第六十七話 KMC vs ATS 戦争開始!
毎日投稿が復帰できてる!!
なんて思いながら投稿してますね、書いてて楽しいですよ。やっぱり!評価よりも楽しさ第一!
「学園を出たのは……貴方に会いたくなかったからよ。でも、まさか、新島隊の元副隊長が貴方だったなんて知らなかった。 」
「俺、何かしたかな?君に……」
すると、彼女は声を荒げて、ピアノの鍵盤を叩いた。
重低音や高音が混ざった音が鳴り響く。それは、決して綺麗とは言えない音色だった。
「……と、とぼけないで!!あんたが流藤を殺したのを、私は見たんだから!! 」
「なっ……!ち、違うんだよ!虹色……アレは! 」
「友人を平気な顔で殺す癖に、何が"目の前の人を絶対に死なせない"なのよ。偽善者って嫌い……本当最低!! 」
彼女は誤解している。
なのに、口や身体が震えて言葉が出ない。
確かに流藤を殺したのは自分だ、流藤の中に居た沖家の当主を殺す為には、彼ごと断ち切るしか無かった。それは本当のこと。
……だけど、今の彼女には何を言っても通じないと、そんな気がした。
「出てってよ!私はあんたのことなんか大嫌い!偽善者!! 」
「……嗚呼、ごめん。俺が悪かったよ。けど……いや、何でもない。またな、虹色。 」
返す言葉が見つからず、夜十は下を俯きながら帰っていった。
彼の後ろ姿を見て、虹色はピアノに突っ伏して涙を流したのだった。
「……明日は戦争が始まる日。今日は早く寝よう……家族を守る為にやれることを……! 」
夜十はそのまま自分の部屋に帰り、身支度を済ませると就寝した。
明日から諜報員が入手した情報通り、KMCが兵士を引き連れて攻めてくる日。
明日以降、いや、これからもずっと永遠に家族を絶対に死なせたりなどしない!
ーー全員が寝静まる頃。
小腹が空いた虹色は薄暗い廊下を独り歩き、食堂へ向かう。
所々、真っ暗な場所もあってか、何処と無く不気味だ。彼女は引き返そうかと思ったが、空腹には耐えられない。
部屋から出ないように買い溜めしておいた食料が此処に来て底をついてしまったのだ。
食堂まで後少しーーというところで、誰かの気配を感じ、壁伝いに隠れながら声を発した。
標津隊長から聞いていた限りでは、国家的に有名で有権な組織、KMCがATSを潰そうと攻めてくるのは明日。
ならば、今の気配は仲間か。
「だ、誰……!? 」
その瞬間、気配は消えてしまった。
気のせいだったのだろうか、後ろも前も左も右も誰もいない。
恐る恐る食堂まで辿り着く事に成功すると、明かりをつけて冷蔵庫を探した。
「アレは虹色家現当主の虹色吹雪。もっと雑魚を探したかったのだが……まあ良い。此処で一つ、内乱揉めでもしてくれ。 」
食堂で食べ物を漁る彼女に迫る黒い影はニヤリと微笑み、闇に同化した。
良からぬことが起きるのは同然のよう。
影は笑い、彼女も笑った。
ーー翌日。
食堂に集まった全隊員は、第一戦闘配備を通達された。
施設内に入る仲間以外の生物を確実に仕留めるというモノ。
仕留められなければ、家族全員が一丸となり、協力して仕留める。
「今日の午前八時に攻めてくるとの情報だ。情報が不確かかどうかは分からないが、このメンツなら俺は大丈夫だと思っている。全員、笑って勝とうぜ! 」
「おぉおおおおおおおおお!!! 」
「気合入ってんな!よし、んじゃ解散! 」
現在の時刻は午前六時半。
襲撃時間までまだまだ時間はあるけれど、国全体が敵となったと言っても過言ではないのだ。
情報にも疑いを混ぜていかなければならない。何事も最新の注意を払って、全力で取り組む。
各隊員は其々の決められた配備場所へ向かう。
この施設の入り口は全部で五箇所。
西口、東口、北口、南口、中心だ。
中心は地下へ繋がるエレベーターのこと。
主に敵部隊が攻めて来ると疑うべきなのは、西口と北口のエリア。
西口も北口も有るのは武器倉庫くらいしかなく、警備も薄い。
