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追憶のアビス  作者: ezelu
第2章 組織編 《学園救出編》
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第八十話 夜十、死す……?

遅くなりました。新連載を予定している異世界転生系のプロットを寝るのが楽しくて、こっちが疎かに……すいません!

その後、七人は、風見、クロ、虹色、沖の四人、ミクル、燈火、夜十の三人に分かれ、探索を開始することになった。

風見曰く、夜十達の乱入はもう上の方へ伝わっているのは間違いないらしい。


となると、纏めて七人いるよりは二手に分かれておいた方が都合がいい。

敵を分散出来るきっかけにもなるからだ。



「じゃあ、お互いの危険を感じたらすぐに端末に知らせること。夜十君、燈火ちゃんを任せたよ! 」


「風見先輩方もお気をつけて! 」


そこで解散となった。

風見に聞いた情報を一通り記憶したが、《正義派(ジャスティス)》のうち、九人は新入生だという。

歳も性別も其々で纏まった様子は無い。但し、十人目の在校していた一人は夜十もよく知るあの人物だった。


ーー夜十組は、静寂に包まれた校舎内の一年生の教室とは別方向の場所に位置する廊下で話しながら歩いていた。



「燈火、魔法が使えないなら俺の剣を使いなよ。俺は大丈夫、武器生成出来るからね。 」


「あ……う、うん。ごめん、ありがとう。 」


「何だよ、元気ないぞ!! 」


燈火の頭をポンポンと撫で、屈託のない笑顔で顔を覗き込む。

夜十は素っ気ないつもりでやったが、久しぶりに夜十に会う燈火にしてみれば、嬉しくないわけがなかった。

思わず赤面し、目を逸らす。


「夜十、ありがとね……火炎のこと。 」


「ああ、誤解は解けたか? 」


「……うん。まさか、あんたに家族のことまで助けられるとは思ってなかった。本当にありがとう! 」


燈火の言葉にニッコリと笑い、視線を外した。

夜十と燈火の会話を聞いて、ミクルはいい気持ちをしていなかった。

やはり、子供の頃から見てきた大好きな人に突然恋人が出来るのは許せない気持ちだからだろう。



「本当は火炎の側で待機してようと思ったんだけど……またいつ、遠くに行ってしまうか分からないから、怖くて……」


「……だよな。寂しい思いをさせて悪かった。もう、どこにも行かない。だから、安心してくれよ。 」


「……本当に?約束だよ?? 」


「当たり前だ。約束だよ。大好きだ、燈火! 」


「私もだよ、夜十! 」


二人のやり取りに収まりが感じられず、やや呆れた表情で窓の外の空を見つめていたミクルは異変に気がついた。


「ふ、二人とも!お楽しみのところ悪いんだけど、多分、敵来るよ!! 」


「わ、悪い。久しぶりだったから、ついな……確かに、この足音は、振動はーー 」


複数の足音が聞こえ始める。

それは、前からも背後からもだ。

見る見るうちに、複数の生徒達によって、囲まれてしまった。



「……夜十。朝日奈とイチャイチャしすぎだよ。後ろの女の子が呆れてんじゃん? 」


