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追憶のアビス  作者: ezelu
第1章 学園編 《祈願派編》
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第五十一話 魔法飛球大会 ①

「朝日奈食べすぎだろ……!!なんだよ五人前って! 」


「別にいいじゃない!てか、あんたが少食なのよ! 」


食堂から出てきた二人は口々に言い合う。今日は、俺の奢りで彼女の昼食を受け持つと簡単に言ってしまった。

学校の食堂の定価は大体500円程。手頃なラーメンや炒飯などの中華料理も数多く存在し、種類や味も言うことはない。


ただ、彼女のように大食いな人用に作られているわけではなく、大食い商品といった物は存在していないのだ。

これが何を意味するか。つまり、俺は2500円もの出費をした。


一食、てか一人だよ!?俺入れて3000円だし!金のことよりも相変わらずの食欲に驚愕していたのだった。



「次の授業は? 」


「体育だよね、体育着に着替えて体育館に集合!だったかな! 」


まだまだ授業時間には余裕がある。

俺達はゆっくり歩いて、教室へ戻った。

流石に高校ということもあってか、男女共同で着替えるということはない。

男子は廊下に出て、女子が中で着替える。一般的なシステムだ。



「オイ、久我……み、見えるか? 」


「……んんっ、ぐっ!後少し!! 」



教室の上についている換気用の窓の小さな窪みへ手を伸ばした久我、彼の下には三人のクラスメイトが四つん這いになり、支えている。

後少し、後少し!!というところでーー。

久我の指が窪みと同化したように凍てつき、教室内からは冷気が漂い始めた。



「氷洞さん、あそこに何かいたの? 」


「うんっ、なんかネズミが居たから冷気展開しちゃったけど、大丈夫?寒くない? 」


恐らく魔法を使ったのは、氷洞零(ひょうどうれい)。氷魔法の使い手で《戦闘派(クルーウ)》に所属していたはず。噂に聞けば、魔法操作技術は朝日奈に取るも劣らないらしい。



「そっか!氷洞さんて、目が良いんだね!ネズミ捕りは任せるよ! 」



「結構、昔から目はいいんだよねー。次の体育の授業に遅れちゃうよ!行こっ! 」



氷洞の周りには沢山の女子生徒が群がっている。教室から廊下へ出ると、壁に固定されている久我を睨みつけて、彼女は体育館への道を進んでいったのだった。


廊下に集まって久我の救出を図っていた男子生徒も久我の救出が成功するなり、殆ど居なくなって、廊下には俺、教室には朝日奈が残った。

二人とも、お互いが着替えたかどうかの確認をしようと壁にもたれかかる。

先程の冷気のせいなのか、ひんやりとした感触が背中に広がって、身震いした。



「……着替え終わった? 」


彼女は俺に問いかける。そんなことは、分かっているだろうに。

けど、俺も問いかける。彼女が着替え終わって、俺を待って居たことを知っているのに。



「朝日奈こそ、終わった? 」



「私はとっくに終わったわよ! 」



返答はすぐに帰ってきた。

当たり前か、壁伝いなのだから。


頭をひょっこりと扉の方から出した朝日奈は俺の方を向いて笑顔を見せる。

俺も思わず笑顔を浮かべた。



「よっしゃ、行こう!遅刻したらシャレにならないからね! 朝日奈、手を! 」


朝日奈は俺の右腕にしがみつく形で目を瞑った。これから何が起こるのかを予測しているようだ。流石。



「よーし、行くよーっ! 」


「……う、うん! 」



最初の一歩から一気に加速、目にも止まらない速度で走り続ければ四秒。体育館前に到着した。



「はぁっ……はぁ、はぁ!!なん、で……あんたは……こ、こんなのが平気なの?! 」



「慣れだよ慣れ。昔は今の朝日奈みたいに呼吸困難になったりとかしてたさ。それより、中入ろ?それとも、体辛い? 」


澄ました顔でそう言った俺に、彼女はあまりいい顔をせず、口裏を返してきた。



「だ、大丈夫よ!全く……早く行こ! 」



「あぁ、朝日奈怒ってる? 」



「怒ってない!! 」



絶対怒ってるやつだ。何でだろう。

まぁ、取り敢えず……中入って話だけでも聞こう。




体育館の中へ入ると、防御障壁が起動した状態。水色の壁と床が体育館を支配していた。

何やら観客席に複数の生徒がこれから起こることを楽しみにしているように待っている光景が目に映る。

その中には、風見や沖、店長の姿があった。




「よーし、お前ら集まったなー。今日の授業は魔法使用が許可されたドッチボールをしてもらう!分かるよな? チーム分けは出席番号順だ!因みに、負けたチームはペナルティ付きだから宜しく! 」



