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絶望都市シャンバルディア  作者: 東メイト
第五章:自由への代償
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第14話:合図

俺達はある程度同志を集めると次なる課題に頭を悩ませていた。それはナノマシンの生産体制が追いつかないことであった。


「今のところ、ナノマシンは1日に100人分を製造することができるけど・・・」

アルテは難しそうな表情を浮かべると眉間にしわを寄せた。


「このままの体制ではとても3ヶ月以内にシャンバルディア全員分のナノマシンを用意することは不可能よ」

俺達が作戦を実行するには革命を起こす日までに全員分のナノマシンを用意する必要があった。

だが、シャンバルディアの地下には大凡10000人以上の人口が存在していたため、アルテの言うとおり3ヶ月以内に革命を起こすことはほぼ不可能であった。


「一体どうすればいいんだ・・・」

俺はアルテと同様に眉間にしわを寄せると頭を抱えていた。


「その問題については俺が何とかするとしよう」

俺達が頭を抱えているとボアが口を挟んできた。


「一体どうするつもりだ?」

「まずはナノマシンを作っている機械を増やそうと思っている。そのためにはアルテの知識が必要だ。各機械に必要な部品を細かく描いてくれ」

ボアはアルテの方に視線を向けるとパソコンや他の機械の精密な設計図を描くように求めた。


「そんなものどうする気だ?」

「その設計図を元に都市部の連中に頼んでその部品を大急ぎで作ってもらうつもりだ」

「別に構わないけど・・・精密な部分についてはどうするつもり?」

アルテは人の手では作りづらい精密部品について心配していた。


「その辺は中古の機械をばらばらにして持ってこようと思っている」

ボアは都市部で扱っている中古のパソコンを引っ張り出すことも検討していた。


大昔の地上にはアルテ達が使っているような機械部品がたくさん残っており、都市部の生産者達の中にはそれらの物を大切に仕舞っている連中も存在しているようであった。ボアも時折そのようなものを取って来ては地下都市や地上の市場で売り捌いていた。


「なるほどね・・・それならナノマシンを作る工程は充分に短くすることができるわね」

アルテは納得した表情を浮かべるとボアの作戦に賛同した。


「だけど・・・ナノマシンの素体である金はどうする気?」

アルテは収集している金の量についても気にしていた。

10000人分のナノマシンに必要な金を一気に金鉱から持ち出そうとすれば流石に地上の人間達に俺達が金を盗んでいることがばれかねなかった。


「それについては・・・デュアルっ。お前さんに任せる」

ボアは唐突に金の問題を俺に放り投げてきた。


「・・・俺かよっ」

俺はボアの無茶振りに思わず本音を漏らした。


「仕方あるまい?俺はナノマシンの生産体制を強化しなければならないし、アルテはナノマシンを生産し続けなければならない。それなら金を集めてくるのはお前さんの仕事だろ?」

ボアの意見は至極真っ当であった。


「それなら・・・ボアの金庫にあったあの金塊を持ち込めばいいんじゃないか?」

俺はボアの持っていた大量の金のことを思い出した。


「それは無理だな。あの金がなければ革命の準備はできないし、それにあんな大量な金を地下都市に持ち込むことができると思うか?」

「・・・」

ボアの言うとおり、大量の金を持ち込むことは不可能であった。

それは地下へ降りる検査を受けたことがある俺自身がよく知っていた。もし、衛兵にあの大量の金が見つかれば確実に没収されるだろう。


「という訳だ。あとのことはお前さんに任せる」

ボアは俺に金の問題を押し付けると旅支度を始めた。


「どうしますか、デュアルさん」

俺が悩ましげな表情を浮かべていると状況を見兼ねたクルツが話し掛けてきた。


「そうだな・・・」

今のシャンバルディアの置かれている状況について色々と考えてみたが、今のところは何も良いアイディアは思い浮かんでこなかった。


「少し時間をくれ。色々と考えてみるから・・・」

俺はクルツに時間を要求すると気分転換のために部屋の外へと繰り出した。


(何か良い方法はないものか・・・)

