第七十九話 《革命派》始動!
ps4 のcod ww2 にハマってます(^。^)
投稿が余計に不定期になりそう、怖い!
久しぶりのKMC魔法学園の正門前は、常軌を逸した静かさを放っていた。
そして、不自然なことに警備隊が三人程校門前を整列しながら立っているのだ。
緊迫した様子から中で何かが起きてることは間違いがなさそう。
問題はーー。
「学園の中に入るにはどうしたらいいと思う? 」
近くの建物に寄り添いながら、校門前を偵察している三人は、最初の難関にぶつかった。
KMC魔法学園の警備セキュリティと言えば、生徒として認められている人物の魔力を認識して、結界の警備レベルを一時的に最低に下げることで通れるようになる、世界史上で最も厳しい魔法結界を用いている。
在校時代、夜十は二度も結界を消滅させているが、今のように三人しか居ない圧倒的不利な状況下で大ごとにさせるような事は迂闊には出来ない。
それに、《正義派》という得体の知れない派閥があるのでは、より一層行う気にはなれない。
「あの結界は厄介なんだよな。どうすれば……」
「何を考えているの?私が空間魔法で全員を移動させればいいんじゃん! 」
「あっ……!そ、そうか。ミクルが居れば、学園の好きな場所へ簡単に移動出来るな。なら……あの場所に頼む! 」
彼女の魔法、空間魔法はありとあらゆる空間を捻じ曲げ、人間や物体の移動、空間に異常を齎すことが出来る魔法である。
夜十は、ミクルの額に掌を触れると自分の頭の中に記憶されている《平和派》の拠点の情報を流し込む。
その空間がある情報を瞬時に判断し、彼女は二人の手を握った。
「じゃあ……行くよ!! 」
「おう!」「うん!」
二人の返事を聞いて安堵したミクルは、所在地の空間に亀裂を入れ、一瞬の内に自分の目指す場所へ飛び立った。
速度にすれば、光速。光の速さで飛ぶということは、数キロ先の場所であれば、一瞬でついてしまうということ。
ミクルが落下しないように捻じ曲げてくれた空間の一部を足場に、夜十が最も名残のある発明室の天井近くに瞬間移動した。
ここの天井は高い為、そんなに簡単には気づかれる心配もないだろう。
そう思い、安堵していた刹那。
夜十は下の様子を見て、驚愕した。
「ーーお前ら《革命派》はもう終わりだ。この俺様、獅子王尊がお前らを斬り刻んでやんよ! 」
巨大な金色の大剣を肩に乗せた白髪の大男は、目の前の数十人へ威嚇するように言った。
獅子王と名乗った男の後ろには、あの広いことが取り柄の発明室を四分の一にまで下げるほど、夥しい量の生徒が押しかけている。
全員、武器を所持し、悪い笑みを浮かべながら窮地に追い込まれている数十人を睨みつけていた。
「夜十、あれって……! 」
「ああ、間違いないよ。アレは、《平和派》の皆だ!それに、火炎も燈火もいる! 」
窮地に追い込まれているのは、かつて夜十が行動を共にした派閥の仲間達だった。
とんでもないタイミングで来てしまったものだ。自分の運に少しだけ笑ってしまう。
「燈火……!今、助ける! 」
久しぶりの恋人の顔に、涙が出そうになった。もう会えないと思っていたからだ。
自分が犯した過ちは、KMCが管理する魔法世界においての最重要処罰に当てられるもの。
後悔さえしてないが、死ぬ前に一度だけ彼女の笑顔を見たかったと願っていたのだ。
獅子王という男が豪腕で大剣を持ち上げると、矛先を風見に向けて大きく振り下ろしたーー瞬間。強大な魔力が収束した衝撃波が生み出され、空気をも切り裂きながら無防備の風見を襲った。
「風見……!! 」
「沖!!く、来るな!もう……私は! 」
「風見ぃぃぃ!!! 」
周りのメンバーも既に満身創痍という状態で、到底、彼女を助けられると思っていなかっただろう。最愛の人が死に行く様をただただ見ているしかなかった沖は動かない身体を苦にし、思わず目を閉じる。