複数の軍勢が三人を囲って逃げ場をなくした瞬間だった。軍勢の後ろからゆっくりと足を動かし、一歩一歩を確実に進める少年の姿が見えたのはーー。



「お前……久我か? 」


夜十が見たのは、今までとは変わらない久我ではなくーー何かが少しだけ違う久我の姿だった。

彼は軍勢の前に立ち、まるで指揮官のように白い針のような長剣を収束した光によって作り出した。



「《正義派(ジャスティス)》が十柱、久我祐一。ここでお前ら三人の首を持ち帰る……! 」


久我は重心を低くして、構えの姿勢をとった。地面を這い蹲る犬のような。



「オイ、久我……嘘だろ? 」


「嘘じゃない!俺はもう前の俺じゃねえんだよ!俺は強くなって、認められたんだ! 」


一気に加速、空気を切り裂く速度は、先程夜十が捌き尽くした獅子王尊の放つ斬撃に酷似していた。いや、それ以上か。

けれどーー久我は見えない壁に遮られる。



「血の気が盛んだね。夜十の友達か、知らないけどさ……命を狙う者同士なら容赦しない! 」


ミクルは先頭に立って、空間を制御する。

収束した魔力は背後、目の前、右、左、上、下。

全ての死角を消し、万全な戦闘態勢を整えさせる。



「……魔法師か。関係ねェ! 」


空間が操られていると悟った久我だが、それでも空気を切り裂く凄まじい速度で壁に長剣を差し出した。


ーー瞬間。


白い光に包まれて、別空間からの一切の干渉を受け付けないミクルの空間障壁に細い長剣が突き刺さり、僅かにも小さなヒビを入れた。ヒビは大きくなり、乾いた音と共にミクルの不安を増大させる。


「……嘘でしょ?あ、ありえない!! 」


掌の上の魔力を全て目の前の障壁へ注ぎ込む。さすれば、久我の思い通りになる。

全方向全ての障壁に当てる魔力は消滅し、自然消滅するのは確実だ。



「……クソ、前も後ろも断崖絶壁みたいなもんだ。燈火、やれるかよ? 」


「やるしかないじゃない……! 」


二人が決意した時にはーー時は既に遅かった。ミクルの障壁は粉々に敗れ去り、朝日奈の持つ夜十の刀剣は軍勢の後ろまで弾き飛ばされる。



「大人しく投降しなよ。夜十、俺はもう前の俺じゃない。ここで戦うのならそれも良いけど、君には二人の人質がいるんだ。 」


後ろを見ると、複数の生徒に囲まれた燈火。目の前には力通じず、倒れているミクルの姿が見える。

これでは、勝ち目は、まるでない。


「……どうしてッ!久我、お前はどうしてそんな風になってしまったんだ! 」


「夜十、一つ言わせてもらうよ。俺だって、教室でおちゃらけている奴で居たかったよ。でも、お前らがそうさせなかったんだ。謝罪はいらない、死んで償え! 」


どこまでも残酷な眼光、表情は夜十の胸に突き刺さる。

そして理解させた。


ーー"目の前の人を失わせない"

この言葉の意味は文字通り、死んでほしくないという意味だ。けれど、俺は、自分勝手に守って、自分勝手に学園を去った傲慢な男。


それでいて、学園を守ろうと決めるなんて、あり得ないほど自分勝手だーー。


ーーそれでも!


"抗うしかない!"

抗うだけ抗えばきっと何かが見えてくる。


もう何も失わせない。

久我……お前もだぞ!