俺が大量の金を獲得する方法について考えていると俺は何時の間にやら衛兵の守るエレベーターの前まで歩いてきていた。エレベーターの前では衛兵が地下の住人から掘り出してきた金を受け取っているところであった。


(あの金をそのまま奪うことができれば・・・)

俺は衛兵が運び出そうとしている大量の金を見つめながらふとそのようなことを考えていた。


(駄目だ・・・そんなことをすればあっという間に衛兵達に捕まってしまう・・・)

俺は自分の無謀な作戦に首を横に振った。


(どうすればいいんだ・・・)

俺は衛兵に怪しまれる前にそこから離れると今度は生活区の中心にある学生空間の方に足を向けた。


(学校か・・・懐かしいものだな・・・)

俺は学生空間の中にある建物を眺めながらジャンゴと過ごした学生時代について思い出していた。


(あいつと一緒によくこの高い壁を越えて外の街へと抜け出していたな・・・)

俺は学生空間を囲んでいる高い壁に手を当てながら塀沿いを歩いた。


学生空間は高い塀に囲まれており、中にいる学生は簡単には外へと出られないようになっていた。それは何も知らない純真無垢な学生が娼婦街などに迷い込んで快楽に溺れないようにさせるための当然の措置であった。


(本当にまるで要塞のようだな・・・)

俺は学生空間の建物を見つめているとある考えが思い浮かんできた。


(そうだっ。こんな大きな建物の中に逃げ込めば・・・)

俺は大量の金を獲得する良い方法を思い付くと急いで俺達が溜まり場にしている酒場へと向かっていった。


「ボアはまだいるかっ」

俺は慌てて酒場に飛び込むとボアの姿を探した。


「丁度良いところに帰ってきたな」

ボアも俺のことを探しているようであった。


「新しく仲間になった若い連中を100人ほど地上に連れて行きたいのだが、この辺りで地上に繋がりそうな良い場所はあるか?」

ボアは俺が頼み事をするよりも先に口を開くといきなり地上に繋がりそうな場所について訊ねてきた。彼は地下にいる人間の何人かを連れて地上での作業を手伝わせようと考えているようであった。


「そうだな・・・ここからだと北東にあるマヘリア山の麓の方とかどうだ?」

「マヘリア山か・・・わかった。そこから連れ出すとしよう」

ボアは地上に行きたい若い連中を募るとマヘリア山の方向に穴を掘るように指示を出した。100人もいれば地上に穴が開通するのは割かしすぐであった。


「すまないが、ボア。地上に行くのであれば大量の食料も一緒に買ってきてくれないか?」

俺はボアが地上に行くついでに大量の食料を用意するようにお願いした。俺の考えた作戦にはどうしても必要なものであった。


「別に構わないが、そんなもの一体どうする気だ?」

ボアは俺の意図が掴めずに首を傾げていた。


「ちょっとある計画を思い付いてな・・・そのためには大量の食料が必要なんだ」

俺はボアに計画の全貌を伝えずにとりあえず必要になりそうなものだけをお願いした。正直、まだ俺の頭の中でもしっかりとまとまっていなかった。


「・・・わかった。お前さんの言うとおりにしよう」

ボアは作戦の詳細は聞かずに首を縦に振った。


「それで僕達は何をすれば良いんですか?」

ボアが俺から離れると今度はクルツが質問してきた。


「とりあえず、俺達はボアが戻るまでは今まで通りに金を少しずつ持ち出しながら仲間を集める」

「・・・わかりました」

クルツは俺の命令を理解するとそれを他の仲間達に伝えた。


「さて・・・俺も確認に行くとしよう」

俺は学生空間の方に足を向けると学生空間の構造について徹底的に調べ上げた。これも俺の計画には必要なことであった。


それからしばらくして地上を目指していた100人の内の1人が連絡役として戻ってきた。


「ボアさん、地上への道が開通しました」

「・・・そうか。あいつらは上手く地上に出ているんだな」

「はいっ」

連絡役の男は元気よく返事するとボアに敬礼した。

ボアは若い連中を上手く手懐けているようであった。


「それじゃ、俺達も地上に向かうとしよう」

ボアは連絡役の男と共に地上へと出て行った。


「俺も頑張らないとな・・・」

俺はボアから貰った紙に学生空間の建物やその周辺の地形を書き込むと念密な計画を練り始めた。そして、俺達はそれぞれがやるべきことについて専念すると革命を始めるその日まで各々で計画を進めていった。


