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追憶のアビス  作者: ezelu
第2章 組織編
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第六十八話 蘇った魔術師

遅くなりました(´・ω・`)

昨日は家庭の事情でお休みしましたが、まあ……明日も投稿できるか分かりません。出来たらやりますよ!

標津隊が集まる南入り口に到着すると、翡翠色の瞳を虚ろにして、標津と交戦している虹色の姿があった。

彼女は夜十が着いたことを目視すると、大きく鼓動を波打たせて、瞳を鋭利な刃物のような代物へ変える。



「……標津さん、俺が相手をします。五分だけ時間をください! 」


「夜十、お前、西口から走って来たのか? 」


「お願いします!時間が無いんです! 」


「……ったく、お節介焼きだなお前も……仕方ねえ、ってことは、何か考えがあるんだろ?五分だけやっから頼んだぞ! 」


後ろへ後退する標津と入れ替わり、両掌を叩くように合わせた。

ーー瞬間。魔力を収束させ、一太刀の剣に具現化させる。

白い光に包まれた黒い柄の剣を掴み取ると、光を振り払い、重心を低くして構えた。



「……」


「……ッ! 」


固唾を呑む、沈黙が流れ始める。

学園で戦った時のように狭い空間であれば、彼女が自分自身の空間を作り出すことは出来ない。

だが、生憎、このスペースの量では、彼女が空間を作り出しても尚、余るくらいだ。



"ま、まずい"

焦りで額に冷や汗を浮かべ、沈黙を破壊する一歩が繰り出されるのを待っているとーー。



「……」


無言のまま、地面を蹴って懐へ忍び入ろうとする虹色。

だが、夜十は前に戦った時の分析データが残っている。

研ぎ澄まされた《追憶の未来視(リコレクション)》の感覚が頭の中を、身体の中を滞りなく流れた。


"これは懐に入って斬ろうとしてるんじゃない!素早く方向を転換して、背中からーー"


彼女の動きは普段の倍以上の速さを出し、方向転換の速度も尋常ではない。

だが、夜十は彼女の先の未来が見えているのだ。攻撃など当たるはずもなかった。


背中へ回り込んで剣を振り下ろす攻撃を、華麗なステップで避ける。その綻びを逃すことなく、夜十は彼女の胸部にあるツボを強く押し、回し蹴りで吹っ飛ばした。


施設の白い壁に背中をぶつけて、そのまま静止する虹色。

誰もが勝負はついたと思った刹那ーー。


彼女は素早く立ち上がると、壁を蹴って加速。その瞬間、自分の空間を作り出し、夜十の動きを止める。

完全に制止した状態の夜十の首へ、力一杯に剣を振るい、首を斬り捨てる。

鮮血を帯び、夜十は前のめりに倒れたーー。

ーーはずだった。


一連の動きは彼女自身が想定し、行動へ移したもの。だが、結果として夜十は足の軸から踏ん張り、倒れずに済んだ。

この意味は、首への攻撃も当たっていないことになる。



「……残念だったね。君が描いていたコトは現実にはならない。虹色吹雪!目を覚ませ!お前の戦うべき相手は、俺じゃない!! 」


白い光の魔力を帯びた黒剣が虹色へ伸びる。"家族を傷つけられない"。

戦争が始まったばかりで再起不能になって欲しくはない。

夜十は、峰で彼女の脇腹を突いた。

勢いとダメージで、音を立てながら前のめりに倒れる虹色。


すぐさま駆け寄って、気絶した彼女を抱き上げる。すると、先程は曇っていた翡翠色の瞳は輝きを取り戻した。




「……あぁ、やっぱり、《操作魔法(オペレーション)》を使われてたか。標津さん、彼女を救護室へ!俺はもう行かないと……!後は無線で話しましょう! それじゃ! 」


「おう……。嵐のように来て、去っていったな。あれは間違いなく、美香の弟だ。正義感が強いのはいいことだが、それは時として自分を苦しめてしまうんだ。夜十、頑張れよ。負けんな。 」


