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追憶のアビス  作者: ezelu
第2章 組織編
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第七十話 阿吽の連携

遅くなりました!なんか、風呂に入りながら思いついたヒューマンドラマの小説が面白そうでプロットを考えるのにハマっていたら、追憶のアビスがおろそかに…………明日は投稿できないと思います。

北入口へ到着すると、夜十に気がついたミクルが真っ先に向かってきた。

新島の状態や西口の状況に関する情報は、新田が各隊長に伝えてくれたようなので、説明は要らない。


「新島さん、大丈夫なの? 」


「出血多量で傷も深いみたいだけど、今は大丈夫。手当てしたら良くなったみたい。 」


この施設には治癒魔法を機械的に使用出来る魔法武器が存在する。

医療系の機械なので武器として部類するのはどうかと思うが、魔力を持った機械は一律で魔法武器と呼ばれている。



「ところで戦況は? 」


「さっき、第二波が来たけど大したことなかったよ。全員、私が片付けたんだから!」


夜十は、指の骨をポキポキと鳴らし、首を傾げて、首からも乾いた音を立たせる。

ミクルは不安そうに見ていた。



「首の骨鳴らすの、あまり良くないらしいよ?なんか、歩けなくなるとか……」


「あー、聞いたことあるな。でも、やるとなんか落ち着くってか、気合が入るんだよ 」


「ん〜……そうなんだ。 」


夜十の返事に曖昧な返答を返すミクルの背後から、笑っている神城が彼女の頭を鷲掴みにした。


「お前ら、戦場で皆、緊迫してるような時にそんな日常会話が出来るようになったとはな。でっかくなったもんだ! 」


「からかわないでください!俺はデカくなったかもしれないですけど、ミクルは…… 」


「……ん?何か言ったかな? 」


「いや、何でもないよ。 」


サァァァ、と寒気を感じ、黒い笑顔の彼女へ苦笑しながら誤魔化した。



「ところで、新島と戦ったのは天海だったんだよな? 」


「そうですね、そう聞きました。 」


「俺もさっき緑野のヤツと戦ったんだが、ソイツはKMCに所属するようなヤツじゃないんだよ。この意味は分かるか? 」


真に迫った表情になった神城。

彼が言いたいことを、夜十は分かっていた。それに、予測もしていた。何となく、近々戦争が起こる時、関与してこない場合がないと思ったから。



「やっぱり、魔法の名家がKMCと組んでウチを消そうとしてるのは間違いねえな。確かに、前の事件で一致団結したって話は耳にしたことがある。だが、このタイミングで来るとはな。中々……。 」


「相手も焦っているんですかね。アビス討伐を主体とした組織が裏切り行為に走ったのは大きいと……。 」


「まあ、そうだろうな。確実に焦ってはいるだろ。人を殺すことなんて容易に出来る集団だ。アビスはそれだけ脅威ってことよ。 」


「そうですね……あっ、この音!! 」


夜十を含め、神城隊に所属する全ての隊員は無数に迫り来る足音に気がついた。

つまり、第三波が来てしまったのだ。援軍にしては大分早い方だと思うが、相手も相手。

KMCのバックには国が付いてきている。使える兵士など、埃のように沸いて出てくる。



「神城さん、ここは俺とミクルに任せて他の場所の援護に行ってきてください。西口が塞がったとなれば、近くの東口を狙うはずです。騰隊を疑っているわけではありませんが、皆さんの疲労が溜まる前に前線の交換に入った方が良いかと思います!! 」