「ようっ、元気にしていたか?」

ボア達は2ヶ月ほどしてようやく地下都市へと戻ってきた。


「戻ってきていたのか?守備の方はどうだ?」

「この通りバッチリよっ」

ボアは自信満々な様子で地下に持ち込んだ大量の食料と機械の部品を見せてくれた。


「そっちの方はどうなんだ?」

ボアは俺の進捗具合について確認してきた。


「とりあえず・・・今のところは2000人ほど仲間にできているが、まだ全員じゃない。それにそいつらのナノマシンの製造も追い付いていない状態だ」

「なるほどな・・・結局、金の問題についてはまだ解決していないようだな」

「まぁな・・・」

俺は考えた計画をまだ実行していなかった。なぜならば、ボアが戻ってこなければその作戦は実行することができないからである。


「それでどうするつもりだ?」

ボアは再び金の問題について確認してきた。


「その前に・・・アルテ。ボアの持ってきた機械を使うとナノマシンはどれ位の量を作れそうなんだ?」

俺はボアの質問に答える前にアルテに質問した。


「そうね・・・」

アルテはボアが持ってきた部品を確認するとナノマシンの生産量について計算を行った。


「これだけの量があれば・・・今の10倍は作れそうね」

「10倍か・・・ということは1日に1000人くらいか・・・」

俺はアルテの話を聞いて俺の作戦の決行について考えた。


「ぎりぎりいけるかだな・・・」

「何を考えている?」

ボアは俺が考え事をしていると唐突に話し掛けてきた。


「実はな・・・地上に運ばれる金を奪えば地下都市にいる全員分のナノマシンの金を確保することができるんじゃないかと考えている」

俺は地下都市から運び出されている金をそのまま奪うことを企てていた。


「なるほどな・・・確かに掘り出した金を全て奪うことができれば、残りの住人のナノマシンに必要な金を得ることができるかもしれないな」

ボアは納得した表情を浮かべると俺の意見に耳を傾けてきた。


「だが・・・本当にそんなことができるのか?そんなことをすればただではすまないぞ」

「もちろん、ただ金を奪うだけならその時点で終わってしまうだろうな」

俺は金を奪った後の計画もきちんと考えていた。


「だから、俺は大量の金を奪った後にとある建物に立て篭もろうと思っている」

「立て篭もりか・・・」

ボアは険しい表情を浮かべると軽く顎鬚を擦った。


「そんな騒動を起こしてどうなるというんだ?それでお前さんが衛兵に捕まってしまえば元も子もないぞ」

ボアはその小さな暴動を起こして全てが終わってしまうことを危惧していた。


「俺が起こす騒動は革命の始まりの切っ掛けに過ぎない」

「どういうことだ?」

ボアは意味有り気な俺に質問を続けた。


「俺達が騒ぎを起こしている間にボア達には準備を整えて革命を起こしてほしいんだ」

俺は立て篭もって衛兵達の目を引き付けている隙にボア達が革命を起こすように提案した。


「なるほどな・・・お前さん達が騒ぎを起こせば、それだけ俺達も動きやすくなるということか。そして、俺達が騒ぎを起こすことでそれに乗じてお前さん達も衛兵から逃げ出すつもりなのだな」

