第九十六話 トラウマを超えて
モンハンワールド 、ハンターランクも無事に開放してまったりやってる次第です^^
CODも現在激アツ!!ぁぁ、描きたいかも小説書いてる余裕がない……なんて、すいません、書きますよ、この調子で投稿していきます!
柳瀬刀道。KMC最高権利者にして、魔術師と繋がりを深め、アビスの力を手にした愚者。
彼は、早乙女、夜十の二人を相手にしている間、自分の力を引き出す準備を行っていた。
アビスの血液を体内へ取り入れ始めてから約一年程の年月が過ぎ、身体に定着してきているのは身を以て実感していた。
それは、噴水のように溢れ出し、止まることを知らない魔力の量。鋼鉄の皮膚は、最初に血液摂取で使用していた鉄の注射針を一切通さなくなった。
特注で作った合金注射針でのみ、血液摂取を行うことが出来る。
今まで摂取してきたアビスの血液の種類は、優に百を超える。魔術師からサンプルとして渡される血液の入った試験管には、種別の名前が書かれているが、刀道は全てを把握して摂取しているわけではない。
だが、少なくとも彼は、摂取した種別のアビスの能力を手に取るよう、全て使えるのだ。
「……緩いな。冴島夜十、もっと俺を楽しませろ!! 」
強めに放った言葉が風圧を纏い、片手に携えた剣を強く振るう夜十を弾き飛ばした。
木の床が足の形に陥没し、なんとか持ち堪えるが、突然の力の変化に驚愕する。
今までの攻撃が全く通じていないのにも関わらず、更に上が存在する可能性。
「まだ上があるのかよ……! 」
「はぁ……はぁ、はぁ……体力に自信はあったんだけどな。 」
息を切らす早乙女。だが、無理もない。
戦闘が始まって二時間半弱、彼らは一瞬の隙を与えようとしない立ち回りを繰り返し、攻防戦を繰り返しているのだ。
これで疲労しないのは、化物クラスだろう。
だが、夜十も刀道も息は上がっていない。
多少の疲れは表情や態度に滲み出てきてはいるが、致命的な疲労も傷も無いようだ。
夜十の剣を纏う魔力が空気を焦がし、雷鳴を轟かす、稲妻へ具現化すると、縮地法で真っ直ぐ懐へーーしかし、コレは虚空を切った。
「お前の魔法は確か……記憶魔法だったか。まさか、見た魔法を記憶して具現化出来るのか……? 」
夜十の背後へ現れた刀道は、神妙な表情で白刃を振るう。完璧なタイミング、夜十が決して避けることの出来ない適切な距離。位置。
刀道は彼の魔法の多彩さを確信し、尚、一撃必殺を与えようとする。
だがーー、しかし、剣は受け止められる。
高熱を帯びた真っ赤に光る無数の鉾は、力を合わせて刀道の剣を受け止め、弾き飛ばした。
今のは燈火の具現化魔法《焔弁の爆熱花》。
夜十が《追憶の模倣》で初めて具現化に成功した技だ。
「……ほう、中々だな。今のを防ーー」
「俺を忘れんなッ!! 」
余裕に満ちた刀道の表情にイラつきを覚えたのか、彼は剣を投げ、動きを加速させる。
空中で投げた剣を掴み取ると、そのままの速度を維持しながら鋭い突きを繰り出した。
だがーー、
「忘れているわけではないが、依然としてお前は弱すぎる。最強の一般市民は良い駒だが、敵として戦うには物足りなすぎている。 」
刀道は鋭い突きを、人差し指と親指だけで受け止めた。突然止められた速度がブレーキをかけられず、風圧となって吹き抜ける。
「……っ! 」
「やはり、この程度の攻撃は素手で充分か。それに……やれやれ、まだ待てないか。はぁ……」
突然の魔力解放に早乙女は大きく吹き飛ばされ、教室の壁に頭を突っ込んだ。
既に頭を引き抜くだけの体力も力も残されておらず、指を小刻みに振動させて、数秒後にピタリと動きを止めた。気絶したのか。
夜十が腕の脈を確認すると、一定のリズムの心拍音が親指へ伝わる。良かった、死んではいない。
ならばーー、と、視線を刀道へ移す。
「やっと一人になったな。お前のその顔、真っ青に染めさせてやろうぞ!! 」
彼は先程とは違う容姿をしていた。
頭の側面から突き出た赤い二本の角、真紅に染まった双眸から顔全体に広がり浮き出ている黒く細い血管は禍々しさを増強させる。
そして何よりも気になったのは、背中に生えている二つの黒い翼だ。蝙蝠のような形をしていることから、蝙蝠型のアビスの力が反映されているのだろう。
「……私の力で貴様を討ち取る。 」
「そんなのお前の力じゃない!付け焼き刃で身につけた他人の力だ!俺も本気でお前を倒す!絶対にだ! 」
《追憶の未来視》に異常無し。
瞳に流れるオレンジ色に発光した数値は、刀道の剣筋、立ち位置、音、空気の振動、動き、角度、今の戦いにおいて把握出来た情報を全て収束ーー、
"相手の未来"へ具現化させる。
