第五十二話 魔法飛球大会 ②
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「オイ、沖!狙われてるみたいだぞ! 」
俺の視線から星咲は把握したのか、沖に忠告する。だが、彼は驚きもしない様子で刀身の赤い剣を発現させた。
「あー、アレをやる気な。仕方ねェ、付いてってやるよ! 」
星咲の声を気にも止めずに、沖は構えの体勢をとった。彼がこの行動をするだけで場の空気は静寂に制圧されてしまう。
空間が"沖のモノ"になった感覚だ。
何だろう、この感じ……!
でも、俺が捉えた軌道なら間違いなく意表を突きながら沖先輩を倒せる!
俺は自分を信じて、先程と同様、手に異様な捻りを利かせながら勢いよくボールを放つ。
俺が読んでいる軌道であれば、外野手の近くで90°の角度に曲がった瞬間、球が加速するようになっている。
さぁーー成功するか!?
「……星咲、よろしく頼む! 」
彼が言い放った直後、沖は後ろへ飛び上がり、ボールを目の前に捉えた。
そして刀の刀身を忍ばせ、ボールを真っ二つに切断する。
ーーだけに留まらず、刀を放って両掌でボールを押し出した。
「なっ……!? 」
「行くぜ!
《我、汝は覇王なり。生きる価値とし、強者が歩む道。我は導、標となろう。果てに生けるとし全てを破壊せん!流星!》 」
俺が驚きの声を上げたのも束の間。
青色に光り輝く握り締めた両拳から放たれる魔力量は凄まじいものを感じる。
「ま、まずい!! 」
観客席で立ちながら試合を見ていた火炎は下の階へ飛び降りた。
星咲がこれから何をしようとしているのかが、見えたからだ。
凄まじい轟音と爆発音から放たれた真っ二つに割れてしまったボールは迷うことなく俺以外の二人は襲いかかる。
勿論、あの速度を見切れるはずがない。未来を予知していたはずの俺ですら意表を突かれてしまったのだから。
「ぐあっ……!! 」
「……きゃぁっっ!! 」
重低音と微かに響く唸り声をフィールドに残し、朝日奈と久我は外野へ押し出された。
構えていた火炎が朝日奈をキャッチする、そしてバレないように床に置いて消えていったのだった。
どうして彼奴が?
疑問に思ったが、今は目の前の二人を倒すことだけを考えねばならないらしい。
もう一度あのボールが来て、俺に狙いが定まってるとしたらキツすぎる。
「残るは夜十君だけだな。俺と星咲のペアを残すってのは実に良くないね! てか、星咲、遊びなのにやりすぎだとか聞こえないよなー 」
「遊びこそ最高に楽しまないとな。さて、さっさと上行くぞ沖! 」
俺は身構えた。ボールは新しいのを渡されるわけもない。真っ二つのままだ。
あの凄まじい威力の攻撃で吹っ飛ばされた2人とは正反対に飛んで行ってしまったボールの現在地は、星咲と沖の掌の上。
「もう一度、《流星》行こうか! 」
「……分かったよ、星咲! 」
沖は星咲からボールを受け取ると、天井につく程高く放った。
賺さず、星咲は《流星》の構えを取る。このままでは、目で追いきれない速度で放たれる、あの殺人球に場外へ吹っ飛ばされて終わりだ。
どうすれば避けられるか……!
この限られたフィールド内で出来ることを考えーー。
俺の思考を遮るかのように。
突如、顔面へ白いクリーム状のモノが死角から飛んできて顔にべったりとついてしまった。おかげで前が一切見えない。
「よっしゃぁぁぁ!! いけぇぇぇ!!星咲ぃぃ!! 」
その声は店長先輩!?ひ、酷すぎる!!
生クリーム好きの人が生クリームを人にぶつけて良いと思ってんのかよ!
「……夜十君、終わりだよ。《流星》! 」
先程よりも倍の威力で放たれるのか、彼の両拳に纏われた魔力による衝撃波や向かい風が半端ではない。
いつ飛んでくるーー!?