ボアは俺の意図を理解すると納得したように首を縦に振った。


「ああ、この方法であれば、仮に俺達が失敗したとしても金は確保できるし、革命を起こすこともできるだろう」

俺は自らを犠牲にしてでもボア達に革命を起こしやすいような状況を作り出すつもりでいた。


「だけど・・・その方法だとナノマシンを製造している暇がないんじゃないの?」

アルテは直ぐに俺の作戦に穴があることを指摘してきた。


確かに彼女の言うとおり、金を確保したとしてもそれをすぐにナノマシンに変換できるわけではなかった。シャンバルディア全員分のナノマシンを作るには少なくとも8日間以上の期間は必要であった。


「そのことについてもちゃんと考えている」

俺はアルテの指摘に対して自信あり気に胸を張ると問題ないことを強調した。なぜならば、その期間を無事に乗り切るために俺は学生空間について徹底的に調べ上げてきたのである。


「俺は金を奪った後に学生空間に逃げ込もうと考えている」

学生空間は高い塀に囲まれており、守るには適度な広さで色々と身を隠せる大きな建物があった。そのため、外部からの敵を退けるには最適な場所であった。その場所に立て篭もることで俺は長期間の篭城が可能になるだろうと考えていた。


「学生空間だと?」

ボアは俺の計画を聞いて驚いた表情を浮かべていた。


「そうだ。そこに篭城すれば少なくとも1週間は逃げ延びることができると思っている。だからこそ、ボアに大量の食料を手に入れるように頼んでおいたんだ」

俺はそのために前以てボアに立て篭もっている間の食料を用意させていたのであった。


「そんなことをすれば地上の人間から一気に皆殺しにされたりしないのか?」

ボアは地上の人間が外部の空気を地下都市に流し込んで地下の人間を一掃することを恐れていた。


「その心配はない」

俺はボアの心配事をきっぱりと否定した。なぜならば、地上の人間からすれば地下の人間を皆殺しにすることは自分達の首を絞めることになるからである。


大きな革命であれば、その可能性も否定はできないが、小さな騒動であれば地上の人間もいきなり地下の人間を全て殲滅させるような愚かな真似をしないはずであった。


「しかし・・・騒動を起こすにしても、ただ乱雑に小さな騒動を起こすだけではあまり意味がないぞ。この地下都市には武器を持ち込むことができないから大した抵抗をすることもできないだろう?その点についてはどうするつもりなんだ?」

ボアは再び作戦の問題点について指摘してきた。確かに彼の言うとおり、俺達には衛兵達に抵抗するための武器がなかった。

当然のことではあるが、地上からの危険物の持ち込みは一切できない。そんな物があればエルゾニアの除去処理を受けている際に全て没収されてしまうだろう。


「う~ん・・・」

俺はボアの指摘に眉を潜ませた。正直、そこまでは考えていなかったのである。


「それなら・・・爆薬庫にある作業用ダイナマイトを武器として使うのはどうでしょうか?」

俺達が頭を悩ませていると話を聞いていたクルツが意見を述べてきた。


「作業用のダイナマイトか・・・」

俺はクルツの意見を聞いて思考を張り巡らせた。


確かにあのダイナマイトを学生空間の至る所に仕掛けておけば衛兵達の足を止めることは充分に可能であった。それにダイナマイトは地上に穴が開いた時に直ぐに使用しなければならないため、何時でも簡単に持ち出すことが可能であった。


「確かにそれを上手く使えば、充分に銃に対抗することができるかもしれないな・・・。ナイスアイディアだ、クルツ」

俺はクルツのことを褒めると彼の案を採用することにした。


こうして俺達はお互いの意見を交わしながら学生空間に立て篭もるための詳細について綿密に打ち合わせを繰り返した。そして、その結果、俺達は集めた同志を3つの部隊に分けることにした。


1つ目の部隊はボアと共に地上へと上がり、革命の準備を行う部隊である。彼らには革命に必要になる武器や食料を調達、運搬してもらい、さらに地上から俺達を支援する役目などを行ってもらう。そして、最後は外部から衛兵達に陽動を仕掛けてもらい、その間に内部から俺達が一気に領主の屋敷へと攻め込む手筈となっていた。