周りのメンバーも下を俯き、風見自身は両腕を大きく広げて死の瞬間を待つ。
ーーだが、その時だった。
天井から急降下し、衝撃波を己の剣筋のみで捌き尽くし、消滅させた人物が現れたのは。
「簡単にうちのリーダーは取らせないよ。」
突然現れた人物によって、放った衝撃波が消滅したことを知った獅子王は驚きの意を隠せず、驚愕の表情を見せる。
「なっ……!お、お前……!!誰だ?! 」
直撃し、死んだと思った風見は、痛みを感じない自分の体に不審さを思い、目を開ける。
周りのメンバーも断末魔も音も聞こえないことに不自然だと目を開けた。
そして、満身創痍の彼らの前に見えたのはーー黒い戦闘服を纏い、黒い刀身の剣を携えている身に覚えのある人物の背中。
薔薇色の髪の少女が驚きを隠せないように、ボソッと呟いた。
「……え、夜十? 」
その声に、隣にいた火炎は瞳に涙を浮かべながら、口元を震わせる。
「う、嘘だろ……。さ、冴島……な、なのか? 」
聞き覚えがある声に夜十は笑顔で皆の方を振り返る。
そこには、涙ぐむ、かつての仲間達が居た。
「よう、火炎。燈火を守ってくれてありがとうな。こっから先は任せろ! 」
火炎に激励の声を出し、夜十は、再び、数千人以上の軍勢へ視線を向けた。
「こっから先は任せろ?だってよ!笑わせてくれる!たった一人で何が出来る! 」
獅子王は嘲笑し、大声で笑う。
「一人?お前には魔力を感じることも出来ないのかよ。意外と雑魚だな。 」
夜十の声を合図に天井から急降下した二人は、夜十の頬に渾身の蹴りを食らわせる。
「……ぐぼぁっ!なっ、なんだよ! 」
素早く上体を起こして、二人に駆け寄る夜十。蹴られたことに流石の不満を感じたのか、二人へ厳しく問いただした。
「提案した瞬間に出て行くのはどうかと思う!死ぬほど心配したじゃない! 」
「ミクルもそんな感じ〜〜! 」
三人のふざけた様子と、"雑魚"呼ばわりされたことによる怒りで顔を真っ赤にした獅子王は大剣をミクルへ振り下ろした。
「……見えてないとでも思った? 」
華麗な身のこなしで素早く動き、大剣をすり抜けるように回避したミクルは、獅子王の懐へ潜り込み、鳩尾へ渾身の拳を放った。
放たれた拳は、獅子王の肉体に吸い込まれるよう、肉体を貫き、爆散した力の威力で数十人の軍勢に目掛けて吹っ飛ばした。
「……ぐぁぁぁぁぁあああ!!! 」
軍勢を巻き込みながら吹っ飛ばされた獅子王は地面に叩きつけられ、白目を剥き出しにし、気を失った。
前を張っていた仲間が倒されたことの驚きでミクルへ銃口を向け始める大多数の生徒。
だがーー彼らの銃は既にーー。
「この空間はもう私の管理下にある。抵抗すれば、身体の骨……逝っちゃうよ? 」
ーー"綺麗に両断されていた"
独りでに分解した銃が音を立てて、床に崩れ落ちる。
彼らが持っていた銃を含み、剣などの一般武器は一瞬で使い物にならなくなった。
彼女の創り出す空間に踏み込んで仕舞えば最後。発明室程の面積のある場所では、虹色吹雪の持つ魔法は最も有効につき、彼女の前で一切の身勝手は許されない。
「なっ、なんだよこれ!」
「知らねえよ!あの女だろ! 」
「《革命派》にあんな強いのが!? 」
「勝ち目がねえよ!撤退だ!! 」
生徒達は真っ青になり、入り口へ走って向かい始めた。
生徒達が唯一、一つのみの出入り口に吸い込まれていく様子から視線を外した夜十は、風見に、こう言った。
「風見先輩!隠れる場所はないんですか?話はそこで話したいのですが……! 」
「ああ、あるよ。ついてきておいで! 」
そう言って風見は、入り口とは真逆の壁に掌を翳した。
すると、壁が剥がれ落ち、防御障壁が剥き出しの状態になる。風見はその中へ何の抵抗もなく、進んでいった。他の皆も躊躇も無しに進む。
「ねぇ、夜十。さっきの女の子が燈火さん? 」
「ああ、そうだよ。後で紹介するよ。取り敢えず、中に入ろうか。 」
「うん……」
