずつ人の姿が消えていき、森林や渓流などの自然を経由し、岩や砂漠ばかりがそろう荒野と呼ばれるにふさわしい場所へと到着した。


「さて、到着しました。リヌリラ疲れていませんか?」

「ん、平気。毎日狩猟生活しているから、体力にはまあまあ自信あるかも」

「それは結構です。戦いはどのようにずれ込むかわかりませんからね。足は鍛え、腕も鍛え、内臓も鍛え、そして精神も極限まで鍛え抜くことで、超循環士は究極へと近づきます」


 どこの世紀末の世界かな?

 もしかして、少年が主人公で、勝利や努力しまくるマンガ読むの大好きだったりするのかな。


 ちなみにマンガは私は知っているぞ。

 世界が滅びゆく中でも娯楽を作り続ける人がいたからな。

 確か……なにおさむだったっけ?


「ご存知の通り、超循環士は魔法のような力を使いつつも、実のところ魔法使いなんて言う小奇麗なものではありません。いわば、戦争の中で最後まで信念を貫き戦う兵士のようなものです」

「私の時代では、狩人という表現をしていたけど」

「少なくとも動物よりは賢い生物が自身に襲いかかってくることを考えると、その考えは今は止めるべきでしょうね。最初の敵を仮に倒したとしても、二番目の敵にやられます」


 まるで本物の……って、本物か。

 どこかで自分が危険な時代にいるということを受け入れきれていないのかもしれない。

 気をつけないと。


「さて、リヌリラには最初に超循環の力の基本について確認しようと思います。準備はよろしいですか?」

「わかった」


 ルーミルは右手に装着している手袋を私の前にかざして。


「では手始めに、超循環の素材の使い方を簡単に説明してみてください」

「そんなの簡単だよ。超循環を使いこなす上では基本中の基本」


 私は近くにある枝を一本取り上げる。


「素材をまずはお腰につけた循環ポケットの中に入れる」


 入れられた三十センチほどの枝は、するすると入り口の中へと入っていき収まる。


「そうすることで、背中に背負ったカバン型循環機器『リュックキット』に運ばれて加工される」


 枝は腰の入り口から背中までを通る管の中である程度砕かれて、ややばらばらになった状態のままにリュックキットの中へと突入する。

 自分では見ることはできないが、一応リュックキット自体は透けて見える構造なので、仲間が今どのような力を発動しようとしているかというのは確認できる。


「この枝の場合は小さいから五秒もいらない。枝は加工されて力となる。力はリュックキットから右手の手袋へと移行される」


 右手を上げて、力が生成されている様子が光のオーラで確認できる。

 今回の枝の場合だと、小さい光でやや茶色気味。

 自然素材を活用した、やや弱い性能であることが確認できる。


「手袋には指ごとに応じたそれぞれの力の出し方がある」

「では、そこにある岩にでも攻撃してみましょうか」


 ルーミルと私の間から数メートル横にある岩。直径は二、三メートルといったところか。

 これなら即破壊することもないから、攻撃しつつ説明するにはちょうど良さそう。


「親指。フィンガーソード。超循環の力を指に直接埋め込んで、接近攻撃ができる。ある程度パワーもあるから、私は襲いかかってくる熊を撃退するときによく使ってた」


 岩に一気に駆け、親指を出し、腕全体を使って横に薙ぎ払う。

 指を剣のように扱い攻撃をするからフィンガーソード。


 攻撃した岩には斬り上げた際の爪痕が、厚さ一センチほどの深さで残された。

 もう少し強力な素材を使えば親指だけで岩を破壊することも出来るが、ひとまずそこいらで拾った枝ならこんなものだ。


「次に人差し指。フィンガーガン。手を銃のように構えて人差し指を出し、超循環の力を銃弾に変えて発射する。力はやや落ちつつも、遠距離まで届く素早い攻撃で、相手への牽制や遠くの敵への攻撃に有効。私は食べられる鳥を狩猟するときに使ってた」


 バックステップで数メートル分、岩から離れ、人差し指を出して、弾丸を発射する。


 バン……!

 バン……!

 ヒュン……!


 弾丸は形として残らないので銃弾が岩にめり込むことはないが、命中した弾丸の跡がへこむように刻まれている。


「三発中二発命中。飛距離は五メートルもないというのに、なかなかの命中率……もしや銃撃は苦手ですか?」

「ば、バレちゃいました? はは……」


 ハナにも毎回馬鹿にされていたエイム力。

 ルーミルにも速攻バレてしまうとは、お恥ずかしい限り。


「ご、ごほん。次に中指、フィンガーシールド。素材の力を活かして作る防御壁」


 今度は手をグーにしたまま腕を前に突き出す。

 中指に力を入れると、目の前には細かに刻まれた枝の粒子が壁のような形状になって展開される。


「シールドと言っても、屈強なものではなくて、素材ごとの性能を活かした壁で、火の攻撃を水の壁で防いだり、毒攻撃を解毒素材で防ぐようなすくみを考慮した防御性能。私は狩りで野宿をする際に、剥ぎ取ったライオンの皮をシールドにして、他の敵が近寄ってこないようにしていたかな」

「人の匂いをかき消すことも出来るので、悪魔に見つかりにくくなるという利点もありますね」


 とんちというか、理屈を細かく把握するという点で、最初のうちは苦労したけど。

 狩りで有利になるという話を聞いた結果、努力するという方向に進み、なんとか会得した才能だ。

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