表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追憶のアビス  作者: ezelu
第1章 学園編 《祈願派編》
41/220

第四十一話 地獄の隕石

最近の更新時間が遅くてすいません!

夜寝落ちしちゃうんですよね……なんでだろ。

噎せ返るような酷い空気が充満している。この空気が身体の内部にでも入れば、瞬く間に侵食して身体を破壊するのだろう。

世界蛇(ヨルムンガンド)は、まだ敵を見つけていないので行動を起こさずにジッとしている。今のうちに弱点を見つけて、相手を叩けば無駄な戦闘を行わなくても良いのだが。



「弱点……世界蛇を倒したという実証歴が無い以上は自分達で見つけるしかなさそうだな! 」


「だなぁ……取り敢えず、相手に気づかれる前にってのは無理だろうよ。

どこか攻撃しなきゃ意味がねぇ……!! 」


世界蛇が気づかないうちに弱点を見つける。

それは……高難度に値することだ。

もし、弱点を見抜けるような魔法を持つ……風見先輩……人間以外でも出来るのか?



「風見先輩の魔法で見抜けないですか? 」



「あぁ!!その手があったか!

……待ってろ、風見呼ぶぞ! 」



端末をポチポチと押して耳に当てた。

液晶の表示には風見蓮と書かれている。



「おう、風見!そこから怪物が見えるだろ?

怪物の弱点を見透かしてくれるか? あぁ、目を見ないと無理?マジか……分かったよ、降りてきてくれないか? 」


瞳を見て見透かす時間をかけないと、全てを見透かすのに時間がかかるようだ。

また彼女の魔法は"弱点"だけなどの中途半端なことは出来ない。



「……しゃあねぇな。上に飛んで、見透かしてもらうしかねぇわ! 」



ーー数分後。

大慌てで放送室のある校舎から出てきた風見は星咲へ微妙な表情で問いかけた。



「え、まさかだけどさ。飛ばないよね? 」


「流石、風見!!察しがいいな!

……んじゃ、行くか!」


俺は星咲の肩を掴み、待機していた。

後は星咲が風見に触れれば上へ行けるのだ。

彼は文字通り、風見の肩を掴むとーー



その場から姿を消して、一瞬のうちに上空へと飛び立った。

また高度の高い位置からの飛行で顔の皮膚がひしゃげて、原型が留まらなくなる。

だが、テレビにでも映ってるわけではないのだ。今それを考えるべきではない。


今度は世界蛇よりも高い位置に移動したようだ。

とても大きな紫色の頭が下の方へ見える。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!」


「……風見先輩!落ち着いてください! 」


絶叫しながら落下して行く風見は現在目的を忘れているご様子。

それでは上空まで移動した意味が無いので、しっかりと正気に戻す必要がある。

腹の底から、めいいっぱい大きい声で叫んだ。



「風見先輩ぃぃぃぃぃいいい!! 」


「なっ、ご、ごめ!!後少しで顔だよね。

しっかり見るよ……!! 」



頭を通過すると、すぐにぎょろりと動く黄色い瞳が現れた。風見は真っ直ぐ瞳と視線を合わせる。そしてーー



「……来たッッ!!な、何だこれは!!

戦いの歴史?世界蛇の弱点は……高熱の炎だって? 」


高熱の炎?それを平気な顔して出せる魔法師は今、この学園で一人しかいない。

……朝日奈!!

だが、彼女はまだ目覚めていない。

もし……いや、それ以降の言葉は口にしてはいけない気がした。俺は、彼女が帰ってくるのを待つしか無いのだ。


下に降りると、火炎と八城が弱点について、分かったことを聞いて来た。



「……高熱の炎だってさ 」


星咲が答えると、火炎は真っ直ぐな笑顔を見せる。そうか、こいつも朝日奈だったな。

反射系の魔法しか使わなかったので、炎魔法を使えるとは気がついていなかった。



「あ、でも……そうだったな。

お前ら、俺が炎魔法を使えるって他の奴らに他言すんじゃねぇぞ? 」


何故なのかは分からないが、適当に返事をして聞き流す。


「あぁ、分かったよ。」


八城も風見も頷いた。

弱点は炎、キーマンは火炎。

俺達が今出来るのは、火炎を全力でサポートすることだ。




「じゃあ、行くぜ!!

