第九十五話 内部衝突
遅くなりました!新作の方の準備頑張ってます( ◠‿◠ )
静寂に包まれた中庭は、戦いの果てに、所々が破壊され、気絶した《正義派》獅子王、一二三、二人が倒れている。
獅子王と同時に倒れ、二階で気絶した沖に関しては、ミクルと黒が運んでいった。
今は、血さえ繋がっていない兄妹が身を寄り添い合って、話をしている。
「なぁ、燈火……焔は、俺を許してくれるだろうか……、次期当主の溶二を殺してしまった俺を……」
罪悪感に苛まれ、哀愁漂う表情の火炎へ、燈火は慰めの言葉をかける。
「私のように、説明すれば分かってくれるわよ。それに……焔は、きっと知ってたのかもしれない。火炎が火炎じゃなかったこと。 」
「……え? 」
「あの人は本当に情に熱いから……、家族だと思ってる人の様子がおかしかったらすぐに気づくんじゃないかって……」
朝日奈家当主であり、《炎帝》と畏れられた最強の魔法師、朝日奈焔。彼の性格上、自分の大切にしている対象に対しての愛は半端ではない。
そんな彼が星咲の《魔源の首飾り》に侵されている家族に気づかないわけがない。燈火はそう考えていた。
「……何がどうであれ、俺達が今出来ることは学園を取り戻すことか。目の前のことに集中しないとな……朝日奈のコトは、二の次。はぁ……」
「一度拠点に戻ろう。現状を把握しないと! 」
覚束ない足取りで立ち上がった火炎を支え、燈火と火炎は拠点へ一度帰省するのだった。
ーーその頃、拠点では、
傷だらけで帰省した沖、黒の治療を纏が行っていた。拠点内は物凄く静かで、風見も店長も下を俯きながら、必死に考えている。
学園を救出する上で犠牲が多すぎているからだ。コレで沖、鳴神、虹色は絶対安静。
それに、今は思考よりも負の感情が募り、瞳に急激な潤いが宿ってしまう。
仲間の死は、学園の規制が無いことで何度も何度も経験しているが、一向に慣れるものではない。
《平和派》を総統していく者に限らず、皆を引っ張っていくリーダーにとって仲間の死は永劫。永遠に紡がれる背負う重み。
「風見、今はソレ、考えるの辞めろ!医者からの強制的な命令だ。今、考えて涙を流しても、轟音は戻ってこないし、学園も助けられなくなる。轟音の死を無駄にする気か? 」
辛辣に言葉を早口で連ねる纏へ、彼女は激怒し、肩を掴んで向き合い様に怒鳴り声を上げた。
「纏君は悲しくないの!?何で、そんな冷静でいられるんだよ!! 」
ーー平然ではない。勿論、冷静でも。
纏は、顔を真っ赤にして目に涙を浮かべていた。
「平然なわけねーだろ……でも、今、心を鬼にしなきゃ、俺達は潰れちまう!ここまでやって来たんだろ!?だったら!!風見!リーダーのお前が引っ張ってくれるしか道は無えんだよ! 」
纏は普段上げないような大声を出して、必死に想いを伝える。
風見にこれ以上の迷惑と心配をかけたくないのが本音、でも、彼女は全員のリーダーで、風見以外務まるわけが無いと思った。
これまで培ってきた100%の信頼が優るのは当然。
「店長、分かってるよな? 」
「嗚呼……俺達が二都先輩からココを渡された瞬間から、覚悟は決まってたはずだった。もう一度、覚悟を決めるよ。 」
下を俯く戦士達は、顔を上げる。
風見蓮。涼と轟音のこともあってか、気分は最悪も同然だ。けれど、リーダーは前を向かなければならない。
如何なる時も、心を鬼にして。
風見は、両手で自分の頬を挟み叩くと、真っ赤になった頬を歪め、纏の方へ顔を向ける。
「ありがとう、私はまだ休めないね。全てが終わったら、轟音ちゃんのお墓、作ってあげなきゃ!作戦会議を開始するよ!! 」
「「おおーーーっ!! 」」
その場に居る全員で今までにない大声を出して、作戦会議は始まった。
「つまり、コレで残すは、第一柱、早乙女拓哉のみか。学園を取り戻すのも後少しだけど、轟音ちゃんの話を聞けば、学園長の柳瀬刀道も関わっていることになるんだけど……」
柳瀬刀道、毎度毎度で入学式などの式典の日にしか学園へ顔を出さないKMC最高権利者。
威厳のある風格で、彼が紡ぐ言葉の一つ一つに誠実さの意がこもっているといっても過言ではない。言わずと知れた優秀な人間。