不満そうなミクルの表情を夜十は感じ取ることが出来ていなかった。
やはり"鈍感男"。虹色は心の中で深い溜息を吐いたのだった。
中へ進むと、剥がれ落ちた壁が元に戻り、発明室への道を閉ざしてしまう。
幅が一メートルも無い、奥に続く細道を縦一列で並びながら進むと、少しだけ広めの広間に出た。
真っ白い床、壁、天井を見るからにATSの演習場を思い出す。
全員が床に腰を下ろすと、深刻そうな表情で風見は真剣に話し始めた。
「やあ、夜十君。久しぶりだね、まず最初に。君はどうしてここに? 」
「話せば長くなるんですが、手短に言えば助けに来ました。 」
「それは、誰からの要請だい? 」
「……夕霧恋歌です。 」
その言葉に風見は驚きを隠せなかった。
次に、沖が口を開いた。
「夕霧恋歌?KMC幹部の? 」
「はい。そうです。 」
「彼女は今、何処にいるんだ? 」
「……この世には……」
その言葉の意味について、風見は問う。
「それはどういうことかな?夜十君が此処を助けるように要請を貰ったのに彼女はもうこの世には居ないって……? 」
「それは……今、ATSとKMCは戦争中にあるんです。後は察してください。 」
「それで、虹色吹雪さんはともかく、そこの金髪美女はATSに所属している人? 」
自分が"美女"と言われたことに歓喜の表情を浮かべるミクル。
彼女の子供っぽさに何かを察した沖は、夜十へ"大変だね"とアイコンタクトを送る。
夜十は深々と頷き、口を開いた。
「嗚呼、コイツは、ミクル・ソネーチカ。俺の幼少期からの幼馴染ってか、そんな感じで、ATSでは、部隊の副隊長をしているかな。 」
「はーい!ミクル・ソネーチカでーす!よろしくねっ!ねっ!ねっ! 」
右足を上げて、右目にピースを翳し、アイドルポーズを披露すると、笑顔で元の位置に戻っていった。
その場に居る全員が"テンションについていけない"と思った。
「虹色は、学園を辞めた後、ATSに入ったんだ。俺が此処を去って、組織に戻った時に会って、ビックリしたよ。色々話せたから結果的には良かったんだけど。 」
「そっか……。じゃあ、私達の話をするよ。 」
風見は紡ぎ始める。
夜十が学園を去ってからのことをーー。
「事態は深刻と言っても過言じゃない。夜十君が此処を去って、次の日。KMCの幹部が数人来て、全校生徒の前でこう言ったの。 」
"君達の仲間に禁止魔法を使用して刑務所に運ばれた者が居る。彼のようになりたくなければ、次の制度を受け入れよ。受け入れられないのであれば、新派閥《正義派》が君らに制裁を与えるだろう"
「《正義派》って、十八歳以下の魔法師十人の集団と聞いてます。その……強いんですか? 」
「……ッつ、強いなんてもんじゃない!彼らは本当のアビスと戦ったこともある本当の魔法師なんだ。KMC魔法学園を飛び級にして、前線で戦っていたんだよ!! 」
つまり、夜十とミクルと同じである。
何歳から前線に立っていたかは、分からないが、同じ場所で戦っていたのであれば何人かは察せるかもしれない。
「成る程。因みに、さっきの獅子王尊というのは? 」
「アレは、《正義派》獅子王慶吾の弟だよ。大した強さじゃないんだけど、私達は魔法が使えないから……」
「え?どうして使えないんですか? 」
「コレのせいでね……」
風見が夜十へ見せたのは、右足首に付けられた銀色の円型の足枷。
魔法を制限する機能でもあるのだろうか。
「魔法を制限する力があるんですか? 」
「ああ、その通りだよ。それに、強引に外そうとすれば、爆発する仕組みさ。だから、魔法が使えない状態で魔法の使える《正義派》に勝負を挑んだ結果、このザマだよ。 」
魔法を制限する足枷。
夕霧が言っていた魔法を管理とはこういうことか、外そうとすれば爆発なんてKMCはやり方が酷すぎる。
残虐にして、冷酷無比、他人のことなど考えず、自分達の幸せの為だけに生きているクズ。今も幹部達は椅子の上で自らを王と認識し、部下を使っているのだろう。