《真紅に染まる真っ赤な薔薇が、咲き誇るは、永遠の魂!不死の鳥弾(フェニックスバレット)!》 」


真っ赤な不死鳥が具現化された銃弾が、彼の作り出した真っ赤な魔法陣によって生み出される。弾丸の放出速度は加速し、その熱気と勢いを落とすことなく世界蛇の身体へ直撃した。今の一撃であれば、擦り傷程度では済まないはずだ。

勿論、倒そうとは考えていない。

だが、相手がこちらに気づかないうちの一撃としては、満足なものだっただろう。



「シャァァァァァァァァァァァ!! 」


俺達の頭上を遥かに超えた位置にあるヤツの頭から発された声は、甲高く掠れていて先程の風見のアナウンスよりも鼓膜を破ってきそうな壮大な音だった。



「クッソ、かすり傷もついてねぇ!! 」


火炎が放った一撃が直撃した地点は、小さな湯気が立つくらいで傷も何もついていなかった。世界蛇は動き出す。自らが作り出した混沌の世界にうねりを上げて。




「ヤベェな、あの皮膚硬すぎじゃねぇか? 」


星咲が思わず一言零した。

確かに硬い、あの攻撃が通らないとは。硬さで言えば、防御障壁なんて比では無い。



「……炎魔法か。今まで抗ってきたからな。ここに来て、俺が使う権利はないってか?朝日奈の血が拒んでいるのか? 」


「やっぱり、真っ向勝負が一番最適なのかもしれません。火炎の炎魔法は効かなかったんですし……!! 」



「だなぁ、八城!

お前の魔法でヤツの視線を崩すことって出来るか? 」


八城に星咲が提案した。

彼の魔法がどんな魔法なのか、俺としては分かっていないがこの局面で頼れるリーダーの星咲が言うのだ。

間違いないと言っても過言ではないだろう。



「出来ないことはないぞ?

視線を逸らさせればいいんだろ?任せろ! 」



彼は世界蛇の前に足を踏み入れて、身体の上に飛び乗った。それでも、世界蛇は勘付かない。世界蛇にとって俺達とは、地面に蔓延る虫以下の存在なのだ。



「なぁ、世界蛇さんよ。

……これでも食らっとけ!! 」


そう言って八城が世界蛇の首辺りに投げたのは、黄色と白に輝き、閃光を放つ光の玉だった。光の玉は、ヤツに直撃する前に破裂して、異様な程の眩しさを与える。


……成る程、閃光玉か。

それも普通の閃光玉ではない。

恐らく、彼の魔法で作り出した閃光を強化した閃光玉だろう。

この眩しさであれば、ヤツが下を向くことはない。今が攻撃のチャンスだーー。


八城の攻撃の合図で一気に加速し、攻め込む三人。全員が縮地法並みの速度強化技術を持っているようで、すぐに懐まで侵入することが出来た。



追憶の模倣(メモリーレプリカ)

朝日奈の炎を具現化し、両手に炎の剣を携える。そして、何度も何度も縦に振り下ろす。

流石にヤツの皮膚は炎には弱いらしく、蒸気が出て、僅かだが皮膚を切り裂くことが出来た。



焔弁の爆炎花(アキメネス)

朝日奈の力……借りるぞ!! 」



自分の斬撃と共に降り注ぐ無数の炎の鉾。

俺が作り出せる個数は、前に朝日奈が作り出していた個数分。

つまり、数で言えば120本だ。


「シャァァァァァァァァァァァ!! 」


グサグサグサッと突き刺さる鉾によるダメージはかなり発生しているようで、世界蛇は苦難の叫びを声を上げた。

眩い光によって下が見えない、のにも関わらず自分の致命傷になる程の攻撃が下の方で行われている。

自分が巨人化した上でこんな攻撃を喰らえば、嫌な気持ちになるのは歴然だ。



「もう閃光玉が切れるぞ!!

……離れーー」


……刹那。八城と星咲がうねりを上げ、凄まじい速度で振られた尻尾に直撃し、校舎へ吹っ飛ばされた。窓ガラスから突き破り、壁にめり込んだ状態で静止する。



「シャァァァァァァァァァァァ!! 」



「……火炎、逃げろ!! 」


だが、彼は逃げない。

自分の中の王、星咲を吹っ飛ばしたことによる世界蛇への怒りで胸の内が一杯だからだ。



「《全反射(フルカウンター)

俺の魔法が破れることはない! 」


彼の座り切った肝も、自信も全てを打ち砕くかのように振り下ろされた尾は火炎の反射壁諸共破壊して、地面に叩きつけた。



「……火炎の反射壁が破られたッ!? 」


残りは俺のみ。と、言わんばかりに世界蛇の視線は俺の方へ向けられていた。

当然、簡単にやられるつもりはない。感じるのだ、相手が繰り出す尾による攻撃の速度と角度、音、形、場所を瞬時に把握ーー。


魔法を数値化し……《追憶の未来視(リコレクション)》を完成させる!