「風見さん、今、私が感じられる空間を察知して居たんですけど、夜十と早乙女拓哉、共闘して柳瀬刀道と戦ってますよ!? 」
「はぁ!? ……あっ、すまない。どういうことだい?ソレは? 」
空間魔法で視界を空間とリンクさせることで、遠距離からでも敵の位置などを探ることが出来るミクルの技法は、確かに夜十と早乙女が共闘している姿を捉えていた。
そして、アビスのような魔力を纏う柳瀬刀道も。
「状況は分かりませんが、場所は、三階の教室です!! 」
「本当に何でそうなったかは、私に見当も付かないけど、行ってみよう。動ける人は、準備を整えて三階に集合!! 」
ーーその瞬間だった。
燈火と火炎が拠点に到着したのは。
顔を真っ青にして、既に瀕死状態の火炎に加え、ここまで必死に支えて背負ってきた燈火の疲労状態は危ういもの。
「……火炎を治療してください! 」
燈火の声に、直ぐさま、纏が火炎の治療を開始する。仰向けに寝かし、傷と体の容態をチェックし始めた。
「燈火ちゃん、君は大丈夫なのかい!? 」
「私は大丈夫です。こんなところで倒れていられませんから……!! 」
燈火と風見のやり取りを見て、目を光らせる医者。
「いや、待て……と言いたいところだが、今は人手不足。死にはしなければ、治せるから無理はしないでくれよ! 」
瀕死状態でも治すことはできる。
死んでも平気なんで医者は何処にも居ないだろう。
「じゃあ、《革命派》!私達の力を、学園長とやらに分からせてやるよ!! 」
「「おおーーーっ!! 」」
現在動ける全員で拠点を勢いよく飛び出し、本校舎三階へ向かったのだった。
ーー本校舎三階。
激闘を繰り広げる三人の手は止まらない。
一度後退し、瞬時に隙を判断、突っ込む速度も含めて、永遠に続く攻防は凄まじい。
そろそろ、息が切れてもおかしくない状態に対し、柳瀬こそ目を疑ったのは、二人の精神力と体力。
汗はかいているものの、まだ息切れが無い。
「この私の力について来るとは……!! 」
「お前の力?そんな付け焼き刃の力で俺に勝てるわけないだろ! 」
後ろへ後退し、距離を取った夜十は、一歩を大きく踏み出し、叩きつける柳瀬の一撃を縮地法で回避する。
背後に回ることに成功し、鋭い蹴りを腹部へ放ったーーしかし、空を切った。
「餓鬼が知ったような口を利くな! 」
夜十の反射速度は群を抜いている。
それに、今は確実に意表をついていた。けれど、柳瀬は反応し、無防備になった夜十の腹部を思い切り蹴り飛ばした。
「があっ……!! 」
肺の中の空気が一瞬で外へ強制的に出される。圧迫し、呼吸もままならない。
大きく吹っ飛ばされるまでには行かなかったが、今の膝蹴りはモロに受けてしまった。
追い討ちが来ないよう、腹部を抑えながら体勢を立て直す。
剣のグリップを強く握りしめ、柳瀬へ睨みつける。
「今のは効いたろう?はははは、もう私はお前を許さない。殺してアビスの餌にしてくれる!! 」
「人間を統括しているヤツの言葉じゃねえ……絶対負けない!! 」
アビスを駆逐したいと願っているはずだったKMCがソレを肯定してしまっている事実に、夜十は顔向けしたくなかった。けれど、顔向けしたくなくても、逃げるのは違う。
「夜十、大丈夫? 」
「ああ、早乙女、ヤツを倒すぞ! 」
重なり合う二つの《魔源の首飾り》。
二人の願いは世界平和。
目の前に立ちはだかるは、KMCの王、柳瀬刀道。まだまだ戦いは序盤。
二人は尚も、柄を強く握り締め、集中力を咎めるのだった。
第九十五話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!
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今回は、《平和派》分裂の危機!?回でした。
次回!!
夜十と早乙女、柳瀬の三人は激闘を繰り広げる。
その柳瀬の身体に異変が起き始めてーー!?
次回もお楽しみに!
拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!