「……そうだな。お前ら二人なら任せられる。俺らは東口の援護に回るぞ!! 」


「……はい!! 」


「間違っても死ぬなよ?夜十、ミクル! 」


「「はい!」」


ミクルを除く神城隊全員が走って東口を向かった後、準備運動をしながら体を動かし始めた夜十は、自分を見つめるミクルへ口を開いた。



「腕、訛ってねえだろうな? 」


「はぁ?当たり前じゃない!! 」


「なら良いけどな。んじゃ、そろそろ来るぞ! 」


「分かってるよ! 」


ゾロゾロと銃口を下へ向け、二人の少年少女を目視した複数の兵士は立ち止まり、一斉に銃口を向けた。

兵隊長が右手を振り上げ、下ろすと五十は居る兵士の一人一人が持つ銃から、畝りを上げながら高速回転する弾丸が二人へ襲いかかる。



「……」


夜十は彼女に合図もせずに、強い一歩を踏み出した。

ーー瞬間。無数の銃弾を華麗に避け、兵隊長の首を即座に跳ね上げた。舞い上がる生首は綺麗な放物線を描き、地面へ落下する。


だが、彼らが撃った全ての銃撃は避ける動作を何もしようとしないミクルへ当たる予定だった。複数の兵士は一人潰せたことを確信し、感激した。

だがーー、現実はそう甘くなかった。



「ふんっ!私が何もしないわけないじゃん!!お陀仏だよ、あんたら! 」


すると、高速回転し、ミクルの皮膚を貫く筈だった全ての弾丸は、まるで最初から兵士の後ろにあったように、さも当たり前のように移動して、複数の兵士の背中を貫いた。


今、北口に足を踏み入れた兵士は全員、血塗れになって地面に倒れてしまっている。

まるで手応えがなかった。第二波のように、兵士を束ねるKMCに属する魔法師レベルの人物が来ると思っていた。

だからこそ、ミクルとのタッグを選んだというのに、これではまるで拍子抜けではないか。


そう思い、おでこに手を当ててため息をつくとーー、前方から刃物が飛び、空気を切り裂く音が聞こえた。

だが、夜十には当たらない。何せ、空間魔法の使い手にして夜十が永遠の相棒として認める、ミクル・ソネーチカが居るのだから。



「何が起こった……? 私が今、息子の仇を討とうと放ったナイフの攻撃が刺さらなかっただと?つまり、それはどういうことだ? 」


北口から出てきたのは、白い皮膚、白い髪、白い瞳のアルビノの男性だった。

彼はスーツ姿で狂気の表情を浮かべている。


「息子の仇? 」


「そうだ、私はKMC幹部の星咲という者だ。冴島夜十が私の息子を、嶺王を殺したのだと聞いてなァ!殺してやる!私の大切な大切な……」


「星咲の父親……やはり、KMC関係者だったか。じゃなければ、《魔源の首飾り(アミュレット)》の入手方法がないもんな。 」


すると、星咲はナイフを五本、夜十へ放った。だが、ナイフは通らない。

先程同様、消滅するだけだ。


「何故……!まさか、そのチビ女が関係しているのか?! 」


「あっ……」


ーー瞬刻。

彼女の研ぎ澄まされた魔力が莫大にまで上がった。チビ、低い、小さいなどの言葉は基本的に彼女の前では禁句中の禁句。

組織内で口にした者は皆、お空に輝くお星様になっている。



「なっ、なんだその魔力は!私は元々、戦闘部隊ではないのだぞ!そんな私に何をする気だ、チビ女! 」


そして、爆誕。

また魔力が上がってしまった。

このままでは、彼女の操る操作魔法で回数を一回も消費してしまう必殺技が来てしまう。

そうなれば、空間が捻じ曲がり、敵の気配を感じ取ることが難しくなる。



「ミクル、落ち着……」


「あぁん? 」


「何でもないです……」


"駄目だ、今意見を言えばトバッチリを喰らうのは明確"