嵐のように現れ、去っていった夜十に標津の言葉は届かない。けれど、想いは伝わっただろう。 きっと……。



「後二分で元に戻らないと……!! 増援が来たら……!! 」


急いで戻ろうとする夜十の前に黒い影が立ちはだかった。彼は下を俯きながら口元を歪める。

その姿は死神のよう。黒いコートに身を包み、口元以外を黒いマスクで隠している。

不気味な姿に思わず足を止めた。



「……お前、誰だ? 」


「ほう、私を知らないのか? 」


「自惚れるな、お前なんか知らない! 」


彼はギリギリと歯を軋ませて、黒い皮の手袋をしたままの右掌を夜十へ向ける。



「そう……か。お前は一度、あの老人魔術師に私の話を聞いているだろう。私は偉大なる魔術師、ニア・シュタインだ。未来永劫続くはずだった魔術師の明るい未来を閉ざした《未完成(アンフ)》の存在を消す為に現れてやったんだ、感謝しろ! 」


「ニア・シュタイン……!?お前は、シンという先人に殺されたはずじゃ? 」


「ふはははははは!!!だが、蘇った。私は真なる魔術師として蘇ったのだ! 」


夜十は急いで無線機を取り出すと、新島へ言い捨ての言葉を述べた。



「新島さん、帰れそうにありません。未知の敵との遭遇です。撃破し、帰ります。 」


無線機の電源を切ると、両掌を合わせた。

膨大な魔力を収束させ、黒い剣を生成。

矛先を下に、重心を低くすると鋭利な眼光を魔術師へ向ける。




「《未完成》如きが私を撃破?ふっ、笑わせるな!! 」


シュタインの掌からは、何も"発されなかった"。

厳密には人が認知できない速度、人が認知することの出来ないモノが放たれ、夜十はそれが見えていない。

無数に放たれた見えない"弾丸"は凄まじい速度で彼の眼前まで迫った。


命の危機が迫っているというのに、未だに硬直している夜十に嘲笑を浮かべるシュタイン。


だがーー、その瞬間だった。

シュタインも自分の瞳を疑うことが起きたのは……。



「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!! 」


夜十はいつの間にか目を瞑っていた。

黒剣は"人間が操れる速度"を超え、夜十の筋肉は直前の危機回避能力と魔力が混ざり合い、一気に力が膨れ上がる。

そしてーー、シュタインの放った見えない弾丸を感じ取りーー。


"右斜め上45° "

"左斜め下67° "

"中心90° "

"右やや斜め下125° "

"左やや斜め下50° "


ーー全ての弾丸に反応し、素早く剣を振るうと、断ち切った。



「なっ……!?ど、どうしてだ!!どうして人間はそう簡単に進化する!?どういうことだ!!!答えろ!《未完成》! 」


「はぁ、……はぁ……はぁっ……!老人の魔術師は俺の名前を知っていた。俺は《未完成(アンフ)》って名前じゃないんでな。しっかり覚えとけ、この剣に乗せた名前を……! 」


