第九十一話 《封印の指輪(ケール)》
少し時間かかりましたね。あしたは投稿できるかな?分かりません、仕事終わっての疲れ具合によります^^ご容赦くださいw
自身の魔力で生成した黒い刀剣を手に、戦闘に飢えた餓狼は獲物を見定める。
相手の武器は二刀流の小刀、瞬発力に優れた武器にして、一太刀で敵を穿つ刀剣とは、真逆の戦術を用いることで有名。
黒の見定めた獲物、基、一二三四五六は、二本の小刀を交差させ、鋭い瞳を間にギラつかせた。
緊張の瞬間、お互いがお互いを見つめ合い、出方を伺っている時ーー、
黒にとっての戦闘は"開始"こそが肝心であり、ここで自分のペースに持っていければ、勝率は格段に上昇する。
「……さァて、どんなもんかな〜? 」
「……」
一二三が僅かに重心を浮かせ、その勢いで地面を蹴ろうとした刹那。
黒は一二三の影として背後に回り、刀剣を勢いよく振り下ろす。
「……へぇ?怖いね、仁科黒。 」
相手の背後を取り、確実に相手にとって驚愕する一撃だったのにも関わらず、一二三はその場の反射神経のみで黒の刀剣を交差させた自らの小刀で受け止めた。
何という反射神経か。地面を蹴って、前方に身体の重心も持っていかれていたはず、そこで避けるならまだしも、受け止めるとは。
黒の額に冷や汗が流れる。
今の背後に周り込む魔法は、魔法の才に恵まれなかった黒の一回消費の技だった。
普段から魔法を使わずに剣術だけで敵を穿つスタイルの黒だったが、今回ばかりは風見の忠告が耳に残る。
余計なことは考えず、真っ向から本気で戦わなければ勝てないと悟ったのだ。
ーーその頃、火炎と夜十は、自分達の任された持ち場を離れ、中庭付近の廊下を歩いていた。
二階では相当激しい攻防が続いているのか、先程から校舎の揺れが気になる。
誰が誰と戦っているのか、検討さえ付かないが、向かおうとした時、二階に続く階段が天井の崩落で進めなくなっており、向かうことを断念した。
夜十が察知した空間の振動の大きい場所、中庭付近の探索をすることになった次第だ。
「夜十、本当に此処から感じたのかよ? 」
「嗚呼……間違いなく、中庭に二人。此処から見えるよ、黒と誰かが戦ってる! 」
夜十と火炎は、中庭に続く渡り廊下の入り口の扉越しに中庭内の戦闘を視野に捉えた。
彼らが見たのは、二刀流の小刀を装備した黒の相手が素早い速度で戦いながら加速し、刀剣一本で戦う黒を追い詰めている所だ。
「……あの動き、自分自身の影を使って、地面を連続で蹴ることで加速してるみたいだ。つまり、風見先輩が言っていた影魔法を使う相手……三柱の一二三四五六に違いない! 」
「それって、お前と同じ《魔源の首飾り》を所持してるって情報のヤツだろ?大丈夫なのかよ! 」
大丈夫な訳がない。
《魔源の首飾り》所持者に立ち向かえるのは、同じ所持者のみ。
所持者は、魔法使用上限が無限になる効果と、特殊な能力を使用出来る。
それに対し、黒は何か強みがあるわけではない。
魔法師の卵として、かなり上位に食い込むくらいの力は持っているかもしれないが、現在の敵相手に状況は最悪。
「……三人で戦えば何とかなる! 」
扉を勢いよく開こうとした刹那ーー、
夜十の右頬を掠めながら、白い細剣が扉へ突き刺さった。
「……っ!? 」
「冴島夜十、君に逢いたかったんだ。 」
完全に背後を取られたことを悟って、勢いよく後退しながら後ろを振り返る。
すると、そこには黒髪のストレートヘアが目立つ少年が笑みを浮かべて立っていた。
驚いた火炎も思わず、反射壁を展開する構えに入る。
だが、少年は何もしてこなかった。
「君は? 」
「俺は早乙女拓哉。君らが倒したがってる《正義派》の第一柱だよ。 」
堂々と敵二人の前で宣言した彼は、少し歩み進めて後ろを振り返り、夜十にだけ手招きをした。
つまり、夜十だけに来て欲しいということだろう。
「俺だけってことは、タイマン? 」
「いや、戦う前に話がしたいんだ。少しだけ良いかな? 」
明らかな罠だと怪しむ火炎だったが、夜十は風見に聞かされた早乙女に関する情報で同じ境遇だと感じたこともあってか、早乙女の誘いを断らずに承諾した。
「火炎、黒と二人で一二三を倒すんだ。俺は、早乙女と話してくる。もしかしたら、説得できるかもしれないだろ? 」
「……そんなうまい話があるわけねえだろ! 」
火炎の怒鳴り声は虚しくも廊下に響くだけだった。夜十は、彼の声を仕方なく無視して、早乙女が行った方向へ向かう。方角的にアリーナの方か。
取り残された火炎は、夜十の安否に心配を募らせて、仕方なく、渡り廊下の扉を開けようとドアノブに手を掛けた。
すると、こんな声が流れてきたのだ。
思わず、扉を開けるのをやめてしまった。
「そーだ、お前、朝日奈火炎に姉さん殺されたんだろ?だったら、刃物向ける相手、間違えてんじゃないの? 」