2つ目の部隊はアルテと共にナノマシンを製造し、地下都市の人間の説得を行う部隊である。彼らにはアルテの作り出したナノマシンを地下の住人達に配給してもらい、俺達に協力してもらう。そして、それらの作業が完了したら地上に繋がる穴を開けてもらって地下都市に陽動を仕掛けると共に地上で待っているボア達と合流して外部からも圧力を掛けてもらう予定であった。


3つ目の部隊は俺と共に学生空間に立て篭もる部隊である。俺達の役目は地下都市の住人達に配るためのナノマシンに必要な金を強奪して、それをアルテ達に引き渡すと学生空間へと立て篭もり、アルテ達が作戦を完了させるまでの間の時間を稼ぐことであった。そして、アルテ達の作戦が完了した後は地下から地上へと抜け出して地上を治めている領主の身柄を確保する。正直に言って一番過酷な役目であった。


俺達はそれぞれの部隊の指揮を取りながら衛兵達に革命の動きを察知されないように細心の注意を払った。そして、密かに計画を進めていった。


「そちらの状況はどうだ?」

俺はアルテの下に訪れるとナノマシンの製造状況を確認した。


「こちらの方は大体準備は終わった。おおよそ2000本のナノマシンを備蓄している」

アルテは箱詰めしたナノマシンを取り出すと俺に見せてきた。


「ボアの方はどうなんだ?」

「こちらも学生空間への食料の運び込みは無事に終わったぞ。それに外の連中の武器の調達ももう直ぐ完了しそうだ。何時でも革命を起こすことができるぞ」

ボアは口許を緩めると不敵な笑みを浮かべた。


「そうか・・・それじゃ、いよいよ明日、金を強奪するとしよう」

俺はボア達の進行状況を確認すると学生空間の立て篭もり作戦を決行することにした。


「それじゃ・・・」

ボアは机の上にコップを並べるとコップの中に麦酒を注いだ。


「革命の成功を祝して・・・」

ボアはコップを持ち上げると盃を交わすように促してきた。

俺達は彼に従ってコップを手に取ると真上に掲げた。


「絶対に・・・革命を成功させるっ」

俺はボア達とコップを交わすと一気に胃の中へと麦酒を流し込んだ。


「健闘を祈るぞっ」

ボアは表情を緩めると俺達の成功を神に祈った。


「まぁ、精々頑張りなさい」

アルテは他人事のように俺達のことを眺めていた。


こうして俺達の革命は始まったのであった。


(セフィ・・・必ず成功させるからなっ)

俺は静かに眠り続けるセフィの手を強く握り締めると彼女との別れを惜しんだ。


(それじゃ・・・行ってくるっ)

俺はセフィに別れを告げると力強く一歩を踏み出した。これで次に彼女に合えるのは革命が成功した後になるだろう。

それから爆薬庫から有りっ丈の火薬とダイナマイトを持ち出すとそれらを学生空間にある建物の至る所に仕掛けた。


(これでこっちの準備は完了だ・・・)

俺は立て篭もる場所の準備を済ませると頃合を見計らって大量の金をエレベーターに積み込もうとしている衛兵達を襲った。


「暴動だあああ」

地下都市は衛兵の叫び声と共に火蓋を切ったように騒然とした。


「行けえええ」

俺は衛兵達から大量の金を奪い取るとそれを持って学生空間へと走り去った。そして、学生空間の前に待機していたアルテの部隊にそれらの金を受け渡すと彼女の下へと運ばせた。


「おーいっ、こっちだぜっ」

俺達は業とらしく大声を上げると衛兵達に学生空間に立て篭もる状況をしっかりと確認させた。


「お前達、さっさとここから逃げろっ」

俺達は学生空間に入るとダイナマイトを使ってそこにいた生徒達を外へと追いやった。

このまま彼らをここにおいては無駄な戦闘に巻き込まれる可能性が高かったため、できる限り外へと逃がす必要があった。


(すまねえなっ。これも全ては自由を手に入れるためなんだ・・・)

