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追憶のアビス  作者: ezelu
第1章 学園編 《祈願派編》
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第四十四話 人類の過去 ①

遅くなりましたー、すいません!


再び、あの真っ赤な世界で目を覚ました。

此処はいつも静寂に包まれ、俺以外誰も居ない。言うなれば、《願いの十字架(アウグリーオ)》が居るくらいか。人間は居ない。



「……お待ちしておりました。世界蛇を倒したこと、お祝い申し上げます。 」



「そうか、倒せたのか。衝撃波で何も見えなかったから、倒せたのかどうかも心配になってたけど……」



「はい、問題ありません。

世界蛇は跡形もなく消滅しました。 」



ホッと安堵し、胸を撫で下ろす。アレでまた魔法を吸収されてたら終わってた。



「後の上限回数は七回です。

これからも頑張ってください……!私からは以上ですので、現実にお戻りください 」


「あぁ、またな。ありがとう! 」



スーッと意識がその場から消え、俺は現実へ戻った。背中の痛みはもう消えているようで、俺は柔らかい太ももに寝かされていた。

目を開けると、心配そうな表情で横を見つめる朝日奈の姿があった。



「あぁ、ありがとな。」


体を起こして、彼女が見つめる先にあるものに視線を移す。

映っていたのは、火炎と星咲、八城が寄ってたかって老人を殴打している場面だった。



「ちょ、あんた……まさか? 」


怒りに顔を埋め、立ち上がった俺に彼女は不安そうな表情で問いかけてきた。



「……当たり前だろ?悪い奴とかそういうのは関係ねぇんだよ。単に……目の前で人を失わせない、それだけだ! 」



ーードクンッ。

胸の鼓動が大きくなった瞬間ーー俺は加速し、地面に横たわる老人の奪取に成功した。

血塗れで目以外の至る穴から血を流している。ここまでやるか……?まぁ、世界蛇を出現させたから、ってのは大きいのかな。



「オイ、冴島テメェ!起きたと思ったら、そっちの肩を持つのかよ!そいつは俺らの校舎を破壊した根源を生み出したヤツだぞ! 」



「……関係ねぇ!!俺は目の前で人を失いたくないだけだ!これ以上やるなら、俺が相手してやるッッ!! 」



老人は庇われたことで安堵したのだろうか。

今にも死にそうな覚束ない口振りで言の葉を紡ぎ始める。



「夜十殿……貴方はぁっ……全てを知る権利が、あぁ、ぁる……!! 」


「え……? 」


瞳を開けて、覚束ない震えた指を俺の頭に当てた。

その瞬間ーー何かの過去が流れてくる。

これはなんだ……?誰だ?


一気に世界が白くなった。







昔、《魔術師》と《人間》という種族がいた。

《魔術師》は魔術、魔法という特殊技能を用いて、人間の領土の半分以上を奪い去り、その絶対的な強さを見せつけた。


《人間》は魔術も、魔法も使えない。武器を作り、それを極めるという努力の結晶で戦場へ赴き、魔術師と戦っていた。

だが……いくら槍の腕を上げようと魔法には勝てない。槍が到達する距離よりも遠い場所から放たれるのだから。




「やっぱり、魔術師様には勝てないよ。

僕らは全員頭を下げて生活させてもらうべきだ。これだけの領土で取れる食材も限られて来るし、人間の人口は増え続けている! 」



人間側の領土が減少し、食物を摂取する量が極端に減ったせいか、諦めて魔術師に降伏しようという考えの少年が現れた。



「はぁ?何言ってんだよお前!!

それがどういう意味がわかってんのか!? 」


村の男衆は怒りの音を上げて、少年の胸倉を掴み、木の幹に押し付ける。

だが、少年は発言をやめようとはしない。



「だって、そうだろ!?

