表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追憶のアビス  作者: ezelu
第1章 学園編 《祈願派編》
48/220

第四十八話 語られた真実

遅くなりましたー、今日誕生日です!

祝ってくれた方々ありがとうございました!

「今のは……? 」


瞼を上げると薄暗い天井が視界に映った。此処がどこなのか理解出来なかった俺は、そーっと起き上がる。

すると、隣には布団を挟んだ俺の足を枕代わりにすーすーと静かな寝息を立てる朝日奈の姿があった。



「んん……夜、十……」



彼女は俺の名前を小さな声で囁いた。きっと、寝言だろう。

綺麗な薔薇色の細い髪を指に絡ませて、頭にそっと触れる。

久しく感じていなかったからなのか、人の温もりが恋しい、腕を回して、強く抱きしめたい。


もう一度、あの熱を感じたい。

柔らかく、鼓動が大きくなる熱を。

気づかれないよう、彼女の頭に鼻を付けた。ふと、シャンプーのいい匂いで心が一杯になる。



ーー瞬間。

ゴツンッと音がして、俺の鼻に衝撃が走った。大した痛みではないが、突然で予想だにしなかったので鼻を抑えながら悶え苦しむ。



「え、なに……? 」


「あ、朝日奈……おはy……」


彼女は立ち上がり、鼻を抑え込む俺を見て疑問の表情を浮かべている。



「……んん、夜十、起きたの?! 」



ベッドへ勢いよく飛び込んでくる彼女の頭が、再び俺の鼻へ直撃した。

そんなことは気にも止めずに、彼女は背中へ強引に手をねじ込むように回して強く抱きしめながら耳に近い位置で囁いた。



「も、もう……起きないかと思った……!! 」



彼女の小さな身体を震わせて紡いだ言葉に俺は驚愕した。この熱と、この言葉……まるで姉のようだ。ずっと、支えて助けてくれた姉のよう。

ゆっくりと起き上がり、抱きしめてくれる彼女の頬に自分の頬を重ねて、俺も腕を回し、強く抱きしめた。



心地のいい熱……ずっと一緒にいたい。

彼女は俺にとって大切なたった一人の恋人。


俺は朝日奈の顔を両手で包み込むように掴むと、瞳を合わせ、柔らかく程よい熱の唇をそっと重ねた。







「どうしよ、超入り辛いんだけど……!! 」


療護室の扉を挟んで廊下では、扉を少しだけ開けて隙間から中を覗く風見と店長、沖の三人が二人の様子を見守りながら、入るタイミングを伺っていた。



「よし、じゃあ俺らも対抗する?風見! 」


「……そうだね、キスしながら入れば何の違和感もなく入れるかも! 」


見つめ合い、唇を重ねようと沖が顔を斜めに傾けた瞬間ーー。



「そんなわけねぇだろぉぉぉ!!!! 」


店長の渾身の拳が沖と風見に入り、吹っ飛ばした。



「……へぶっ!! う、うわぁぁぁぁ!! 」



その威力が強すぎたのか、扉に直撃した二人は扉を外し、大きな音を立てて療護室側へ倒してしまった。


その瞬間に風見達が見たのは、唖然にも口を開いたまま、自分達を見つめる夜十と燈火だった。二人はベッドの脇に座って話をしていたようだ。




「先輩方……?何してるんですか? 」



「あぁ、えーっと、ごめん……」



風見が賺さず正座して頭を下げながら謝罪を述べると、夜十は黒い笑みを浮かべた。




「風見先輩、一番嫌いなものはなんですか? 」



「き、嫌いなもの?えーと……食べ物なら納豆かな? 」



