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追憶のアビス  作者: ezelu
第1章 学園編
8/216

第八話 遭遇

遅くなって、申し訳ございません!

通常投稿時間と二時間の遅刻!!


明日もこんな感じになりそうで怖いですが、是非、お楽しみにしてくださると光栄です!(*⁰▿⁰*)

二人は、目的の場所に着くまで、

横一列に並んで歩きながら話をし始めた。



「朝日奈は昨日、何で《戦闘派(クルーウ)》の拠点に居たの?」


その問いかけに彼女は答える。



「私はあんたとの試合の後、《平和派(ジャスティス)》のみが赤旗を挙げてくれたの!それで、《平和派》の拠点に向かう途中なんだけど、《戦闘派》の奴等、三人くらいが私を呼んでいる人がいるから来てくれ!って。付いて行ったら、火炎が居てね。昔のことを散々言われて、笑われて……感情を抑えきれなかった私も悪いけど、それでも!!あいつは許さない……この手で必ず!」



朝日奈火炎って、兄だよな?

そんなに恨むことがあるのだろうか?

聞くのも野暮だけれど、ここで躊躇するのはなんか違う。

そう思った俺は、彼女に問いかけてみた。



「火炎って兄だよな?そこまで嫌う理由って何かあったの?……あっ、別に言いたくないなら言わなくてもいいよ!!ただ、気になっただけだから」


あからさまに彼女の表情が曇ったことを確認すると、焦って訂正した。

誰にだって言えないことはある。そこに踏み込むのはルール違反。

ーー頭の中で分かっていても、俺は彼女のことがもっと知りたかった。

それが何故なのかは分からないけれど。



「……別に、あんたならいいわよ。火炎は兄だけど兄じゃないわ。朝日奈家は本家と分家で合計五つの家の構成で出来ているの。私は本家の出だけど、火炎は分家の出。貴方が私に初めて会った時に、言った通り、私は本家の次期当主になりうるっていう話も立っているわ!けどね……私には本当の兄が居たのよ。朝日奈溶二(ようじ)って言って、全てが私の格上だった。次期当主は確定的だ!って言われてたんだけど……!!でも……」


彼女の言葉はそこで止まった。

案の定、少しだけ予想は出来るけど、そこまで強い人が何故……?



「……何があったの?」


恐る恐る、俯いている彼女に問いかける。



「……朝日奈の家では、分家と本家に次期当主と言われる人物達が集まって、現在の当主にアピールとか強さとかを見せるっていう大きなイベントがあるんだけどね。火炎は、その時に、私の兄を殺したの。

自分の力を制御出来なかったっていう理由だけでね……!!私は、あいつを許さない!!仇を!!取ってやる……!!」



俺自身と失った形は違うが、彼女は自分の兄を愛し、尊敬してきたのだろう。

それを、奪ったやつが目の前にいたらどうするだろうか?