え、必然的に朝日奈。怒ってるよね多分。

俺は朝日奈の方を見つめると、彼女は久我に視線を移して微妙な表情を浮かべた。

チームは今日の料理実践授業と同じ班か、圧倒的に不利だな。



「じゃあ、山口さんは外野ね。久我と俺と朝日奈は内野で敵を殲滅!いいかな? 」


四人で肩を組んで円陣になっている俺達は、作戦と覚悟を決めて、ステージに向かった。



「おぉ、お前らか。あと説明し忘れたが、相手は一年だけじゃないぞ。稀に今のような二年グループと当たる時もある! 」


ステージ上に上がってきたのは、沖と店長、星咲、風見だった。この四人。全員が全員天才で、最強なのではないだろうか。ガクガクと足が震えてきた。


二年も合同の体育授業なんてあるのか……。

まるで大会だな……!!コレで二時間授業とか。

この学園、色々と滅茶苦茶だなぁ。


「やあ、夜十君。手加減はしないよ、今の俺には二年と一年の《戦闘派》が見てるっていう重要な場面だからさ。 」



「無論ですよ、手加減されたら俺も力を出しにくくなるじゃないですか! 」



両者がいがみ合う中、開始の合図の時間が迫ってきていた。教員がコートの真ん中に立ち、俺と星咲にジャンケンをさせる。何事も最初からだ、ここは勝ってボールを頂く!



「じゃんけんっ!ほい! 」



俺はグーで相手のチョキか、同じグーを狙う。グーであれば、もう一度だけチャンスが与えられるのだ。星咲は何を出してくる!?



「じゃあ、星咲側が先行な!じゃあ、始めっ! 」


試合は開始してしまい、ボールはあちらのものになってしまった。何故だ、何故心が……。俺はふと外野手の風見の方へ視線を向ける。



「〜〜〜 ♪♪♪ 」


彼女は俺の視線に気がついたのか、そっぽを向いて口笛を吹き始めた。嘘つくの下手くそすぎかよ!もっとマシに動けマシに! はぁ……心読んでジャンケン勝つとか狡い!