何の疑いもなく言葉を並べた風見は言った後、我に返り、顔を抑えながら下を俯いた。



「……沖先輩は? 」



「俺は無いよ? 」



察して逃げようとする沖を夜十は逃さない。

店長の方へ視線を向けて口を開いた。



「店長先輩、ご自分の嫌いなものを言うか、沖先輩の嫌いなものを言うか、どちらでもいいので教えてください! 」



「……なっ、沖の嫌いなものはーー」


その選択肢を出されれば、店長が出す答えは一つしかない。彼は驚愕の音を上げると、なんの迷いもなく言葉を放とうとした。

その時ーー。




「オイ、店長!!言ったら殺すぞ!! 」



「マヨネー……うぶっ! 」



二人の嫌いなものを把握した夜十は、頭の中に二つのものを浮かべた。

追憶の模倣(メモリー・レプリカ)》は記臆しているモノであれば、具現化出来る。


俺は右手に納豆を二つ、マヨネーズを一つ生成した。



「夜十君、勘弁してぇぇぇええ!!それだけはマジで勘弁してください! 」



「……どうしたんですか。風見先輩、俺は怒ってないですよ。これを食べれば……ね? 」



必死に頭を下げるが、この際、彼に謝罪の言葉は効かない。

下を俯く二人の前に出されたのはーー。


発泡スチロールの小箱の中に入っている混ぜる前の納豆に、積み上げられたかのようなクリーム色の油。

出された二人は受け取ると、自分の嫌いなものを"食べなければならない"という試練を受けさせられてしまった。


覚悟を決めて、箸を手に取り、いざ実食!

口に放り込んだ瞬間、マヨネーズの酸味と納豆のネバネバ感が口内に広がりーー。



「……んんんっ!!!! 」



生気が吸い取られ、仰向けに倒れた。

完全に伸びてしまっている。



この時、苦手な物を食した二人以外の店長と朝日奈は夜十が黒く笑った時の怖さを思い知ったのだった。





ーー翌日。

昨日の夕方に療護室から退院した夜十は、三日間も寝てたという話を聞いて三日分のランニングセットを実行していた。

朝の四時頃から始めたので、最初は真っ暗だったが次第に朝日が山からはみ出て来て、今は心地のいい日光を浴びることが出来ている。


昨日退院する時、店長に明日の一時から拠点に全員を集めてほしいという相談を持ちかけると、彼は快く承諾してくれた。

ーーので、今日は《平和派(ジャスティス)》の皆に自分の上限回数から魔法、全てを話すことにする。


三日分のランニングに終止符を打とうと、走る速度を速め、一気に加速した。






「……はい!ということで、全員集まったな! 」


拠点の中で一番広大な発明室には、《平和派》の全員が椅子に腰を下ろして店長の言葉を耳で捉えた。



「んじゃ、夜十。後は任せたよ 」



「……はい! 」



彼は自分の知る全ての情報を全員と共有する為、立ち上がった。

自分が一般人ではないことから全てを。




「……皆さんに聞いてほしいことがあります。俺の全てについて……。でも、どういう風に言ったらいいのか、分からないんです。どういう形式で説明するのがいいですか? 」



全員に聞いたつもりだったが、俺の視線はいつの間にか風見の方へ向いていた。

頼れるリーダー、ボス、《平和派》を統率している人にしては最初、頼りない女性かと思ったけれど……世界蛇(ヨルムンガンド)と戦った時のことも、今迄の事も思い出せば彼女以外に務められるわけがない。