だからこそ、新島は西口を自分達に、北口を神城隊に任せた。
「お前ら、泣き言は言ってらんねえ!こっから、俺らの楽しかった家は戦場と化す。家はまた作れば良いが、家族に代わりなんてのは居ねえ!隊は連携が一番だ、全員離れるんじゃねえぞ! 」
夜十の所属する新島隊は、文字通り西出入り口の近くで伏せて待機をしている。
彼らの格好は、アビスを倒す為に作られた最新式の防具。
自らから発生する反動や筋肉の伸縮によって起こる縮みなどを徹底的に無くし、魔法を一切通さない防御力を誇っている。
武器は魔力を使用しなくても良いように、対アビス用の剣を装備している。
其々の個人に合わせた武器。夜十であれば、剣一択だが、騰であれば拳銃だ。
「来たな……薄汚いクソ野郎どもが! 」
新島が瞬時に気配を察知し、言葉を吐いた数分後、ゾロゾロと硬い靴底がコンクリートを踏む足音が無数に聞こえてきた。
まだ、七時を回ったところ。
やはり、諜報員が入手した情報は本当ではなかったか。
新島が無線を取り出し、声を張り上げながら叫んだ。
全員の耳に装着されたイヤフォンに聞こえてきたのはーー。
「お前ら……生きろ!」
それだけで全員、笑顔になった。
今日、全員で生きて我が家を取り戻す!
絶対に負けられない戦いの火蓋が切って落とされた。
「KMC戦闘連合軍!緊急配備!これより裏切り行為を行ったATSに制裁を加える!一切の油断と情けをかけるな!徹底的に潰せ! 」
普通の金属で出来たシャッターは、何の守りにもならない。紙切れも同然だ。
「奴らは人を殺すことに長けていても、魔法師を殺すことには長けていない。俺らがアビスを殺す人類の守護神ってこと、思い知らせてやんねえとな!! 」
全入り口に爆撃が行われ、入り口は瞬く間に開いてしまった。
西入り口だけでも百を超える兵士がトンプソンm1928を手に、入り口付近の制圧を完了した。
「メーデー、メーデー。こちら西口制圧完了!これより探索に入る! 」
隊長と思わしき人物が肩部分に取り付けられた無線機を取り出し、口を開いた。
「アレはトンプソンm1928か……殺傷力の高いポピュラーなサブマシンガン……。乱射は痛いかもしれないが、騰の銃を見切れる俺らなら余裕だ。それじゃあ、久々にあの連携で行くぞ! 」
小声で言った新島の合図を機に、対人戦闘を行う時、相手が自分の味方よりも圧倒的人数を誇る場合、最善を尽くす為に一番最初にやらなければならないことがある。
それはーー。
雷光も甚だしい速度で一歩を踏み出した輝夜は、百人の指揮官となる隊長の首を一瞬のうちに折る。
ぐにゃりと折れ曲がった頭、身体は動力を失い、その場に崩れ落ちた。
ーー指揮官を最初に潰すこと。
指揮官が生き残ってしまうと、援軍を呼ばれる場合がある。
援軍を呼ばれない方法は、上に伝達出来る無線を持つ、軍隊長を潰すことだ。
「……なっ!!た、隊長!? 」
銃を片手に困惑する兵士達、狙いを見定めて銃を撃つのにも相手がいなければ意味はない。静寂が場を制した時、二人の少年少女が動いた。
夜十を騙すことは出来なかったが、対人戦闘殺しの専門相手には通じた彼らのステルス。
霜月は天井に、新田は壁伝いに。
そしてーー、副隊長の夜十が兵士達の前に立ちはだかった。
「良い銃をお使いのようですね。ただ……当たらなければ意味はないですが……」
「此奴、丸腰で現れやがった!撃て!お前ら!撃てえええ!! 」
夜十を狙う銃撃が途端に開始。
凄まじい威力を誇るトンプソンm1928の連射も彼の前では無力に等しかった。
銃撃の一つ一つにも癖はあり、空気を裂く音も空気を揺るがす振動も、人によって違う。
前方部隊は約五十名。
五十名が射撃を始めたからと言って後方部隊も射撃を始めるわけではない。
後方は飽くまで後方。前方部隊の弾が切れ次第、装填時間を稼ぐために後ろから射撃を始める。
恐らく、一回目の銃撃止むまであと三十秒。