ーーと思った刹那。
腹部に鈍い衝撃が走り、痛烈な痛みを感じる。あまりの痛みと強さに圧倒されて、俺は前のめりに倒れてしまった。
するとーー、審判の教員が首にぶら下げている笛を口に咥えて吹き、試合は終了した。
単なるレクリエーションで行われた二年合同体育授業魔法飛球大会。
俺らの敗北は決定した。
「よーし、試合はここまで!怪我をしたやつを医務室へ連れて行ってやってくれ! 」
今日の試合は終了。この後、何時間かに分けて次の試合をこなしていくようだ。
久我と朝日奈、俺は医務室に運ばれたのだった。
ーー翌日。
心地の良い太陽の光が療護室の窓から射し込み、薄暗い部屋の中を照らしてくれる。
昨日は腹部に強烈な大打撃を受けたことで肋骨が数本折れていたので、纏に説教をされながら治療してもらっていた。
今日はオフだが、残念なことに外出厳禁となっている。怪我さえ完治したが、纏曰く怪我を負った後に俺を外に出すと、次はそれよりも大きな怪我をしてくるから、とのこと。
確かに今までの怪我の回数と満身創痍になりながら限界を突破した回数を考えてみれば、纏の気持ちも分かるような気がした。
「おーし、朝日奈と冴島は今日、この部屋から出ることを禁ずる!!逃げられないように、俺が見張るからな!……ぐぼぉっ!! 」
「私もいるよー☆ 」
背後からの飛び蹴りでベッドの足に顔面を強打した轟音と元気の良い鳴神が療護室へ入ってきた。
轟音は赤くなった顔と花を右手で抑えながら、咳払いをして、銀色のパイプ椅子に腰を下ろす。
「……ぐぅ、、まぁ、気を取り直して!!俺達はお前らを見張る係なんだ。今日は聞きたいことを話してやるから、この部屋を出るなよ! 」
「聞きたいこと? 」
朝日奈が顔をしからめながら、轟音へ問う。聞きたいこと?
確かに特にないと言えば嘘になる案件だ。
俺は試しにココ最近で一番気になっていたことについて問いかけてみる。
「《戦闘派》はどれくらいの勢力を持っているんですか? 」
俺の質問に轟音は唾を飲んで話し始めた。
「《戦闘派》のリーダー、星咲が統率するのは十名の隊長達に付いている計百人以上の兵士だ。お前らは星咲と関わりがあったらしいが、俺も鳴神も、きっと今のあいつなら好きになれる……けどな!」
「今の……? 」
轟音の言葉を遮るように俺が口を出した。
"今の"が意味することとは何だろうか。
「あぁ、彼奴は……星咲は、二人存在する。世に言う多重人格というやつだ。今の性格は、頼れるリーダー気質を秘めた最強の魔法師。けど、もう一つの方は……」
鬼が蠢き始める。世界を混沌に……平和な学園を混沌に陥れようと。
崩れ落ちるは、花火の如き。
闇は、黒は、混沌は、彼を侵食し始めていた。
ーー生徒会室にて。
快晴だった空が暗黒の色に染まり始める。
黒雲からは稲妻が走り、学園中に大雨を浴びせた。
雷鳴が轟く中、生徒会長の席に座る星咲は類稀なる頭の痛みに襲われていた。
「苦しい……苦しい……苦しい!! 俺が何をしたっていうんだよ!?あぁぁぁぁぁぁぁ、ぐっ、がっ……ぁぁあああああああ!! 」
そして、彼は目を瞑り、新たな彼が目覚めた。星咲がーー悪魔が……立ち上がった。
「フッハハハハハハハハハハ!!今度こそ、あの憎っくき平和をぶっ潰してやる……!!狙うは、元平和派の二都翔だ。彼奴から全てが始まった……!! 」
黒雲は曇天に。曇天は黒雲に。
生き物のように蠢く空を見れば、何かを察せる。混沌の空は晴れない。
「……もう一人の人格はな。平和を好まず、戦闘で殺戮を繰り返す最低の悪魔なんだよ。それであの立場だろ?つまりは……戦闘派全員を敵に回すことになる。俺らは平和を好む、平和派……ヤツにとって一番潰したい相手なんだよ!! 」
戦闘派全員を敵に回す。これがどんな意味なのか、理解出来る。
つまりは学園を巻き込んだ巨大な戦争になってしまうわけだ。
「……外の天気が悪くなってきましたね。さっきはあんなに晴れてたのに、どうしたんだろ? 」
窓の外に視線を移すと、黒雲と曇天に苛まれた暗黒の空が頭上を制していた。
まるで、何か嫌なことが起きようとしているかのようだ。
アイツが来る……!!
世界を混沌に追い込めるアイツが……!!
血を……曇天の空の中にポツリと一筋の赤い光が射し込んだのを、誰もが見えていなかったのだった。
五十二話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!
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決してエタってるわけではないのですが、仕事が忙しいということもあるのでご勘弁を!
さて、次回予告です!!
突如として現れた黒雲は何かを予兆しているかのよう。星咲の中に眠る謎の影とは一体?
次回から《学園戦争編》スタート!
平和が削られる時、戦闘狂は楽しむか。
次回もお楽しみに!
【班決め】
「出席番号順だー! 」
「え?嫌ですよ、風見は沖と組めばいい! 」
「星咲も沖達と組めよ! 」
「店長もな!! 」
こうして出来上がった、教室内で恐れられている四人組のチーム。
※実際、滅茶苦茶強い。
拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!