今では大切な人の一人だ。




「……んー、じゃあ、私達が君のことで知りたいことを聞くって形式はどうかな?質問なら答えやすいと思うし、こっちも楽しいしね! 」


風見の提案に俺は笑顔で頷く。自然と場に笑いが生まれた。




「……じゃあ、まずは私から行かせてもらうわよ!一般人出身って言われてたけど、夜十の所属していた組織は何? 」


いきなり完全に秘密なことだった。

けれど、もう隠す必要はない。俺は、全員に伝わるよう、聞き取りやすい声でハッキリと言葉を紡いだ。



「俺が所属していた組織は、特殊生物殲滅部隊、ATSに所属していました……」


その瞬間、朝日奈の目が驚愕に開かれるのを目撃してしまった。彼女は賺さず下を俯いて何か考え事を始めた。



「ATSって伝説の魔法師、新島鎮雄が統率している組織だよね? 」


「新島隊長は命の恩人、俺の大切な人の一人です。これまでも色々お世話になって、俺はあの人が居たからここに立ってます。 」


風見の質問に笑顔で答えると、彼女は「次!」と大きな声を上げた。




「夜十君の魔法と上限回数について! 」


一番最初に会った時、答えられなかった質問。

風見に聞いてもらえたことは嬉しかった。



「……俺の魔法の使用上限は十回。この学園に来て、三回使ったので後は七回です」



全員、驚きを隠せないほど驚愕していた。

分かっていた、そういう反応されるのは。けど、別に構わない。俺は話を続ける。



「内容は、"世界を意のままに動かす"という魔法です。上限回数にそぐわないようなことは出来ません、例えば……この世界からアビスを消すとかってことは……! 」



「だから、あの時……世界蛇を倒すような高難易度の魔法展開をすることが出来た。ということだね? 」


風見は実際に校舎の地下に入る前、あの魔法陣を見たらしい。俺は深く頷いた。



「んじゃ、俺が行くぞ……夜十!お前が前に使ってきた《追憶の未来視(リコレクション)》の原理ってなんだ?」


クロが疑問げに聞いてきた。

あれは体術、ではなく魔法だった。



「《追憶の未来視(リコレクション)》は体術ではなく、魔法だったみたいです。俺の本当の魔法、最初に説明した世界を意のままに操るという魔法はこの……《願いの十字架(アウグリーオ)》が……! 」


俺はわかりやすく説明をし始めた。

これについては順を追って説明せねばならない。禁じられた魔法武器についてをーー。




「……店長、聞いたことは? 」



「あぁ、あるよ。使用者の上限回数を十回以下にすることで強力な魔法を使えるようにする禁じられた魔法武器、《魔源の首飾り(アミュレット)》じゃないかな? 」



沖に聞かれ、彼は答えた。

流石は発明家だ。武器に関する知識は、一般人以上、専門家並みだ。



「その《魔源の首飾り》ってのは、世界にどれくらいあるの? 」



「そもそも、《魔源の首飾り》は……禁じられた魔法武器なんだよ!作られることも使われることも禁止。夜十にどういう経緯で付けられたのかは分からないけど、この首飾りは……世界に十個しか存在しない。けど、KMCが七つ封印してるって話があるから、三つだよ……!! 」


店長の瞳は輝いていた。それは恐れるというよりも、憧れているようだった。



「じゃあ、話題を一気に変えるけど……恋人っているの? 」


鳴神がニコッと笑った。

この人……知ってるくせに!!どうせ、朝日奈から聞いてるだろ!?



「……朝日奈燈火と付き合ってます。 」



「……ちょ、え、あんたぁぁぁぁぁあ!!なんでそういうこと正直に答えるの!? 」



俺の答えに朝日奈は顔を赤らめて取り乱し始めた。

賺さず、轟音が笑いながら付け加える。



「じゃあこれで、恋人組増えたな!俺と……いや、風見と沖!!朝日奈と夜十! 」


ーー瞬間。

彼の後頭部に鳴神の蹴りが放たれた。

電撃が如き速度の為か、数メートル先の防御障壁にめり込んだ轟音。

地面に着地した鳴神は笑いながら、更に話を付け加えた。



「お恥ずかしながら轟音と付き合うことになりました。よろしくでーす☆ 轟音(あいつ)の口から発表とか恥ずかしすぎ!! 」



「……何でだよ!!俺と一緒に熱いハーモニーを夜中に響かせたじゃねえか! 」



再び、轟音へ雷撃の蹴りが放たれたのは言うまでもないのだった。





四十八話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!

投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。

TwitterID↓

@sirokurosan2580


今回は、遂に語られました。

夜十君の全てが……。因みに、明日からは暫く日常に戻りますね!!新キャラも登場しますよーっ!


次回、この学園に宿る心霊が夜十達を襲う。

その正体とは如何にーー!?


次回もお楽しみに!



【轟音と鳴神】



「俺、お前と良いビートを弾ませたいんだよ。どうだ? 」


「なにその告白……マジでダサい!!ホント死んで欲しい!!けど……いいよ、あんたなら。 」


彼女は雷撃が如き速度で彼の胸に飛び込んだ。


※この後、メチャクチャ○○した。



拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