「よそ見なんかしてっと危ねえよ? 」


星咲は宙に浮かび上がり、ボールを空高く投げる。ボールは一定の高さまで到達すると、勢い良く落下し始めた。

その速度は凄まじくも加速し、まるで隕石のように高熱で空気を斬り裂きながら俺へ落下してくる。



「星咲先輩……ここは俺が取らせてもらいます!! 」



「ふんっ、やってみろ!腕が吹き飛ぶ威力だぜ、ありゃあ! 」


落下速度が順々に加速する隕石を受け止めるのは至難の技。だが、ここで受け止めなければ永遠に相手のボールだ。

普通の床であれば取る必要もなく、めり込むことを考えれば問題はないが、いかんせん、防御障壁という時点でボールは大きくは寝ることが予想できる。



俺はボールを取ろうと足を踏ん張り、重心を低めた。

ーーその時、おかしなことが起こる。



「店長、宜しくな。 」



「任せろ! 」



床の防御障壁が生き物のように動き、夜十の靴に絡みついた。

このままでは身動きが取れない。そう思った瞬間だった。彼女の熱が場を支配したのは。




「《打ち上げ花火、分散される炎の礫は……美しく輝き、その姿を華麗にする!礫の花火(ファイヤーワークス)!》」


彼女から連なる魔法陣が形成されたかと思うと、一瞬で消え、炎の特殊な球体が隕石化したボールに直撃する。



「隕石と花火!? 」


俺が驚愕の声を上げた瞬間、朝日奈が発現させた球体が爆発し、無数に連なる炎で具現された手で隕石となったボールを熱く優しい炎で包み込むようにキャッチした。



「やっぱり、朝日奈家は違うか! 」



「夜十君が考えていたことを、彼が今実現出来るなら星咲のボールは夜十君にも止められていたよ」


外野の風見が声を張り上げて言った。そうだった、彼女は心が読めるのだった。

厄介過ぎる、このステージ全てを敵にし、相手は心を読むことが出来る。行動パターンが限られてきてしまうわけだ。




「朝日奈、投げる? 」



「あんたが投げなさいよ!私はボール投げは苦手なの! 」



朝日奈からボールを受け取ると、俺は目を瞑った。今、この状況でどこに投げれば良いのか。

それを瞬時に分析、空気の振動、相手の呼吸、回数、音、鼓動、今聞き取れて感じ取れる全てのデータをーー"未来"へ繋げる為に!


俺の瞼の裏には無数のオレンジ色に発行する数字が凄まじい速度で流れてくる

データを解析中ーー完了。

行動パターンの種類ーー完了。

相手の鼓動、身体に関する事ーー完了。



追憶の未来視(リコレクション)》に異常無し。



今実現できる"未来"ーー完了。



「視えた!!これで、把握完了ってね。それじゃあ、行きますよーっ!! 」


俺はボールを掌で転がすように向きと角度、軌道を瞬時に見極めて確実な軌道を描くことが約束されたボールを放った。


放たれたボールが向かった先は、店長。店長が行動できる速度は三人の中で随一に遅く。鼓動の音や呼吸から察することが出来るに、運動神経も悪い。


彼は球体が自分に向かってきたことを判断すると、リモコンを取り出してボールと自分の間に防御障壁の壁を作り始める。

残念、これも予測済み。俺には全ての未来が見えているのだ。



ボールは障壁を上手くかわすように回転し、急カーブですぐに店長の方へ軌道を一切ずらすことはない。

この為に手を捻るようにしてスナップを効かせたのだ、すごく投げにくかった。



「くっ、この三人だと俺を狙うのは確かに最適だな。けど、俺は取れる!! 」


勿論、抱え込むようにキャッチする未来は視えていた。なのでーー。



「よーっしゃぁぁぁ!! 」


ボールをキャッチしようと前屈みになった店長の目の前でボールは一瞬止まる。

そして、いきなり勢いがなくなったかと思うと、コロン。ボールは落下した時に店長の足に当たって地面に転がった。



「え、えええええ!!? 」


「今のは魔法!? 」


星咲も当たってしまった店長も驚愕の声をあげた。投げたボールが都合の良い場所で落下して相手の足に当たるなんて、魔法を使ったとしか思いようがないのだ。



「んーん、使ってないよ。俺の未来視と手の捻り具合でどうにでもなるさ! 」



星咲は開いた口が塞がらなかった。店長が防御障壁を展開したが、スナップを効かせていたので難なく回転で回避した。

一番凄いのは元々威力の低い球を投げ、間違いが無い位置で落下したこと。

普通であれば考えられないが、実際に起きてしまったことだ。



店長は乏しくも、風見の横へ移動した。



「なにあのボールコントロール、やべえな! 」


ボールはコロコロと転がりながら相手の陣地から俺の方の陣地に入ってきた。

つまり、もう一度放てる。



次はーー沖先輩だ!


一話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!

投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。

TwitterID↓

@sirokurosan2580


今回はちょいと短いかもしれません。

WiFi付くまでこんな感じの投稿になってしまいます、すいません。


それでは次回予告です!


夜十と星咲のチーム戦もいよいよ大詰め!

激しい攻防の中、夜十の凄まじいコントロールのボールが斬られてーー!?


次回もお楽しみに!



【隕石】


「ドッチボールで隕石!? 」


「アレって《戦闘派》のボスだよな?」


「めっちゃ怖いじゃん! 」


「あの隕石にぶつかって死にたい……」


※観客席はこんな感じだった。一番下は火炎。


拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!

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