第九十三話 揺れる想い
遅くなりましたー、モンハン楽しいですね!!
そう言えば、《異世界召喚されたけど、ラーメン作ります!》の連載は3月を予定しています。
まだまだ先ですが、楽しい作品にしていこうと思うので是非お楽しみにしてください(*´∀`*)
「共闘って……君の立場なら、俺と戦うべきじゃ? 」
説得するつもりだったとは言えど、突然のコトに頭がついていけず、夜十は困惑した。
「そうなんだけどな……。さっきも言ったが、柳瀬刀道、KMCが《戦場の歌姫》を殺したんだ。俺はその仇を取りたい……ずっと願ってたコトなんだ! 」
早乙女の強い気持ちは、夜十の瞳の奥に眠る熱い闘志に火をつけた。
姉の為に、自分の置かれている立場を捨てて、復讐をしようとしてくれている。改めて、《戦場の歌姫》の偉大さに気がついた。
「……分かったよ。 」
「ありがとう。やっと果たせる復讐なんだ。KMCの柳瀬刀道と繋がって、《戦場の歌姫》が死んだと知った、あの瞬間から! 」
「俺こそ、ありがとう。そんなこと、微塵も知らなかったから、姉が死んだのは、俺のせいだと思ってた。俺が弱いからだって。 」
本当にそう思っていた。
だから、強くなろうと決心し、"目の前で人を失わせない"信念が自分の身体に縛りついたのだ。
静寂の空間の中、二人は、互いに目標を狙い定め、鎮座しているKMCの王へ、携えた刃を手向けようと、走り向かったのだった。
ーーその頃。中庭では、黒と火炎が一二三、小型アビスと交戦している。
猛獣型の小型アビスは、ダメージこそ低いものの動きは素早く、魔法の使えない二人にはキツイものとなっていた。
「……はぁ、はぁ……、クソ!どうしたら、この馬鹿みてえな状況を打破出来る!! 」
「あの指輪を破壊するしかねえな。それ以外に俺らが勝つ道は無い。 」
火炎は黒の言葉に生唾を飲み込んだ。
それはつまり、魔法の使えない状況で相手に接近し、的確に小さな指輪だけを破壊するということ。
蟻が一匹で象を狩猟するくらい難しい。
簡単に言えば、無理ゲーだ。
「おらおら、逃げ回ってばかりじゃ、俺に勝てねえぞ??? 」
煽り文句を飛ばし、回避に徹する二人の研ぎ澄まされた集中を途切らせようとする一二三。戦闘において、魔法封じを行う時点でかなり性格悪いというのに、細かく戦略を立ててくる辺り。それ相応の性格だ。
一二三の漆喰に染まった刀剣が、黒の喉を掻き斬らんと迫る。
その剣技を紙一重で避け、反撃を駆使しようとするがーー届かない。
一二三の攻撃速度と、黒の攻撃速度は今、天と地の差があり、到底追いつけるはずがないのだ。
「……オラァ!! 」
小型アビスを格闘のみで薙ぎ払う。
この時、火炎は自分の奥底に眠る力の存在に気がつき始めていた。
沖遼介が沖家の当主であることの気の持ち方を自覚したことと同じように、奥底に眠る何かが自分の中で暴れ出している感覚。
力は漲り、抑えきれなくなる。
「……ぐっ、な、なんだこれは……!! 」
身体が熱い、熱い、熱い。
火照り、熱が痛みへ、痛みが熱へーー。
「俺が朝日奈家を継ぐなんて資格ねえのに……!!どういうことだ、この力は!お、抑えきれねええええええええ!! 」
心拍数が上がり、音が次第に大きくなる。
自分の中で何かが目覚めようとしている、火炎は、力を抑えるコトに神経を酷使した。
頭を抑え、小さく蹲った。
「なんだ、なんだ?頭なんか抑えて、お前、気が狂っちまったのか? 」
「……火炎、大丈夫かよ!!なぁ!? 」
黒の声も届かない。
炎の龍は《炎帝》の道を辿り、軈て、生まれ変わる。
力を受け入れねば、壊滅は器。
「……分かった。この痛みが全部、朝日奈家のモンなら、俺は受け入れてやる!!だから、俺を許せ、焔ぁぁぁああ!! 」
ーー瞬間。
滾った炎が器から噴き出し、周りの空気を焦がした。火炎の姿は急変し、無数の赤い線が魔力が通る道を示し、皮膚に浮き上がらせる。
腕、足、胴、頭。全ての部位に行き届く、魔力道へ、炎は侵食した。