火炎が星咲に洗脳され、殺戮を繰り返すクソ野郎になっていた時、仁科黒の姉を殺してしまったのは、胸の内にある"罪悪感"のポケットにしまわれている記憶だ。
その話題を出されると、本来の自分を取り戻した火炎にとっては、何も言い返せない、黒歴史のようなものになっている。
黒はきっと、姉のことをまだ根に持っているはずだ。
《革命派》で仲間になっているとは言えど、敵だった奴に向ける救済なんて。
だがーー、
「……は? 」
「復讐したくて、暴動を起こしたんだろ?なぁ?復讐は果たせたのか? 」
黒は、一二三が話し始めた挑発に乗ることもなく、己の意思を曝け出す。
彼の胸の中に顕現したのは、怒りそのもの。
「部外者が勝手な解釈してるんじゃねえよ。確かに、俺の姉は火炎に殺された。だがな! 」
「……なっ! 」
「夜十が居なくなってからの妹が落ち込んでいる時、側にいて、自分の罪滅ぼしをしようと必死だった火炎を見て、俺が今更何も言えるわけねぇだろ! 」
黒の示した意思に思わず泪ぐむ火炎。
そんな風に見ていてくれていたとは夢にも思っていなかった。
嬉しさも含めて、自分が憎くなった。
こんな所に隠れて、黒の意思を聞いている自分が。
ーー勢いよく扉を開き、床に膝をついて黒へ頭を下げながら火炎は必死に懇願する。
「本当にすまなかった……!! 」
ポカーンと口を開き、突然の本人登場で驚く一二三と黒。
だが、黒は土下座で頭を下げている火炎を笑顔で許した。
「……なんでそんなとこに居んだよ!クッソ恥ずかしいじゃねえか! てか、何泣いてんだよ、らしくねえぞ?火炎! 」
黒の煽りに乗っかって、彼は立ち上がり、涙を服の袖で拭った。
「……だよな。俺が泣くなんて、おかしいよな。黒、ありがとな。倒すぞ、こいつを! 」
「当たり前だ!! 」
黒と火炎の掛け合いを側から見ていた一二三は、眉を細めて、親指の爪を噛む。
「お前ら如きに倒される俺じゃないよ。なぁ、朝日奈火炎。自分の罪を自分で償おうという意思、凄いと思うけど、それって自己満足じゃないの? 」
「ゴチャゴチャと煩い奴だな。口を閉じて、戦闘に集中しろ。俺ら二人がお前をぶちのめしてやるからよ!! 」
黒の前に出て、掌を突き出す火炎。
自分の挑発が効かなかったことに不満げな表情の一二三は、身体の全体の重心を低くして、獣のように四本足で地面に這い蹲るよう、構えを取る。
先程とは比べ物にならないほどの魔力を感じ、黒と火炎は慄いた。
だが、こちらは二人。落ち着いて、戦術を行使していけば勝てないことはない。
「……《魔を制御し、邪を喰らう未。禁を有するならば、魔を捨てよ!封印の指輪》!! 」
一二三は、瞬発力と加速力を影魔法の応用で向上させた瞬間、自分の右手、薬指に嵌められた、中心に緋色の宝玉が埋め込まれた指輪の名前を叫び、周囲の魔を脅かす一手を撃ち込んだ。
「……《超反射》! 」
掌から反射壁を作り出し、一二三の一撃を跳ね返そうとした刹那だった。
火炎は魔法が発動しないことに気がつき、身体を伏せて、亜光速にも届く速さで、二本の小刀の刃を向ける一二三を、間一髪で避けることに成功する。
だが、完全に避けれていたわけではなかった。
表面上の皮膚を斬られ、右手首の静脈に近い位置から血液が噴出する。
人間の致命傷を与えられる位置を知り尽くしている一二三は、態と手首を狙ったのだ。
今まで、対アビスの傭兵任務だけではなく、人間相手をしていた事もしばしばあった。それに、暗殺者ならば人を殺すのは必然。
人間の壊し方など、知らない方がおかしい。
「……やべえ!出血が……」
火炎の有する《反射壁》は自分の怪我している位置に展開すれば、血管から出血する血液を跳ね返して、元の位置に戻すことが出来る応用技もある。
だが、この時の火炎を含め、二人は魔法を使用することが出来なくなっていた。
自分の身体の異常に疑問と不安が募る。
「残念無念また来世ってな。お前らの死は確定的なんだよ。終わりだ、死ね! 」
再び、二刀の小刀を手に、敵へ致命傷を与えようと、一二三は加速するのだった。
第九十一話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!
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今回は黒と火炎が和解するお話がメインでしたね。
次回予告行きますよーっ!?
和解した黒と火炎、お互いに力を合わせて戦おうと試みるが、一二三の《封印の指輪》によって魔法が使えなくなってしまう。
二人は策を講じるが、果たしてーー!?
次回もお楽しみに!
拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!




