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追憶のアビス  作者: ezelu
第2章 組織編 《学園救出編》
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第九十二話 早乙女の案

遅くなりました。

新連載《異世界召喚されたけど、ラーメン作ります。》を投稿日は未定ですが、投稿する予定です。

公開したら是非、お楽しみに頂けたらなと思っております!!

「あの指輪……何の力だ!? 」


緋色に輝く宝玉がはめ込まれた指輪は、一二三の薬指に付けられている。

彼の目では追いきれない速度による攻撃は、魔法が使えなくなってしまった二人にとって、"絶体絶命"を意味するものとなった。


「ど、どうしたら……!! 」


「火炎、お前は回避に徹しろ!俺はヤツの動きを牽制してみる。 」


この状況では首を縦に振るしかなかった。

火炎には、魔法以外の強みがない。格闘や剣術は、一般生徒に比べると多少の強さは持っているが、剣の達人相手に太刀打ち出来るようなレベルのものではなかった。


一方、黒は自分自身の力だけで努力を積み重ね、達人級の強さを手に入れた侍。

影魔法の応用で速度や動きを強化していたのは勿論だが、多少なら無くても戦闘に於いて、有利に持って行くことはできる。



「……お前ら、終わりじゃね?魔法が使えない魔法師の卵なんざ、小型アビスの足しにもなりゃしねぇよ! 」


更に速度を上げた一二三の刀剣が、動きを読んで状態を逸らし、回避行動を行なった黒の頬を掠めた。



「……避けるので手一杯かよ。魔法を使える状態にするには、どうしたらいい! 」


どうしたらいいかなんて、考えながら戦闘して行くしかない。勝つ為にはそれなりの考えと、運動能力が必要になってくる。上手く、火炎を使って、この状況から打破すれば、勝率は上がるだろう。

だが、その為の策が全くない。


黒が持っているのは、一太刀の剣。

店長が魔法を滅多に使わない黒用にカスタマイズした、魔力を必要としない一般的な刀剣の硬さを向上させたモノ。

技術次第では、相手の魔法を斬ることも出来るようになっている。



「《封印の指輪(ケール)》の力ぁ、流石だな〜。お前ら、魔法が使えなくなった気分はどうよ!俺に蹂躙される気分は?! 」


煽り口調でバシバシと魔法を使い、動きを強化している相手に頭が上がらない二人。

また、あの速度強化による攻撃が来る。

今度は避けるのではなく、動きを止めることを考えよう。


重心を低くして、真正面から来る相手を見据える。

そしてーー見事、黒は一二三の剣を受け止めることに成功した。

だが、速度とは重さ。威力は絶大。

全身の筋肉が悲鳴を上げている。



「……ぐっ……!! 」


「まさか受け止められるとはね〜。でもっ! 」


黒の背後へ影で具現化された剣が迫る。

この角度、このタイミング、避けられない!