……まだ家畜の方がいいに決まってる! 」



「ふざけるな!!我々のしてきたことを全て否定するような言い方しやがって!餓鬼はな、黙って死ねぇえええ!! 」



男衆の一人が少年へ拳を振り下ろした刹那だったーー赤色で長髪の女の子が男の拳を片手で止めたのは。



「血気盛んになるのは良いですが、村にとって大切な戦力を自らで根絶やしにしてしまうのはどうなんでしょうか? 」


彼女はこれ以上暴れようとする男衆へ牽制のため、鞘に収めた剣に手をかける。



「す、すいませんでした!けど、こいつが……わ、我々の努力を無駄にするようなことを言いやがったので……!! 」



「それに、貴方方はこの少年が武器を持った時、集団で倒せますか? 」



男衆はその言葉を鼻で笑って、嘲笑した。

複数人でかかれば、女は無理にしても、そこの少年くらい余裕だと思ったからだ。



「じゃあ、シン。後は任せたよ。 」



「はい、姉上!姉上はいつもおかしなことを考える……悲観的な態度を取った際に村人がどんな反応をするかなんて……戦争に使えるんですか?あ、もう居ない。 」



「テメェ、余所見してんじゃねぇぞ! 」


男衆は全員で合わせて十人程度。これ程の数であれば問題はない。

少年は殴りかかってきた男の拳をしゃがんで避け、鳩尾に剣の柄で一撃。一人終了。



「なんだこの餓鬼……!!さっきとはまるで、待てッッ!!お前ら行くな! 」


残りの九人のうち、一人以外は立ち止まることなく斧や槍などを持って少年へ襲いかかる。男は気がついてしまったのだ。

あの兄弟が《不味い》ことにーー。



「へぇ……?僕らに気がつくなんて、少しは勘のいい人だね。人間側の兵士として、役に立ってくれるかなぁ?断れば、ここの村……全員殺処分だけどね? 」


いつの間に8人を倒し終わっていたのか、彼の足元には男衆が意識を失って山積みにされていた。死んではいないらしく、時折、苦しそうな呼吸が聞こえる。


少年の黒い笑顔に男は感服して、頭を地面に擦り付けながら少年の靴へ手を伸ばした。



「シン、終わった? 」


「はい!四番目の村は手に入りましたよ。残るは後、六個ですね! 」



男が聞いた風の噂では、凄まじく強い兄弟が人間側の村を潰し回っているという悍ましい噂だった。彼は恐る恐る少年へ問いかける。



「貴方方、兄弟は何をなさっているのですか?人間側の村を潰して……何になるんですか!? 」



「……ふん、偏見ですね。潰してなどいませんよ、僕らは魔術師側と戦う為の兵士を獲得する為、村に待機通告を出して回っているだけです。

これからこの村も僕達と支配下にあります、もし……従う気がなければ、この村は一時間と経たずして死人の国となりましょうか! 」



男は屈服し、この兄弟が成し遂げようとするものが見えたーーーー。



「僕らの村は魔術師に根絶やしにされました。十一番目の村、ニィア村です。武術が盛んな素晴らしい村でしたが、一日で滅びました。そうならない為に……人間全体が協力しなければならないんです!! 」