「久我ぁぁぁ!!! 」


魔力を掌に収束させ、黒い刀身の剣を具現化させる。自分の力で、自分が制御した力でどんな奴も助ける。

それは死を問わず、生にしてもだ。



「……忠告を無視するんじゃねえよ。まあ、夜十。お前とはやってみたかったんだよなァ! 」


凄まじい瞬発力で目の前から消え、青白い残像を残す。残像を目で追っている間に久我の持つ白い長剣は夜十の首を捉えた。



「……ま、マズイ! 」


身体を斜めに反らせ、剣を回避した。

今のは自らの双眸で見て読んだ回避ではなく、直感だ。それ程までに久我の速度は常軌を逸している。



「お前、そんなに強かったかよ! 」


「戦闘中に話が出来るほど余裕なのかな? 」


意地悪な物言いをし、目で追いきれない速度で夜十を翻弄し続ける久我。

彼の動きを目で追うことは不可能。


ならばーー目で見る以外で捉えるしかない。


言葉にするのは簡単。実行するのは難しい。

けれど、夜十の《追憶の未来視(リコレクション)》なら不可能は実現させることが出来る。


ゆっくりと瞼を閉じ、視界を閉ざした。

空間の感覚を感じ、相手の初速によって巻き起こる速度の風、風の角度、音、空気の裂ける感覚、受け入れられる全ての情報をーー。


"記憶し、データ化"する。


データ変換に異常無し。


データ移行に異常無し。


今、この瞬間からーー。



「目でも瞑って諦めたかよ! 」


久我は真っ直ぐ、夜十の正面に現れ、刀身を頭へ差し出した。

けれどーーそれは《追憶の未来視》によって遮られた。


放たれた久我の武器を黒い刀身でギリギリ受け止めることに成功する。



ーー《追憶の未来視》に異常無し。



「なっ……今の攻撃を目で追えんのかよ! 」


一度、後ろへ後退すると直ぐに姿を消した久我。彼の未来はもう既に夜十の手中。

どんなに翻弄する動きをしても、簡単に捉えられてしまう。


斜め右46°の方向から一度、飛び上がった瞬間の加速で腕を捉えた攻撃が来る。


ならば、受け止めて、蹴りでもお見舞いすれば動きは遅くなるだろう。

少しずつでも良い!相手が有利な状況下で自分が有利に立つには少しずつ、地道な攻撃が要になってくる。



「……ッ!?なぁっ……!? 」


腹部に猛烈な熱が走った。

熱い、熱い、熱い、熱い、熱い!


目を開けて、腹部に触れる。ベッタリと赤い血が掌に流れた。

《追憶の未来視》で未来を読んだはずなのに、何故久我に斬られてしまったのか。


頭の中に疑念だけが渦巻く状態に、嘲笑の笑みを溢した久我は刀身に付着した血液を振り払い、地面へ叩きつけた。


「疑問を浮かべている顔だな。まあ、そうだろうよ。お前の未来を読む力も、その弱点も知っている!! 」


久我はそう、言い捨てた。


《追憶の未来視》の最大の弱点は、一対一の剣戟の中では無いと言っても良い。


相手の癖や立ち回りを全ての情報を記憶し、データ化、相手が動くことの出来る未来を複製するのが《追憶の未来視》の原理だ。


その中で複数のモノを捌ける数は決まっており、それこそが最大の弱点。

だが、今の攻撃の中で複数のモノーー。


「……ま、待て!お、お前はその魔力は?! 」


久我の持つ白い長剣からあり得ない魔力を感じる。

それは、世界を滅ぼし、人類の大切なものを平気で奪う最悪な存在ーー。


ーー《アビスの魔力》だ。



「お?気がついたのかよ。そう、コレはお前が朝日奈と退治したって言う《巨大烏賊(クラーケン)》の魔力を封じ込めてある武器だ。 」


「アビスの魔力を……どうやってッ?! 」


腹部を抑え込み、腹筋に力を入れた。

少しだけ血の流れる速度を遅め、戦闘態勢を整え始める。

今の話に久我が釘付けになっている間にーー。



「KMCが考えることは怖いよ。アビスの魔力を制御してしまうんだからな。まあ、お陰で俺ら《正義派》は全員、この武器を持てるってわけだ。 」


世界中の魔法を管理する為の組織がアビスを死滅させずに捕らえているとでも言うのだろうか。

もし、そんなことがあれば、スキャンダルで済む話では無い。KMCは文字通り壊滅する。



「……許せッ……ない!! 」


この世界を混沌に陥れる最低の存在の力を受け入れるということになる。

それはつまり、人類が負けていると知っているような行為だ。


この勝負は負けてしまう。

けれど、次の勝負なら勝てるかもしれない。


この一手にかけるしかない。

そうすれば、久我を倒せる可能性だって無いことはない。


夜十は抗ってみることにした。

絶体絶命の状況下では勝てないと悟ったのだ。


そしてーー。



「まあまあ、楽しかったぜ。遠いところから態々ありがとな。それじゃ、死ねよ。 」


笑顔で手を振り、久我は長剣を差し出す。

懐かしさを感じる光速の追尾する足が夜十の首を確実に捉え、斬り捨てた。


夥しい量の血液が噴出し、血の池を作る。

行き場を失った頭部は久我の足元に転がった。

瞳は虚ろで、口元は何故か微笑んでいるように見えた。


《魂》を失った胴体が血飛沫を上げながら音を立てて崩れ落ちる。



冴島夜十は、文字通りーー死を遂げた。

八十話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!

投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。

TwitterID↓

@sirokurosan2580


今回は夜十が死亡?という回です。


次回予告入りまーす!


首を斬り捨てられた夜十は文字通りの死を遂げた。夜十の死に燈火は泣き叫ぶがーー!?


次回もお楽しみに!


【今回は時間もないので休み】


拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!


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