どうすればーー。

夜十は自然と身体が動いていた。気付かぬうちに、いつの間にか。

ミクルの唇に自分の唇を合わせていた。


すると、魔力の上昇も治る。

平常な寮に戻り、振動していた空気の揺れも収まった。

だが、彼女は真っ赤になっていた。恐らく、突然のことで頭が追いついていないのだろう。目を見開き、必死になっている。


そして、唇を離し、星咲の方へ向き直すと、空気を切り裂き、夜十の頭を確実な軌道で狙う蹴りが飛んできた。

しかし、彼は平然とソレを右手で掴む。



「な、何……!?なんでこんなことすんのよ!!私に気があるの?! 」


「お前が感情的になってるからだろ!全く……もう一般的には大人の年齢なんだから、たった一言で感情的になるのは辞めろよ。どうだ?落ち着いたか? 」


「んん……ごめん。あまりにも殺意が……私、小さくないよね?大きい方だよね?大人だもんね? 」


「あー、うん。……だな! 」


今の流れで来るとは思っていなかったタイプの話が来たので、夜十は下手くそな愛想笑いを使い、ニコッと笑った。


「あぁぁ!!今の笑ってない!顔が、目が、笑ってないじゃん! 」


「何言ってんだよ!笑ってんだろ! 」


すると、夜十とミクルの痴話喧嘩を見て、嫌気がさしたのか。星咲は無数のナイフを投げ捨てる。魔法は使わないのか、普通の人間が普通の力で投げる速度だ。


夜十にとってみれば、この程度の投げナイフなど避けるのも受け取るのも容易なことだ。

だが、迂闊に避けるのも受け取るのも得策ではない。何たって、学園中の猛者をたった一人で操作し、平和な学園を勝手に描いていた星咲の親だ。

何をして来るか、分かったものではない。



「ミクル、動けるよな? 」


「当たり前じゃない!何なら、今この瞬間も私の魔法は継続されてるんだよ!夜十にも私にも指一本触れることは出来ない! 」


ナイフは再び姿を消す。

消滅したナイフはどこへ消えているのか、魔力を感じ取りながら、目で追っていたのだろう。星咲は逃したことで苦渋の声を上げた。



「星咲さんはどうして魔法を使わないんですか?人類であれば持っているはずです。」


「私の魔法は戦闘向きではないのだ!使い所が難しくてな……それに、使い所があったのにも関わらず、使えなかった。私の息子は、私の中で大切な大切な"商品"だった。彼の肉体があれば、私の魔法で蘇生出来た!なのに……お前は肉体を残さずに消滅させた! 」


星咲の父親の魔法は《蘇生魔法(リーサースティーション)》らしい。

夜十が朝日奈火炎を蘇らせるために使用した禁止魔法の一つ。

莫大な魔力を体に秘めていれば、誰でも使うことが出来る魔法の一つだが、固有魔法の一つとしても知られている。

まさか、その所持者に出会えるとは思いもよらなかった。

禁止魔法の固有者は極めて少ない。


主に属性系統の魔法に目覚める人類が多いからだ。夜十やミクルのように、記憶魔法や空間魔法などと言った魔法を使える人類も少ない方だ。

禁止魔法の固有者と比べるのは、また別の話であるがーー。



「星咲嶺王は学園で俺が大切に思う人達の大切な人を殺した。そして、罪のない人を弄ぶように側近に置き、自分の表向きは飽くまで良い人なのだと、そう演じていたんだ。そんな人間が蘇生されて喜ぶ人が居るか?俺は居ないと思うね! 」


「私は喜ぶよ。大切な息子を奪われた悲しみを曲げられるのだからな!! 」


それでは、さっきと言っていることがまるで違う。

息子を"商品"と綴っていた男の言い分ではない。感情が穏やかになっていないせいなのか、星咲の言動に矛盾が出始めた。



「さっきは商品って言ってたくせに何? 」


「……あのバカ息子が死んだせいで、私はKMC幹部を落とされてしまったんだ!息子の管理ができない奴は要らんと!そんなの、私のプライドが許せるわけがないだろ!だから、もう一度蘇って、今度は冴島夜十のような人物が入ってこないように学園を適正すれば良いんだ! 」


これが星咲の本音だろう。

それにしても、何と身勝手な本音か。

呆れて言葉も出なかった。だから、最早、彼を黙らせるには息の根を止めるしかない。

その決断が出たのは、遅くもなかった。



「はぁ……それは親の言葉ではないよ。お前は親の皮を被った悪魔だ。自分の出世と自分の階級ばかり気にして、息子を商品扱いする、最低なクズだ!お前の未来はもう無い! 」


夜十が言い放ったタイミングで、星咲の背中に先程、投げ続けていたナイフが幾つも突き刺さり、彼は口から血液を流した。


「ごぼっ……!嫌だ、私はクズなんかじゃない!此処で死ぬわけには……! 」


そして息絶えてしまった。

《蘇生魔法》の弱点は自分を蘇生出来ないこと。自分の意識が備わってなければ使えない。自動的に蘇生でも出来れば、永遠に死を繰り返す不死身にでもなれるのだろうが、そんなことはない。


動力を失って動かなくなった身体は、前のめりに倒れ、床に流した鮮血の血溜まりに水飛沫を与えながら崩れ落ちた。


夜十はその光景をつまらなそうに見つめていた。意味はない。

けれど、星咲の末路が悲惨な気がして。

ただ、悲しみの意を込めて。


彼は次に迫り来る第四波の兵士を待つのだった。



第七十話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!

投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。

TwitterID↓

@sirokurosan2580


今回は二人の連携でしたね。

阿吽の関係、突然のキスは驚きました?


それでは次回予告です!!


迫り来る第四波の兵士、戦争もATSの猛威にKMCは上手く攻められないでいた。

そんな中、中心のエレベーターに動きが?

乗っているのは、神城に見覚えのある人物だったーー!?


次回もお楽しみに!



【ミクル ② 】


「チビ女って何よ、私そんなに小さくないし! 」


「うん、そうだね。」


「夜十、感情篭ってない!! 」


「え?そう?大きいと思うよ、態度はね……」


「あぁん"? 」


バキバキボギィッ!


※この後のことはご想像にお任せするね。





拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!


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