シンの叫びは村全体に届き、村人達の心を容易なまでに溶かす。

怯えて家から出てこなかった村人がシンの元に跪き、頭を下げた。


すると、姉の方が神妙な面持ちで、口を開き始める。



「……シン、行くよ。この村にもう用はない。私達は馴れ合いに来たわけでは無いのだから……! 」


「え、でも……はい!姉上!それでは、村の方々、お元気で!! 」


涙を袖で拭いながら手を振ってくれる村人達に別れを告げて、二人は村を後にした。



「もう時間は残されて居ないんだよ?なんで馴れ合いをしようとするの……? 」


「ごめんなさい……」


彼は素直に謝った。こういう時に反応した場合の姉の反応はピカイチに怖いのだ。





村を通り過ぎた先にある橋には、何やら集団で固まっている盗賊の姿があった。

彼らは二人を見るなり、血相を変え、血走った瞳で刃物を上へ掲げた。魔術師に操作されている証拠の、瞳が真紅に染まっている。



「あの紅い目……操作されてるよ! 」



「うん、分かってる。シン、待ってて! 」



シンが承諾しその場で立ち止まると、音を殺し、真っ正面から剣を抜いたその手で一閃。

たった一振りの剣戟からは連なるように無数の斬撃が生まれ、十人程度の盗賊団全員を斬った。



「やっぱり姉上はエゲツない……峰打ちとかしないもんなぁ」



「峰打ちなんてして、どうすんのよ。こんな雑魚、兵士にも使えやしないのに! 」



辛辣な言葉はどこまでも冷たい。彼女は愛を知らないからだ。人間関係を馴れ合いと呼び、どこまでも否定してきた。信じられるのは剣と弟のみ。

彼女が大きく望むのは、力だ。




「姉上、五番目の村はこの道を左です! 」



「うん、ありがとう。 」



シンに言われるがまま、草木が生い茂る道の分岐点を目にし、左の道へ進んだ。

黙って進む道は何処か寂しげで、苦しい。

出発前や出発した瞬間は楽しく会話を交わしていたのに、今はーー下を俯いて一言も話してはくれない。



「五番目の村、ソニアが見えてきたよ! 」



「……そうね。この村はどういう作戦で行こうかな。 」



姉はいつもの"とんでも作戦"を考え始めた。

五番目の村、ソニアは30mの巨大な外壁を持つ要塞のような村。

他の村の民を全員的と見做し、侵入すれば斬り殺すといった血気盛んな村で有名だ。

村の人口は300人。

ここまで来ると、村ではなく一つの王国といっても過言ではなさそうだ。


真っ向面から突っ走ることは出来ないので、地下水路などを使って侵入し、音を殺しながら鳩尾で気絶させるのを繰り返すしかない。姉はそう考えたのだがーー背後から忍び寄る人物はその作戦に反対した。



「そんな作戦、直ぐにおこぼれが出ちゃうよ。君ら、あの有名な兄弟でしょ?確か、姉がユリで、弟がシンかな? 」


背後からの気配が察知出来なかった恐怖で何歩か後ろへ後退し距離を取った。

その様子に男は「うんうん」と頷きながら感心する。



「……良い反応だ。あぁ、申し遅れたね。

俺はニア・シュタイン。シュタインでも、ニアでも好きに呼んでくれて構わないよ! 」



彼ら淡々と自己紹介し始めた。

ユリは警戒し、剣に手をかける。



「君らはソニアに入りたいんだろ?

なら、良い場所があるよ。どうする? 」


男の瞳は嘘ではなかった。真剣に二人を見つめ、問いかける表情と威圧感。

間違いなく、嘘をついていない顔だ。




「はい……姉上、ここは頭を下げてお願いしますだよ。 」



二人は頭を下げ、"お願いします"と言った。礼儀正しく、は死んだ両親の遺言だからだ。



こうして、三人はーーソニアへ向かうべく、特殊な道へ進んでいったのだった。






四十四話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!

投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。

TwitterID↓

@sirokurosan2580


完全にスランプです……お休みいただいたのにって感じですが、投稿しました^^

明日も出来ると思います!!


それでは次回予告ですねっ!!

鉄壁の異名を持つ村、ソニアを人類の味方につけるには、いつも通りの屈服させるしかない。

兄弟と一人の男は最大級の村、ソニアへ向かうが、そこは待っていたのはーー!?


次回もお楽しみに!!



【出番】


「過去編だから俺ら出ねぇな。寝てよ! 」


「火炎、黙って寝とけ! 」



「過去編かぁ、暇だな 」



「あんたら自由か!!!! 」


※自由過ぎる三人に呆れた燈火なのでした。




拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!

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