「魔法が使えないなら、皆はここで待機か。クロと沖先輩は戦えますか? 」
「ああ、俺はいけるよ。 」
「……ったく、帰ってきたと思ったら早々に人使い荒えなあ、お前は!俺は全然行けるぜ、俺と沖を選んだのは剣士だからだな。 」
覚束ない足取りで立ち上がった沖とクロは、出入り口の前で立ち止まる。
十人の天才魔法師を倒す為には、圧倒的な戦力不足。後五人、最低でも二人は欲しい。
だが、この中で武器の腕が非常に良い人物は二人もいない。
その時、一番、条件の中で遠い存在が声を張り上げた。
「夜十君、私も連れて行ってくれないか? 」
「風見先輩っ!? 」
思わぬ人物からの提案に、夜十は驚きを隠せない。
だが、彼女の前に沖が立ちはだかった。
「駄目だよ、風見!さっき負傷したばかりじゃないか!それに、君は戦闘員じゃない!足手まといになるだけだよ! 」
勿論、彼女の提案に沖は猛烈に反対した。
当然、負傷した戦闘員じゃない人物を戦場に連れて行くのは危険が伴うからである。
それでも、風見は真剣だった。
いつもの巫山戯ている表情とは打って変わって、真剣に覚悟を決めた表情。
「分かりました。けど、沖先輩の側に居ることが絶対条件でお願いします。 」
「うん、分かった。ありがとう、夜十君! 」
「夜十君は相変わらず甘いね。俺なら絶対断ってるよ。後はもう居ないかい? 」
沖は全員を見回し、そう問いかけた。
夜十は、手を挙げてほしいけれど、欲しくない。
かなり矛盾した心を胸にしまい込み、心配そうな表情で薔薇色の髪の少女を見つめる。
「……私も連れて行ってください! 」
「燈火ちゃんもか。夜十君、どうするんだい? 」
「断る理由は無いけど、個人的には火炎の側で待機して居てほしいよ。俺はとある人から君を助けるようにと命じられているから。 」
けれど、焔に言われたからというわけではない。魔法が使えない状態で朝日奈燈火は何処まで戦えるのか、そこが分からない。
才能と努力に満ち溢れた数々の種類の炎を使いこなし、華麗に敵を撃破する姿を目にするのはいつも通りのこと。
だが、夜十は見たことがないのだ。
彼女が格闘戦術で相手を熨している場面を。
「取り敢えず、行くメンバーは決まったね。風見先輩!それじゃあ、リーダーとして一言!! 」
「……うん。私達の目的は、大好きだった学園を返してもらうこと。その為に《正義派》とKMCと戦うしかない!死んでも、勝ち取るぞ!!勝利を、栄光を! 」
「おぉぉおおおおお!!! 」
全員で決意を固め合い、目的の確認を行った。
夜十、ミクル、虹色、風見、燈火、クロ、沖の七人は覚悟を決めて、真剣に安全区域を出て行ったのだった。
七十九話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!
投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。
TwitterID↓
@sirokurosan2580
今回は久しぶりの《平和派》メンバーでしたね。
それでは次回予告です!
安全区域を出た七人は三人と四人に分かれて、捜索を始める。目標は《正義派》。
三人の方へ分かれた夜十は、久しぶりのあの人物に再会するがーー!?
次回もお楽しみに!
【久しぶりの燈火】
「燈火、久しぶりだな! 」
「……夜十、それ六回目よ。そろそろ、くどいんだけど…………」
「燈火ぁぁぁ!!久しぶりっっ!! 」
「七回目だから!!それ!!しつこい!! 」
※燈火ちゃんと夜十君が再会出来ました。
これから紡がれる物語で、燈火と夜十は何処まで行くのか、楽しみですね(^。^)
拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!