彼は"認知できない速度"を記憶していた。

夜十の速度は、シュタインの放った弾丸と同じ速度ーー、にして瞬間。

黒剣が纏う魔力の密度と量が膨張。


一歩を踏み出し、靴の裏にかかる重心に魔力が伴い、あり得ない速度を叩き出す。


「……俺は冴島夜十だぁぁぁぁあああ!! 」


「なっ、ぐっぁぁぁぁあああああ!!! 」


シュタインの皮膚を、肉を、骨を、身体を一刀両断し、真っ二つに切り裂いた。

彼の肉片は地面に飛び散ることも、血飛沫を上げることもなく、空中で黒い炎となって消滅した。



「はぁ、……はぁっ、はぁ……!!早く行かないと……!! 」





ーーその頃、西入り口では。

KMCの部隊、増援総勢二百名が新島隊に立ちはだかっていた。


「数が増えてやがるか。夜十、未知の敵とはなんだ。早く戻ってきやがれ……!! 」


「どうするんや。新島隊長、あんたがあの二百人を打ち抜くんか? 」


輝夜が薄く笑いながら、冗談を言った。

さっきの作戦は夜十が居ないと成り立たない。彼の持つ洞察力と回避力は新島でさえ持っていない特殊な能力だ。


「……まあ、全盛期の俺ならそうしてたんだろうがな。回数は限られてんだ、魔法は簡単には使えない。況してや、あんな雑魚相手に。 」


「んじゃ、どうすんねん。夜十は未知の敵との遭遇で交戦中なんやろ? 」


「それでは、私達が作った三人の連携で二百人を……」


「無理やで!アレは、精々壊せて五十人の連携!一人で二百ぶっ飛ばすやつなんておらんのや! 」


彼らは作戦を模索していた。

いくら魔法を使えたからと言って、二百人を一気に無へ返せる魔法を使う人間はこの場に居ない。



「オ、オイ!!なんだアレは……!!各員、戦闘準備! 」


KMCの兵士は重心を低くして銃を構える。

彼らが向ける銃口の先には、光り輝く剣を空中へ浮かせ、鋭い眼光を向ける少年の姿があった。


「アレは……俺の技……!! 」


新島は戦慄し、剣を掴もうとする少年の名前を叫んだ。


「やめろ!夜十ーーー!! 」


「新島隊長、貴方の力を借ります。大切な家族を自分の身勝手で困らせた借りを返す為に!! 」


白い光の剣の柄を勢いよく掴む。

膨大な魔力が一気に収束、KMCに所属する魔力の訓練がされていない兵士は感じ取ることが出来なかった。

だが、今なら目視出来る。



「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!《光の神刀(アンスウェラー)》!! 」


踏み出した一歩は銃を向け、真に迫る表情の男達を一瞬で消滅させた。

膨大な魔力の爆発、たった一撃の魔法で二百人全員を無に帰す威力。


新島が全盛期に唯一、夜十の前で使った、学園では星先を倒すために力を振り絞って掴んだ《願いの模倣(メモリーレプリカ)》最大火力の魔法。


新島は悶絶し、口を開けたまま呆けていた。



「オイオイ、夜十……いつからあんな魔法を使えるようになったんや! 」


「あれは、新島隊長の……!! 」


「……マジかよ!アレは……」


三人の隊員も悶絶していた。

彼が創り出した光の眩さに。それは時として、人を絶望させる。仲間だったとしても。



「……今の魔法は何ですか?まるで新島がアビスを五体一気に倒した時の魔法のようだ。ふふっ、回避で魔法を二回程消費してしまった……さてと? 」


上半身の服が焼け消え、壊れた眼鏡をかけている白い髪の男が現れた。

彼は刀身が水色に光り、周りを一瞬で凍結させる力を持った長い刀を携えている。



「ほう、まさか今の一撃……君がやったのか? 」


「あんたは誰だ……? 」


「ふっ、ATSに所属していながら私の名前を知らないとはね。私はーー 」


夜十の疑問を解消させようと口を開く、白い髪の男性の低く美しい声を、新島が遮った。



天海冬獅郎(あまみとうしろう)。KMC特殊部隊所属、地位は将軍。由緒正しい天海家の現当主だ。 」


「新島、出てくるのが遅いよ。それで?KMC幹部に刃向かうとは、些か合理的ではない。感情論で動くのは良くないと、昔はお前に私が教えられたのだがな? 」


「くっ! 」


「それに今のお前は魔法を使えない。 」


「え? 」


夜十は思わず、あり得ない言葉に疑問の声を漏らした。

その声を聞き逃すわけもない、天海は薄く笑って。


「はははははは!!やっぱりか!お前、部下には教えてないのだな?自分の魔法使用上限が五十回未満になってしまったということを! 」


「……あぁ、家族に隠し事はしたくなかったが、此ればかりは心配されて遠慮でもされたら面倒臭えからな。けど……」


「それで? 」


「死を恐れて、消滅を恐れて、戦わねえなんて、カッコ悪すぎんよ。 」


「へぇ……? 」


「天海、お前とやるのは俺だ!輝夜、夜十を救護室へ連れて行け! 」


夜十は既に満身創痍。それに、他の奴らも絶望で動きが鈍くなっている。

ならば、自分が戦わなければならない。


破壊神(シヴァ)》が力を振るわねばーー。


新島の上限回数が残り五十回未満だとは知らなかった。他の皆は全員知っていたのか?なのに、止めなかったのか?

不思議と怒りが支配した。けれど、彼は何も言えなかった。


遠下がる意識。消え失せてしまった瞳の光は、夜十の意識を闇の中へ放ったのだった。


六十八話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!

投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。

TwitterID↓

@sirokurosan2580


はい、今回は三連続の戦闘でしたね。

次回は新島……ではなく、救護室に運ばれた夜十と虹色のお話です。


次回もお楽しみに!


【今日の夢】


今日、朝ではなく昼頃に目を覚ます前。

夢を見ていました、夢というのは短期記憶が脳に働くもので、目を覚ませば曖昧になってしまいます。

ですが、今日の自分には想像を絶するもので……あ、長くなるので手短に話すと!!


スマートフォン、TV、3DS、PSVITA全ての液晶がバッキバキに割れた夢を見たんです╰(*´︶`*)╯


正夢になりたくないので書きました←

なんてね……ネタ切れではないですよ!

ただ、書きたかったんです(´・ω・`)


拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!

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