無論、俺であっても彼女であっても、

全力で斬り伏せようとするのが当然だ。


朝日奈火炎、帰ったら色々と調べてみようか。



「それじゃ、私の質……」



「あっ、目的地に着いちまった。 ……俺への質問は任務が終わったら、何でも答えるわ!」



彼女が質問をしようとしたタイミングで、

記憶した地図の場所と一致する場所にたどり着いた。

彼女が、ムッとした顔をしたので、

質問の話をフォローだけして、任務遂行に当たろうと、背中に挿していた剣に手をかけた。



「分かったわよ!!今は、目の前の敵に集中よね!」


彼女も察したように頷くと、

やる気を出して、辺りを見回す。



だがーー

アビスは愚か、人間すら見えない。

小型アビスの討伐は一般人として何度かやったことのある俺だが、目的の場所に誰もいないということ自体、ありえないことだ。

眉間にしわを寄せて、現在の状況を頭の中で整理しようと思い浮かべた。


まず、最初におかしいのは、

KMCの警護監視員を数人雇い、各ポイントに立たせて、我々を守る名目で監視する人物が見当たらないこと。




「どうして人が居ないわけ?まさかあんたの魔ッ……いやあっ!!!」


ーー瞬間。

背後を歩いていた彼女が、何かに吹き飛ばされて、近くの建物の壁に向かって、吹っ飛んだ。

魔法師とは言えど、防御力に関しては、鍛えていなければ今の一撃で死を迎えることだってある。


壁の破壊音と共に、巻き起こった砂煙を掻き分けて、彼女の様子を伺うとーー


床に尻餅をついて、吹っ飛ばされた際についたと思われる腹部の傷を右手で撫でている光景が見えた。


「いたたた……!!な、何が起きたの!?」


まぁ、大丈夫そうだ。

あの程度の怪我で済んだのは良かったが、それとは裏腹に恐怖さえ感じた。

彼女の言う通り、全く反応出来なかったということだ。


俺はともかく、朝日奈も動体視力や身体能力は決して低いわけではない。

寧ろ、女性にしては高い方だ。


その彼女が"反応すら出来なかった"となると、なかなかマズイ状態である。



頭の中で相手の動きをどう観察するかを考えていると、俺の腹部に高速で動く、長い尻尾のようなモノが迫っているのを"視た"。


だが、予想以上に大きい尾のようなソレは、避ける選択肢を奪うように縦に太く、横に長い、歪な形をしている。色は、白色?というよりは少しだけ黄ばんでいるようだ。



「……ぐあっ!!!」



筋力を腹部に集中させて、

受けた攻撃の威力を少しだけ弱めることに成功すると、俺も朝日奈が吹っ飛ばされた方向へと吹っ飛んだ。



「……あっ、危ないわね!!それよりも、敵はなんなの?!」


後少しで、吹っ飛んだ後に彼女と直撃するところだった。危ない危ない。

敵に殺られるなら未だしも、反感を買った、味方に焼き殺されるのだけは御免だ。


ーーだが、さっきの一撃で確信した。

今、俺達が戦おうとしている脅威がどんなものなのかを。




「恐らく、あの強さ……大型アビスだ!種別とかはまだ分からないけど、小型には出せない火力だよこれは!」


「……でも、今日の討伐任務は小型アビスよ!?何処かで情報の食い違いが……?」


彼女は額に冷や汗をかいて、かなり焦っているようだ。

死ぬかもしれない、未知の領域の敵との遭遇。


怖くならない理由がない、それにさっきの攻撃で逃げ口は完全に失われてしまった。


けれどーー

この絶望的な状態を打破するには、彼女に協力してもらわなければ、絶対に抜け出すことは出来ない!!



「……朝日奈、少しだけ時間を稼いでくれないか?ヤツが、どんな形状でどんな種類のアビスなのかを俺の目で確かめたいんだ。そうすれば、幾らかの勝ち筋は見えてくるはず!!」


