第九話 絶体絶命
今日は送れなかったです!!
良かった(*⁰▿⁰*)
相手の攻撃範囲が広大過ぎるまでに、俺と朝日奈は光速で追尾してくる足に感知されないよう、壁と壁の間を通り抜けながら、巨大烏賊の攻撃範囲から出ようとしていた。
どれだけ遠くに逃げ切れば、相手の攻撃は届かないのだろう。
そこの部分は見て、憶さなければ分からない。
俺は、キョロキョロと周りを見回して、逃げ道がないかを探している彼女へ声をかけた。
「朝日奈!!お願いがあるんだ!!」
彼女はキョトンと疑問げに頭を傾ける。
「俺がココから建物の上をヤツの速度に捕まらないよう、走り抜けるからここに居て欲しい!!俺が合図を出したら、自分の中で一番高火力の魔法を使ってくれないか!?」
「でもあんた……それじゃあ!!」
"追いつかれたら即死"
分かってるけど、それでもやらなきゃ、助からない。
逃げ道のない無理ゲー的な強さの相手を倒すには、倒すための力の土台を作ることが大切だ!
先ずは、相手の攻撃範囲と防御力を確かめて、憶する!!
「……大丈夫!!俺は朝日奈を信じてるから……!!
朝日奈も俺を信じてくれ!!」
「わ、分かったわよ!私もあんたを信じる……!」
俺は笑顔で頷いて、
建物の壁と壁を蹴り、器用に上に登ると、下の方で手を振っている彼女に手を振り返し、目の前の異形へ視線を向けた。
異形はどこまでも巨大で、無数に伸びる足で敵を感知しようとしている。
やはり、正面突破でひきつけてから、逃げるしかない。
今、憶せているのは、
触手が伸びてくる瞬間の角度と、速度、音、振動、衝撃の並の威力、だ。
他にも細かい部分が憶せているが、肝心のヤツの攻撃範囲と、防御力を憶せていない。
さあ、ヤツに攻撃を仕掛けよう。
目の前まで現れれば、襲ってくること間違いなしだろう。
俺は、建物の上からジャンプして、別の建物に飛び移ると、それを何回も繰り返して、相手との距離を確実に縮める。
ーー案外、感知範囲は狭いようだ。
と思って、次の建物に飛び移ろうと地面を蹴った矢先。
ーー光速で相手を殲滅しようとする足が、俺の腹部を貫こうと必死に伸びてきた。
直後、目を瞑って、空気の振動を確かめる。どこに来る……?
まだ《追憶の未来視》は完成していない。
けれど、相手の攻撃を避けるくらいなら容易いことだ。
俺は、相手の攻撃をするりと受け流しながら、避け切る。
次の建物に飛び移ると、
そこからは全力疾走。
巨大烏賊とのにらめっこが始まった。
ーー光速で追尾してくる足は、一本だけではなく今では十本ほど追尾してきているようだ。
目を瞑って、空間を把握しながら相手の攻撃を避ける所業は、はっきり言って、集中力と体力を圧倒的に消耗する。
だが、きっと彼女であればーーー、
俺の思いに答えてくれる!!
だから、どんなに疲労わ感じても、
攻撃だけは当たってたまるかッ!!
真っ直ぐ、真っ直ぐ、一歩を確実に踏み外さないように巨大烏賊の攻撃を避けながら走っていく。
自分が空気を裂く音と轟音は、頭の中で"未来"として複製されていたとしても、要らない要素は自動的に排除されるようにしているので、計算式が狂うことはない。
「……本体から10kmを離れた……!!クッソ、これでも追ってくるのかよ!!」
10kmを軽く超えても、伸び続ける足に恐怖さえ感じるが、今更諦めるわけにはいかない。やり始めてしまったことは、最後までやり通し、成功へ導かねばならない!
後少し、後少し!!
後少しで朝日奈への合図を!!
「朝日奈ぁぁぁぁああああ!!」
喉仏を潰しながら、全力で大声を紡いだ。
俺の叫びは、きっと彼女に届いたのだろう。
彼女はーー
「どこまでもバカよ、あんた。《邪の化身よ、巨を焦がす大火を元に、焼き崩れ去りなさい!!大火の緋衣華!》」
彼女の言葉と共に紡がれたのは、
赤く巨大な薔薇の花。
花弁が燃え広がる炎のように滾り、雄しべの部分は、緋色の眩い光を放ち、僅かなクールタイムを作り出す。
攻撃の準備が整った瞬間……眩いばかりの緋色の太い光線が放出し、巨大烏賊の頭に直撃する。
光線放出時の魔力量は計り知れず、彼女はまた、地面に膝をついた。
直撃した瞬間に爆発音と煙幕で巨大烏賊が目視出来なくなると、俺は倒すことが出来たのではないかと錯覚した。大型アビスも二人で力を合わせれば倒せないことはないのだと!