そう思った瞬間だったーー、本校舎二階が爆発し、中庭の方へ獅子王が吹っ飛ばされ、一二三に直撃したのは。



「……なっ!? がぁぁ!! 」


具現化した剣は術者が吹っ飛ばされたことで、空中に消滅した。

間一髪というところで奇跡が起きたのだ。


「オイ、獅子王テメェ!邪魔してんじゃねえよ! 」


「……ぐっ、すまない。悪いが、お前、あの鬼を止めてくれないか……? 」


壁を背にして、身体中に斬撃を食らった痕が残り、血を流している獅子王が指差した先には、緋色の魔力を纏う、クリーム色の髪の少年が立っていた。


「はぁ?! 」


「……すまない。 」


それだけ言い残し、獅子王は気を失った。

一二三は、二階から自分を見上げる"鬼"を凝視する。

彼の制服はボロボロで、全身に獅子王と同じ斬撃痕が目立っている。血塗れな部分もだ。


「獅子王慶吾、また剣を合わせられたらと思うよ……」


沖はその場に崩れ落ち、気を失った。

全てにおいて限界が来ていたのだ。



「アレが、沖家の生き残り、沖遼介か。まさか、獅子王と相打ちとはね〜。意外とやるじゃん。さてと……俺の目標二人はどう俺を追い詰めてくれる? 」


一二三は、二刀流の短剣をしまい込み、二丁拳銃を取り出した。

銃弾を迷わず、地面に二、三発撃ち込む。

すると、猛獣のアビスが複数体現れた。


「……コレが俺のAW(アビスウェポン)! 」


迫りくる複数体の小型アビスと、一二三。

二つの脅威に未だ魔法を使えない二人の状況は、全くと言っていいほど、変わっていなかったのだった。







体育館の中に足を踏み入れると、防御障壁が一面に展開された戦闘演習の時の状態になっていることに気がつく。

普段は一般の体育館と同じ作りになっているのにも関わらず、今日は違っていた。



「冴島夜十、《戦場の歌姫(アーサー)》の実の弟だよな? 」


体育館に足を踏み入れるなり、早乙女は夜十へ質問した。

それは一般的に語られていない、極秘の情報のはず。何故知ってーー、いや、そんなことはKMCの雇われ身というだけで説明がつく。

KMCの飼い犬、ATSの死亡記録は全て、KMCに保管されているからだ。


「そうだよ、姉を知ってるんだね? 」


「勿論、歴史に名を残す魔法師の一人だからな。それに、《戦場の歌姫》は、俺の命の恩人だ。 」


姉に助けられた人。

なら、あの歌声を聞いたことがあるのだろう。夜十の聞いた歌声は儚くも悲しいメロディだった。

けれど、普段の戦場にいた姉の歌はどうだったのか。前に、新木場さんに聞いたことがあったけれど、その時に言っていたのはーー、傷付いた仲間を癒し、仲間の戦闘能力を高めてくれる素晴らしい歌声だった。と。


ニュアンスだけで、肝心な部分が伝わってこないが、それだけ素晴らしいモノだったに違いない。



「君は覚えているんだろ?八歳の時の事件を……」


「黒龍が三匹、俺と姉が新木場さんの店でご飯をご馳走してもらってる時に、襲ってきたコト……、何故、そんなことを? 」


過去のことは過去のこと。

けれど、未だに忘れられない。姉が涙を流し、光る粒子となって消滅していく様は。



「あの位置にアビスが三体も現れるわけが無いんだよ。言っている意味、分かる? 」


「……確かに、言われてみれば……」


アビスは基本、群れとなって行動することは絶対に無いと言われている。理由は分からないが、数々の魔法師の経験から編み出された情報で、そうなっているからだ。



「《戦場の歌姫》は殺されたんだ。アビスじゃなく、人間に。KMCに。 」


「……KMCに?でも、どうやって?! 」


すると、早乙女は周りの目を気にし始めた。何かを察知したのだろう。自分の耳に付けている水色の小さな石が埋め込まれた耳飾りを指で触れて揺らし、小声で影響を紡ぐ。



「《時と空間、司る全てに感謝を手向ける!時空の首飾り(ティエンポ)!》 」


耳飾りが光を解き放ち、夜十は愚か、早乙女以外の空間の時間が停止した。

彼は、止まった時の中で、夜十の肩をポンポンと2回程叩く。


するとーー、

夜十は動き出し、異変に気がつく。

いつも、察知している全てが聞こえないのだ。空間の揺れ、空気の振動全てが、活動を停止しているようだった。



「……なっ、どういうことだ!? 」


「俺の《時空の耳飾り(ティエンポ)》は、時を止める魔法を使える《魔源の首飾り》だよ。柳瀬刀道の部下の気配がしたから、止めさせてもらった。これで、問題ない。 」


夜十には理解が出来なかった。

時が止まっているなら、止まっている時間、自分を倒せば、彼の勝利なのだ。

なのに、何故、自分を助けるような真似をするのか。早乙女の思考が読めない。



「KMC最高権利者の柳瀬刀道は、アビスの血を自分に流し込むことで、人智を超えた力を手に入れたんだ。アビスの魔力、血、これを普通に手に入れられるのは、人間じゃない。 」


「……まさか?! 」


"柳瀬刀道は魔術師と手を組んでいる"

ことになる。

もし、それが本当なら、今まで不可解だったことの辻褄がいくつか、合ってしまう。


アビスを操れる魔術師なら、三人の居た店を襲わせることも簡単だし、アビスの魔力を封じ込めた武器を平然と作ることが出来る。



「夜十君が今、頭に浮かべたことは、間違いじゃないよ。単刀直入に言うね。俺と一緒に柳瀬刀道を倒してほしい。 」


「……え、え?共闘? 」


夜十の視界は一瞬真っ白になり、喉から突き出たのは驚愕の声音だった。






第九十二話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!

投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。

TwitterID↓

@sirokurosan2580


今回は早乙女と夜十の話メインでしたね。


次回予告でっす☆

共闘を申し込まれた夜十だったが、罠なのかと疑いをかける。だが、早乙女の《戦場の歌姫》に懸ける思いは本物だった。夜十の決断は如何にーー!?


拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!


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