と、俺は彼女に懇願した。

相手の形状と種類さえ臆せば、《追憶の未来視(リコレクション)》で逃げ道を探すか、決定的な一打が狙える可能性だってある。



俺は、瞳を真っ直ぐ、真剣な表情で彼女の顔を見つめ続けると、彼女は、一つ大きな溜め息を吐いて、こう言ってくれた。



「わ、分かったわよ!もし、コレであんたが勝ち筋が見えないなんて言い出したら、焼き殺す!!」



それだけ言い残して、

半壊した建物から出ていった彼女は、灼熱の炎を具現化させ、剣を発現させる。


そして、相手を見つけるために、詠唱で手向けを。



「……《灼熱の業火よ、未だ見えぬ敵を、察し、追撃せよ!導きの待雪華(スノードロップ)!》」


剣を天へと掲げると、

多数の綺麗な緋色の炎の華が、空中へ浮遊するように具現化された。

彼女が追撃の意思を魔力で伝えると、

華達は空高く舞い、"相手を発見し、攻撃する"という意味合いを込めた形状に変化しようとする。


決まった空の高度へ達すると、華は爆発して、白く雪のように落下する花弁へと変わった。

白い花弁は、誘導弾(ミサイル)の、追尾し、撃墜する力を纏い始めると、建物の陰に隠れていた巨大な"ソレ"に直撃した。

爆発音と轟音で辺りの静寂を掻き乱すことは出来たが、彼女が目にした敵の本体へのダメージは、ほぼゼロに近いようだ。


「……ほ、本当に、大型アビス!?」


彼女は、目を見開いたまま、驚愕し、

目の前の光景を疑ってしまった。



ーー俺は、彼女が出て行った真逆の方向で、

周辺の空を見回していた。


すると、高度の高い位置からの爆発音と共に建物の陰に隠れて見えなかった巨大な"ソレ"の姿を視界に捉えることが出来た。


ーー巨大烏賊(クラーケン)だ。

組織の極秘に管理された、アビス図鑑の全てを憶している俺はその姿を見たことがあった。

生で見るのは初めてだったが、

画像で見る時よりも強大で、強さの根元が何処にあるのかを簡単なまでに示しているように見える。


体長100m以上の巨大な頭から伸びる無数の足は、自分達の意思で動いているようにゆらゆらと揺れては、標的を見つけた瞬間にどんなに遠くても狙ったが最後。

当たるまで伸び続けるという、最悪の追尾性能を兼ね備えている。


幾ら朝日奈が居るとは言っても、

俺も朝日奈もまだまだ魔法師の卵だ。


魔力の使い方や技術面では、問題ないだろうがアレを倒す力を持っているわけがない。


……いや、持っていない訳ではない。

一つだけ対抗策がある。

……けれど、それを使うのはダメだ!

自分に甘えてはいけない……。



「ンングォォォォォォォォ!!!」


脳裏に響き、頭が割れそうなほど大きな鳴き声は、その気迫と衝撃波だけで周辺の街を破壊するレベル。


ここは一度、朝日奈と合流してーー


瞬間。

光のように早い速度で伸びてきた長く太い足は、丁度、彼女が向かった方向へ、直撃した。


「いやぁぁぁぁぁぁっ!!!」


彼女の悲鳴が聞こえ、

その声を聞いた瞬間、俺は焦ったのだろうか。全力で彼女の元へ走り始めた。


あ、朝日奈!!

もし、今の攻撃をマトモに食らっているとしたら!?彼女の身体が今、どうなっている!!


嫌な予感が……俺は、彼女の元へ向かうしかなかった。




ーー爆発音と砂煙が広がる中、

敵を射止めたことに成功したかのように、長く伸びた足は本体の方へと戻っていく。

焦って、彼女の元へ速攻で向かったが、俺の嫌な予感は外れ、

その足が射止めたと思わしき人物は、黒いスーツ姿の男だった。


彼の背後には、驚愕し、尻餅をついている朝日奈の姿が。

護ったのか……?!


俺は走り寄ると、腹部に大きな穴を開け、悶え苦しむ男性に声をかけた。


「だ、大丈夫ですかッ!?い、今手当てを!!」


「む、無理だ……!!頼む……ヤツを倒し……」


男は、最後まで言い切ることが出来なかった。

黒いスーツの腕部分に、KMCを意味する紋章がつけられていた。

男はKMCの人物で、恐らく小型アビスの監視官になっていたのだろう。


あの足から逃れるには、

何か一撃的な大打撃を与えるか、

攻撃を避け続けるかに限る。

後者は、永遠に避け続けることになるために体力の消耗との戦いが予測される。


ーーだが、普通であれば前者だろう。

俺は必死に考えて、この絶望的な状態からの抜け出す方法を見つけだした。


ーー覚悟を決めなければならない。

魔法の重さを、自分の重さを。




考えている時間はそう残されていない。

だが、立ち向かうしかないのだ。


俺は床に腰掛けている彼女に手を差し伸べると、過酷な戦いへの再戦を要求した。



「……行こう!勝てないのは承知、それでも戦っていれば、救援が来るはずだ!!それまでの辛抱!!」


彼女は俺の手を取ると、

立ち上がり、巨大烏賊に視線を移した。



「……そうね。今、私を護ってくれた人にお礼を言いに行かなきゃ、私の気が済まない!!」


朝日奈燈火、冴島夜十。

二人は、空中に浮遊し、畝りを上げる豪傑のアビス、巨大烏賊(クラーケン)に立ち向かっていく。


八話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!

投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。

TwitterID↓

@sirokurosan2580


遅くなってすいません!

明日もこの時間になったら、申し訳ないです!!

次回は、遂に夜十が……!?

お楽しみに!!


拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!

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