「……はぁ、はぁ、はぁ……!! 」
「な、なんだ!?俺の《封印の指輪》は反応してるはずなのに、どうして?! 」
突然のコトに一二三は混乱し、動きが鈍った。急変した炎の龍は、突然とは言えど、一二三の動きの鈍りに気がつき、飛び上がって食らいついた。
地面を足蹴にして飛ぶ瞬発力、速度は、火炎の通常速度とは明らかに違い、段違いなモノへと変わっている。
空中で捕らえた一二三を、そのまま掴んで、地面に叩き落とした。
黒の言っていた"指輪を破壊する"目的よりも、ガムシャラになって敵をなぎ倒すくらいの感情と思考しか出来ていない。
「ぐぁっ……!! 」
叩きつけられた時の身体への負担が、《封印の指輪》を酷使している自分の身体へ響く。
大型アビスを三体討伐する傭兵でも、生身の人間であるコトに変わりはない。
暫く動けなくなってしまった。
「……くそ、身体が言うことを聞かない!! 」
ジタバタと動く様は水を失った魚のよう。
少なくとも、火炎には獲物が、もがき苦しんでいるようにしか見えていなかった。
そしてーー、
「ま、マズい!!動け身体! 」
火照る熱と滾った炎が一度に噴出し、高熱を纏った拳が、一二三の顔面へ振り下ろされる。
地響きがなる程の威力の拳で、命までは絞り取られなかったが、一二三は意識を落とした。指輪の赤い輝きも消滅し、黒の身体に魔法が戻る。
「……一瞬のことで何が何だかわからなかったが、どういうことだ?!火炎! 」
「……あぁ、朝日奈が俺を許してくれたの……か、 」
膝から崩れ落ち、体に刻まれた赤い線は消滅した。賺さず、地面へ倒れる瞬間に、黒が受け止めて、仰向けの態勢へ寝かせた。
火炎に今の一瞬の記憶はないのだろうか。
だとすれば、今のは火炎じゃない?
黒の思考回路は駆け巡り、あらゆる点の模索を頭の中で繰り広げているとーー、
「……火炎! 」
焦った高めの声音が火炎の名を呼ぶ。
桃色の髪を風に揺らめかせる少女、燈火が仰向けに倒れた火炎へ駆け寄った。
彼女よりも遅れて到着したミクルが黒の方を向き、首を横に振る。
黒はミクルのジェスチャーの意味を理解すると、ミクルと一緒に中庭から立ち去った。
"今は、二人だけにしてあげよう"
「お前、そんな真剣な顔も出来るんだな。 」
「黒さんって、見かけ通りの毒舌、根暗だね。ああいう時は、駄目だよ。他の人が干渉するのはさ……。 」
神妙な表情になったミクルに、黒はどうしたらいいのか分からず、話題を変えてみるコトにする。
「お前、夜十とどれぐらいの付き合いなんだ? 」
「……夜十は、八歳の頃からだよ。今、十六歳だから、八年かな。それがどうしたの? 」
「いや、別に。気になっただけだ!さて、ペアが入れ替わっちまったが、一回拠点に戻るか。 」
「……うん、そうだね。 」
二人は状況整理の為、拠点へ帰省することを決めた。
今残る《正義派》は、早乙女のみ。だが、早乙女は、柳瀬刀道に懸ける復讐心に駆られて、夜十との共闘を決意。二人は動き出した。
揺れる、学園への想い。
揺れる、それぞれの想い。
衝突するのは、過去の復讐か。
左右するのは、一つの信念か。
ーーこの時はまだ、誰もわかっていなかった。柳瀬刀道の真の目的、強さを。
第九十三話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!
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@sirokurosan2580
今回は少し短めで、《炎帝》への道を確実に辿る火炎を描きました。
次回予告入りまーっす!
共闘を決意した早乙女と夜十の二人は、KMCの王座にて鎮座している柳瀬刀道へ、携えた刃を振るうがーー!?
次回もお楽しみに!!
拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!