ーーだが、
直後の光速で動き、煙幕を切り裂いたモノに、俺は絶望する。
地面にへばりつくように疲弊しきっている彼女を、空中へ吹っ飛ばす程に、威力の強大な足による大打撃を、
目の当たりにしてしまった。
彼女を危険を晒してしまった自分の判断の甘さに、悔しさと怒りが感情を支配し始める。
そして、俺の思考は、複製した"未来"は感情によって、打ち消されてしまった。
「ま、まず……!!」
巨大烏賊から伸びる無数の足に押し潰され、俺は地面にめり込む形で叩き落とされた。
「……くっ、クソ……!!なんであの火力の攻撃を受けて、平然と攻撃してこれるんだ!!」
やっぱり、巨大アビスは別格。
普通のアビスであれば、確実に倒すことが出来る死角を狙った魔法での大打撃さえ諸共せずに、別の攻撃を仕掛けてくる。
それも、二人相手なのに、だ。
いくら見習いと言っても、朝日奈家の時期当主に選別されている人の高火力の魔法だぞ?
俺はーー使うしかないのか。
あの……使うことを禁止された魔法を。
出来ることなら一生使いたくはない。
でもーーここで使わずに彼女を死なせるよりは、後悔しないような選択をしたほうがいいに決まっているッ!!
俺は、制服の下に隠れている十字架のネックレスを取り出し、それを握り締めると、思いのままに叫んだ。
「……俺はもう、二度と目の前で人を失いたくない!まだまだ弱虫で、力の足りない俺だけど、いつか!!この力を使わなくてもいいようになってやるッ!
でも今は、こうするしかないんだッ!!《この腐り切った世界に終焉を、十字架の光の下に、願いを叶えよッ!願いの十字架!》 」
この状況を打破するためには、
最強の矛を手に入れるしかない!!
俺は……無敵になるんだ!
突如、銀色の十字架のネックレスから放たれる光は、彼の願いをーー彼自身を包み込むように、世界を一変させる。
白い光は、雲の上へ伸び、
光が解き放たれた瞬間、彼の周りには白い光が纏わりつくように具現化された。
「……お前らアビスさえ居なければッ!この世で幸せに生きれた人だってたくさん居たはずなんだ!!絶対に許さない!!許してたまるかッッ!!」
俺の身体は閃光に輝き、宙を浮かぶように飛んでいる。
異変に気がついた巨大烏賊は、俺を貫こうと必死に無数の足の先端を尖らせて、襲い掛かる。
だがーーもう、前の俺ではない。
尖った足など、気にも留めず、俺は直進で足を受け流す。無敵となれば、撃ち砕けない鉾など存在しない。
「……はぁぁぁぁぁあッッ!!」
無防備に目の前にある太く唸りを上げている足へ、剣を振り下ろした。
直ぐに再生してしまうのは分かってるが、牽制のためだ。再生しているタイミングで俺を見失えばいい!
剣を背中に挿してある鞘に戻して、ヤツの弱点へ向かうべく、加速した。
巨大烏賊が足を切られたことに激怒して、多数の足を飛ばしてくるが、周囲の白い光を纏った空気に弾かれる。
そして、一気に巨大烏賊の懐、弱点とされている部分の侵入に成功した。
奴らの弱点は口の部分だ。
下についている大きな口は斬撃による攻撃が大きな弱点と言われていて、そこからの強大な魔法であれば通らないことはないらしい。
ーー朽ち果てろッッ!!
この剣が届く範疇に、お前らの生はないと思えッ!!
俺の手には、白い光で具現化された大剣が、発現される。
それを振り上げ、精一杯の詠唱で、
巨大烏賊に手向けを放つ。
「《「《鼬の道斬り、一閃の一太刀で、邪を斬り捨てる力となれ!光明の剣!》」
一筋の光が解き放たれたかと思うとーー、
一閃。朝日奈の攻撃を一切受け付けなかった相手の防御力を無にするかのように。
「……ングォォォォォォォォォ!!」
ーー俺は、巨大烏賊を真っ二つに斬り捨てた。
ヤツを斬り捨てた後の空は曇天の空から、切り裂かれるように青空へと変わっていった。
もう、振り返ることはない。
斬り捨てた相手に、向ける視線などーー
ーー百を望んでも、あり得るわけがない。
九話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!
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130pt以上を達成しました(*⁰▿⁰*)!!
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本当に感謝しかありません(涙目)
拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!