その為には全力を振り絞り、ヤツの攻撃を回避していく必要がある。


右斜め上から丸太よりも巨大な尾が接近中、速度は時速300km超、角度は43°の位置……形は丸太のように太く、先端は巨大な三角錐、コレは……避けられる!


目を見開いた状態で、素早く飛び上がると回避に成功はしたが、数値が邪魔で目の前の視界が閉ざされた。

だが、大丈夫だ。次の一手は分かっている……上に飛び上がったことで口による噛みつき攻撃が……来る!!


空中で斜めに方向転換すると、世界蛇の噛みつきは虚空を切るように空気だけを呑み込んだ。そして、尾による攻撃が来る。


世界蛇の攻撃パターンはとても少ない。

攻撃する位置が無いというのも容姿だけで丸分かりだけれど。

それでも多少は努力して攻撃の手段を増やそうと思えば増やせるだろう。



「把握……完了だな。人間より楽。

そろそろ、感覚が出来てきたな! 」


攻撃を難なく避け、相手の隙を伺う。

隙だけで言えば巨大な図体で隙だらけに思えるのだが、実際はそうではない。



追憶の未来視に異常はない……。

もう未来の複製は完了……!!



「凄え、彼奴……紙一重で攻撃を避けてやがる!なんて所業だよ!なぁ、八城! 」


「だなぁ、未来を読む力でもあるのか?

だとしたら、この先……脅威になる! 」


八城と星咲が校舎の上から必死に戦う夜十を見下ろしていた。彼らもまた然り、この程度では倒れない。



「よし、行くぞ!!あの攻撃を避けなきゃ、話にはならないけどな! 」



「おう、やんぞ!世界蛇め、待ってろ! 」



校舎から世界蛇の身体へ飛び乗ろうとした刹那ーー夜十が避けた尾の攻撃が受け流されて、八城に命中した。



「えぇぇぇええ!?出落ち早くない?! 」



コンクリートを砕く音と共に再び校舎へ戻っていった八城を無視して、星咲は夜十の近くへ飛び乗った。



「夜十君、少し離れてて!!

俺の魔法の餌食になりたくなければだけどな!

《星降る夜、業火の元に……流れ星は落下し……目標を撃ち砕かん!地獄の隕石(メテオインフェルノ)!》 」


俺は言われるがままにその場から離れ、校舎側の方へ避難した。


直後。

世界蛇の頭よりも上の位置に出現した無数の赤い魔法陣は、連なるように紋章を空中に刻み込む。



「攻撃は最大の防御なり。

俺の力……とくと見るといい!! 」



ーー瞬間。

緋色に禍々しく光る魔法陣の内部からは、巨大な隕石が無数にも降り注いだ。容易なまでに地面を抉り、強大な爆発音と共に世界蛇を凌駕せんと高熱を帯びた隕石が直撃する。



「炎魔法が苦手ならば、高熱の何かが苦手なんだろ?思う存分喰らえよ! 」



無数に降り注ぐ隕石には終わりが見えない。

当然、これを出現させているのは星咲なのだがら魔力消費が異常なモノと見受け、同時に心配になってきた。



「シャァァァァァァァァァァァ!! 」


空中で降り注ぐ隕石を眺めながら佇んでいた星咲は、世界蛇の猛威に触れてしまう。


そして、この一撃がーー世界蛇を変貌させる最大の攻撃になるということは誰も知らなかった。

全てを見透かした風見でさえも、見落とした情報が今、疼きだす。


一話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!

投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。

TwitterID↓

@sirokurosan2580


今回は土壇場の星咲の魔法でしたが、この一手で色々変わってきます!!^^


それでは次回予告です!!

次回は、星咲の強力な魔法で変貌を遂げ始める世界蛇。風見が見落とした世界蛇最大の強さ。

その猛威に触れた時、彼らが取るべき行動は残されていたーー!?


次回もお楽しみに!



【火炎】


「尻尾に叩きつけられたけど、反射壁があるからダイジョーブ☆ 」


「頭までおかしくなったか。そのまま死ねばいいのに……」



「……オイ、夜十!ぶっ殺すぞ!? 」


※実は仲良しな二人?



拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