俺は恐怖に怯えて外へと逃げ出す学生達の後ろ姿を眺めながら心の中で申し訳なく思っていた。そして、全ての学生達の避難が完了すると学生空間の出入り口をコンクリートで塞いだ。こうすることで衛兵達に簡単には学生空間内に入り込ませないようにしていた。


「次はトラップを確認するんだ」

俺はダイナマイトや火薬を仕掛けた場所を地図にして同志達に上手く利用するように伝えた。そして、俺達は防衛体勢を整えると衛兵達がやって来るのを待ち構えた。


その頃、学生空間の外では暴動に加わらなかったアルテの部隊が衛兵達の足止めを行っていた。


「衛兵さん、何とかしてくださいよ」

「彼らは子供達を追い出して学生空間に立て篭もっています」

アルテの部隊は衛兵に助けを求めるようにすがり付いた。もちろん、これも全て演技である。こうすることで衛兵の目を学生空間に向けさせると共に地下都市の住人の全てが地上の人間に対して反抗の意思がないことを示させていた。


「うるさいっ。そこを退けっ。貴様らは邪魔にならないように何処かへ行っていろっ」

衛兵達は近寄ってきた地下都市の人間達を追い払うと学生空間の出入り口に集結しつつあった。追い払われた同志達は素直に衛兵の命令に従う振りをして密かに地上への道を掘り進めた。


(みんな上手くやってくれ・・・)

俺は心の中でみんなの作戦が上手くいくことを強く願っていた。


「お前らは完全に包囲されている。素直に主犯者を差し出せっ。そうすれば他の者達の罪は問わないぞ」

衛兵達は学生空間に立て篭もる俺達に対して汎用な言葉を投げ掛けた。

当然のことであるが、俺達はこの勧告には一切耳を傾けなかった。そして、1日目はお互いに睨み合いの硬直状態のまま無事に終了した。


「まず1日目は成功だな。この調子であと7日間は堪えてくれ」

俺は同志達に労いの言葉を掛けると同志達の士気を高めた。


「お前達の目的は一体何なんだ?こんなことして一体何の意味がある?」

衛兵達は俺達の目的の意図が掴めずに困惑していた。そのため、俺達の目的の意図を探ろうとあの手この手で勧告を続けてきた。


俺達は衛兵の質問には一切答えずに沈黙を押し通した。下手に対応すればボロを出して外にいる別の同志達に迷惑を掛ける可能性があったため、迂闊に問い掛けに答えることができなかった。俺達の目的はあくまでも衛兵達の目をこちらに向けさせ続けることなのである。


「みんな、覚悟はいいか?そろそろ向こうも痺れを切らせて強行作戦に打って出てくる頃合だ。気を引き締めて各自対応してくれ」

俺は同志達の気を引き締めると衛兵達が強硬手段に打って出てくることを注意した。


立て篭もりを起こしてから3日目の朝、とうとう痺れを切らせた衛兵達は強硬な態度で学生空間へと侵攻を始めてきた。


「右方面に衛兵が2、30名向かっているぞ。侵入されないように死守しろっ」

俺達は外にいるアルテの部隊の合図で衛兵の動向を把握しながら学生空間内に入って来られないようにダイナマイトやつるはし、スコップなどを駆使して衛兵の突入を拒んだ。


「今だっ。点火しろっ」

俺は不用意に学生空間内の敷地に入ってきた衛兵に対して容赦なくダイナマイトを爆発させた。そして、人出の回らない場所には地雷のように火薬を仕掛けて迂闊に踏み込ませないようにしていた。


「くっ、一時撤退だあああ」

衛兵達は俺達がダイナマイトを持っていることを知ると強硬な態度を一転して慎重な行動へと切り替えてきた。強硬な突入は無駄な死者を増やすだけであった。


「何とか衛兵達を追い返すことに成功したな・・・」

俺は無事に学生空間を死守できたことで安堵の溜息を漏らした。


「みんなっ、この調子で頑張ってくれっ」

俺は外にいる別の部隊のために1日でも多くの時間を稼げるように同志達を応援し続けた。

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