この間、全ての弾丸を避け続けているが、騰との対戦から速度を伴っていない普通の弾丸では止まっているようにしか見えない。
「アレ……?しっかり当ててくださいよ。普通の兵士ってのはこんなものですか? 」
この煽りにも意味がある。しっかりと訓練された兵士であれば、簡単に挑発に乗ることはない。
だが、それは指揮官が居る場合の話。指揮官を失った兵士は、途轍もなく焦り始める。
何せ、適当な銃撃をするわけにもいかないからだ。
今の彼らに挑発は最も有効と言える。
「くっ……ガキが調子に乗りやがって!! 」
前方の兵士の一人がキレて、懐から取り出した手榴弾の栓を引き抜き、投げた。
ーーこの作戦に名前を付けるなら、何と名前を付けるか。前に新島が話していた。
彼がその時につけていた名前は……。
"手榴弾で自業自得!作戦!"だ。
ネーミングセンスの無さに、全員が一致で鼻で笑った作戦名。
今となれば、そのままだったか。
夜十は放物線を描いて飛んでくる手榴弾に笑いを飛ばし、その場から一瞬で消えた。
ーー瞬間。
ステルスで夜十の背後に居た新田と、天井に居た霜月が創り出した連携技、白い光で出来た網目の少ない繊細な網が現れ、兵士達が撃った全ての弾丸を捕らえていた。爆発寸前の手榴弾もだ。
「よっしゃ、新田!やるぞ! 」
「オーケー、霜月!やるわよ! 」
「「せーのっ!!! 」」
網を大きく翻すと、網で静止していたはずの弾丸がまるで裏切ったかのように兵士達へ襲いかかった。
前方部隊は飛んできた手榴弾で大半がやられ、その後に伏せていた後方部隊が弾圧を浴びて、西口に攻めてきた全ての兵士の鎮圧に成功した。
「お前ら、腕は鈍ってねえな。夜十も前より挑発と回避が上手くなってんよ。その調子!」
新島は全員の頭を撫でて、褒め言葉を一つ紡いだ。
その後、各部隊に報告する為、無線機を取り出すと、こう言った。
「西口は鎮圧完了。各部隊、報告願う。 」
「こっちは北口、神城部隊。俺らも終わったよ。 」
「騰隊も終わりました! 」
「龍騎隊、おっけー! 」
「こ、こちら、標津隊!虹色、どうした!?ただいま、虹色吹雪と交戦中!他兵士は、鎮圧完了! 」
"虹色吹雪と交戦中"という言葉に強く反応し、一歩を踏み出そうとした夜十は新島に静止された。
「行く気かよ。標津も弱いわけじゃねえんだ。今は……」
「分かってます。でも……虹色には!! 」
真っ直ぐな瞳を、想いを、表情をぶつける夜十を新島は止めることが出来ない。
呆れたように溜息をついて。
「……早めにな。あと十分もすれば、援軍が来る。俺らの隊にはお前がいないと意味無え! 」
「……ありがとうございます!! 」
無理な願いを聞いてくれた新島に感謝しながら、夜十は、標津隊の配備場所、南口を目指して一歩を踏み出したのだった。
六十七話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!
投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。
TwitterID↓
@sirokurosan2580
今回は虹色の思いがぶちまけられた回でしたね。
毎日投稿が段々習慣になりつつあり、前同様に感覚が戻ってきてます!
さて、次回予告ですね。
標津隊に所属する虹色に異変が!?
新島に無理を言って現場に向かう夜十。その時、彼が見た光景とはーー!?
次回もお楽しみに!
【新島のネーミングセンス】
「お前ら、この間の連携!名前決めてやったぞ! 」
「えっ……!? 」
「まあまあ、そんな喜ぶなよ。言ってやるから耳すましてよく聞け!! 」
「はい……」
「挑発でお怒りドンドンバーン!だ! 」
※擬音を使い始めてしまったことにより、馬鹿さが増した新島のネーミングは、絶対に使われることはないのだった。
拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!