「此処から先、お前の攻撃は全て見切った!もう、そろそろ終わりにしようか。 」
剣を持ち直し、矛先を地面へ向けた。
「ほう、私を終わらせると?笑わせるな、末裔如きが調子に乗られては困る! 」
瞬間、鋭い一振りが夜十の右へ虚空を切る。
避けられたことを疑問げに顔をしかめる刀道。当然、避けるのは容易いこと。夜十には見えているのだから、柳瀬刀道の未来が。
「さっきから末裔末裔って……何のことだよ! 」
眉間へ矛先を掠める。
ツーと、刀道の鋼鉄の皮膚が斬り裂かれ、赤い血液が額へ流れた。
「……そうか。お前は知らないのだな?自分の家系を。父親も母親も姉も早急に殺したからか。」
「俺の家族全員を殺した理由?そんなもの聞いたって、姉ちゃんも父さんも母さんも帰ってこないじゃないか!お前は此処で死ねば良いんだよッ!! 」
《焔弁の爆熱花》で具現化した鉾が刀道の四方八方から現れ、鋼鉄の皮膚を溶かす。
噴出する血液が床を汚し、徐々に体力を削っているかに見えた。
けれどーー、血液は収束し、瞬時に傷は癒えた。流れた血液も体内へ吸収される。
「今の一撃は中々重かったな。だが、私の急速回復には効かない。根本的に格が違うんだよ、末裔! 」
すると、刀道は両手を床に伏せ、魔法陣を作り出した。紫色に輝く禍々しい陣は、いつかの時、魔術師の老人がアビスを生み出す際に使用していた陣と酷似していた。
「お前は私の相手が務まるか、試験を行うとしよう。この程度のヤツが殺せなければ、お前は上に立つ資格はない。 」
そう言って、刀道は消えた。
きっと、逃げたのだろう。自身の身体の回復は"未来"で見えたには、回復しきっている様子ではなかった。
急速回復と嘘をついて、自身と夜十との格の違いを見せつけるだけの威嚇。
残念ながら夜十は見切れていた。
このタイミングで彼が逃げることも。
だから、これから登場するアビスは一撃で仕留めると、心に、覚悟を決めた。
「威勢だけの塊。お前は俺の家族を簡単に滅ぼしたんだろ。だったら、俺が仇をとってやるべきだよな。父さんと母さんの顔は知らない……でも、姉ちゃんは俺のかけがえのないたった一人の家族だったんだ!! 」
現れたのは、漆喰な鱗を身体に纏う巨大な黒龍だった。夜十の夢にいつも登場し、《願いの十字架》の光に怯えて逃げ去るだけの雑魚。
それでも、幼少期の夜十にとって、コイツは心が張り裂けそうなほどのトラウマだった。
三体の黒龍は、たった一人の歌姫を一夜にして溶かす原因となった。
消滅していく身体、彼女は懇願した。
俺に、"生きてくれ"と。
「グォォォオオオオオオオオオオオ!! 」
鼓膜を破りそうな突き抜けた咆哮が空気を大きく振動させる。
今更、コイツに怯える必要はない。
戦う意思も、殺意も、怒りも、全てこの一撃に募らせよう。
一切の迷いはなかった。
トラウマによる精神的攻撃で彼を弱らせようと黒龍を出した刀道は、学園の屋上で眉をしかめた。
黒龍の硬い鱗でも耐えきれない、彼による光を纏った決死の一撃をーー、
「《光の神刀》! 」
かつて、夜十の師である新島鎮雄がこの魔法一回で五体のアビスを消滅させた程の高火力が期待される魔法だ。
収束した光が一振りの刀となって、覚悟を決めた男が手にするのを待った。
そして、瞬間、光速で突き抜けた白刃は黒龍に何をさせるわけでもなく、黒い欠片へ変貌させた。
亡骸に視線を向けるはずもなく、夜十は刀道の魔力が鎮座している位置を掴み取った。
「……絶対に逃さない!此処から始めるのは、俺の家族の復讐だ!! 」
ーー復讐による怒りは、
度を超えた力に変わる。
けれど、《未完成》の未来はいつだって残酷で無比だ。
夜十は凄まじい形相で亜光速移動し、屋上にて鎮座するKMCの王を追い詰めようと向かったのだった。
第九十六話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!
投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。
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@sirokurosan2580
今回はトラウマを克服した回です。
次回、
夜十の復讐の怒りによる執念は止まることを知らない。彼に対して攻撃も当たらず、空回りを繰り返す、刀道はアグニスの言葉を思い出した。
《未完成》は侮ってはいけない。と。
追い詰められた刀道は、持てる全ての力を酷使して夜十へ猛威を振るうがーー!?
次回もお楽しみに!!^^
拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!




